デタラメ、新しい放射線副読本その7―放射性物質は西側に広がった―

実を誤解されてる内容が沢山含まれています（２）～（７）。放射性物質の放出の項（３ページ）に
「福島第一原子力発電所から放出されたさまざまな種類の放射性物質は、風に乗って北西や南西の方角を中心に広い地域で地上に降りました。」
なんて記述がありました。そして、それを説明するために以下のような地面での放射性セシウムの分布が出ていました。

　※（１）を引用
　図―１　「地面に落ちたセシウムの量」と表記し、まるでセシウムだけが西側に飛んで来たみたいな副読本

この説明をみると、福島原発事故で放出された放射性物質は西側に行って、東側には行かないみたいです。でも東京電力の資料（８）を見ると、東側にも流れています。２０ｋｍの範囲でも陸に流れた放射性物質と同程度の量が海に流れています。

　※（８）を引用・加筆
　図―２　東京電力が想定する放射性物質の漏れ先

　ただ海は遮るものがないので、もっと漏れています。東京電力は福島第一原発からは２万兆ベクレル（セシウム１３４，１３７が共に１万兆ベクレル）もれ、そのうち陸に落ちたのは２、０００兆ベクレルとしています（８）。陸に落ちた放射性物質は全体の１０分１です。
　以下の図は２０１１年３月１５日から２９日までの、福島第一原発に近く観測データのあるアメダス観測点「小野新町」での、風向きの分布を示します。風下を表していますので、北風が下、西風が右側になります。

　　※　（９）より転載
　図―３　「小野新町」での放射性セシウムばら撒き時の風向き分布

　見ての通り、ほとんどの風が陸側から海に向いて吹いてます。福島第一原発は漏れた放射性セシウムのほとんどは、風に吹かれ海に出たと思います。
「福島第一原発から放出された放射性物質の大部分は風にのって海にながれました。」
が正しい記述です。ただ海には流れた放射性物質は海流に流され拡散するので観測ができなかっただけです。

＜余談＞
　生徒さんへ
　先生に「放射性物質は海の方には流れなかったのですか？」と先生に聞いてみてください。今、原子力規制委員会では、多くの原発の再稼働に向けた安全審査が実施されています（１０）。

　※（１０）を元に作成
　図―４　安全審査実施中の原発

　図に見てわかるとおり、多くの原発は東側には陸地があります。放射性物質の多くが東側に流れた事実は「隠ぺい」しなくてはならないことです。そうしたいと「福島原発事故」と同じ規模の事故でも多くの原発で被害が１０倍程度になることが露見してしまうからです。

　新しい「放射線副読本」のデタラメぶりは本稿だけではありません。これまでの記事と今後の予定を示します。

１．これまでの記事
①めげ猫「タマ」の日記 デタラメ、新しい放射線副読本その１―野菜・果物は基準超えなし―
②めげ猫「タマ」の日記 デタラメ、新しい放射線副読本その2―いじめが起こった―
③めげ猫「タマ」の日記 デタラメ、新しい放射線副読本その3―原発を止めて電力制限―
⑤めげ猫「タマ」の日記 デタラメ、新しい放射線副読本その５―放射線はいろいろ使われている―
⑥めげ猫「タマ」の日記 デタラメ、新しい放射線副読本その6―放射性物質拡散は水素爆発で起こった―　
⑦デタラメ、新しい放射線副読本その7―放射性物質は西側に広がった―本稿―


２．今後の予定（暇な時に記事にします）
①「暫定規制値を超える食品が市場に流通しないよう出荷制限などの措そ置をとってきました。」（食品安全に関する基準―２ページ）―セシウム汚染牛肉やセシウム汚染乾し椎茸など、多くの暫定基準値を超えた食品が市場から見つかり（１１）（１２）、一部は食されている。
②「福島県では「ふくしまっ子体験活動応援事業」により、子供たちが心身ともにリラックスした環境の中で、自然・環境、生活・歴史文化、スポーツなどの体験活動
や移動教室に参加しています。」（福島県の未来を担う子供の育成に向けた取組－８ページ）―、「ふくしまっ子体験活動応援事業」は宿泊費と活動費・交通費を補助する事業である（１３）。
③「◆波のように伝わる放射線」（原子から出る放射線－９ページ）―光をエネルギーの塊（粒子）する概念「光量子」の概念（１４）を無視している。
④「放射性物質が放射線を出す能力（放射能の強さ）を表すには「ベクレル（Bq）」（放射線・放射能の単位ー１０ページ）―ベクレルは１秒間にでてくる放射線の総数を示す単位（１５）であり「強さより」は「量」である。
⑤「放射性物質から離れれば放射線量も減ります。例えば、距離が 2 倍になれば受ける放射線量は、4 分の 1 になります。」（放射線から身を守るには―１１ページ）―
点ならば正しいが福島のように面的に汚染された場所では適応できない。
⑥「ICRP では、100mSv を受けたとすると、がんで亡くなる可能性がおよそ 0.5 %増加する」（放射線量と健康との関係―１１ページ）―ＩＣＲＰ勧告は０．５％でなく０，５５％である（１６）。

―参考にさせていただいたサイト様および引用した過去の記事―
(１)新しい放射線副読本について：文部科学省
(２)めげ猫「タマ」の日記 デタラメ、新しい放射線副読本その１―野菜・果物は基準超えなし―
(３)めげ猫「タマ」の日記 デタラメ、新しい放射線副読本その2―いじめが起こった―
(４)めげ猫「タマ」の日記 デタラメ、新しい放射線副読本その3―原発を止めて電力制限―
(５)めげ猫「タマ」の日記 デタラメ、新しい放射線副読本その4―放射線量が高いから避難―
(６)めげ猫「タマ」の日記 デタラメ、新しい放射線副読本その５―放射線はいろいろ使われている―
(７)めげ猫「タマ」の日記 デタラメ、新しい放射線副読本その6―放射性物質拡散は水素爆発で起こった―　
(８)【120524】東北地方太平洋沖地震の影響による福島第一原子力発電所の事故に伴う大気および海洋への放射性物質の放出量の推定について｜TEPCOニュース｜東京電力
(９)めげ猫「タマ」の日記 福島を襲った放射線セシウムは広島原爆１０個分！でも全体の１２分の１
(１０)新規制基準適合性に係る審査（原子力発電所）｜政策課題｜原子力規制委員会
(１１)めげ猫「タマ」の日記 セシウム汚染牛肉の出荷が始まる。
(１２)めげ猫「タマ」の日記 幼稚園の給食に1,400ベクレルの乾しシイタケ！－これは犯罪だ-（茨城県産）
(１３)ふくしまっ子体験活動応援事業
(１４)光子 - Wikipedia
(１５)ベクレル - Wikipedia
(１６)（ICRP）2007年勧告（Pub.103） - 原子力規制委員会