福島第一原発の4月2週(4日17日から4月23日)の状況をまとめてみました。先週に続き高濃度の汚染水が見つかっています(1)。
①外洋からストロンチウム90由来(2)の全ベータ
②海岸近くの井戸から1リットル当たり55ベクレルのセシウムと1リットル当たり13ベクレルとアンチモン125(新記録)
③地下水バイパスの上流では、地下水の濃度が上昇中
④雨が降ると上昇する排水路の放射性物質濃度
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※1 東京電力の発表(3)(4)を元に作成
※2 値は1リットル当たりのベクレル数
図―1 4月4週発表分の最高値
1.外洋から放射性物質
東京電力の発表によると、港湾外側の2カ所の海水から、ストロンチウム90に由来する全ベータなどの放射性物質が見つかりました。海水1リットル当たりで
北側の5、6号機放水口北側
全ベータ 14ベクレル(4月21日採取)
南側の南放水口付近
全ベータ 15べクレル(4月21日)採取
です(4)(5)。以下に北側の5、6号機放水口北側の海水の放射性物質濃度の推移を示します。

※1(4)(5)より作成
※2 NDは検査出限界未満を示す。
図―2 南側取水口付近の海水の放射性物質濃度推移
2.海岸の井戸から13ベクレルのアンチモン125(新記録)
アンチモンは「ヴァレンティヌス文書」などを始め古典的著作には毒性が認められてきた元素です。その一つにアンチモン125がありますが(6)、半減期約3年の放射性物質です。そのアンチモン125が福島第一原発の海岸近くに掘られたNo1-16井戸から、1リットル当たり12ベクレル見つかりました(7)(8)。新記録です。以下にNo1-16井戸のアンチモン125の濃度の推移を示します。

※(7)(8)より作成
図―3 No1-16井戸のアンチモン125の推移
またNo1-17井戸や2-8井戸の全ベータを上昇しています。

(a)No1-17井戸 (b)No2-8井戸
※(7)(8)より作成
図―4 上昇する海岸井戸のトリチウム濃度
一番心配なのがNo2-7井戸の全ベータ濃度が上がっていることです。

(a)No2-7 (b)No2-7
※(7)(8)より作成
図―5 No2-6、7井戸の全ベータ濃度推移
福島第一原発では汚染水が海に流れ出さないように、海岸に「遮水壁」をつっています(9)。

※(9)の図を加筆
図ー6 福島第一原発の汚染水漏えい対策
図ー1(b)に示すように「遮水壁」を挟んでNo2-6,No-7の井戸があります。No2-7井戸の濃度が上昇するには汚染水が「遮水壁」を乗り越えることが必要です。せっかく作った遮水壁ですが効果はないような気がします。反対側のNo2-6井戸の全ベータ濃度も上がっています。今も汚染水の海への垂れ流しが続いているような・・
3.地下水バイパス汲み上げ開始!上流では放射性物質濃度が上昇中
地下水バイパスは、福島第一原発の汚染水対策として原子炉建屋に侵入する前の地下水を事前に汲み上げ汚染水の発生を抑えようとするものです(9)。
地下水バイパスより山側(西側)には汚染水を入れたタンクがあります(10)(11)
福島第一原発では去年(2013年)8月に汚染水タンクから約300トンの汚染水漏れが発覚しました。そこで、汚水漏れを起こしたタンクの傍に井戸を掘って地下水の放射性物質濃度を監視しています(12)(13)。以下にその中の観測点E-1井戸およびE-3井戸のトリチウム濃度の推移示します。

(a)E-1井戸 (b)E-3井戸
※(12)を集計
図ー7 E-1、E-3井戸のトリチウム濃度濃度推移
そして地下水バイパスの井戸の一つででトリチウム濃度が基準超えを起こしました。

※(14)を集計
図ー8 地下水バイパス用井戸No12のトリチウム濃度推移
トリチウムは放射性水素で実態としては放射性の「水」として存在します。これについて東京電力は1リットル当たり6万ベクレルまで問題ないとしています。一方、トリチウムは放射性セシウムやストロンチウム90と異なり、DNAに取り込まれる危険があり、シーベルトで測った同じ被ばく線量でも影響が大きいとの意見もあります(15)(16)(17)。
最新(2014年4月23日時点)では基準よりほんの少しだけ小さくなっていますが、トレンドして上昇しています。上流(山側)に井戸も上昇しています。そのうちまた、基準超えを起こしそうな気がします。
この件について4月23日の会見で東京電力は、他の井戸と混ぜて(薄めて)基準値以下で、海に流すといっていました(18)。
4.雨が降ると、放射性物質濃度が上がる排水路の汚染水
4月21日に1.5mmの雨が降りました(19)。福島第一原発では大雨が降りました。そしたら排水路の汚染水から全ベータが見つかりだしました。

※(19)(20)
図―9 福島第一原発の排水路の放射性物質濃度と降水量
福島第一原発の当たりは冬は雨がすくなく、夏や秋に雨が多くなっています。これから雨は増えます。大丈夫ですかね?

※(19)を引用
図ー10 福島原発近くのアメダス観測点・浪江の月平均降水量
<余談>
基準を超えた地下水バイパスの井戸を他の井戸の水で薄めて流すみたいです。これっていいんですかね?東京電力は地下水バイパスの水について以前は「汚染前の水」と言っていますしたが、最近は「自然由来の水です。」と表現しています(21)。タービン建屋に溜まっている汚染水も地下水が建屋に侵入して汚染された「自然由来の水」です(9)。そのうち、タービン建屋の汚染水も「自然由来の水」として海に流したりして・・・。
NHKは地下水バイパスで汲み上げる地下水を「汚染されていない地下水」と4月20日の19時からの番組で放送していました。トリチウムが1リットルあたり1、600ベクレルも出て、どこが汚染されていない地下水なんですかね?そのうち、タービン建屋から汲み上げた水を「汚染が取り除かれた地下水」と放送しそうです。
―参考にさせていただいたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発汚染水(4月3週)―アンチモン125が12ベクレル-(2)
めげ猫「タマ」の日記 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(3)
報道配布資料|東京電力(4)
福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果(4)(4)の「1.海水(港湾外近傍)」の4月23日付発表(4月23日に閲覧)
(5)
2014年3月14日タービン建屋東側における地下水および海水中の放射性物質濃度の状況等について(PDF 1.15MB) (6)
アンチモン - Wikipedia(7)(3)の「3.地下水(1~4号機護岸)」の4月23日付発表(4月23日に閲覧)
(8)(4)の「福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果」
(9)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発で実施されている汚染水流出防止対策(10)
第3回特定原子力施設監視・評価検討会汚染水対策検討ワーキンググループ|会議|中の「資料1H4タンクエリアにおける漏えいについて」
(11)
2014年2月20日福島第一原子力発電所H6エリアタンク上部天板部のフランジ部からの水の漏えいについて(再訂正版)(PDF 807KB)(12)(3)中の「福島第一原子力発電所構内H4エリアのタンクにおける水漏れに関するサンプリング結果(H4エリア周辺)」
(13)(3)中の「福島第一原子力発電所構内H6エリアのタンクにおける水漏れに関するサンプリング結果(H6エリア周辺)(PDF 37.9KB)」
(14)(3)中の「福島第一原子力発電所構内H4エリアのタンクにおける水漏れに関するサンプリング結果(揚水井) 」
(15)
めげ猫「タマ」の日記 トリチウムは放射性水素(16)
めげ猫「タマ」の日記 女の子が多い福井県おおい町の子供達(17)
めげ猫「タマ」の日記 トリチウムの放出量が多いほど男の子が少なくなる福井県(18)
【4月23日】東京電力 記者会見 - 2014/04/23 17:30開始 - ニコニコ生放送(19)
気象庁|過去の気象データ検索(20)(3)中の「福島第一原子力発電所構内H4エリアのタンクにおける水漏れに関するサンプリング結果(南放水口・排水路)」
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- 2014/04/23(水) 20:40:06|
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