東京電力福島原発はトラブルが多く、トラブル毎に記事にするは面倒なので、まとめて記事にしています。先週につづき(1)、今週(4月28日から5月3日)もしっかりトラブルが起こっています。

図―1 福島第一原発トラブルマップ5月1週
1.増え続ける福島第一原発・焼却建屋の水位
4月14日、福島第一原発の汚染水処理で、使う予定のない仮設ポンプ4台が動き、本来移送されるはずのない建屋に汚染水を送っいたことが発覚しました(9)。ポンプを止めて汚染水の誤移送は止まったはずですが、誤って汚染水を送った建屋の一つの「焼却建屋」の水位(水の深さ)が少しづつ上がっています。

※(1)に(2)~(7)のデータを追加
図―2 焼却建屋の水位
でも上がっているのは、水位だけではありません。5月に入ってから「焼却建屋」東側の「水」の全ベータ濃度が急上昇しました。

(a)全ベータ濃度推移 (b)サンプリング箇所
※1(a)図は(8)にて作成、(b)図は(8)(9)とGoogle Mapで作成
※2 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(10)
図―3 「焼却建屋」東側の「水」の全ベータ濃度の推移とサンプリング箇所
2.誤配線で福島第一原発・共用プールの放射線量が測れなくなっていた。
福島第一原発4号機では、核燃料プールから使用済等の核燃料の取り出しをしています(11)。取り出した核燃料は「共用プール」に保管しています。高い放射性物質を含んでいるので、異常がないか監視が必要です。ところが、4月22日に放射線量をモニタするエリアモニタ3台の全てが放射縁量を測れなくなるトラブルが起きました。原因は誤配線でした。共用プールの放射線量測定器(エリアモニタ)には、A系、B系の2つの電源があります、ところが2013年6月にエリアモニタB系の工事をした際に、誤ってA系の電源を接続していました。そして4月18日午前9時30分頃、制御盤改造工事のために当該エリアモニタのA系の電源を停止したら当たり前ですが全部止まりました。止めた人はB系に繋がっていたと思ってたのに!
3.核燃料棒変形
昨年(2013年)12月にも福島第一原発4号機の核燃料棒に「変形」が見つかりましたが(12)、取り出した核燃料棒を抜き取りで調べたら、別の変形が見つかりました。核燃料棒の上端にある「固定ワッシャ(まわり止め)」に変形が見られたそうです(13)。
□拡大⇒

※(14)より引用
図―4 変形した核燃料棒の「固定ワッシャ」
東電は問題ないとしていますが、福島原発事故で変形したならこれからどのようなものがでて来るか(=^・^=)には分かりません。以下に上面図を示します。

※(13)を引用・加筆
図―5 核燃料棒の上面と変形したワッシャ位置
4.雨漏り
4月30日から5月1日かけて福島第一原発付近で雨が降りました。特に5月1日は酷かったようです。

(a)降水量 (b)アメダス観測点
※(a)図は(15)より作成、(b)図は(16)を転載
図―6 福島第一原発付近の降水量とアメダス観測点
雨漏りが2件起きました。
①5月1日午前11時7分頃、福島第一原発3号機タービン建屋1階西側廊下エリアで雨漏りが起こりに設置した建屋内漏えい検出器が警報を出しました。
②5月1日午前11時22分頃、福島第一原発5号機タービン建屋地下1階南西側の立溝ピット内で雨漏りが起こり、漏えい警報が発生しました(5)。
雨漏りの水は周りの放射性物質で汚染され立派な汚染水になったと思いますが、東電の発表(5)には「回収」との記述はありません。何処へいったんですかね?
5.油漏れ2件
①5月1日午後0時36分頃、2号機タービン建屋東側道路において、油漏れ跡を作業員が見つけました。油漏れは、約6m×約6mに広がっており、消防署に通報したそうです(5)。
②5月3日午前8時15分頃、福島第一発電所構内の給油所でタンクローリーの付属ホースの根元が破れ軽油が漏れているのを下請けさんが見つけました。漏れた油は発見時点でで直径約60cmに広がっていました。ホースの破れた箇所をテープで応急修理を試みたのですが、油漏れは止まりませんでした。このタンクローリーが前に止まっていた駐車場でも地面に直径約20cmと直径約10cmの油が染み込んだ跡が見つかりました。消防署に連絡したら
・当該タンクローリー内に残っている軽油をドラム缶へ移送すること。
・ドラム缶への移送が完了し、当該タンクローリーを別の場所に移動するまで、福島第一原発内の給油所で給油はしないこと(6)。
先週も油漏れが2件起きています。どれも火災にならなくてよかったと思います。でも異常な頻度です(1)。毎週2件のペースで油漏れを起こす福島第一原発ってどのような所?
6.犯人でっち上げ?
4月14日、福島第一原発の汚染水処理で、使う予定のない仮設ポンプ4台が動き、本来移送されるはずのない建屋に汚染水を送っいたことが発覚しました。原因について東京電力は、5月2日に
①東電社員様が空調設備を動かそうとした際、誤ってポンプのスイッチを入れた可能性が高い
②空調設備とポンプのスイッチは同じ電源盤にあるが、それぞれの機器を識別できる表示はなかった。
と発表しました。これを受けて福島県のマスコミ各社は原因を「人為的ミス」と報じています(17)(18)。

※(18)をキャプチャー
図―7 汚染水誤移送を「作業ミス」と報じる福島県のローカル局(FCT)
従前には「故意」との報道も出ていたので(19)、福島県の方は安心されたと思います。

※(19)を転載
図―8 「故意」に稼働させた可能性が高いと報道する福島のローカルTV(FTV)
東電の報告書を見たかぎり、理解できない点が3点ありました。
①報告書では「社員」と犯人は一人のようなことを書いていますが、危険が一杯の福島第一原発内で一人作業はあり得ないと思います。万が一にも事故が起こり救援が遅れたら「死」に至ります。それでなくても大量の被爆は避けられません。
②報告書では、誤って電源盤のスイッチを入れたと記載していますが、電源盤は2カ所です。二カ所も同時に誤るでしょうか。
③スイッチを切った話がありません。入れたスイッチは切ります。通常は入れた人だと思います。空調を止めると思います。誤っていれも、直ぐに切るのでOFFになると思います。切り忘れたら全部ONです。でも東電の発表を見ると1部のスイッチはOFFになっています。

※(11)に加筆
図―9 一部がOFFになっている分電盤のスイッチ
これにつて、原子力規制委は第21回特定原子力施設監視・評価検討会中の「資料2」(20)で
「ポンプの起動操作がなぜ行われたのかの原因は確定できなかったものの、
故意又はヒューマンエラーによる計画外のポンプの起動操作を防止するために必要な管理及び監視の強化が行われる」
と記載し東電の報告書の事実認定を認めていないし、「故意」の可能性を否定していません。(=^・^=)は東電が犯人をでっち上げた気がしてなりません。そこまで追い詰めらいそうながします。
7.凍土壁に暗雲
経済産業省資源エネルギー庁は、福島第一原発の汚染水対策を高々と歌い上げています(21)。その柱の一つが凍土壁です。凍土壁は福島第一原発の原子炉やタービン建屋を氷の壁で取り囲み外から汚染水の元となる地下水が流れ込まないようにするものです(1)。先週に続き、今週も凍土壁について暗雲が広がっています。

※(22)を引用
図ー10 凍土壁の「結論持ち越し」を1面で報じる5月3日の福島県地元紙「福島民報」
①東電の助言機関すら効果に疑問
東京電力は「原子力改革監視委員会」とゆう原子力事業に対する助言機関を設けています(23)。その「原子力改革監視委員会」が5月1日に会見をしました。「原子力改革監視委員会」委員長で元米原子力規制委員会(NRC)委員長のデール・クライン氏は一日、都内で共同通信と会見し、福島第一原発の汚染水問題の切り札と期待される凍土遮水壁について
「施工する前に十分な調査必要」「意図しない影響の有無を調べる必要がある」「(安倍出戻り内閣の)政策より、科学が優位に立つことを願う」
と発言していました(24)。身内からこんな発言がでては(=^・^=)は大変だなと思うのですが・・
②原子力規制委からクレーム
凍土壁の安全審査は5月2日に原子力規制委の21回特定原子力施設監視・評価検討会でおこな行われました(25)。録画がアップされていた(25)ので、(=^・^=)なりに聞いていたのですが、東電や経産省は原子力規制の疑問に答えられない気がしました。議論を聞いている限りでは、凍土壁よりも地下水を汲みあがて海に流し、原子炉建屋に入らないようにすればリスクは大きく抑えられほぼ同等の効果がえらる気がしてきました。そう簡単には安全審査に合格しないと思います。ひょっとすると「不許可」もあるかも知れません。
<余談>
今週も長くなってすいません(__)。それだけトラブルが多いんです。いつか大事故にならないといいんですか・・・。
―参考にさせていただいたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい!福島原発(4月4週)―汚染水対策の未来は暗い―(2)
2014年4月28日福島第一原子力発電所の状況について(日報) 【午後3時現在】 (3)
2014年4月29日福島第一原子力発電所の状況について(日報) 【午後4時現在】 (4)
2014年4月30日福島第一原子力発電所の状況について(日報) 【午後3時現在】 (5)
2014年5月1日福島第一原子力発電所の状況について(日報) 【午後3時現在】 (6)
2014年5月2日福島第一原子力発電所の状況について(日報) 【午後3時現在】 (7)
2014年5月3日福島第一原子力発電所の状況について(日報) 【午後3時現在】 (8)
報道配布資料|東京電力中の「焼却工作建屋東側サブドレン水の追加サンプリング結果 」
(9)
2014年5月2日福島第一原子力発電所 集中廃棄物処理施設焼却・工作建屋等への滞留水の誤った移送について(10)
めげ猫「タマ」の日記 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(11)
福島第一原子力発電所4号機からの燃料取り出しの進捗状況|東京電力(12)
福島第一原子力発電所4号機使用済燃料プール内の変形がある燃料集合体の調査におけるひびの確認について(平成25年12月27日掲載)(PDF 41.0KB)(13)
福島第一原子力発電所4号機使用済燃料プールから取り出した燃料の外観点検結果について(訂正版)(PDF 359KB) (14)
東京電力 写真・動画集| 福島第一原子力発電所4号機使用済燃料プールから取り出した燃料の外観点検結果について(15)
気象庁|過去の気象データ検索(16)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい!福島原発(4月2週)―地下水バイパスの「水」は基準を超えて汲み上げます-(17)
スイッチ間違え原因か 第1原発・汚染水誤移送(福島民友ニュース)(18)
福島中央テレビ [FCTニュース](19)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい!福島原発(4月3週)―みんな頑張っている、でもトラブル続発-(20)
第21回特定原子力施設監視・評価検討会|会議|特定原子力施設監視・評価検討会中の「資料2」
(21)
福島第一原子力発電所における汚染水対策(METI/経済産業省)(22)
福島民報(23)
原子力改革監視委員会(24)
映像|写真・映像ライブラリー|東京電力中の「2014/5/1 「原子力改革監視委員会」記者会見」の終わりの方
(25)
特定原子力施設監視・評価検討会|会議|原子力規制委員会
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- 2014/05/03(土) 19:58:48|
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