高速増殖炉「もんじゅ」は今から13年前の1991年5月18日に試運転を開始しました。そこで、(=^・^=)なりに「もんじゅ」について調べてみました。この項は長くなるので2回に分けたいと思います。「もんじゅ」は高速増殖炉ですが、高速増殖炉てどんな原子炉にかにつて(=^・^=)なりに調べてみました。
1.高速増殖炉とは
高速増殖炉(こうそくぞうしょくろ、Fast Breeder Reactor、FBR)とは、高速中性子による核分裂連鎖反応を用いた増殖炉のことをいうそうです(2)。最初に名前について調べてみました。
①何が高速?
高速増殖炉はなにが高速と言えば、中性子が高速です。これを「高速中性子」と呼びます。高速中性子とは中性子です。概ね0.1MeVから1.0MeVのエネルーギーをもつ中性子です(3)。1eVの中性子は秒速1.4mなので(3)、(=^・^=)なり高速中性子のスピードを計算すると毎秒4400kmから14,000kmになります。一方、普通(ウラン235を使う)原子炉の中性子は熱中性子とよばれ、秒速2.2kmほどだそうです。
注記1 MeVは放射線1個のエネルギーを示す単位で、1兆MeVは0.1602J(ジュール)。
以下に中性子のエネルギーによる核分裂の起こしやすさを示します。

※1(4)を引用
※2
239Puはプルトニウム239を示す。
※3
241Puはプルトニウム241を示す。
※4
235Uはウラン235を示す。
※5 バーンは反応の起こしやすさを示す単位(5)。
図―1 中性子のエネルギーによる核分裂の起こしやすさ
高速中性子の領域の0.1MeVから1MeVの間に、核分裂をしやすいピークがあります。プルトニュームだけに選択的に核分裂を引き起こすには高速中性子が適しています。
②増殖とはなんでしょうか?
高速増殖炉の「増殖」って?高速増殖炉にしろ、普通の原子炉も「核分裂」反応を起こしたエネルギーを取り出し電気に変える装置です(6)。核分裂反応は、ウラン235やプルトニウム239等の物質が中性子を吸収すると、不安になり二つの原子核に分かれ、いくつか(概ね2から3個)の中性子を出す現象です(7)。

※1(7)を引用
※2
235Uはウラン235を示す。
※3
236Uはウラン236を示す(不安定で直ぐ分裂)。
※4
141Baはバリウム141を示す。
※5
92Krはクリプトン92を示す。
図―2 核分裂の模式図
出た中性子の1個は次の核分裂に使いますが、残りはどこかに吸収されます。原子力発電の燃料はウランとプルトニウムですが、ウランには中性子を吸収すると核分裂を起こすウラン235と、プルトニウム239に変化するウラン238があります。プルトニウム239を主な燃料に使った原子力発電所を運転すると、原子力発電の燃料となる「プルトニウム239」が生まれます(8)。

※(9)を引用・加筆
図―3 原子力発電でプルトニウム239ができる原理
上の図では、1回の核分裂で2個のプルトニウム239が生まれていますが、これはPR用の図でもんじゅなどでは1回の核分裂で生まれるプルトニウムの数は1.2個です。
以下にプルトニウム239が核分裂で出す「中性子」の数を示します。

上の図では、1回の核分裂で2個のプルトニウム239が生まれていますが、これはPR用の図でもんじゅなどでは1回の核分裂で生まれるプルトニウムの数は1.2個です。エネルギーが高い程、多くの中性子が生まれます。高速増殖炉は高いエネルギーを中性子を使い、プルトニウム239ができやすくした原子炉です。
2.高速増殖炉の構造
以下に高速増殖炉の構造図を示します。

以下に高速増殖炉の構造図を示します。
※(11)に加筆
図―6 高速増殖炉「もんじゅ」の構造
ぱっと見た目には、普通の原子力発電所と変わりません。でも大きく違うところがあります。原子炉から熱を取り出すのに水でなく「ナトリウム」を使っています。これは「水」が使えないなからです。運動量保存則(11)とエネルギー保存則(12)から(=^・^=)なりに計算してみると
中性子が水素原子と正面衝突した場合⇒速度は「0」
中性子がナトリウム原子と消滅した場合⇒速度は衝突前の90%以上
になりました。水は酸素と水素からなりますが(13)、中性子と水素が衝突すうと最悪の場合は中性子の速度が「0」になってしまいます。すでに記載した通り、高速増殖炉には速度の速い中性子が必要ですので、速度「0」になるようなものは困ります。一方、ナトリウムにぶつかっても最悪の場合でも速度の減少は10%以下ですので、それ程には「減速」を心配することはありません。この事について、日本原子力研究開発機構は
「高速中性子とプルトニウムの組み合せでは、およそ3個の中性子が発生するので増殖が可能となります。つまり、高速増殖炉には核分裂の際に飛び出してくる高速の中性子のスピードを減速させない冷却材が必要となります。ナトリウムは中性子に比べて約23倍重い元素なので、中性子のスピードを余り減速させません。」
と説明しています(14)。
3.ナトリウムについて
ナトリウム化合物は私たちの身近に一杯あります。塩なんかもっとも身近なナトリウム化合物だと思います。でも単体のナトリウムはとっても危険です。水に触れただけで、発火し火事になります。

※(15)をキャプチャー
図―7 水に触れて発火する「ナトリウム」
日本原子力研究開発機構は「ナトリウム」が色々と使われていると紹介していす(16)、概ねナトリウム化合物でナトリウム単体ではありません。これは水素ガスは爆発するので大変危険ですが、化合物の「水」は私たちの生活に欠くことができないものです。

※(17)をキャプチャー
図―8 水素爆発の例(福島第一原発)
ナトリウムも同じで、ナトリウム単体は大変に危険ですが、塩などの化合物は私たちの生活とゆうよりは生きる為に必要です。原子力ムラの住人は名前が似ているだけで、まったく性質が違うものを同じ様に説明するのは「事実」です。
4.ECCS(非常用炉心冷却装置)がない。
高速増殖炉には一般の原子炉に取り付けられいる非常用炉心冷却装置(ひじょうようろしんれいきゃくそうち、ECCS、Emergency Core Cooling System、緊急炉心冷却装置:以下ECCSと略す)がありません(17)。原子炉の冷却材に水を使う動力炉では、炉心の熱密度が高いため、スクラムと呼ばれる制御棒の一斉挿入による原子炉の緊急停止を行なっても、運転状態直後の核燃料の持つ高いレベルの余熱量に加えて、それに加算的に追加される崩壊熱によって原子炉圧力が上昇し、そのもたらす結果として炉心が破損・溶解する危険性があります。そこでECCSを取り付け炉心に繋がる配管系(原子炉系配管)の破断により低下した水位の回復をも含めて、予期せぬ原子炉緊急停止時に原子炉圧力容器への水の循環を利用して、炉心から外部へ熱を移動して炉心を冷却し破損を防止しています(18)。福島第一原発事故では2号機のECCSは事故後3日間、3号機では2日間は稼働しまいした(19)。結局は放射性物質漏れを起こしましたが、時間稼ぎをすることによって避難の時間はある程度は確保できたし、半減期の短い放射性物質は相当に減ってから放出となりその後の被害を防ぐのに貢献したと思います。本旨は外れますが、福島原発事故で初期対応にあたった下請けさんはそれなりに報いをうけてもいいと思います。
ECCSないのは不要だからと主張があります。ナトリウムは沸点が高いので圧力を加える必要がなく、急な減圧が起こらないので蒸発して無くなることはないとの意見です(17)(2)。一方では、水とナトリウムは反応性が高いので原理的にECCSが取り付けられないとの意見もあります(2)。
5.高速増殖炉の世界の状況
現在、アメリカおよびヨーロッパ各国はかつて実施していた高速増殖炉の開発を中止しています(2)。開発を継続ないし計画している国は日本、ロシア、インド、中国、韓国みたいです。G-8に該当する国では日本とロシアだけが高速増殖炉の計画を進めています。
<余談>
高速増殖炉の「もんじゅ」は今も毎年200億円程度の税金が投入されています(19)。高速増殖炉の再開を目指し研究開発を続けるには、しばらくの間はこのお金が必要です。もんじゅにその価値があるか次回に検討したいと思います。暇な時に記事を書きます。
―参考にさせていただいたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
もんじゅ - Wikipedia(2)
高速増殖炉 - Wikipedia(3)
高速中性子 - Wikipedia(4)
プルサーマルの必要性と安全性 • 核分裂と連鎖反応 ... - 九(5)
バーン (単位) - Wikipedia(6)
原子力発電 - Wikipedia(7)
核分裂反応 - Wikipedia(8)
エネルギー研究開発拠点化への文部科学省の取り組み(9)
高速増殖炉とはー2(10)
高速増殖炉の制御特性 (03-01-03-02) - ATOMICA -(11)
運動量保存の法則 - Wikipedia(12)
エネルギー保存の法則 - Wikipedia(13)
水 - Wikipedia(14)
もんじゅでナトリウムを使う大きな理由(15)
金属ナトリウムと水の反応 (16)
身近に使われているナトリウム(17)
福島第一原発1号機,水素爆発!2011年 3月12日 午後(18)
もんじゅ - 日本原子力研究開発機構(19)
もんじゅについてお答えします。
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- 2014/05/18(日) 19:30:53|
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