福島第一原発の8月4週(8月18日から8月23日)の状況を纏めてました。先週に続き高濃度の汚染水が見つかっています(1)。
①外洋からは相変わらずセシウム等の放射性物質が見つかる
②地下水バイパスのNo5、No11のトリチウム濃度は上昇中
③止まらない海岸付近の井戸水の放射性物質濃度上昇
1.今週も外洋からセシウムなどの放射性物質
今週も外洋からセシウムなどの放射性物質が見つかっています。以下に1リットル当たりの値を示します。
①5,6号機放水口北側(4)(5)
全ベータ 13ベクレル(8月18日採取)
②南放水口(4)(5)
セシウム137 0.83ベクレル(8月18日採取)
全ベータ 9.9ベクレル
③排水路出口(T-2)(6)
全ベータ 9.7ベクレル(8月18日採取)
以下に外洋の観測点位置と放射性物質濃度を示します。

※(4)(5)(6)にて作成
図ー1 福島第一原発近傍の外洋での放射性物質濃度
また南放水口付近の放射性物質濃度推移を示します。

※1(4)(5)を集計
※2 NDは検出限界未満(放射性物質が見つからない事)を示す。
図―2 南放水口付近の放射性物質濃度の推移
低下している様子がありません。
2.地下水バイパスは汲み上げ停止、隣の井戸が上昇します
地下水バイパスは、福島第一原発の汚染水対策として原子炉建屋に侵入する前の地下水を事前に汲み上げ汚染水の発生を抑えようとするものです(7)。地下水バイパスからくみ上げた汚染水にはそれなりのトリチウムが含まれており、いまも福島の海に流されています。地下水バイパスから放流されたトリチウムの総量を濃度×排出量の合計で計算したら1400億ベクレルを超えました。

※(8)を集計
図―3 地下水バイパスの累積のトリチウム放出量
トリチウムどの程度まで安全か危険かよくわかっていないと(=^・^=)は思います(9)。(=^・^=)は不安です。そしてもっと不安なことがあります。東京電力によるともっともトリチウム濃度の高いNo12井戸の汲み上げを一時停止したそうです(10)。その成果でしょうか。地下水バイパス放流水のトリチウム濃度は一時は低下しました。

※(8)を集計
図―4 地下水バイパス排水のトリチウム濃度推移
でも汲み上げを再開するそうです(11)。再びの再上昇は避けらません。
地下水バイパス用の井戸の山側(西側)では汚染水漏れをここしたタンクがあり、タンクと地下水バイパス用井戸の間に東京電力は井戸を掘り地下水の放射性物質濃度を観測しています。

※(12)(13)より作成
図―5 地下水バイパス山側の井戸の放射性物質濃度
高い濃度の放射性物質がみつかています。以下にE-10井戸のトリチウム濃度推移を示します。

※(12)を集計
図―6 E-10井戸のトリチウム濃度推移
乱高下し時としてきわめて高い濃度を示します。上がるとは高濃度のトリチウムが流れ込んでいることを示し、下がるとは高濃度のトリチウムが海側(地下水バイパス井戸側)に流れて行くことをしめしているはずです。地下水バイパス井戸に向かって高濃度のトリチウムが流れています。そのうち地下水バイパス井戸に到達し濃度を上げそうです。
以下に地下水バイパス井戸No11の放射性物質濃度の推移を示します。

※(13)を集計
図―7 地下水バイパス井戸No5のトリチウム濃度推移
どんどん上昇しています。No12の汲み上げを停止したら、隣のNo11井戸のトリチウム濃度が上がってしまいました。
3.止まらない海岸付近の井戸水の放射性物質濃度上昇
東京電力は福島第一原発の海岸付近にも井戸を掘り地下水の放射性物質濃度を調べています(5)。以下に示すように高濃度の汚染水が見つかっています。

※(5)を集計
図―8 海岸付近の井戸の放射性物質濃度
以下にNo3-4井戸のセシウム濃度の推移を示します。

※(5)を集計
図―9 No3-4井戸の放射性セシウム濃度推移
また濃度は低いのですが、どんどん上昇しています。この井戸は海岸近くにあるのでそのうち福島の海に流れ「汚染魚」の元になりそうです。
<余談>
地下水バイパスが4月9日に稼働を開始してから(14)、4ヶ月以上経ちました。(=^・^=)の知っている範囲では「上手くいいた」との発表はないようです。(=^・^=)なりに東電の発表を見る限りは、失敗したも同然だと思います(14)。そのためでしょうか、地下水バイパス井戸より地下水バイパス井戸より近い原子炉建屋に近いサブドレン井戸からも地下水を汲み上げて海に流す計画を進めています。東京電力は汚染水を汲み上げ浄化したあとの分析結果を発表しています(16)。ただし、項目は
セシウム134,137、セシウム以外のガンマ核種(たとえばコバルト60)、全ベータ(たとえばストロンチウム)およびトリチウムで(16)、アルファ線を出す放射性物質(たとえばプルトニウム(17))などは検査していません。装置の仕様を見る限り、セシウム、ストロンチウム、アンチモンしか取り除けず後は垂がし予定みたいです(18)。同じような装置の多核種除去設備(ALPS)では62種類の放射性物質を分析しています(19)。余に分析項目が少ない気がします。この結果について、福島の漁師さんは
「反対したって、どうにもなんねえ。」
とコメントしたそうです(20)。なんか完全にあきらめモード
―参考にさせていただいたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発汚染水(8月3週)―福島第一原発港湾内の汚染魚のセシウムは下がらず―(2)
報道配布資料|東京電力(3)
サンプリングによる監視|東京電力(4)(2)中の「福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果」
(5)(3)中の「1~4号機タービン建屋東側および港湾のモニタリング」
(6)(2)中の「福島第一原子力発電所 地下水バイパス排水に関するサンプリング結果(南放水口付)」
(7)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の地下水バイパスについて(8)
一時貯留タンクの運用状況|東京電力(9)
めげ猫「タマ」の日記 トリチウムは危険・安全?(10)
2014年8月21日地下水バイパス揚水井のくみ上げにおける一時貯留タンクに対する評価結果について(PDF 77.1KB)(11)
2014年8月22日福島第一原子力発電所の状況について(日報) 【午後3時現在】 (12)(3)中の「H4エリア周辺観測孔」
(13)(2)中の「揚水井の分析結果」
(14)
めげ猫「タマ」の日記 地下水バイパス3ヶ月、効果無し(15)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(8月3週)―凍結止水断念?―(16)
2014年8月22日福島第一原子力発電所 サブドレン他浄化装置 浄化性能確認試験結果(PDF 9.03KB) (17)
新潟県:どんな放射性物質(核種)があるの?(18)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(8月3週)―凍結止水断念?―(19)
福島第一原子力発電所 多核種除去設備(ALPS)B ... - 東京電力(20)
ニュース|福島中央テレビ
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- 2014/08/23(土) 19:33:31|
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何時も詳細記事掲載ご苦労様です。
糸井氏がめげ猫「タマ」さんのような福島を危険視している人達を批判しました。
福島の桃は農家の方々や福島県が安全性を確認して出荷しているのに、それを批判する人が居ると。
しかし今日のこの記事を読ませてもらって、何所が安全なのか皆目分かりません。
漁師さんが投げ出した福島の現状を、よく考えろと言いたいですよね。
特にめげ猫「タマ」さんが以前から指摘しているように、福島県は汚れていない所の物を検査し出荷している事を世間にもっと広めないといけないと思います。
- 2014/08/24(日) 05:09:57 |
- URL |
- hotaka43 #mWyI0ZzU
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めげ猫「タマ」さんは、淡々とデータを分析して、出典も明記して、「お買い物の参考になれば」と、ブログアップしてくださっています。
他の記事やコメントでも、「危険かどうか、判断の材料を提供したい」って書いてくれてます。
そういう姿勢で分析してくださっているのが、何よりも貴重です。
めげ猫「タマ」さんは 「行かない」「買わない」「食べない」の福島3原則を決めています。ってブログに書いているだけで、他人に強制もしていません。
ブログだから、個人の感想を書くのも自由です。
糸井氏の批判先は、ちょっとめげ猫「タマ」さんと違うところな様な気もしました。
でも、hotaka43様のご指摘の通り、私も「福島県の検査は、他場所の検査と整合性の上で疑問があり、サンプリングに公正でない所が見られる」点を、もっと糸井氏のような方にも伝えたいと思いました。
糸井氏は事務所の連絡先などを公開していらっしゃるから、そのうち時間があったらお手紙を書いてみようと思いました。
- 2014/08/24(日) 17:13:47 |
- URL |
- 身内に被爆者がいたもの #YOiJM49g
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