福島第一原発の9月3週(9月15日から9月21日)の状況を纏めてました。先週に続き高濃度の汚染水が見つかっています(1)。
①外洋からはストロンチウム90由来の全ベータ
②地下水バイパスのトリチウム累積排出量は2千億ベクレル
③止まらない海岸付近の井戸水の放射性物質濃度上昇
④第一原発港湾内のアイナメのセシウム濃度は下がらず
1.外洋から
今週もはストロンチウム90由来の全ベータ(2)が見つかっています。以下に1リットル当たりの値を示します。
①5,6号機放水口北側(4)(5)
全ベータ 11ベクレル(9月15日採取)
②南放水口(4)(5)
全ベータ 14ベクレル(9月15日採取)
以下に外洋の観測点位置と放射性物質濃度を示します。

※1(5)(6)にて作成
図ー1 福島第一原発近傍の外洋での放射性物質濃度
また南側放水口の放射性物質濃度推移を示します。

※1(5)(6)を集計
※2 NDは検出限界未満(放射性物質が見つからない事)を示す。
図―2 南側放水口の放射性物質濃度の推移
低下している様子がありません。もっと心配なことがあります。以下に過去一ヶ月の値を示します。

※1(5)(6)を集計
※2 NDは検出限界未満(放射性物質が見つからない事)を示す。
図―3 南側放水口の放射性物質濃度の推移(過去一ヶ月)
じわじわと上昇しています。
2.地下水バイパスからは2千億ベクレルのトリチウムが海へ
地下水バイパスは、福島第一原発の汚染水対策として原子炉建屋に侵入する前の地下水を事前に汲み上げ汚染水の発生を抑えようとするものです(7)。海に流す水からは「トリチウム」が見つかっているので、(=^・^=)は立派な汚染水だと思います。

※(8)を集計
図―4 地下水バイパスNo12井戸のトリチウム濃度推移
9月に入り、トリチウム濃度は下がっていますが、9月に入りNo12井戸からの汚染された地下水の汲み上げを停止しているので(9)下がったと思います。汲み上げを再開すればまた上がるとと思います。
以下に地下水バイパス用井戸とその山側(上流)にある観測用井戸の放射性物質濃度をしめします。

※1(8)(10)を集計
※2 この一週間の最高値
図―5 地下水バイパスと山側の放射性物質濃度
山側(上流)の井戸からは高濃度のトリチウムが見つかっています。いずれは流れて行き地下すバイパスの水に混入しそうな気がします。(=^・^=)が特にきになるのがE-10井戸のトリチウム濃度の推移です。

※(10)を集計
図ー6 E-10井戸のトリチウム濃度推移
激しく上下しています。トリチウム濃度が上がるとは、どこからか高濃度のトリチウムがやって来たことを示します。下がるとは高濃度のトリチウムが別の場所に流れて行くことです。何処かは分かりませんが、海側(下流)には地下水バイパスようの井戸があります。以下に地下水バイパスNo10井戸のトリチウム濃度の推移を示します。

※(8)を集計
図―7 地下水バイパスNo10井戸のトリチウム濃度推移
この井戸は汲み上げを続けています(9)。そしてじわじわとトリチウム濃度が上昇しています。
地下水バイパスから放流されたトリチウムの総量を濃度×排出量の合計で計算したら約2千億ベクレルに達していました。

※(11)を集計
図―8 地下水バイパスの累積のトリチウム放出量
トリチウムどの程度まで安全か危険かよくわかっていないと(=^・^=)は思います(12)。(=^・^=)は不安です。東電は地下水バイパスによって一日当たりおよそ50トンから80トンの汚染水の増加が抑えられたと主張していますが、(=^・^=)の見積もりでは数トン程度です(13)。
3.止まらない海岸付近の井戸水の放射性物質濃度上昇
東京電力は福島第一原発の海岸付近にも井戸を掘り地下水の放射性物質濃度を調べています(5)。以下に示すように高濃度の汚染水が見つかっています。以下にそのうち1,2号機タービン建屋間の井戸の汚染水濃度を示します。

※1 (5)で作成
※2 集計期間(9月15日から21日)発表分の最高値を記載
図-9 1,2号機タービン建屋間の海岸付近の井戸の放射性物質濃度
多くの井戸で100ベクレル程度の全ベータが見つかっています。水の摂取量を1日2リットル(14)、概ね成分はストロンチウム90とすると、ストロンチウム1ベクレルで0.028マイクロシーベルトです(15)ので4ヶ月(124日)生活すると
約7000ミリシーベルト(100万×2×0.028×124÷1000)
になります。7000から1万ミリシーベルトで100%の人が死ぬので(16)、この水で数か月生活すると「あの世行」です。こんなものが野ざらしで置かれているが福島の事実です。
もっと不安な事に、いまも上昇が止まっていません。

※ (5)を集計
図―10 No1-17井戸の全ベータ濃度の推移
4.アイナメのセシウム濃度は下がらず
東京電力は福島第一原発の汚染水対策に取り組んでいると主張しています(17)。汚染水対策の目的は、放射性物質の環境負荷を減らす事だと思います。環境負荷の一つに魚などの海洋生物の放射性物質汚染があります。東京電力の汚染水対策が有効であれば、汚染源に隣接していると思われる福島第一原発の港湾内のお魚に効果がまず現れるはずです。東京電力は9月18日に福島第一原発港湾内のお魚のセシウム濃度測定結果を発表しました(18)。アイナメからは1キログラム当たりで19,000ベクレルの放射性セシウムが見つかりました。以下に福島第一原発港湾内のアイナメの放射性セシウム濃度の推移を示します。

※(18)(19)を集計
図ー11 福島第一原発港湾内のアイナメの放射性セシウム濃度の推移
およそ下がっている様子はありません。1キログラム当たりで
2013年12月の平均 8300ベクレル(14200、5100および5500ベクレル)
2014年 8月の平均 1万ベクレル(1250および19000ベクレル)
です。
(=^・^=)は東京電力が手を抜いているとは思いませんが、汚染水対策の「効果」は出ていません。
<余談>
福島第一原発の海への汚染水の流れを止めるには、福島第一原発の汚れた地下水を汲み上げ海に流れないようにすればいいはずです。でもそれはできません。汲み上げた水はどこかに保管しなくてはなりません。それは不可能だと思います。保管スペースがありません。

※(20)を修正
図―12 敷地がいっぱいになってしまった福島第一原発
汲み上げたとしても「海」に流すしか手はないと思います。これについて、福島の漁師さんは
「きれいな水と言い張るのなら福島とは別の海に流せばいい」
と主張しているそうです(21)。

※(13)を転載
図―13 「安全なら関東、東京湾に捨てたらいい」と発言する福島の漁師さん
極めて正当な主張です。福島原発事故処理は福島県の問題でなく、日本の問題です。福島だけでなく、負担は日本全体で応分に負担すべきです。でも(=^・^=)の街の海に捨てるのは絶対に反対です。
―参考にさせていただいたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発汚染水(9月2週)―外洋から1.2ベクレルのストロンチウム90―(2)
めげ猫「タマ」の日記 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(3)
報道配布資料|東京電力(4)
サンプリングによる監視|東京電力(5)(3)中の「福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果」
(6)(4)中の「1~4号機タービン建屋東側および港湾のモニタリング」
(7)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の地下水バイパスについて(8)(3)中の「揚水井の分析結果」
(9)
2014年9月17日地下水バイパス揚水井のくみ上げにおける一時貯留タンクに対する評価結果について(PDF 76.1KB)(10)(4)中の「H4エリア周辺観測孔」
(11)
一時貯留タンクの運用状況|東京電力(12)
めげ猫「タマ」の日記 トリチウムは危険・安全?(13)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(9月3週)―弁が壊れていました―(14)
福島第一原子力発電所でのトリチウムについて 平成 ... - 東(15)
めげ猫「タマ」の日記 ベクレルとシーベルト(16)
旧組織からの情報-原子力安全・保安院 > 致死線量|原子力規制委員会(17)
汚染水対策|東京電力(18)
2014年9月18日魚介類の核種分析結果<福島第一原子力発電所港湾内>(PDF 86.6KB) (19)
福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果|アーカイブ|東京電力の各月のリンク先中の「魚介類の核種分析結果<福島第一原子力発電所港湾内>」
(20)
中長期ロードマップ|東京電力中の「中長期ロードマップの進捗状況⇒2014年8月28日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第9回事務局会議)⇒【資料2】中長期ロードマップ進捗状況(概要版)(7.58MB)」
(21)
相双の漁業者も反発 第一原発サブドレン水海洋放出 相馬で説明会 | 県内ニュース | 福島民報
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- 2014/09/21(日) 20:03:11|
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