東京電力は福島第一原発の汚染水対策の要の一つとして地下水バイパスを運用しています(1)。4月9日に運用を始めてから、6ヶ月が経過しましたがいまだ効果が見えません(2)。でも東電は地下水バイパス等の効果で、汚染水の増加量を1日当たり350トンに抑えられると会見では主張してます(3)。
福島第一原発の放射性物質汚染があまり進んでいない地下水が原子炉建屋に流入し、汚染の酷い水になる前に、山側で地下水を汲み上げ、その流れを変えて地下水位を下げることにより、原子炉建屋への流入量を減少させるのが「地下水バイパス」の取り組みです。

※(2)を転載
図―1 地下水バイパスの概要
地下水バイパスは、地下から地下水を汲み上げる12本の井戸、汲み上げた地下水を一時的に保管するタンク、井戸からタンクに送るため配管、タンクから海に捨てるための配管等からなります。また、山側(上流)には汚染水を保管するタンク群や汚染水漏れを起こしたタンクがあります。
12本の井戸は北から南に向かってNo1からNo12の番号が割り振られています。これをNo1~4をA系統、No5~10をB系統、No11,12をC系統の3つに分けています。

※(2)を転載
図―2 地下水バイパスの平面図
地下水バイパスは今年(2014年)4月9日より運用を開始しました(3)。地下水を汲み上げることにより、福島第一原発の原子炉・タービン建屋周りの水位が低下して汚染水の発生を抑制できると主張してます(5)。
東京電力は現在の地下水位観測孔の位置で、地下水バイパスの効果によって3m程度の水位低下が実現でき、地下水位が6m前後になると従前に主張していました(4)。

※1(5)を転載
※2 小名浜港を基準とした海抜(OP)で示す
図-3 地下水バイパス稼働後の水位予測

10月27日の「廃炉・汚染水対策現地調整会議」で水位の状態が発表されました(6)。
※1 (6)を集計
※2 観測井戸に位置は図―3に記載
※2 小名浜港を基準とした海抜(OP)で示す
図―4 地下水バイパスの水位
(=^・^=)には下がっているようには見えません。それでも東電は20cmは低下したので効果があったと主張しています。流速は落差の2分の1乗に比例するそうです(7)。地下水バイパス開始前に東電は汚染水は1日400トン増えていると主張しています。また、タービン建屋内の水位は概ね3mに維持されています。

※(9)を集計
図―5 福島第一原発タービン建屋の水位
図―4を見ると地下水バイパス開始前の水位は8から9mかと思うので、8.5メートルの水位で日量400トンの増加があるとします。すると地下水水位hと増加量は
①(h-3)の2分の1乗(√)に比例する
② h=8.5mで日量400トンになる
の関係が想定できます。以上の想定を元に、地下水位と汚染水の増加量の関係が見積もれます。以下に結果を示します。

※ (=^・^=)の計算
図―6 地下水位と汚染水増加量
20cm低下しても数トンの効果しかありません。およそ効果があったと言える数字ではないと(=^・^=)は思います。
東電は毎週水曜日に汚染水の量を発表しています(9)。これを元に汚染水の増加量の推移を示します。

※(9)を集計
図―7 福島第一原発の汚染水増加量推移
地下水バイパスが稼働後も毎日480トン程度は増えている感じです。でも東電は会見で(3)地下水バイパス等の効果で汚染水の増加量は日量350トン程度に抑えられると主張しています。そしてそれを元にタンクの増設計画を決めたそうです(3)。
<余談>
地下水バイパスの効果が無いのは明確です。でも東電は効果があったと張ったりをしています。なぜこのような張ったりをするのか?多分、地下水バイパスを運用するとき福島県の漁師さんに苦渋の決断をさせた事にあると思います(10)。いまさら「効果がありません」とは言えない気がします。でもそれでいいのでしょうか?地下水バイパスが想定した効果がないとなれば次の手を打つしかないと思います。でも無理な気がします。最近のフクシマからの情報をみると、根拠もなく「安全」を言い立てるのが多くなっています。そうしないと福島を正しく恐れる方々を「風評被害」と称し非難する理屈が成立しないからだと思います。
でもことまま行ったら、汚染水を溢れさすしかありません。そうなったらフクシマは破滅すると思います。
―参考にさせていただいたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
地下水バイパス|東京電力(2)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の地下水バイパスについて(3)
【10月27日】東京電力 記者会見 - 2014/10/27 17:30開始 - ニコニコ生放送(4)
【資料2】汚染水問題に関する各対策の実施状況(1.27MB)PDF (5)
めげ猫「タマ」の日記 地下水バイパス効果無し!3mの水位低下のはずが30cm(6)
中長期ロードマップ|東京電力中の「廃炉・汚染水対策現地調整会議⇒2014年10月27日(第14回)⇒【資料1】汚染水に関わる現場進捗状況(4.82MB」
(7)
水力発電所の出力と有効落差の関係(8)
地下水バイパスに関するご質問|東京電力(9)
プレスリリース|東京電力中の「
福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について」を集計
(10)
福島原発、地下水バイパスを容認 県漁連「苦渋の決断」 - 47NEWS(よんななニュース)
スポンサーサイト
- 2014/10/30(木) 20:59:23|
- -
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0