クーデターや他国による占領などでその国の政治から排除された元首または国民などが、外国に脱出してその地で組織する政府組織を亡命政府とよぶそうです(1)。すると放射性物質によって町や村から排除された福島県の町村は「亡命役場」でしょうか?でも(=^・^=)の住む街では、社会保険や生活保護以外は住民票を移さなくとも(=^・^=)の住む街と同じサービスが受けられます。社会保険は雇用先を経由して加入されている方が多くいると思うし、生活保護は極小数です。では福島亡命役場とはなにか(=^・^=)なりに考えてみました。
1.支配地域を持たない町や村
福島県には全域が避難区域になっており、事実上の統治ができない町や村が6つ存在します。飯舘村、浪江町、大熊町、富岡町、楢葉町、葛尾村です(2)。これらの町や村は地域外に役場を移し活動を続けています。(=^・^=)は福島亡命役場と呼びたくなります。

※(2)(3)(4)(5)で作成
図―1 福島亡命役場
2.約束の地へ
全ての町村で最終的に町や村に戻る「復興計画」を立ています。
飯舘村
2016年に避難指示解除(6)
浪江町
2016年までに「除染」を終え放射線量の低い場所から順次、それまでは町内の災害公営住宅に住む(7)
双葉町
放射線量の低い場所に復興拠点を設け帰還(8)
大熊町
2018年に放射線量の低い場所に復興拠点を設け町内(もとの場所ではない)に帰還(9)
富岡町
2016年までに「除染」や重要なインフラ(上下水道、道路、漁港、鉄道)整備を終え、2017年から帰還(10)。
楢葉町
2014年春から帰還を開始する予定でしたが(11)、今(2014年11月)ところまだ避難区域のままです(2)。
葛尾村
2015年春から帰還を開始する計画ですが(12)、たぶん無理でしょう。
でもこれらの計画は、あまり評判はよくないようです。以下に各町村の帰還した割合を示します。

※1(13)より作成
※2 楢葉町の「条件が整えば」は「条件が整えば戻りたい」
図―2 亡命役場住民の帰還意向
全ての町で「戻りたい」より「戻らない」が上回っています。楢葉町の「条件が整えば戻りたい」は別の言い方をすれば「条件が整はなければ戻らない」ですので、「判断ができない」と同じ意味だと思います。以下に数表を示します。
表―1 帰還意向調査結果

また、広野町や川内村に設定されていた緊急時避難準備区域は2011年9月に解除されましたが(2)、その後の帰還が進んでいません。全人口5153人中に2014年10月時点で帰還したのは約3分1の1,750人です(14)。でも広野町がなにもしてない訳ではありません。以下に広野町の決算・予算の推移を示します。

※1 (15)にて作成
※2 2010,11,12は決算、2013,14は予算
図―3 広野町の一般会計の予算・決算額
福島原発事故があった2011年以降に水ぶくれしています。この額(2010との差額の合計)は4年で320億円です。1人を帰還されるために1800万円(320億円÷1,750)もかかっています。いったん町が消えてしまいました。本来であれば行政が整備する必要のないスーパーですら行政が整備を計画しています(16)。広野町の避難指示期間は半年程度ですが、それですらこの状態です。福島亡命役場は帰還を果たすのは現状の計画でも早い所で4年です。たとえ避難指示が解除されて、莫大な費用を投じても帰還は進まないと思います。亡命役場の難民が避難先に馴染んだら終わりです。
3.教育は?
市町村の機能に「義務教育」があります。福島亡命役場も福島原発事故後に避難先で町村立の学校を開設しています。避難指示が解除されれば、学校も元の町や村に戻るので子供も戻ります。親もついてくると思います。また、故郷(福島原発事故で住めなくなった地域)について教え込むことも可能であり(17)亡命役場にとっては重要な施策だと思います。でも上手くいっていません。
浪江町には951名の小学生がいますが、このうち浪江町立の小学校に通っているのは22人です(17)。双葉町立の学校の生徒数は幼稚園2人、小学校5人、中学校8人の合計15名です(18)。でも5から14歳の人口は529人なので(19)、476人程度(529×0.9)の義務教育対象者がいると思います。なのこの施設には6.9億円かかそうですので、おひとり様460万円(6,9億÷15人)の豪華施設です。大熊町の義務教育対象者は1,101人いますが、このうち大熊町立の学校で学んでいるのは約4分の1の286人です(20)。楢葉町立の学校には小学生87名、中学生56名の143名の生徒が通っていますが、他に624名の義務教育対象がいるそうです(21)。他の学校に通っていると思います。葛尾村立は小学校に14人(22)、中学校に8人(23)の合計22人の方が通っていますが、5~14歳の人口は110人(19)なので、義務教育対象者は100人程度のなると思います。
4.難民保護
福島亡命役場の住民の多くは仮設住宅ないし借り上げ住宅(みなし仮設(24))に住んでいるとおもいます(25)。亡命役場のホームページ(例えば(26))を見ると、これらの住宅は亡命役場経由で申し込むみたいです。福島は住宅不足です(27)。住宅の提供は住民への求心力になると思います。でも仮設の老朽化が進んでいます(28)。災害公営住宅に転居する必要があります。福島県では原発難民向けに7604戸の災害公営住宅を計画をしています(29)。大部分は福島県営で、亡命役場が作るのは飯舘村が建設した23戸と葛尾村が三春町に125戸の合計148戸だけです。それどろか桑折町、大玉村、本宮市では自市町村に自分の街の避難してきた原発難民の為の災害公営住宅を計画しています。災害公営住宅は絶対に必要です。避難元も避難先でも福島県でも作れるとつくればいいと思います。でも住宅供給が亡命役場から福島県や避難先の市町村に移ったら、亡命役場の求心力は衰えて行きます。
<余談>
福島亡命役場の組織図しらべると概ね「被災者賠償支援」をする部門があります(30)。亡命役場が元に戻り賠償が打ち切られれば、亡命役場は求心力を失うと思います。本稿で取り上げた通り広野町でも、あるいは川内村でも莫大な費用をかけても帰還する人は多くまりません(31)。行政にできることには限界があります。スーパーは誘致できてもラブホや遊技場(パチンコ)等は誘致できません。これらの施設について色々な意見がありますが、一定の社会的な役割をはたしており少なくとも必要悪です((=^・^=)は社会的に重要な施設だと思います)。カラオケボックスのない街に女子高生が住みたがるでしょうか?
―参考にさせていただいたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
亡命政府 - Wikipedia(2)
みんゆうNet 避難区域再編・「帰還困難」「居住制限」「避難指示解除準備」区域(3)
みんゆうNet 双葉地方8町村の仮役場設置場所と連絡先(4)
飯舘村災害情報サイト | 東日本大震災以降の飯舘村の情報をお知らせします。(5)
東日本大震災関連情報 放射線モニタリング測定結果等 | 原子力規制委員会中の「東日本大震災関連情報 放射線モニタリング測定結果等 | 原子力規制委員会」
(6)
村が提出した要望書・提案書・協定書・プラン等を公表します | 飯舘村災害情報サイト(7)
復興計画 - 震災・復興関連情報 - 浪江町ホームページ(8)
「双葉町復興まちづくり長期ビジョン 中間報告」について| 双葉町公式ホームページ(9)
大熊町復興まちづくりビジョンについて - 大熊町復興サイト(10)
「富岡町復興まちづくり計画」(概要版)をお送りします|住宅支援(復興公営住宅)【各種手続き・申請・お知らせについて】 | 富岡町役場(11)
楢葉町復興計画〈第二次〉を策定しました|楢葉町公式ホームページ(12)
復興ビジョンについて - 葛尾村ホームページ(13)
ふくしま復興のあゆみ - 福島県ホームページ中の「 平成26年10月27日発行 [PDFファイル/7.13MB]」
(14)
広野町(15)
<市町村財政課 - 福島県ホームページ/a>
(16)広野にイオン進出 町が複合商業施設整備 来春にも | 県内ニュース | 福島民報(17)
所在地 | 学校概要 | 浪江町立浪江小学校中の「•浪小児童県内外就学状況」
(18)
仮設校舎と体育館完成 双葉町児童が初登校|河北新報(19)
過去の結果(年齢(5歳階級)別推計人口) - 福島県ホームページ(20)
めげ猫「タマ」の日記 大熊町60周年―でも未来は暗い。(21)
第4回意向調査速報 - naraha55 Jimdoページ(22)
児童数 - 葛尾村ホームページ(23)
学校概要 - 葛尾村ホームページ(24)
みなし仮設住宅とは - 新語時事用語辞典 Weblio辞書(25)
平成23年東北地方太平洋沖地震による被害状況即報 - 福島県ホームページ(26)
仮設・借上住宅 - 震災・復興関連情報 - 浪江町ホームページ(27)
【いわきの住宅事情】 物件不足が深刻化、購入の動き活発(福島民友ニュース)(28)
仮設劣化、補修に本腰 被災3県、復興遅れ入居長期化|河北新報(29)
建築住宅課(復興住宅担当) - 福島県ホームページ中の「平成26年9月30日現在の進捗状況 [PDFファイル/81KB]」
(30)
産業・賠償対策課(農業委員会) - 浪江町ホームページ(31)
めげ猫「タマ」の日記 福島県川内村、帰還宣言から2年―減速する帰村―
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- 2014/11/10(月) 22:29:27|
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