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めげ猫「タマ」の日記

一寸気になったどうでもいい事を記事に

福島第一サブドレイン汲み上げについて

 東京電力は福島第一原発の汚染水の増加を抑えるために、原子炉やタービン建屋の周囲から地下水を汲み上げ、海に捨てるサブドレインを計画しています(1)(2)。原子力規制委は1月21日に計画を認可しました(3)(4)(5)。そこで福島第一のサブドレインについて(=^・^=)なりに纏めてみました。
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 ※(6)をキャプチャー
 図ー1 サブドレン計画認可を一面トップで伝える福島県の地方紙(福島民報)

1.増え続ける汚染水
 以下に福島第一原発の汚染水の流れを示します。
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※(7)(8)(9)(10)にて作成
 図―2 福島第一原発の汚染水の流れ

 福島第一原発の地下には地下水が流れていますが、福島第一原発事故で放出された放射性物質や過去の汚染水漏れ(8)で地中に浸み込んで汚染された土壌の中を通るので、ある程度は放射性物質に汚染されています(11)。福島第一原発所長を経験した故吉田 昌郎氏は政府事故調査委員会ヒアリングで、福島原発事故前の福島第一原発の状況にちぃて
「1F(福島第一原発)はもともと地下水位が高く、平時においても、タービン建屋でよく地下水の浸水が生じており、地下水が浸水しやすい場所でした。」
と証言をしています(10)。平時で浸水するなら今も浸水しています。原子炉建屋内には核燃料が溶け落ち、大量の放射性物質を含むデブリが存在します(13)。流入した地下水はデブリに触れ、酷く放射性物質に汚染されます。ほ放置すれば溢れてしまうので、タービン建屋から汚染水を汲みあげています。汲みあげた汚染水の一部は淡水化装置で不純物を荒取りし、冷却水として原子炉に注入されます。残りは汚染水タンクに保管されます。こうして汚染水はどんどん増えて行きます。
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 ※(15)を転載
 図―3 福島第一原発汚染水量

 増える汚染水に負けないように福島第一原発ではタンクの増設工事が行われています(14)。でも工事は大変なようです。1月19日は汚染水タンクの工事に関係した下請けさんが事故で亡くなる最悪の事態が発生しました(15)。

2.上手く行きそうもない汚染水増加抑制対策
 福島第一原発では地下水バイパスなどの汚染水増加を抑制する対策が実施されており(11)(16)、凍土壁の工事が進められています(17)。原子炉・タービン建屋内と周囲の地下水の水位差を小さくし、地下水が原子炉・タービン建屋に流れ込まないようにする計画ですが、上手く行っていません。以下に原子炉建屋西側(山側:地下水の上流)近くの観測用井戸の水位を示します。
 殆んど下がらない地下水バイパス観測井戸の水位
  ※1(17)を転載
  ※2 OPは小名浜港を基準とした海抜
 図ー4 地下水バイパス井戸観測井戸水位
 
 タービン建屋近くの観測用井戸の水位は殆ど下がっていません。当然ながら、汚染水の増加量も減っていません。
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  ※(7)を集計
 図―5 福島第一原発の汚染水量

 凍土壁は工事中ですが(17)、(=^・^=)は上手く行かないと可能性が高いと考えています(18)。この事は別に記事にしたいと思います。

3.サブドレイン汲み上げ
 サブドレン汲み上げとは、原子炉やタービン建屋の直ぐ傍の井戸から地下水を汲み上げ、直接にタービン建屋周囲の水位を下げ汚染水の増加量を抑えるものです。
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 ※(2)を抜粋、加筆
 図―6 サブドレインの断面図

以下に井戸の水平位置を示します。
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 図―7 サブドレイン用の井戸の水平位置

原子炉やタービン建屋を囲むように井戸が配置されています。タービン建屋に近い井戸なので高濃度の放射性物質が見つかっています。以下にセシウムの濃度分布を示します。
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 ※(2)にて作成
 図―8 セシウム濃度分布

以下に全ベータ濃度の分布を示します。
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 ※(2)にて作成
 図―9 全ベータ濃度分布

以下にトリチウム濃度の分布をしめします。
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※(2)にて作成
 図ー10 トリチウム濃度分布

最高値は1リットル当たりで
 セシウム 16、000ベクレル
 全ベータ 18、000ベクレル
 トリチウム14、000ベクレル
でどれも1万ベクレルを超えています。
これではまずいので汲みあげたから、放射性物質を分離して海に流します。以下に汲み上げたサブドレイン汲み上げ汚染水を海に流すたまでの順序を示します。
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 ※(2)で作成
 図―11 海に流されるまでの流れ

 ここでキーになるのは処理装置だと思います。処理装置は前処理と吸着塔からなります(2)(19)。以下に吸着塔の構成を示します。
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 ※(19)を転載
 図―12 「吸着塔」の構造

セシウム(Cs)、ストロンチウム(Sr)とアンチモン(Sb)しか除去できません。他の放射性物質は垂れ流しです。類似の装置としてタービン建屋からくみ上げた汚染水を処理する多核種除去設備(ALPS)がありますが、こちらは62種類です(19)。
 蛇足ですが、全ての汚染水処理装置に言えることですが、サブドレイン汲み上げ汚染水の放射性物質を集めた表写生物質まみれの「カス」がでますが、処分方法は福島第一原発内の超長期保管しかないと思います。

3.効果について
 すでに記載した通り、原発事故前から福島第一は地下水の浸水に苦しんでいました。原子力規制委の議論を聞いていると(3)、サブドレイン汲み上げは福島原発事故前から実施しており「実績」のある方法です。効果の出ない地下水バイパス(17)ややってみないと分からない「凍土壁」(18)とは違います。原子力規制委をみていたら(3)、更田豊志委員が「(汚染水増加抑制対策では)凍土遮水壁も計画されているが、サブドレンの運用が主役だ」
と発言されました。福島からの報道によると汚染水の増加量が半分になりまるそうです(4)。
 東京電力はサブドレインなどの汚染水増加抑制対策が実施できれば、放射性物質の排出量が大幅に減らすことができると主張しています(20)。
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 ※(20)を転載・加筆
 図―13 放射性物質の排出量が大幅に減らせると主張する東京電力

例えばトリチウムは15分の1になるそうです。図を見ると現状で1日当たり150億ベクレルです。15分の1なら10億ベクレルです。ありえない数字です。同じような仕掛けに地下水バイパスがあります。(=^・^=)なりに集計すると、地下水バイパスは最初に排水をした2014年5月21日から2015年1月18日の242日間に、約3,100億ベクレルのトリチウムを放出しています。1日当たりで10億ベクレルより多い13億ベクレルです。
約3300億ベクレルに達した地下水バイパスのトリチウム放出量
 ※(21)を転載
 図―14 地下水バイパスの累積のトリチウム放出量

 以下に地下水バイパスで最も放射性物質濃度の高いNo12井戸のトリチウム濃度の推移を示します。
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 ※(22)を集計
 図―15 地下水バイパスNo12井戸のトリチウム濃度推移

1リットル当たり1000ベクレルを挟んで上下しています。サブドレイン井戸の1分の1です。するとサブドレインだけで、1日当たり130億ベクレルのトリチウムの排出がありそうです。他をあわせれば、今より酷くなるとおもいます。

<余談>
 原子力規制委の認可が出ても、サブドレインの運用ができるわけではありません。地元の漁業者の「同意」がなければ東電は運用を開始しないそうです(4)(5)。いまのところ同意は得られていません(23)。でも昨日(1月20日)当たりから流れが変わった気がします。福島原発で事故死が2名発生しました。これについて福島県出身の原子力規制委委員長の田中氏(24)は、無理な汚染水タンクの増設工事が原因のような発言をしてます(15)。これを受けてでしょうか、福島のマスコミの論調は受け入れ容認に傾いたようです。
「東電はサブドレン地下水の排出基準を国の基準より厳しく設定した。ストロンチウム90などベータ線を放つ放射性物質は、汚染前の水をくみ上げる「地下水バイパス」の1リットル当たり5ベクレル未満に対し、3ベクレル未満に厳格化した。セシウム134、137はともに同一ベクレル未満、トリチウムは同1500ベクレル未満と地下水バイパスと同水準となっている。
 東電の試験では、放射性物質濃度を千分の1~1万分の1程度まで低減する浄化装置を使用すると、サブドレン地下水の濃度は東電が定める基準を下回ったという。
 更田豊志委員長代理は『(建屋への地下水の流入抑制では)凍土遮水壁も計画されているが、サブドレンの運用が主役だ』と重要性を強調した。」(5)。
「県は原発周辺の13市町村、専門家とつくる県廃炉安全監視協議会で、設備の安全性や海洋放出までの手順を確認する方針。」(4)
 でももっと辛いのは福島の漁師さんかもしれません。死亡したした下請けさんは漁師さんたちが住むは福島県沿岸(広野町、いわき市)の方です(15)。福島の漁師さんたちも悲しんでいると思います。福島の漁師さんが福島の海の汚染回避か、同じ街に住む下請けさんの「安全」かどちらを選んでんでも正しいと思います。
 でも東電や国は「イスラム国」です。一連の出来事を繋げると、イスラムと同じです。人質の死しか身代金とイスラム国は主張しています(25)。同じだと思ったら「イスラム国」以下です。人質(下請けさん)を殺す前に東電や国は福島の漁師さんに脅迫状を送って欲しかったと思います。


 
―参考にさせていただいたサイト様および引用した過去の記事―
(1)汚染水対策|東京電力
(2)第51回 原子力規制委員会|会議|原子力規制委員会中の「資料3-1東京電力株式会社「福島第一原子力発電所 特定原子力施設に係る実施計画」の変更(サブドレン他水処理施設の本格運転)の認可について【PDF:2.2MB】」
(3)平成26年度 第51回原子力規制委員会 (平成27年1月21日) NRAJapan
(4)規制委浄化後放出を認可 第一原発サブドレン地下水 | 県内ニュース | 福島民報
(5)規制委が海洋放出を認可 第1原発の浄化地下水(福島民友ニュース)
(6)福島民報を1月21日に閲覧
(7)プレスリリース|東京電力中の「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について 」
(8)めげ猫「タマ」の日記 NHKの嘘報道―漏れた汚染水は「最大」2億4千万ベクレル
(9)めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発のタービン建屋汚染水は外に繋がっている
(10)政府事故調査委員会ヒアリング記録 - 内閣官房中の「 吉田 昌郎 東京電力福島第一原子力発電所長 ⇒2011/10/13 高濃度汚染水の存在についての3月24日以前の想定について、4月4日統合本部会議における発言の趣旨・背景について 」
(11)めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の地下水バイパスについて
(12)中長期ロードマップ|東京電力中の「中長期ロードマップの進捗状況⇒2014年12月25日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第13回事務局会議)⇒(6.63MB)」等
(13)(12)中の「【資料2】中長期ロードマップの進捗状況(概要版)」
(14)(12)中の「【資料3-2】滞留水処理(11.9MB)」
(15)めげ猫「タマ」の日記 福島原発で死んだ下請けさんは「国策」の犠牲者―でも何もしない安倍出戻り総理―
(16)汚染水対策|東京電力
(17)陸側遮水壁|東京電力
(18)めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の凍土壁は税金の無駄遣い?
(19)めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(8月3週)―凍結止水断念?―
(20)2015年1月16日(いわき市漁協組合員説明会資料)海洋汚染をより確実に防止するための取り組み(PDF 2.21MB)
(21)2014年5月21日(コメント)福島第一原子力発電所における地下水バイパスの実施について
(22)報道配布資料|東京電力中の「福島第一 地下水バイパス揚水井 分析結果 」
(23)めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(1月3週)―安全決起大会したら下請けさんがケガ―
(24)委員の紹介|原子力規制委員会について|原子力規制委員会
(25)イスラム国拘束:シリア北部か 本拠地、救出作戦は困難 毎日新聞 2015年01月22日 07時30分
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  1. 2015/01/22(木) 22:11:57|
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