福島第一原発汚染水の5月3週(5月18日から5月24日)の状況を纏めてました。
①港湾内の放射性物質濃度が過去最高を更新
②地下水バイパス1周年、海に流れたトリチウムは4,300億ベクレル超
③地下水バイパス山側井戸の全ベータ濃度が急上昇
④護岸付近の井戸からは過去最高の放射性物質
⑤散水する汚染水から1リットル当たり1、400ベクレルのトリチウム
⑥港湾口で取れた魚から高濃度のセシウム
等、先週に続き(1)高濃度の放射性物質で汚染された汚染水が見つかっています。
1.港湾内の放射性物質濃度が過去最高を更新
海洋から相変わらず放射性物質が見つかっています。

※1 (4)(5)で作成
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
※4 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(6)
図―1 福島第一原発近傍外洋の放射性物質濃度
数値は図―1のとおりですが、このうち先週は全ベータが過去最高を記録した港湾中央(1)では今週はセシウムが最高記録を、3,4号機取水口間の全ベータが過去最高を記録しました(5)。この中でもっとも気になったのは「3,4号機取水口間」です。

※1(4)(5)にて作成
※2 NDは検出限界未満を表す
※3 凡例中のトリチウムはH3とストロンチウム90はSR90と略した
図―2 3,4号機取水口間の放射性物質濃度推移
この測定点は図―7に示す海側遮水壁の内側で、汚染水が拡散しにくい場所ですが、それだけに敏感に反応すると思います。この場所も外洋と繋がっているので、放射性物質はいずれ外洋に出ていきます。
2.地下水バイパス1周年、海に流れたトリチウムは4,300億ベクレル超
地下水バイパスは、福島第一原発の汚染水対策として原子炉建屋に侵入する前の地下水を事前に汲み上げ汚染水の発生を抑えようとするものです(7)。海に流す水からは「トリチウム」が見つかっているので、(=^・^=)は立派な汚染水だと思います。地下水バイパスの本格運用は2014年5月21日に開始したので(8)、1周年です。
地下水バイパスから放流されたトリチウムの総量を濃度×排出量の合計で計算できますので、(=^・^=)なりに計算したら4,331億ベクレルに達しました。

※(9)(10(11)を集計
図―3 地下水バイパスの累積のトリチウム放出量
東京電力は地下水バイパスの効果を主張していますが(12)、(=^・^=)は効果があまり無いように見えます。以下に福島第一原発内の汚染水の総量を示します。

※(13)を集計
図―4 福島第一原発内の汚染水の総量
数値を記載すると、汚染水の総量は
2013年5月21日 39万2893立方メートル(14)
2014年5月20日 56万6644立方メートル(15)
2015年5月21日 73万5971立方メートル(16)
ですので、
地下水バイパス本格稼働前の1年間(2013年5月21日から14年5月20)の増加量 17万3651立方メートル
地下水バイパス本格稼働後の1年間(2014年5月22日から15年5月21)の増加量 16万9327立方メートル
になります。差の4424立方メートルの効果といっても1日当たり15立方メートル程です。でもこの効果も不明です。2014年5月時点と15年5月時点で、東電の発表(16)に
「※1 表記載の貯蔵量及び貯蔵容量には、水抜きが終了した(残水処理に移行した)ものを含んでいない
(D、H3エリア以外は残水処理中)」
なんて注記(16)が追加されており、2015年5月時点では汚染水の一部が係数されなくなりました。このためだと思うのですが汚染水の総量が1万立方メートルほど合わない事態が発生しています(17)。減った分は係数されなくなった量程度と思います。
3.地下水バイパス山側井戸の全ベータ濃度が急上昇
東京電力は福島第一原発地下水バイパスの山側に井戸を掘って放射性物質濃度を調べています(18)(19)。また地下水バイパスからくみ上げた汚染水の濃度も井戸毎に調べています(20)。以下に放射性物質濃度を示します。

※1 (18)(19)(20)を集計
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
図―5 地下水バイパスと山側(上流井戸)の放射性物質濃度
この中で(=^・^=)が最も心配なのはE-9井戸の全ベータ濃度です。

※(18)を集計
図―6 E-9井戸の全ベータ濃度
突然の急上昇です。1リットル当たりの全ベータの値を数値を書くと
5月19日 1200ベクレル
5月20日 2万ベクレル
で僅か1日で約17倍に上がっています。
5月22日 1万2000ベクレル
で少し下がりましたが、依然高い値です。急に上昇したので何処からか高濃度の汚染水が流れ込んで来たと思います。
4.護岸付近の井戸からは過去最高の放射性物質
東京電力は福島第一原発の海岸付近やタービン建屋周りの井戸の地下水の放射性物質濃度を調べています(5)。以下にそこでの放射性物質濃度を示します。

※1(5)を集計
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
図―7 海岸付近の井戸の放射性物質濃度
このうち1リットル当たりの値で
No1-8井戸 セシウム 540ベクレル
No3井戸 トリチウム 4、000ベクレル
は共に「過去最高」です。共にきになるのですが、No1-8井戸の推移は先週しめしたので(1)、以下にNo3井戸の推移をしめします。

※1(5)にて作成
※2 NDは検出限界未満を表す
図―8 No3井戸の放射性物質濃度
どんどん上昇中です。この先が心配です。
5.散水する汚染水から1リットル当たり1400ベクレルのトリチウム
福島第一原発の汚染水タンクの周りには、タンクから汚染水が流れ出ても外に漏れ出ないように周りに「堰」が作られています(21)。雨が降ると、堰の中に雨水が溜まるので何処かに捨てるか、貯め込むかしなくてはいけません。東京電力は「堰」にたまった汚染水を福島第一原発敷地内に散水しています(22)。以下に散水される汚染水のトリチウム濃度の推移を示します。

※1(23)を集計
※2 NDは検出限界未満を表す
図―9 散水される「堰」内の汚染水のトリチウム濃度
乱高下していますが今週も最大で1リットル当たり1、400ベクレルのトリチウムが見つかりました(24)。
トリチウムの安全性には色々と議論があると思います。トリチウムが厄介なのは、放射性の水として存在し、蒸発して雲となり、トリチウム入りの雨を降らす事だと思います(25)。海に流せば、海水と混じり蒸発までの時間が稼げると思いますが、敷地内に散水すれば「蒸発」するか地下に浸み込みやがて海に流れ出すかのどちらかです。しかも「蒸発」のチャンスは海に流すより多くなるので、福島でトリチウム入りの雨が降るチャンスが増します。海に流すより悪い処分方法だと(=^・^=)は思います。
6.港湾口で取れた魚から高濃度のセシウム
今週、東京電力は4月中に福島第一原発港湾内で取れたお魚のセシウム濃度を発表しました(26)。それによると、1キログラム当たりの値で
マコガレイ 3,820ベクレル
ケムカジカ 1,660ベクレル
のセシウムが見つかっています。とれた場所は共に「港湾口」です。位置については図―1に記載した通りです。とれた魚は9匹ですが、そのうち8匹が港湾口で取れているので、外洋から「港湾口」に入ったと想定できます。港湾口近くの外洋には同じように汚染された魚が居るはずです。むかし「港湾内で完全にブロックされている」なんて事を言った人がいますが、ブロックされているとは思えません。心配なこともわります。
第一に福島第一原発の汚染水対策は汚染水の流出を防止し環境への負荷を減らすことだと思います。その一つのパラメータに生物の放射性物質濃度があると思います。以下に福島第一原発港湾内のケムカジカのセシウム濃度の推移を示します。

※(28)を集計
図―10 福島第一原発港湾内のケムカジカのセシウム濃度
下がっている様子がありません。ケムカジカで見る限り、福島第一原発の汚染水対策は効果を上げていません。
港湾口付近で最も放射性物質濃度が高いのは東電の発表を見る限り「港湾口」です。以下に港湾口のセシウム濃度の推移を示します。

※(5)にて作成
図―11 港湾口のセシウム濃度
上下していますが概ね1リットル当たり2ベクレル以下です。でのその1000倍以上のセシウムに汚染されたお魚が見つかっています。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら(
ブログ図表)を参照ください。
東京電力によると福島第一原発内ではトリチウムは概ね「水」として存在するそうです(29)。 すると以下の伝搬ルートがあると思います。
①敷地から排水路、地下水バイパスあるいは汚染された地下水が海に流れ込む。
②敷地内の汚染水が蒸発して外に漏れる。
③放射線によって水が分解され水素になって、外に漏れる(30)
です。そとに漏れたトリチウムはやがて「雲」になり福島の台地にトリチウム雨を降らしそうです。そしてトリチウム米やトリチウム野菜ができそうです。東京電力はトリチウムは飲んでも「安全」と主張してますが、食べも安全とは主張していません。(=^・^=)もトリチウムを食べた時の影響が心配です。
福島の方も同じようにトリチウムを心配されていると思います。もうすぐ6月です。福島ではそろそろ「トマト」の季節です(31)。福島県白河市の「ブロッコリーまつり」が始まったそうです(32)。そこでは先着150人の買い物客に旬のブロッコリーやトマトなどがプレゼントされたそうです(32)。白河産トマトは引き締まってコクのあるそうです(31)。福島県は福島産トマトは「安全」だと主張しています(33)。でも、福島県白河市近郊のスーパーのチラシには福島産トマトはありません。

※(34)を引用
図―12 福島県産トマトがない福島県白河市近郊(西郷村)のスーパーのチラシ
当然の結果です。(=^・^=)も福島県白河市の皆さまを見習い「フクシマ産」は食べません。蛇足ですが白河市や西郷村ではブロッコリーは出荷のピークですが(35)(36)、図ー12で紹介したチラシのブロッコリーは福島産でなくアメリカ産でした。
―参考にさせていただいたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発汚染水(5月3週)―今週も過去最高更新―(2)
サンプリングによる監視|東京電力(3)
報道配布資料|東京電力(4)(2)中の「1.海水(港湾外近傍)」を5月11日に閲覧
(5)(3)中の「福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果」
(6)
めげ猫「タマ」の日記 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(7)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の地下水バイパスについて(8)
(コメント)福島第一原子力発電所における地下水バイパスの実施について|東京電力(9)(3)中の「福島第一 地下水バイパス揚水井 分析結果 」
(10)
一時貯留タンクの運用状況|東京電力(11)
報道関係各位一斉メール|東京電力中の「福島第一原子力発電所 地下水バイパス 一時貯留タンク(Gr*)からの排水について 」
(12)
中長期ロードマップ|東京電力中の「2015年4月30日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第17回事務局会議)⇒【資料3-2】滞留水処理(13.7MB)」
(13)
プレスリリース|東京電力中の「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について 」
(14)
福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第100報)|東京電力(15)
福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第151報)|東京電力(16)
福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第202報)|東京電力(17)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(4月4週)-汚染水1万m3が行方不明-(18)(2)中の「H4エリア周辺観測孔」
(18)(2)中の「H6エリア周辺観測孔」
(20)(3)中の「福島第一 地下水バイパス揚水井 分析結果
(21)
福島第一原子力発電所 各タンクエリア堰内溜まり水の状況(PDF 471KB)(22)
雨水処理設備を用いたタンクエリア堰内雨水の散水に係る申し入れ - 福島県ホームページ(23)(3)中の「雨水処理設備を用いたタンクエリア堰内雨水の処理水分析結果」
(24)
2015年5月22日雨水処理設備を用いたタンクエリア堰内雨水の処理水分析結果(PDF 16.7KB)(25)
めげ猫「タマ」の日記 トリチウムは危険・安全?(26)
2015年5月20日魚介類の核種分析結果<福島第一原子力発電所港湾内(27)
福島第1原発の汚染水、完全にブロックされている=安倍首相 | Reuters(28)(3)中の「魚介類の核種分析結果<福島第一原子力発電所港湾内> 」
(29)
福島第一原子力発電所でのトリチウムについて (30)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(5月4週)―汚染水漏れ容器に不良部品―(31)
管内農畜産物 | JAしらかわ(白河農業協同組合)(32)
24日までブロッコリーまつり JAしらかわ「り菜あん」(福島民友ニュース)(33)
安全が確認された農林水産物(公開用簡易資料) - 福島県ホームページ(34)
AEON | 店舗情報 | イオン白河西郷店(35)
管内農畜産物 | JAしらかわ(白河農業協同組合)(36)
管内農畜産物 | JAしらかわ(白河農業協同組合)
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- 2015/05/24(日) 19:49:00|
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