福島第一原発汚染水の7月3週(7月14日から20日12時発表分)の状況を纏めてました。先週に続き(1)、あっちこっちで高濃度の放射性物質が見つかっています。
①外洋の複数個所からセシウム等の放射性物質
②港湾内のお魚から26,600ベクレルのセシウム
③地下水バイパス井戸2本で過去最高のトリチウム
④護岸付近の井戸からは過去最高のトリチウムとセシウム
⑤排水路から法令限度を超えるセシウム・全ベータ
1.外洋の複数個所からセシウム等の放射性物質
海洋から相変わらず放射性物質が見つかっています。

※1 (4)(5)で作成
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
※4 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(6)
図―1 福島第一原発近傍外洋の放射性物質濃度
この中で一番気になったのは港湾口北東側です。

図―2 の放射性物質濃度
これまで見つからなかった全ベータが見つかるようになりました。
2.港湾内のお魚から26,600ベクレルのセシウム
港湾内では外洋よりもっと高い濃度の放射性物質が見つかっています。

※1 (5)(7)(8)で作成
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
※4 SR90はストロンチウム90を示し、採取日は6月初旬
図―3 福島第一原発港湾内の放射性物質濃度
このうち3,4号機取水口間と4号機スクリーンのストロンチウム90濃度(共に1リットル当たり1,500ベクレル)は共に過去最高です。以下に推移を示します。

※(5)(8)を集計
図-4 3,4号機取水口間と4号機スクリーンのストロンチウム90濃度
4月位から急上昇です。図―3に示すように港湾口でのストロンチウム90が見つかっているので、やがて外に出て福島の海を汚染するはずです。
もっと心配なのはお魚のセシウム濃度が下がらいことです。東京電力(9)の発表によれば港湾内で採れたムラソイから1キログラム当たりで
セシウム134 5,600ベクレル
セシウム137 21,000ベクレル
セシウム合計 26,600ベクレル
のセシウムが見つかっています。以下に福島第一港湾内で採れたムラソイのセシウム濃度の推移を示します。

※(10)を集計
図―5 福島第一原発港湾内のムラソイのセシウム濃度
(=^・^=)には下がっているように思えません。汚染水対策の最終目標は放射性物質の漏えいを防止し、環境負荷を低減することだと思います。海洋生物(ここでは魚)のセシウム濃度は重要な指標だと思いますが改善されていません。
3.地下水バイパス井戸2本で過去最高のトリチウム
地下水バイパスは、福島第一原発の汚染水対策として原子炉建屋に侵入する前の地下水を事前に汲み上げ汚染水の発生を抑えようとするものです(11)。海に流す水からは「トリチウム」が見つかっているので、(=^・^=)は立派な汚染水だと思います。東京電力は福島第一原発地下水バイパスの山側に井戸を掘って放射性物質濃度を調べています(12)(13)。また地下水バイパスからくみ上げた汚染水の濃度も井戸毎に調べています(13)。以下に放射性物質濃度を示します。

※1 (11)(12)(13)にて作成
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
図―6 地下水バイパスと山側(上流井戸)の放射性物質濃度
このうちNo9とNo10井戸のトリチウム濃度は過去最高値です。No10については先週にしめしたので(1)、No9井戸のトリチウム濃度を示します。

※(13)にて作成
図―7 地下水バイパスNo9のトリチウム濃度
どんどん上昇しています。これからも増えそうです。
地下水バイパスのトリチウムの運用基準は1リットル当たり1、500ベクレルです(2)。No10井戸から過去最高の1リットル当たり2,000ベクレルのトリチウムが見つかり、運用基準超えが継続しています。それでも東京電力はNo10井戸の汚染水を汲みあげ、海に流すそうです(14)。
地下水バイパスから放流されたトリチウムの総量を濃度×排出量の合計で計算できますので、(=^・^=)なりに計算したら約180億ベクレルに達しました。

※(15)(16)(17)(18)を集計
図―8 地下水バイパスの累積のトリチウム放出量
トリチウムの厄介な所は概ね「水」として存在すので、蒸発しトリチウム雲となりトリチウム雨を降らせ、福島の台地で育つ米や果物の作物に吸収され、トリチウム米やトリチウム桃ができそうです。トリチウムの安全性には色々と議論があるとおもいます(19)。東京電力は飲んでも安全と主張していますが、食べても安全とは主張していません(20)。
4.護岸付近の井戸からは過去最高のトリチウムとセシウム
東京電力は福島第一原発の海岸付近やタービン建屋周りの井戸の地下水の放射性物質濃度を調べています(5)。以下にそこでの放射性物質濃度を示します。

※1(5)を集計
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
図―9 海岸付近の井戸の放射性物質濃度
このうち、No1-8のセシウム(1リットル当たり860ベクレル)とNo2-7井戸のトリチウム(1リットル当たり1,500ベクレル)は過去最高です。Mo1-8のセシウム濃度は先週しめしたので(1)、No2-6井戸のトリチウム濃度の推移を以下に示します。

※(5)を集計
図―10 No2-6井戸のトリチウム濃度
6月まではそれなりの濃度でしたが、その後は上昇に転じ今のところ上昇傾向が止まる気配がありません。
5.排水路から法令限度を超えるセシウム・全ベータ
福島第一原発構内にには幾つもの排水路があります。

※(21)を転載
図―11 福島第一原発内の排水路
当然ながら福島第一構内は放射性物質で汚染されており、排水路に流れ込みそうです。全ベータ濃度のおよそ半分がストロンチウム90で(6)、ストロンチウム90の法令限度は1リットル当たり30ベクレルですので(15)、全ベータでみれば1リットル当たり60ベクレルになります。セシウム137の法令限度は1リットル当たり90ベクレルです(15)。以下に汚染水が流れ出たK排水路の放射性物質濃度を示します。
※(22)を集計
図―12 K排水路の放射性物質濃度
法令限度に相当する1リットル当たり60ベクレルを殆どの日で確り超えています。7月16日には、1リットル当たりで
セシウム137 280ベクレル(法令限度の7.4倍)
全ベータ 1,100ベクレル(法令限度の18倍)
の放射性物質が見つかっています。翌々日の7月18日には30km程南のいわき市の四倉海岸では海開きが行われました(23)。

※1(24)(25)で作成
※2(24)のデータを(26)示す手法で7月1日換算
図―13 いわき市四倉海岸
図に示す通り福島県沖では海流は福島第一原発からいわき市に向かって流れています。それでもお隣の茨城や宮城に比べても大変に綺麗な福島県の女性の皆さんは海に入ったようです(23)。

※(27)をキャプチャー
図―14 汚染水漏れの海に入る福島の勇気ある女性
大丈夫ですかね?
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら(
ブログ図表)を参照ください。
先週も幾つかの過去最高汚染水濃度が見つかりましたが(1)今週もです。福島第一原発の汚染水漏れは収束するどころか酷くなってる気がします。福島の方も心配だと思います。
7月18日に都内で「ふくしまの桃まつり」が開かれたそうです(28)。福島はモモのシーズンです。福島のモモは「極上」だそうです(29)。福島県は福島のモモは安全だと主張しています(30)。でも福島県会津若松市のスーパーのチラシには福島産モモはありません。

※(31)を引用
図―15 福島産のモモが無い福島県会津若松市のスーパーのチラシ
当然の結果です。(=^・^=)も福島県会津若松市の皆さまを見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にさせていただいたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発汚染水(7月2週)―外洋から過去最高の全ベータ―(2)
サンプリングによる監視|東京電力(3)
報道配布資料|東京電力(4)(2)中の「1.海水(港湾外近傍)」を7月20日に閲覧
(5)(3)中の「福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果」
(6)
めげ猫「タマ」の日記 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(7)(2)中の「3.海水(港湾内)」を7月20日に閲覧
(8)
2015年7月17日福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果(PDF 254KB) (9)
2015年7月17日魚介類の核種分析結果<福島第一原子力発電所港湾内>(PDF 99.4KB) (10)(3)中の「魚介類の核種分析結果<福島第一原子力発電所港湾内>」
(11)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の地下水バイパスについて(12)(2)中の「H4エリア周辺観測孔」
(13)(3)中の「福島第一 地下水バイパス揚水井 分析結果 」
(14)
福島第一原子力発電所 地下水バイパス揚水井No.10のくみ上げ再開について|東京電力(15)(2)中の「地下水バイパスに関するサンプリング」
(16)
一時貯留タンクの運用状況|東京電力(17)(3)中の「福島第一原子力発電所 地下水バイパス 一時貯留タンク分析結果 」
(18)
報道関係各位一斉メール|東京電力中の「福島第一原子力発電所 地下水バイパス 一時貯留タンク(Gr*)からの排水について 」
(19)
めげ猫「タマ」の日記 トリチウムは危険・安全?(20)
福島第一原子力発電所でのトリチウムについて (21)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発―2週連続で下請けさんがケガ―(22)(3)中の「福島第一原子力発電所 K排水路排水口放射能分析結果 」
(23)
夏本番! 歓声響く 勿来と四倉で海開き | おでかけ | 福島民報(24)
航空機モニタリングによる空間線量率の測定結果 | 原子力規制委員会中の「福島県及びその近隣県における航空機モニタリング(平成26年9月1日~11月7日測定) 平成27年02月13日 (CSV)」
(25)
気象庁 | 海流に関する診断表、データ 日別海流(26)
めげ猫「タマ」の日記 福島避難区域再編3年目―放射線量はこれからどうなる―(27)
いわき市海水浴場で海開き 初日は波が高く遊泳禁止に(福島15/07/18) FNNLocal(28)
県産モモを首都圏にアピール 都内で県が催し | 県内ニュース | 福島民報(29)
福島 桃狩り特集 | 一般社団法人 福島市観光コンベンション協会公式ページ こらんしょふくしま(30)
安全が確認された農林水産物(公開用簡易資料) - 福島県ホームページ(31)
アピタ会津若松店│「イイこと、プラス。」 アピタ・ピアゴ
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- 2015/07/20(月) 20:01:46|
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★【原発常識30】【
http://www.asyura2.com/12/genpatu25/msg/552.html#c633 】
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●基礎 〈4個〉
〈原発常識1〉■★原発は「【原爆】より、〈量的に〉危険」!→フクイチはチェルノブイリの4倍、広島原爆の4032倍の放射性物質が首都圏・東北にふりまかれた。
http://blog.goo.ne.jp/jpnx05/e/c61332351d06c44c1b52d1821d9c062a
〈原発常識2〉■★原発は「【公害〈化学的毒〉】より、はるかに危険」!→物質の深奥の問題なので、通常技術(電気・化学反応=電子の操作)で中和できず、100万年消えない放射能。
〈原発常識3〉■原発は「通常機械ではない」「冷却・管理できなくなればおわり」
〈原発常識4〉■★放射能処理装置や原発設備は、すさまじい放射能で【すぐボロボロ】になる。原理的にムリ!→ALPS「故障続き」「すぐ故障」は、偶然でなく、もともと原理的に不可能!
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●フクイチ 〈6個〉
〈原発常識5〉■★人類は「レベル7」を解決した歴史がない。→チェルノブイリ30年かかっても解決の見通しすらない。
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201205020147.html
〈原発常識6〉■核燃料が「【地下水】に達すれば」、その国はおわり。
〈原発常識7〉■フクイチは、1~3号機が【メルトダウン〈たぶんスルー〉】
〈原発常識8〉■フクイチは、地下で【再臨界】→短命のはずのヨウ素131がいまだに出る。連鎖反応が続いている証拠。臨界すると放射性物質は1億倍増える。
〈原発常識9〉■フクイチは〈事実上〉「レベル8」!!→チェルノブイリを超えている!福島は①チェルノブイリができた石棺化ができず、②チェルノブイリにない地下水汚染が日本列島広域を永遠に汚染。
〈原発常識10〉■フクイチは【地震でこわれた】が、これをみとめると他の原発も不可能。
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●汚染 〈5個〉
〈原発常識11〉■★東京は、チェルノブイリ退去レベルの汚染がある。→全国3位。
〈原発常識12〉■チェルノブイリでは「3000キロ離れた西欧」までひどく汚染された。→欧米諸国が「脱原発する」最大の理由がコレ。
〈原発常識13〉■【ミリのつかない単なるシーベルト《=1000ミリ以上》】とは、近づけば「即死」レベル!
〈原発常識14〉■★放射能のため「〈韓国どころか〉世界中」が日本食品〈+中古車等〉の【輸入禁止】をしており「日本政府を信じていない」!
〈原発常識15〉■★〈世界的常識〉【除染は不可能】!→★【避難の費用は除染の1/20!】
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●被爆・影響 〈4個〉
〈原発常識16〉■★原発健康被害は【遅発性】「3~5年前後から始まり7年後にピーク」。すでに4年で人口百万減少。
http://ameblo.jp/sunamerio/entry-11380553912.html
http://blog-imgs-51.fc2.com/j/y/o/jyouhouwosagasu/soumusyoujinnkoutoukei120901010.jpg
〈原発常識17〉■★原発事故では、ほとんどの人は、癌+奇形以外の、「心不全、脳神経障害、感染症、成人病等の普通の症状の急激な増大」の要因で死んだ。
〈原発常識18〉■「トリチウム」「ストロンチウム」「セシウム」は、それぞれ、「水」「カルシウム」「カリウム」になりすまし【体内にとりこまれ】半永久的に生命を破壊する。「プルトニウム」はそれ自体超猛毒。
〈原発常識19〉■放射能の食品汚染は「時間がたつほど」危険!→放射線学の教科書の最初に書いてあるほど有名な【生態濃縮〈生物濃縮〉】効果!
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●エネルギーと政策 〈3個〉
〈原発常識20〉■「太陽光発電」は【原発20基分】が設立認可済!
〈原発常識21〉■★原発は【国防上、かえって危険】!
〈原発常識22〉■【新原発技術】は全て「原理的に危険」!→新しかろうが古かろうが関係なく全部キケン!
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●国際 〈2個〉
〈原発常識23〉■アメリカは「日本の脱原発に反対なんかしていない」!
〈原発常識24〉■フクシマに恐怖する世界中が「脱原発」!→被爆の中心=日本人のみ狂気の原発推進継続!→ニッポンジン・バカデスカ?
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●電力会社 〈3個〉
〈原発常識25〉■最大の問題は【発送電分離】ができず「電力独占帝国」であること!
〈原発常識26〉■★電事法改正し、「発送電分離」し「総括原価方式」をやめないと、我々の電気料金・税金の上乗せ分は永遠に【原発推進3大プロモーション費用=①政界工作費+②マスコミの国民洗脳費+③地元黙らせ費】に使われる!世界中で日本しかやっていないオバカな「甘い汁システム」!!
〈原発常識27〉■「東電の、東電による、東電のための、政治」=〈1〉日本国最高権力者は「電力会社」!〈2〉「自民党」なんてパシリ!〈3〉「国民の命」なんて虫けら!→「電力会社の延命のために世の中の小さな事件まですべてが動いている」と仮定すると、すべてが非常によく説明できる。
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●結論 〈3個〉
〈原発常識28〉■原発は結局「単なる一部のやつらの醜い【利権】のカタマリ」
〈原発常識29〉■★あらゆる公害は【最終的には企業・政府側が「非」を認める!!〈時間がかかるだけ〉】★これから〈原発ゼロを宣言しないかぎり〉原発推進政党【 安倍自民+《石原次世代》 】が滅びるとしたら・・・その原因は原発・放射能問題!・・・ナゼナラ、これだけは、絶対解決しないから
〈原発常識30〉■もっとも罪深き者、なんじの名前は【安全神話】!
- 2015/07/20(月) 22:48:02 |
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- よく引用されるものを参考までに #-
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東京の葛西臨海公園が海開きしてますが、この周辺の川はセシウムの流れ込みが騒がれた地域。
その後パッタリと報道されなくなってますが、ここについてご意見があれば伺いたく思います。
- 2015/07/21(火) 13:17:26 |
- URL |
- old comber #-
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old comber 様
お問い合わせありがとうございます。
Q> 東京の葛西臨海公園が海開きしてますが、この周辺の川はセシウムの流れ込みが騒がれた地域。
> その後パッタリと報道されなくなってますが、ここについてご意見があれば伺いたく思います。
A>今も東京湾の魚からは微量ですが、セシウムが見つかることがあります。たとえば6月19日に荒川河口域で採れたスズキからは1キログラム当たり0.3ベクレルのセシウムが見つかっています(
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000091488.html⇒1 自治体の検査結果→N04220)。ノンリスクではないと思います。ただし福島に比べてば大幅に安全です。今年、海開きした四倉海水浴場の近くの仁井田川河口で2013/11/17にとれたクロダイからは1キログラム当たりで12400ベクレルのセシウムが見つかっています(
http://www.fra.affrc.go.jp/pressrelease/pr25/260110/20140110.pdf)。東京湾は湾口が狭く外海との海水の交換は行われにくいので(
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E6%B9%BE)、簡単にはセシウムは無くならないと思います。
後は個人の価値観によると思います。(=^・^=)の気分としては太平洋岸で海水浴する気になれません。せっかく北陸新幹線ができたので、日本海側で出る選択肢もあると思います。北陸新幹線で最も海に近い駅は糸魚川だと思いますが、周辺に海水浴場もあります(
http://www.city.itoigawa.lg.jp/dd.aspx?menuid=2712)。危険性は別にして、遊ぶときは余計な事を考えない場所を選ぶのがベストだと言うのが(=^・^=)の価値観です。
- 2015/07/21(火) 19:42:31 |
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- mekenekotama #-
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