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めげ猫「タマ」の日記

一寸気になったどうでもいい事を記事に

トラブルいっぱい福島原発(10月1週)ータンク増設計画1日で破綻-

 東京電力福島原発はトラブルが多く、トラブル毎に記事にするは面倒なので、まとめて記事にしています。先週につづき(1)、10月1週(9月27日から10月2日)もしっかりトラブルが起こっています。10月1日に東京電力は「中長期ロードマップ」を発表し、今後の汚染水の見通しを示しました(2)。翌10月2日に汚染水保有量や汚染水タンクの容量の実績を発表しました(3)。両者が合いません。福島第一の汚染水計画は1日で破綻しました。


1.サブドレンの効果は見えず
 サブドレンは、原子炉やタービン建屋の直ぐ傍の井戸から地下水を汲み上げ、直接にタービン建屋周囲の水位を下げ汚染水の増加量を抑えるものです(1)。9月3日に稼働しました(4)。東京電力の当初の見積もりでは、稼働後は直ちに原子炉・タービン建屋の地下水位が低下するとしていたので即効性を(=^・^=)は期待していました。
サブドレン稼働後に直ぐ下がるはずだった地下水位
 ※(5)を引用
 図-1 サブドレン稼働後の水位予測

 以下に近々と昨年の同時期の汚染水増加量を示します。
サブドレン稼働後も前年同月より多い汚染水増加量
※(6)を集計
 図―2 日々の汚染水増加量

 サブドレン稼働前は去年(2015年)とほぼ同じレベルの汚染水増加量で治まっていましたが、その後は汚染水増加のペースが早まり、いまの所は昨年同時期よりも早いベースで汚染水が増加しています。いまの所は「効果」が見えません。

2.処理水タンクの増設は大幅遅れ
福島第一原発では原子炉やタービン建屋に地下水が流れ込みデブリに触れ汚染水に化けています。このままでは溢れてしまうので、これを汲みあげ汚染水タンクに保管しています(7)。以下に汚染水の処理の流れを示します。
福島第一汚染水処理の流れ
 ※(7)(8)(9)にて作成
 図―3 福島第一原発の汚染水処理の流れ


 タービン建屋からくみ上げた汚染水はSARRYと呼ばれる装置に通され、セシウムとストロンチウムが荒どりされます。セシウムやストロンチウムが無くなる訳ではないので、カスとして装置から排出され福島第一の敷地に保管されます。
 次に「淡水化装置」と呼ばれる装置に送られ原子炉を冷却する水を取り出します。この過程で残りの汚染水の放射性物質濃度は上がります。その後ALPSと呼ばれる装置に通され、さらに汚染水から放射性物質を分離しますが、汚染水から全ての放射性物質が無くなるわけでもありませんし、分離した放射性物質は廃棄物として福島第一原発内に保管されています。ALPSを通した汚染水を東京電力は「処理水」と命名しています(6)。
 10月1日に東京電力は「処理水」用のタンクの増設計画を発表しました(10)。それによると10月1日時点で75万立方メートルを超えるタンクができているはずでした。10月2日に東京電力は10月1日時点のタンク容量を発表しました(3)。それによると実際にできたタンクは20万立方メートル以上少ない約56万立方メートルです。以下に処理水タンクの増設計画と実績を示します。
計画に比べ大幅に少ない処理水タンク容量
 ※(3)(10)にて作成
 図―4 「処理水」タンク増設計画と実績

 計画を発表した10月1日以前から大幅に遅れているようです。この結果、タンクに余裕が無くなっています。以下に処理水のタンク容量と量を示します。
タンク容量に迫る処理水量
※(6)にて作成
 図―5 処理水量とタンク容量

 「処理水」の量はどんどん増えているのですが、タンク容量はこのところあまり増えていません。タンク容量―汚染水量を「空き容量」とし、以下に「空き容量」の推移を示します。
どんどん減っていく処理水タンクの空き容量
 ※(6)を集計
 図―6 処理水タンクの空き容量

 どんどん減っています。このままでは今月中には「空容量」が無くなります。

3.濃縮塩水タンクの解体できず
 図―3に示すSARRYは現在はストロンチウムを荒どりする機能がありますが(11)、従前はセシウムのみを荒どりする機能しかありませんでした(12)。SARRYで処理したと、淡水化装置をとおした後の汚染水は「濃縮塩水」と呼ばれています。他の汚染水より放射性物質濃度が高いので東京電力はALPS等に通し、放射性物質濃度が濃縮塩水にくらべれば低い汚染水に換える作業を実施してきました(11)(13)。この結果、濃縮塩水はほぼなくなりました(3)。当然、濃縮塩水用のタンクは不要になりました。それどころか、スペースを占有するので邪魔な存在です。10月1日に東京電力は濃縮塩水タンクの解体計画を発表しました(10)。以下に計画と実績を示します。
なかなか解体が再開しない濃縮塩水タンク
 ※(3)(10)にて作成
 図―7 濃縮塩水タンク解体計画と実績 

 計画では9月初旬から解体を始める予定でしたが、いまの所は進んでいません。解体が進まなければ、跡地に新たな汚染水タンクが作れないので、汚染水タンクはこれからもひっ迫すると思います。
 
4.SARYYから汚染水漏れ
 SARRYは図―3に示すように、第一段目の汚染水処理装置です。福島第一原発内では最も高濃度の汚染水を扱う設備です。
 2015年9月29日5時半頃に下請けさんが、SARRYのホースを途中で持ち上げ固縛したら、汚染水が流れづらくなり、シンク(流し台)から溢れてしまいました。漏れた汚染水は3m×4mの範囲に深さ3mmで広がり、約210リットルとのことです。汚染水を分析したら1リットル当たりで
 セシウム134  28万ベクレル
 セシウム137 120万ベクレル
 セシウム(合計)148万ベクレル
 全ベータ    330万ベクレル
の放射性物質が見つかりました(14)(15)。

5.タンク堰から汚染水漏れ
 9月30日午前8時前に、H1東タンクエリアで、汚染水タンクを囲む堰のボルト部から1分間に1滴程度の水がたれているのを下請けさんが見つけました。その後に現場を確認したら、このタンクエリアの鋼製の内堰のボルト部4箇所において、幅10~30cm程度のにじみ痕が見つかりました(16)(17)。以下ににじみ跡のうち一つを示します。
汚染水タンク堰で見つかったにじみ
※(17)を引用
 図-8 汚染水タンクの堰で見つかったにじみ

 このところ堰からの汚染水漏れが相次いでいます(18)(19)。以下に9月中の堰からの汚染水漏れ箇所を示します。
汚染水漏れ堰位置と排水路・観測井戸
 ※(10)(17)(20)(22)(23)にて作成
 図―9 汚染水漏れ堰位置の排水路・汚染水観測井戸

 図に示しように汚染水漏れ堰は広範囲に広がっています。汚染水漏れのエリアには排水路が走っています。以下に排水路の下流部にC-2-1地点の放射性物質濃度を示します。
9月に入り頻繁に全ベータが見つかる排水路の水
 ※1(22)を集計
 ※2 NDは検出限界未満を示す
 図―10 排水路C-2-1地点の放射性物質濃度

 図に示すように9月に入り全ベータが恒常的に見つかるようになりました。以下にE-1,E-10井戸の全ベータ濃度をしめします。
9月になり全ベータが上昇したE-1、見つかるようになったE-10井戸
※1(23)を集計
 ※2 NDは検出限界未満を示す
 図―11 E-1,E-10井戸の全ベータ濃度

 E-1井戸では9月に入り全ベータが突然上昇し、高い値を続けています。E-10井戸ではこれまで見つかる事のなかった全ベータが見つかるようになりました。
 9月になってから起こったことを纏めると
 ①汚染水タンク堰からの汚染水漏れが見つかるようになった。
 ②排水路から全ベータが見つかるようになった
 ③E-1井戸の全ベータが上がり、E-10井戸から全ベータが見つかるようになった。
全てが9月からです。汚染水タンクから汚染水漏れが続き、全体を押し上げたとすればように説明がつきます。


おまけ
 東京電力福島第一原発事故で発生した汚染水を海に流出させたとして、福島県警本部は9月2日、公害犯罪処罰法違反の疑いで、法人としての東電と、同社の広瀬直己社長、勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長ら新旧役員32人を書類送検しました(24)。
東電社員様送検を報じる福島のローカルTV局(FCT)
 ※(25)をキャプチャー
 図-12 東電幹部送検を報じる福島県のローカルTV局(FCT)

 だたし、容疑に対する32人の認否や、県警が書類送検時につける処分に関する意見の内容は明らかにしていないとのことです(24)。検察が起訴するかは分かりませんが、検察審査会で2回起訴相当なれば「裁判」になります。

<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら(ブログ図表)を参照ください。
 トラブル続きの福島原発、福島の方は不安だと思います。
 東北のブロック紙の河北新報は10月3日付の社説「福島の風評被害/敬遠ムード定着防ぐ対策を」で、福島を避ける行為を「放射線に対する懸念から生じる漠然とした不安」と決めつけ「風評被害」としていました(26)。でも
 ①福島県県北地方を中心に死者(葬式)が増えている(27)
 ②福島では女の子が男の子より多く生まれている(28)
等の現象が起きています。そして原発事故から4年7ヶ月経ってもトラブル続きの福島第一原発です。福島に対する不安は「漠然とした不安」ではなく、「具体的事実に基づく不安」です。これは福島の方も同じだと思います。
 福島県郡山市の全袋検査数が12万件を超えました。
12万を超えた福島県郡山市の全袋検査数
 ※(29)を集計
 図―13 福島県産米の全袋検査数(上位5市)

 福島は新米の季節です。福島県郡山市のお米は「あさか舞」といって美味しくて安全だそうです(30)。福島県は福島産は安全だと主張しています(31)。でも、福島県郡山市のスーパーのチラシには福島産はありません。
他県産はあっても福島産が無い福島県郡山市のスーパーのチラシ
 ※(14)を引用
 図―14 福島産が無い福島県郡山市のスーパーのチラシ

 当然の結果です。(=^・^=)も福島県郡山市の皆様も見習い「フクシマ産」は食べません。

―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(9月4週)ー汚染水処理は危機的状態-
(2)中長期ロードマップ|東京電力中の「
中長期ロードマップの進捗状況⇒2015年10月1日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第22回事務局会議)」
(3)福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第221報)|東京電力
(4)(コメント)福島第一原子力発電所におけるサブドレン他水処理施設の運用開始について|東京電力
(5)第35回特定原子力施設監視・評価検討会
(6)プレスリリース|東京電力中の「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について 」
(7)原子炉の安定化|東京電力
(8)めげ猫「タマ」の日記 SR処理水について
(9)サリー (機械) - Wikipedia
(10)(2)中の「【資料3-1】汚染水対策(9.85MB)」
(11)めげ猫「タマ」の日記 SR処理水について
(12)サリー (機械) - Wikipedia
(13)[PDF]資料4-2 汚染水浄化処理の状況等について [PDFファイル
(14)2015年9月29日第二セシウム吸着装置(サリー)のサンプリングラックからの溢水について(PDF 78.8KB)
(15)2015年9月29日福島第一原子力発電所の状況について(日報) 【午後3時現在】
(16)2015年9月30日福島第一原子力発電所の状況について(日報) 【午後3時現在】
(17)2015年9月30日H1東タンクエリア内堰からの水のにじみについて(PDF 263KB)
(18)めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(9月2週)―下請けさんの死亡が今年6人目―
(19)めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(9月3週)ーサブドレン稼働2週間、汚染水の増加は加速-
(20)2015年9月29日福島第一原子力発電所構内排水路のサンプリングデータについて(PDF 314KB
(21)サンプリングによる監視|東京電力中の「タンクの水漏れに関するモニタリング」
(22)(21)中の「南放水口・排水路」
(23)(21)中の「H6エリア周辺観測孔」
(24)東電社長ら32人書類送検 県警、汚染水海洋流出の疑いで | 東日本大震災 | 福島民報
(25)ダイジェスト動画|ゴジてれ Chu!|福島中央テレビ中の「2015年10月2日(金)放送」
(26)福島の風評被害/敬遠ムード定着防ぐ対策を10月3日 河北新報
(27)めげ猫「タマ」の日記 福島県県北地域の死者数は8%増、会津は別(対2010年3-8月)
(28)めげ猫「タマ」の日記 3ヶ月連続で女の子が多く生まれる福島県
(29)ふくしまの恵み安全対策協議会 放射性物質検査情報を10月1日に閲覧
(30)郡山の味自慢「あさか舞」/郡山市
(31)安全が確認された農林水産物(公開用簡易資料) - 福島県ホームページ
(32)デジタルちらし
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  1. 2015/10/03(土) 19:42:11|
  2. -
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

>期待していました
嘘つきに期待した貴方が悪い(笑)
書類送検されるだけでも、普通のにんげんなら、相当ビビる。でもこの嘘つき集団は安倍達と同じでビビらない。どうせ無罪さ、なんてせせら笑っているんだろう(怒)じゃなきゃ東電の役員なんざあ勤まらんよ。
  1. 2015/10/04(日) 02:22:46 |
  2. URL |
  3. 武尊43 #mWyI0ZzU
  4. [ 編集 ]

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