福島第一原発汚染水の10月1週(9月28日から10月4日)の状況を纏めてました。先週に続き(1)、過去最高濃度(新記録)の放射性物質が見つかっています。
①外洋からは相変わらずの見つかる放射性物質
②港湾内海水から排水基準超のトリチウム、地下水ドレン運用困難
③地下水バイパス井戸や山側井戸から過去最高のトリチウム
④海岸付近の井戸からは今週も過去最高の放射性物質
⑤福島第一原発の排水路からは法令限度を超えた汚染水は「海」へ
⑥第三者機関とより低い東電のサブドレイン測定結果
1.外洋からは相変わらずの見つかる放射性物質
原発事故から4年半が経過しましたが、外洋からは相変わらず放射性物質が見つかっています。

※1 (4)(5)(6)(7)で作成
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
※4 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(8)
図―1 福島第一原発近傍外洋の放射性物質濃度
以下に5,6号機放水口北側の放射性物質濃度を示します。

※(5)を集計
図―2 5,6号機放水口北側の放射性濃度
全ベータの1リットル当たり16ベクレルは、過去最高ではありませんが歴代2位の記録です。ちなみに過去最高は1リットル当たり17ベクレルです(5)。東電は色々と対策を講じているようですが(9)、効果が見えません。
2.港湾内海水から排水基準超のトリチウム、地下水ドレン運用困難
港湾内からはもっと高濃度の汚染水が見つかっています。

※1 (5)(10)で作成
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
図―3 福島第一港湾内の放射性物質濃度
福島第一では汚染水が海に流れ出すの防止するため。海岸に汚染水の流れをブロックする海側遮水壁の工事を進めています(11)。9月19日には打設工事が完了し(12)、海側遮水壁からの汚染水が流出し難くなりました。その結果として海側遮水壁内側の水位が上昇しています。

※1(13)に加筆
※2
緑は潮位、他の色は遮水壁内側水位(複数点)
※3 OPは小名浜港を基準とした海抜(14)
図―4 海側遮水壁内側の汚染海水水位
どんどん上昇しています。さらに工事が進めばもっと上昇し、溢れ出します。汚染海水をくみ上げてやる必要があります。以下に海側遮水壁内側(3,4号機取水口間および4号機スクリーン)のトリチウム濃度を示します。

※1(5)を集計
※2 海側遮水壁内側のサンプリングポイントはこの2地点のみ
※3 NDは検出限界未満(見つからない事)を示す。
図―5 海側遮水壁内側(3,4号機取水口間および4号機スクリーン)のトリチウム濃度
どんどん上昇し、1リットル当たり1500ベクレルをおおきく超えています。一方で海に排出できるトリチウム濃度の上限は1リットル当たり1500ベクレルです(15)。東京電力はトリチウムは浄化できないと明言しています(16)。(=^・^=)の見る限り福島第一の汚染水タンクに余裕がないので(17)、汲み上げて保管することは事実上無理です。これまで汲み上げの実績がなく、いまのところ予定があるのは10月5日に10トン汲み上げるだてです(18)。
東京電力は海側遮水壁の効果で、放射性物質の放出量が大幅に減らせると主張しています(19)。

※(19)を抜粋・加筆
図―6 海側遮水壁で放射性物質の放出量が大幅に減らせると主張する東京電力
セシウムについて言えば40分の1になると主張しています。以下に海側遮水壁側の1~4号機取水口内南側のセシウム137濃度の前年(2014年)との比較を示します。

※(5)にて作成
図ー7 1~4号機取水口内南側のセシウム137濃度
(=^・^=)のみた感じでは明確に下がっているとは思えません。
3.地下水バイパス井戸や山側井戸から過去最高のトリチウム
地下水バイパスは、福島第一原発の汚染水対策として原子炉建屋に侵入する前の地下水を事前に汲み上げ汚染水の発生を抑えようとするものです(20)。海に流す水からは「トリチウム」が見つかっているので、(=^・^=)は立派な汚染水だと思います。東京電力は福島第一原発地下水バイパスの山側に井戸を掘って放射性物質濃度を調べています(21)(22)。また地下水バイパスからくみ上げた汚染水の濃度も井戸毎に調べています(22)。以下に放射性物質濃度を示します。

※1 (21)(22)にて作成
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
図―8 地下水バイパスと山側(上流井戸)の放射性物質濃度
このうちトリチウムの1リットル当たりの値で
G-1 10,000ベクレル
地下水バイパスNo9 360ベクレル
地下水バイパスNo10 2,400ベクレル
が過去最高(新記録)です。
このうち地下水バイパスには12本の井戸があるのですが(20)、全体でのこれまでの最高記録はNo12井戸の1リットル当たり2,300ベクレルでしたので(23)、地下水バイパスとしても最高記録です。以下に地下水バイパスNo10井戸のトリチウム濃度の推移を示します。

※(22)を集計
図―9 地下水バイパスNo10井戸のトリチウム
どんどん上昇しています。この他にE-1やE-10井戸の全ベータも気になるのですが、昨日(10月3日)の記事にかきましたので(17)、そちらをご覧ください。
4.海岸付近の井戸からは今週も過去最高の放射性物質
東京電力は福島第一原発の海岸付近やタービン建屋周りの井戸の地下水の放射性物質濃度を調べています(5)。以下にそこでの放射性物質濃度を示します。

※1 (5)を集計
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
図―10 海岸付近の井戸の放射性物質濃度
このうち1リットル当たりで
No1井戸の全ベータ 7,300ベクレル
No1-8井戸のセシウム 2,990ベクレル
No2-3井戸のトリチウム 3,700ベクレル
No2-8井戸の全ベータ 8,600ベクレル
No3-4井戸の全ベータ 160ベクレル
トリチウム 1,400ベクレル
は過去最高(新記録)です。どれも気になるのですが、No1井戸の全ベータ濃度を示します。

※(5)を集計
図ー11 No1井戸の全ベータ濃度の推移
原発事故から4年7ヶ月が経過し、海岸に汚染水が迫っている感じです。海側遮水壁の工事は進んでいますが2項に記載した通り、現状では汲み上げることは困難です。
5.福島第一原発の排水路からは法令限度を超えた汚染水は「海」へ
福島第一原発構内にには幾つもの排水路があります。

※(24)を転載
図―12 福島第一原発内の排水路
当然ながら福島第一構内は放射性物質で汚染されており、排水路に流れ込みます。全ベータ濃度のおよそ半分がストロンチウム90で(8)、ストロンチウム90の法令限度は1リットル当たり30ベクレルですので(2)、全ベータでみれば1リットル当たり60ベクレルになります。このうちK排水路では法令限度を超えた汚染水の流れが確認されています。
K排水路では10月2日に法令限度を超える1リットル当たりで
全ベータ 81ベクレル
の汚染水が流れました(25)。以下にK排水路の放射性物質濃度を示します。

※(26)を集計
図―13 K排水路の放射性物質濃度
東電の発表(27)を見ると排水路は遮水壁を超えて海に繋がっているので、2項に記載した「海側遮水壁」が完成しても排水路の汚染水はブロックされません。
6.第三者機関とより低い東電のサブドレイン測定結果
サブドレンが9月3日に運用を開始してから1ヶ月が経過しました(28)。東京電力はサブドレイン放流水の濃度と放水量を公表しています(29)(30)。そこで濃度×放水量の累積でどれだけのトリチウムが放出されたか集計しました。

※(29)(30)を集計
図ー14 サブドレンのトリチウム累積放出量
累計で23億ベクレルを超えました。濃度は東京電力と他の機関(東電は第三者機関と呼ぶ)で二重に測定されています。

※(29)を集計
図―15 サブドレン排出水のトリチウム濃度
東京電力が低く出ています。このようなことが偶然に起こる確率をt検定と呼ばれる手法(31)で計算したら0.98%で、およそ偶然とは思えません。東京電力のトリチウム検査は他より低くでるみたいです。
以下に偶然に起こる確率の計算結果を示します。
表―1 偶然に起こる確率の計算結果
※1(31)を参考にExcelにて計算
※2 両側、一対で計算

<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら(
ブログ図表)を参照ください。
原発事故から4年7ヶ月たっても放射性物質は垂れ流され続けています。そして福島島では女の子が男の子より多く生まれる奇妙な現象が発生し(32)、県北地方では死者(葬式)が増えています(33)。これでは福島の方は不安だと思います。
福島産米の全袋検査数は10月3日時点で100万件を突破しました(34)。福島県南相馬市では東日本大震災からの復興を祈る「豊穣(ほうじょう)祈願プロジェクト」として、IGF所属のレスラー5人とJAそうま農業青年連盟、相馬農高、原町二中などから約70人が参加した稲刈りが行われたそうです(35)。福島は新米のシーズンです。福島県はお米も含め福島産は美味しく安全であると主張し、福島産を避ける行為を「風評被害」と批難しています(36)。でも、福島県南相馬市のスーパーのチラシには福島産はありません。

※(37)を引用
図―16 福島産が無い福島県南相馬市のスーパーのチラシ
当然の結果です。(=^・^=)も福島県南相馬市の皆様を見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発汚染水(9月4週)ー港湾内から排水基準超えのトリチウム・地下水ドレンの運用困難?-(2)
サンプリングによる監視|東京電力(3)
報道配布資料|東京電力(4)(2)中の「1.海水(港湾外近傍)」を8月30日に閲覧
(5)(3)中の「福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果」
(6)
2015年8月14日福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果(PDF 255KB)PDF (7)(2)中の「南放水口・排水路」
(8)
めげ猫「タマ」の日記 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(9)
汚染水対策の主な取り組み|東京電力(10)(3)中の「1~4号機タービン建屋東側および港湾のモニタリング」
(11)
海側遮水壁|東京電力(12)
2015年9月24日福島第一原子力発電所 海側遮水壁打設工事完了について(PDF 541KB)(13)
中長期ロードマップ|東京電力中の「中長期ロードマップの進捗状況⇒2015年10月1日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第22回事務局会議)⇒【資料3-1】汚染水対策(9.85MB)」
(14)
2. 福島第一原子力発電所の現状とこれまでに実施してきた対策|東京電力(15)
福島第一原子力発電所のサブドレン水等の排水に対する福島県漁業協同組合連合会からの要望書への回答について|東京電力(16)
サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力(17)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(10月1週)ータンク増設計画1日で破綻-(18)
地下水ドレン 5日に試験運用 | 東日本大震災 | 福島民報(19)
2015年1月16日(いわき市漁協組合員説明会資料)海洋汚染をより確実に防止するための取り組み(PDF 2.21MB)(20)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の地下水バイパスについて(21)(2)中の「H4エリア周辺観測孔」および「H6エリア周辺観測孔」
(22)(3)中の「福島第一 地下水バイパス揚水井 分析結果 」
(23)
2015年10月3日福島第一 地下水バイパス揚水井 分析結果(PDF 160KB) (24)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発―2週連続で下請けさんがケガ―(25)
2015年10月3日 福島第一原子力発電所 K排水路排水口放射能分析結果(PDF 67.9KB)(26)(3)中の「福島第一原子力発電所 K排水路排水口放射能分析結果」
(27)
2015年9月29日 福島第一原子力発電所構内排水路のサンプリングデータについて(PDF 314KB)(28)
(コメント)福島第一原子力発電所におけるサブドレン他水処理施設の運用開始について|東京電力(29)(3)中の「サブドレン・地下水ドレン浄化水分析結果」
(30)
集水タンク・一時貯水タンクの運用状況|東京電力(31)
t検定 - Wikipedia(32)
めげ猫「タマ」の日記 3ヶ月連続で女の子が多く生まれる福島県(33)
めげ猫「タマ」の日記 福島県県北地域の死者数は8%増、会津は別(対2010年3-8月)(34)
ふくしまの恵み安全対策協議会 放射性物質検査情報(35)
レスラーと地元高校生らタッグ 南相馬 「元氣米」収穫 | 県内ニュース | 福島民報(36)
「おいしい ふくしま いただきます!」キャンペーン - 福島県ホームページ(37)
イオンスーパーセンター | ネットチラシ中の「南相馬店」
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- 2015/10/04(日) 19:50:01|
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