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めげ猫「タマ」の日記

一寸気になったどうでもいい事を記事に

トラブルいっぱい福島原発(10月3週)―サブドレイン効果が見えず―

東京電力福島原発はトラブルが多く、トラブル毎に記事にするは面倒なので、まとめて記事にしています。先々週につづき(1)、10月3週(10月11日から17日)もしっかりトラブルが起こっています。

1.サブドレイン効果が見えず
 サブドレンは、原子炉やタービン建屋の直ぐ傍の井戸から汚染地下水を汲み上げ、直接にタービン建屋周囲の水位を下げ汚染水の増加量を抑えるものです(2)。9月14日に排水を始めてから(3)一ヶ月がすぎました。これについて福島県の地方紙の福島民友は「『汚染水』なお1日300トン サブドレン放出1カ月」との表題で
「『11月ごろには効果が表れてくるといいのだが...』。資源エネルギー庁の木野正登汚染水対策官は、はやる気持ちを抑えながら話す。建屋に流れ込む1日約300トンの地下水は建屋内の高濃度汚染水と混ざり、約300トンの新たな汚染水となって毎日増え続ける。政府と東電はサブドレンからの地下水くみ上げで一日も早く流入量を減らしたいが、様子見の段階だ。」
と報じていました(4)。
 サブドレンの運用は9月3日から始まったので(5)、9月3日以降の汚染水増加量を去年(2014年)と比較してみました。
サブドレン稼働前の去年より多い福島第一原発汚染水増加量
※(6)を集計
 図―1 福島第一の汚染水増加量

 サブドレンが稼働していない昨年より汚染水の増加が多くなっています。東電は当初はサブドレン稼働後一ヶ月で効果が出ると主張していました(8)。
サブドレン稼働後に直ぐ下がるはずだった地下水位
 ※(7)を引用
 図-2 サブドレインの効果は一ヶ月で出ると主張していた東京電力

10月14日に福島第一原発について検討する「第37回特定原子力施設監視・評価検討会」が開かれました(8)。そこでも見通しがしめされましたが、以前はあった時間スケール消えていました。
タイムスケールな無くなった東電のサブドレン計画
 ※(9)を抜粋加筆
 図―3 時間スケールが消えた東電のサブドレイン計画

2.水位差が広がる
 福島第一ではタービン建屋や原子炉建屋への地下水の流れ込みが汚染水増加の原因と東京電力は説明しています(10)。汚染水が流れ込むのはタービン建屋の水位が周囲より低いからです。水の流速は水位の差が大きいとおおきくなります(11)。タービン建屋の水位を上げれば流速は小さくなり、地下水の流入量は抑えられ汚染水の増加量を少なくすることができます。でも高くし過ぎるとタービン建屋内の汚染水が外に漏れてしますので、周囲よりタービン建屋の水位を少し低くしタービン建屋内の汚染水が漏れ出ないようにしています(12)。以下にタービン建屋周辺の地下水位を示します。
サブドレン稼働後差が広がった地下水位
 ※1(13)を引用・加筆
 ※2 OPは小名浜を基準とした海抜(12)
 図-4 タービン建屋周囲の地下水位

地下水位は一定でなく、ばらつきがあります。どこか一つでもタービン建屋の水位を下回るとそこから汚染水が漏れるのでタービン建屋の水位は最も低い場所より小さくしなくてはなりません。
 9月3日にサブドレンが稼働しました。この時の水位は1番高い緑が7.5m程度、もっとも低い赤が4.5m程度で差は3mでしたが、10月中旬には緑は約7.5mですが、赤は3.5m近くまで低下し差は4mになりまいた。タービン建屋の水位は最も低い「赤」に併せて下げる必要がありますので、逆に水位差は大きくなっています。これでは汚染水増加を抑制する効果はありません。サブドレインの目的は地下水位を下げることでなく、地下水位のばらつきをできるだけ小さくし、全体としてタービン建屋と周囲の地下水位の落差を小さくし汚染水の増加を抑制することになります。単に地下水位が下がっただけでは効果が出ません。
 以下に観測点の位置を示します。
地下水位観測点
 ※(13)を引用・加筆
 図―5 地下水位の観測点

3.処理水タンクはほぼ満タン状態
 福島第一原発では原子炉やタービン建屋に地下水が流れ込みデブリに触れ汚染水に化けています。このままでは溢れてしまうので、これを汲みあげ汚染水タンクに保管しています(7)。以下に汚染水の処理の流れを示します。
福島第一汚染水処理の流れ
 ※(14)(15)(16)にて作成
 図―6 福島第一原発の汚染水処理の流れ


 タービン建屋からくみ上げた汚染水はSARRYと呼ばれる装置に通され、セシウムとストロンチウムが荒どりされます。セシウムやストロンチウムが無くなる訳ではないので、カスとして装置から排出され福島第一の敷地に保管されます。
 次に「淡水化装置」と呼ばれる装置に送られ原子炉を冷却する水を取り出します。この過程で残りの汚染水の放射性物質濃度は上がります。その後ALPSと呼ばれる装置に通され、さらに汚染水から放射性物質を分離しますが、汚染水から全ての放射性物質が無くなるわけでもありませんし、分離した放射性物質は廃棄物として福島第一原発内に保管されています。ALPSを通した汚染水を東京電力は「処理水」と命名しています(17)。
 1項、2項で記載した通り今の所はサブドレンは上手くいっていません。一方で、タンクに余裕が無くなっています。以下に処理水のタンク容量と量を示します。
保管容量に迫る処理水容量
 ※(17)にて作成
 図―7 処理水量とタンク容量

 「処理水」の量はどんどん増えているのですが、タンク容量はこのところあまり増えていません。タンク容量―汚染水量を「空き容量」とし、以下に「空き容量」の推移を示します。
どんどん減っていく処理水タンク空容量
  ※(6)を集計
 図―8 処理水タンクの空き容量

 どんどん減っています。このままでは11月初旬には「空容量」が無くなります。

4.地下水ドレンの汲みあげできず
 福島第一では汚染水が海に流れ出すの防止するため。海岸に汚染水の流れをブロックする海側遮水壁の工事を進めています(18)。9月19日には打設工事が完了し(19)、海側遮水壁からの汚染水が流出し難くなりました。その結果として海側遮水壁内側の水位が上昇しています(13)。溢れさす前に汚染海水をくみ上げてやる必要があります。以下に海側遮水壁内側(3,4号機取水口間および4号機スクリーン)のトリチウム濃度を示します。
排水基準の倍程度で推移する海側遮水壁内側のトリチウム濃度
 ※1(20)を集計
 ※2 海側遮水壁内側のサンプリングポイントはこの2地点のみ
 ※3 NDは検出限界未満(見つからない事)を示す。
 図―9 海側遮水壁内側(3,4号機取水口間および4号機スクリーン)のトリチウム濃度

どんどん上昇し、1リットル当たり1500ベクレルをおおきく超えています。一方で海に排出できるトリチウム濃度の上限は1リットル当たり1500ベクレルです(21)。東京電力はトリチウムは浄化できないと明言しています(22)。(=^・^=)の見る限り福島第一の汚染水タンクに余裕がないので(23)、汲み上げて保管することは事実上無理です。
 以下に海側遮水壁内側の水位と地下水ドレンの実績を示します。
殆んど実施されていない地下水ドレンの汲み上げ
 ※1(13)を引用・加筆
 ※2 色違いは水位観測箇所の違い(複数個所で測定)
 図―10 海側遮水壁内側の水位と地下水ドレンの運用実績

 地下水ドレンか稼働したのは10月5日と7日の2回で図に示すようにそれ程の量ではありません。
 10月8日に海側遮水壁の掃除を実施したら、会見の説明では(24)ゴミがとれて隙間ができてそこから汚染海水が流れだしたためだそうです。海側遮水壁の工事は10月中に完了するので(25)、また水位は上昇すると思います。

5.核燃料が変形
 9月16日に東京電力は福島第1原発3号機の使用済み核燃料プール内の調査で、がれきの下敷きになっていた核燃料集合体2体で、上部の取っ手(ハンドル)が変形しているのが見つかったと発表しました(26)。以下に変形した核燃料集合体を示します。
変形が見つかった3号機核燃料プールの核燃料集合体
 ※(27)を引用
 図ー11 取っ手が変形した核燃料集合体

8月2日にも4本の核燃料集合体で変形が見つかっているので(28)、合計で6本です。瓦礫の撤去がすすみ良く見えるようになればもっと増えそうな気がします。
 

<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら(ブログ図表)を参照ください。
 トラブル続きの福島原発、福島の方は不安だと思います。まして福島では
 ①福島市や郡山市では葬式(死者数)が増えている(29)(30)
 ②女の子が男の子より多く生まれている逆転現象(31)
等の現象が起きています。
 原発事故から4年7ヶ月経った今も避難区域になっいる福島県富岡町産の米10.7トンの全量全袋検査が9月16日に行われました(32)。
富岡の米は市場に回らないと報じる福島のローカルTV局(FCT)
 ※(32)をキャプチャー
 図―12 富岡町産の米の全袋検査を報じる福島のローカルTV局(FCT)

 報道(33)を見ているとやたら「市場に出回らない」こと強調していました。福島の全袋検査は30kg単位で行われるので(34)、343件(10.7÷0.03)の検査結果があるはずですが、検査結果は239件でした(35)。残りの104袋はどうなったのでしょうか?
 それはともかく福島は新米の季節です。福島県鏡石町は、町の37.3%が水田で(36)、大変に米作りが盛んな町です。田んぼアートもあるそうです(37)鏡石町産の米も36,060袋となりました(35)。福島県は福島産米は安全だと主張しています(38)。でも、福島県鏡石町のスーパーのチラシには福島産米はありません。
他県産はあっても福島産米が無い福島県鏡石町のスーパーのチラシ
 ※(39)を引用
 図―13 福島産米が無い福島県鏡石町のスーパーのチラシ

 当然の結果です。(=^・^=)も福島県鏡石町の皆様も見習い「フクシマ産」は食べません。

―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(10月1週)ータンク増設計画1日で破綻-
(2)サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力
(3)集水タンク・一時貯水タンクの運用状況|2015年9月|東京電力
(4)「汚染水」なお1日300トン サブドレン放出1カ月:福島民友ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet
(5)(コメント)福島第一原子力発電所におけるサブドレン他水処理施設の運用開始について|東京電力
(6)プレスリリース|東京電力中の「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について 」
(7)第35回特定原子力施設監視・評価検討会
(8)第37回特定原子力施設監視・評価検討会 | 原子力規制委員会
(9)(8)中の「資料3:陸側遮水壁の進捗状況報告【PDF:9MB】」
(10)汚染水対策の主な取り組み|東京電力
(11)水力発電所の出力と有効落差の関係
(12)2. 福島第一原子力発電所の現状とこれまでに実施してきた対策|東京電力
(13)(8)中の「資料2:サブドレン他水処理施設の本格運転及び海側遮水壁閉止の状況について【PDF:5MB】」
(14)原子炉の安定化|東京電力
(15)めげ猫「タマ」の日記 SR処理水について
(16)サリー (機械) - Wikipedia
(17)プレスリリース|東京電力中の「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について 」
(18)海側遮水壁|東京電力
(19)2015年9月24日福島第一原子力発電所 海側遮水壁打設工事完了について(PDF 541KB)
(20)報道配布資料|東京電力中の「福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果」
(21)2. 福島第一原子力発電所の現状とこれまでに実施してきた対策|東京電力
(22)福島第一原子力発電所のサブドレン水等の排水に対する福島県漁業協同組合連合会からの要望書への回答について|東京電力
(23)めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(10月1週)ータンク増設計画1日で破綻-
(24)【10月15日】東京電力 記者会見 - 2015/10/15 17:30開始 - ニコニコ生放送
(25)2015年9月9日海側遮水壁閉合作業について(PDF 519KB)
(26)2015年10月16日福島第一原子力発電所3号機使用済燃料プール内の水中カメラによる調査結果(PDF 119KB)
(27)東京電力 写真・動画集| 福島第一原子力発電所3号機使用済燃料プール内の水中カメラによる調査結果
(28)めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(8月2週)―下請けさんがWで死亡―
(29)めげ猫「タマ」の日記 福島市の死者数13%増(対2010年1-9月)、会津は別
(30)めげ猫「タマ」の日記 福島県郡山市の死者数は9.2%増(対2010年3-9月)、でも会津は別
(31)めげ猫「タマ」の日記 3ヶ月連続で女の子が多く生まれる福島県
(32)富岡町産米今年も安全 楢葉で全袋検査 | 県内ニュース | 福島民報
(33)ダイジェスト動画|ゴジてれ Chu!|福島中央テレビ中の「2015年10月16日(金)放送」
(34)全量全袋検査の検査結果 - 福島県ホームページ
(35)ふくしまの恵み安全対策協議会 放射性物質検査情報を10月17日に閲覧
(36)統計資料|鏡石町公式ホームページ[福島県]
(37)かがみいし2014田んぼアート|鏡石町公式ホームページ[福島県]
(38)「おいしい ふくしま いただきます!」キャンペーン - 福島県ホームページ
(39)イオンスーパーセンター | ネットチラシ中の「鏡石店」
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  1. 2015/10/17(土) 19:44:27|
  2. -
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

(=^・^=)さんへ

コンビニやスーパーの弁当とファミレス等に行ったらダメだよ!食わされちゃうからね(笑)
地下の汚染水を汲み切れないんだから、フクシマは100年掛かっても廃炉に出来ない。建屋内も汚染水も高濃度過ぎてロボットだって直ぐ壊れる訳だから、補修なんて何時まで経っても出来やしないってこと。
  1. 2015/10/17(土) 21:14:06 |
  2. URL |
  3. 武尊43 #mWyI0ZzU
  4. [ 編集 ]

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