福島第一原発汚染水の11月3週(11月9日から15日)の状況を纏めてました。先週に続き(1)、過去最高濃度(新記録)の放射性物質が見つかっています。
①外洋からは全ベータ等の放射性物質
②港湾内海水から去年より高い全ベータ、海側遮水壁の効果が見られず。
③地下水バイパス井戸や山側井戸からは排水基準を超える放射性物質
④海岸付近の井戸から高濃度の放射性物質
⑤福島第一原発の排水路からは法令限度を超えた汚染水は「海」へ
⑥サブドレンからとトリチウム放出量は59億ベクレル
1.外洋からは全ベータ等の放射性物質
原発事故から4年8ヶ月になりましたが、外洋からは相変わらず放射性物質が見つかっています。

※1 (4)(5)で作成
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
※4 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(6)
図―1 福島第一原発近傍外洋の放射性物質濃度
以下に南放水口付近の放射性物質濃度を示します。

※1(5)を集計
※2 NDは検出限界未満を示す。
図―2 南放水口付近の放射性物質濃度
事故から4年8ヶ月以上が経過しましたが下がる気配がありません。特に全ベータは1リットル当たりで
10月25日 8.8ベクレル
11月 2日 11ベクレル
11月12日 14ベクレル
と2週連続して上昇しています。
2.港湾内海水から去年より高い全ベータ、海側遮水壁の効果が見られず。
港湾内からはもっと高濃度の汚染水が見つかっています。

※1 (5)(7)で作成
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
※4 ストロンチウム90はSR90と略し、採取日は10月12日
図―3 福島第一港湾内の放射性物質濃度
このうち港湾内北側の1リットル当たりで
ストロンチウム90 0.45ベクレル
は過去最高です。
東京電力は福島第1原発の港湾内に壁を造り、汚染地下水の海への流出を防ぐ「海側遮水壁」の工事を10月26日に完成させました(8)。東京電力は11月5日に海側遮水壁完成後に放射性物質濃度が下がったと広報し(9)、さも効果があったような発表をしています。効果があれば汚染水の流れが悪くなり、全体の汚染水濃度が下がっていいはずです。以下に港湾口の2014年と15年9~11月の全ベータ濃度を示します。

※1(5)を集計
※2 NDは検出限界未満を示す。
図―4 港湾口の全ベータ濃度
港湾口は港湾と外洋の境界に当たる場所です。ここでの放射性物質濃度が低減されなれば外洋への流出が防止できたことになりません。図―4に示す通り、海側遮水壁ができる前の2014年は全ベータは見つかっていません。でも海側遮水壁が完成した10月26日以降を見ると全ベータが見つかっています。去年より海側遮水壁が完成した今年の方が全ベータ濃度が高くなっています。現時点では海側遮水壁の効果は見えません。
3.地下水バイパス井戸や山側井戸からは排水基準を超える放射性物質
地下水バイパスは、福島第一原発の汚染水対策として原子炉建屋に侵入する前の地下水を事前に汲み上げ汚染水の発生を抑えようとするものです(10)。海に流す水からは「トリチウム」が見つかっているので、(=^・^=)は立派な汚染水だと思います。東京電力は福島第一原発地下水バイパスの山側に井戸を掘って放射性物質濃度を調べています(11)。また地下水バイパスからくみ上げた汚染水の濃度も井戸毎に調べています(12)。以下に放射性物質濃度を示します。

※1 (11)(12)にて作成
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
図―5 地下水バイパスと山側(上流井戸)の放射性物質濃度
地下水バイパスやサブドレンの排水基準は1リットル当たりで
全ベータ 5ベクレル
トリチウム 1500ベクレル
ですので(2)、多くの場所で排水基準を超えた放射性物質が見つかっています。
以下にE-10井戸のトリチウム濃度を示します。

※1(10)を集計
※2 NDは検出限界未満を示す。
図―6 E-10のトリチウム濃度
このところ上昇傾向が続いています。
4.海岸付近の井戸から高濃度の放射性物質
東京電力は福島第一原発の海岸付近やタービン建屋周りの井戸の地下水の放射性物質濃度を調べています(5)。以下にそこでの放射性物質濃度を示します。

※1 (5)を集計
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
図―7 海岸付近の井戸の放射性物質濃度
このうち以降は1リットル当たりでNo3-4のトリチウム3,400ベクレルが過去最高(新記録)です。以下に推移を示します。以下に推移を示します。

※1(5)を集計
※2 NDは検出限界未満を示す。
図―8 No3-4井戸のトリチウム濃度
7月頃から突然の上昇に転じ、今も上昇中です。
5.福島第一原発の排水路からは法令限度を超えた汚染水は「海」へ
福島第一原発構内には幾つもの排水路があります。
福島第一原発構内にには幾つもの排水路があります。

※(13)を転載
図―9 福島第一原発内の排水路
当然ながら福島第一構内は放射性物質で汚染されており、排水路に流れ込みます。1リットル当たりでセシウム137の法令限度は90ベクレル、ストロンチウム90の法令限度は1リットル当たり30ベクレルです(2)。全ベータ濃度のおよそ半分がストロンチウム90で(6)、、全ベータでみれば1リットル当たり60ベクレルになります。このうちK排水路では法令限度を超えた汚染水の流れが確認されています。
K排水路では11月10日に法令限度を超える1リットル当たりで
セシウム137 110ベクレル
全ベータ 190ベクレル
の汚染水が流れました(14)。以下にK排水路の放射性物質濃度を示します。

※(15)を集計
図―10 K排水路の放射性物質濃度
東電の発表(16)を見ると排水路は遮水壁を超えて海に繋がっているので、2項に記載した「海側遮水壁」が完成しても排水路の汚染水はブロックされません。
6.サブドレンからとトリチウム放出量は59億ベクレル
サブドレンは、原子炉やタービン建屋の直ぐ傍の井戸から汚染地下水を汲み上げ、直接にタービン建屋周囲の水位を下げ汚染水の増加量を抑えるものです(17)。サブドレンの運用は9月3日から始まったので(18)ほぼ2ヶ月以上が経過しました。東京電力はサブドレン廃水の放射性物質濃度も排出量も公表しているので(19)(20)、濃度×排出量で累積のトリチウム累積の排出量を求めてみました。

※(19)(20)(21)を集計
図―11 サブドレンの累積排出量
累積で約59億ベクレルになりました。10月1日以降11月14日までの44日間の排出量は約41億ベクレルなので1日1億ベクレル程度のトリチウムがサブドレンによって福島の海に流されています。
そしてもう一つ気になることがあります。以下にサブドレイン放流水のトリチウム濃度を示します。

※1(19)を集計
図ー12 サブドレンのトリチウムの測定結果
濃度は東京電力と他の機関(東電は第三者機関と呼ぶ)で二重に測定されています。東電の測定が低く出ています。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら(
ブログ図表①)とこちら(
ブログ図表②)を参照ください。
汚染水漏れが続く福島第一、福島の方は不安だと思います。まして福島産米を避けている方が半数以下の福島県郡山市では葬式(死者数)が有意に増えていますが、8割近くが避けている相馬や南相馬市ではそのような事ない(22)との現象も起きています。
福島県は福島産米のCMを流しています(23)。福島県は米も含め福島産は安全だと主張しています(24)。福島県二本松市の全袋検査数は28万袋をこえました(25)。福島も実りの秋のようです。でも福島県二本松市のスーパーのチラシには米を含め福島産はありません。

※(26)を引用
図―13 福島産が無い福島県二本松市のスーパーのチラシ
当然の結果です。(=^・^=)も福島県二本松市の皆様も見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一汚染水(11月2週)―外洋からトリチウム―(2)
サンプリングによる監視|東京電力(3)
報道配布資料|東京電力(4)(2)中の「1.海水(港湾外近傍)」を8月30日に閲覧
(5)(3)中の「福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果」
(6)
めげ猫「タマ」の日記 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(7)(3)中の「1~4号機タービン建屋東側および港湾のモニタリング」
(8)
2015年10月26日福島第一原子力発電所 海側遮水壁閉合作業完了について(PDF 501KB)PDF (9)
2015年11月5日福島第一原子力 発電所海側遮水壁閉合前後の海水モニタリング状況(PDF 588KB) (10)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の地下水バイパスについて(11)(2)中の「H4エリア周辺観測孔」および「H6エリア周辺観測孔」
(12)(3)中の「福島第一 地下水バイパス揚水井 分析結果 」
(13)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発―2週連続で下請けさんがケガ―(14)
2015年11月11日福島第一原子力発電所 K排水路排水口放射能分析結果(PDF 10.9KB)(15)(3)中の「福島第一原子力発電所 K排水路排水口放射能分析結果」
(16)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/smp/2015/images/drainage_151110-j.pdf" target="_blank" title="2015年11月10日福島第一原子力発電所構内排水路のサンプリングデータについて(PDF 308KB) (17)
サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力(18)
(コメント)福島第一原子力発電所におけるサブドレン他水処理施設の運用開始について|東京電力(19)(3)中の「サブドレン・地下水ドレン浄化水分析結果」
(20)
集水タンク・一時貯水タンクの運用状況|東京電力(21)
福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力(22)
めげ猫「タマ」の日記 福島県郡山市の死者数は10.2%増(対2010年3-10月)、でも相馬・南相馬市は別(23)
TVCM(ふくしまプライド。「お米 15秒」篇) | ふくしま 新発売。(24)
「おいしい ふくしま いただきます!」キャンペーン - 福島県ホームページ(25)
ふくしまの恵み安全対策協議会 放射性物質検査情報を11月15日に閲覧
(26)
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- 2015/11/15(日) 19:42:09|
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