東京電力福島原発はトラブルが多く、トラブル毎に記事にするは面倒なので、まとめて記事にしています。先週につづき(1)、11月3週(11月15日から21日)もしっかりトラブルが起こっています。
1.淡水化装置から汚染水漏れ
福島第一ではタービン建屋から汲み上げた汚染水から淡水化装置と呼ばれる装置を通し、不純物を荒どりしたと再び原子炉に注水し、原子炉の冷却に使用しています。

※(2)(3)(4)にて作成
図―1 福島第一原発の汚染水処理の流れ
11月15日に淡水化装置から汚染水漏れが起こりました(5)(6)。以下に淡水化装置の概略と汚染水漏れ箇所を示します。

※(6)にて作成
図-2 淡水化装置の構造と汚染水漏れ部分
ポンプで汚染水に圧力をかけてRO膜と呼ばれる膜を使用し、水の部分だけを絞り出すものです(7)。この装置の高い圧力がかかっている入口側の配管から汚染水漏れが起きました(6)。漏れた汚染水は深さ2cmで、縦1m×横15mの範囲に広がら、1リットル当たりで
セシウム134 310ベクレル
セシウム137 1,300ベクレル
全ベータ 25,000ベクレル
の放射性物質が見つかりました。
この装置は高い圧力を汚染水にかけるためか、度々汚染水漏れを起こしています(8)。最近では10月19日のも汚染水漏れを起こしています(9)。以下に汚染す漏れを起こした「高圧ポンプ出口付近」を示します。

※(7)を引用
図―3 汚染水漏れを起こした配管
図に示すように、配管の継ぎ手から汚染水漏れが起きています。福島第一の装置はどれも事故が起きてからあわてて作った装置です。事故から5年近く経てば劣化して従前よりトラブルが出やすくなってるかもしれません。
2.放射性廃棄物容器(HIC)のガス抜き孔が「貫通」していない
図―1に示すように汚染水を処理していると高濃度の放射性物質を含むカスがでます。このカスは東電がHICとよぶ容器に納められます。

※(10)を引用
図ー4 放射性廃棄物容器(HIC)の外観
HICに入れられた「カス」の放射線は非常に高くなります。放射線は分子を分解し、例えば水に当てると水素などのガスが出てくるそうです(11)。HIC内のカスは汚染水から分離したものですから「水分」を含んで居ます。実際にHIC内では水素が発生しています(12)。このままだとHIC内に水素が溜り「水素爆発」なんてことも想定されます。このような事を避けるためだと思いますが、HICの蓋はガス抜き用の孔(ベント孔)を開ける設計になっているそうです(12)。
ところが孔が途中で塞がっていて貫通していないものが見つかったそうです(13)。以前には「孔」があいていない物も見つかっています(14)。このような容器は2877個あるそうですが(15)、大丈夫ですかね?
3.地下水バイパス止まる
地下水バイパスは、福島第一原発の汚染水対策として原子炉建屋に侵入する前の地下水を事前に汲み上げ汚染水の発生を抑えようとするものです(16)。
ところが11月16日にポンプによる地下水の汲み上げが停止しました(13)。地下水バイパスのポンプはA,B,Cの三つの系統に分かれているのですが(17)、点検の為にB系統の電源を停止したらBだけでなくA,Cも止とまったそうです(13)(17)。なんでも、3系統のポンプの一つの電源を止めると他の2系統に停止信号が送られ止まる設計になっていたのですが、それに気づかなかったそうです(13)。おそまつ
もっとも地下水バイパスで地下水を汲み上げても地下水位が下がった事は無く、効果がないので(18)、どうでもいい事かも知れまんがトラブルとして記載しました。
4.福島第一・電源設備から発煙
11月19日13時過ぎに下請けさんが福島第一の構内の旧事務本館西側法面付近で、エリア区画用のロープを固定する鉄製のピンを高圧ケーブルに誤って接触させたショートを起こしました。
このため免震重要棟遠隔監視室において、6900V電源盤所内共通電源盤(メタクラ)のショートを知らせる警報が出ました。免震重要棟1階の電源室のコンデンサの側のするA系変圧器一次高圧盤内の「地絡電流制限抵抗器」より煙が出ているのが見つかり、消防所へ連絡することになりました。この影響で2号機核燃料プールの冷却や窒素ガス分離装置の1系統が一時的に止まったそうです(19)(20)。以下に「地絡電流制限抵抗器」の写真を示します、

※(21)を引用
図―5 「地絡電流制限抵抗器」
5.サブドレン2ヶ月半、効果が見えず
サブドレンは、原子炉やタービン建屋の直ぐ傍の井戸から汚染地下水を汲み上げ、直接にタービン建屋周囲の水位を下げ汚染水の増加量を抑えるものです(22)。サブドレンの運用は9月3日から始まったので(23)ほぼ2ヶ月半が経過しました。効果を見る為に9月3日以降の汚染水増加量を去年(2014年)と比較してみました。

※(24)を集計
図―6 福島第一の汚染水増加量
サブドレンが稼働していない昨年より汚染水に比べ汚染水増加量が明確に減っていると言えないと思います。いまのところサブドレンの効果は見えません。
6.汚染水タンクはパンク寸前
以下に福島第一原発内の汚染水総量を示します。

※(24)を集計
図―7 福島第一の汚染水総量
図に示す様に福島第一では日々汚染水が増えています。
日々、増えています。5項に記載した通りサブドレンが効果があったとも言い難い状態です。以下に図―1に示す汚染水処理の最終段に当たる「処理水」の容量とタンク容量を示します。

※(24)を集計
図―8 処理水の容量とタンク容量
汚染水は増えていますが、タンク容量はあまり増えていません。タンク容量―処理水の量を空き容量としてその推移を示します。

※1(23)を集計
※2 最終の点は11月27日時点の東電想定
図―9 処理水タンクの空き容量
このまま行けば来月早々には処理水タンクが一杯にになり、多核種除去設備(ALPS)の全面停止に追い込まれそうです。
汚染水対策の先はなかなか見えません。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら(
ブログ図表)を参照ください。
トラブル続きの福島原発、福島の方は不安だと思います。まして福島では福島市や郡山市で葬式が増えています。一方で福島市や郡山市にくらべれば汚染がマシな会津地方や8割近い方が福島産米を避けている相馬や南相馬市ではこのような事はありません(25)(26)。
福島県鏡石町は人口12,555人(27)の小さな町ですが、お米の全袋検査数は13万件を超えました(28)。同町には「田んぼアート」なるものがありますが、今年は終ってしまいました(29)。その代わり新米が採れたようです。同町のあたりは日本有数の米どころです。阿武隈川流域の肥よくな大地と奥羽山系・阿武隈山系の豊かな清流に恵まれ、米づくりには理想的な環境です。この恵まれた環境で「米作りの達人」が心をこめて作ったおいしいお米ができるそうです(30)。福島県は福島産米のCMを流しています(31)。福島産米は安全で美味しいとも主張しています(32)。でも、福島県鏡石町のスーパーのチラシにはお米を含め福島産はありません。

※(33)を引用
図―10 福島産が無い福島県鏡石町のスーパーのチラシ
当然の結果です。(=^・^=)も福島県鏡石町の皆様も見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(11月2週)―汚染水の汲みあげが1週間止まる―(2)
汚染水対策の主な取り組み|東京電力(3)
原子炉の安定化|東京電力(4)
めげ猫「タマ」の日記 SR処理水について(5)
2015年11月16日福島第一原子力発電所の状況について(日報) 【午後3時現在】 (6)
2015年11月16日 淡水化装置(RO2-5)のブースターポンプ出口配管継手部から堰内への漏えいについて(PDF 109KB)(7)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の淡水化装置について(8)
めげ猫「タマ」の日記 勝手に福島原発十大トラブル(9)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(10月4週)―サブドレイン効果がなかなか見えず―(10)
東京電力 写真・動画集| 保管中のHIC上の水たまりについて(11)
放射線分解(ホウシャセンブンカイ)とは - コトバンク(12)
第35回特定原子力施設監視・評価検討会 | 原子力規制委員会中の「資料2 HIC上のたまり水発生の原因と対策の検討・実施状況【PDF:2MB】」
(13)
2015年11月17日福島第一原子力発電所の状況について(日報) 【午後3時現在】 (14)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(5月4週)―汚染水漏れ容器に不良部品―(15)
福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第228報)|東京電力(16)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の地下水バイパスについて(17)
地下水バイパスポンプ一時停止 第一原発 | 県内ニュース | 福島民報(18)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(8月5週)―またも汚染雨水漏れ―(19)
2015年11月20日福島第一原子力発電所の状況について(日報) 【午後3時現在】 (20)
2015年11月19日 福島第一原子力発電所免震重要棟電源盤からの発煙について(PDF 411KB(21)
東京電力 写真・動画集| 福島第一原子力発電所免震重要棟電源盤からの発煙について(22)
サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力(23)
(コメント)福島第一原子力発電所におけるサブドレン他水処理施設の運用開始について|東京電力(24)
プレスリリース|東京電力中の「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について 」
(25)
めげ猫「タマ」の日記 福島県郡山市の死者数は10.2%増(対2010年3-10月)、でも相馬・南相馬市は別(26)
めげ猫「タマ」の日記 福島市の死者数8.3%増(対2010年3-10月)、会津は別(27)
鏡石町公式ホームページ[福島県](28)
ふくしまの恵み安全対策協議会 放射性物質検査情報を11月21日に閲覧
(29)
かがみいし2015田んぼアート|鏡石町公式ホームページ[福島県](30)
お米 - JAすかがわ岩瀬-実りの大地でみんなが笑顔(31)
TVCM(ふくしまプライド。「お米 15秒」篇) | ふくしま 新発売。(32)
「おいしい ふくしま いただきます!」キャンペーン - 福島県ホームページ(33)
イオンスーパーセンター | ネットチラシ中の「鏡石店」
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- 2015/11/21(土) 19:41:41|
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| コメント:1
アメリカの核廃棄施設で火災がおきたのも、このHICと関連があるかも!?
中性子線が出続ければ、水素が発生するのは、ちゃんと高校でお勉強してれば知ってなきゃいけない事、、。
それにしてもフクシマの現場には、通常に稼働していた時よりも何倍もの設備が出来ちゃってるんだな、、。こんなのコントロール出来る訳ないし、し続けられる訳ないじゃん!!そしてゴミも増え続けている、、。
- 2015/11/22(日) 19:35:20 |
- URL |
- 武尊43 #mWyI0ZzU
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