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めげ猫「タマ」の日記

一寸気になったどうでもいい事を記事に

トラブルいっぱい福島原発(11月4週)―地下水ドレン水・浄化できず―

 東京電力福島原発はトラブルが多く、トラブル毎に記事にするは面倒なので、まとめて記事にしています。先週につづき(1)、11月4週(11月22日から28日)もしっかりトラブルが起こっています。

1.放射性廃棄物容器(HIC)から汚染水が噴き出す
 福島第一でタービン建屋からくみ上げた汚染水を幾つかの処理装置で放射性物質を荒どりして最終的に「処理水」としてタンクに保管されます。荒どりの過程で「カス」が出ます。

福島第一汚染水処理の流れ
 ※(2)(3)(4)にて作成
 図―1 福島第一原発の汚染水処理の流れ

このカスは東電がHICと呼ぶ容器に納められます。
放射性物質格納容器外観
 ※(5)を引用
 図ー2 放射性廃棄物容器(HIC)の外観

HICに入れられた「カス」の放射線は非常に高くなります。放射線は分子を分解し、例えば水に当てると水素などのガスが出てくるそうです(6)。HIC内のカスは汚染水から分離したものですから「水分」を含んで居ます。実際にHIC内では水素が発生しています(7)。このままだとHIC内に水素が溜り「水素爆発」なんてことも想定されます。このような事を避けるためだと思いますが、HICの蓋はガス抜き用の孔(ベント孔)を開ける設計になっているそうです(7)。ガスが噴き出すなら、それに伴い汚染水も噴き出すそうです(8)。そのため東電は定期的に点検しているようですが、新たに一つのHICから汚染水が噴き出しているのが見つかりました(9)。
 汚染水処理が続く限りこの容器は増え続け延々と点検が続きます。

2.多核種除去装置(ALPS)から汚染水漏れ
 11月25日に高性能多核種除去設備(ALPS)を下請けさんが水洗いしていたら高所にあるベント配管(空気抜き配管)より洗浄水が漏れ出しました。漏れた水はALPS建屋の床に約1m×1mの範囲で飛散しました(9)。
 東電は漏れた水を「洗浄水」と呼んでいますがALPSは高濃度の汚染水を扱う設備ですので、中は汚染されているはずです。「洗浄水」といえどもALPSで使えば(=^・^=)は立派な「汚染水」になると思います。
 なおALPSのベント配管(空気抜き配管)からの汚染水漏れは11月2日にも起きているので(10)、今月は2回目です。以下にALPSのベント配管を示します。
 上部から汚染水漏れを起こしたALPS
 ※(10)をキャプチャー
 図―3 ALPSのベント配管

3.地下水ドレン水・浄化できず
 海側遮水壁は福島第一の海岸の傍に、海水を通さない壁を作り海に流れ込んだ汚染地下水をブロックして海に広がらないようにするものです(11)。
海側遮水壁と地下水ドレン
 ※(11)にて作成
 図―4 海側遮水壁の概要

 海側遮水壁は10月26日に完成し(12)、ほっておくと溜まって溢れ出すので汲み上げて海に流す必要があります。今は消えてしまいましたが福島からの報道によるとその量は毎日400トンです(13)。東京電力は汲み上げるシステムも含め「地下水ドレン」と命名しています(12)。
 海側遮水壁内側の水位が上昇し満タン状態になったので、11月5日から汲み上げを始めたそうです。
水位が上昇し汲み上げをせざるを得なくなった海側遮水壁内側
 ※1(14)を抜粋・編集
 ※2 色違いが測定点(複数)の違い
 図―5 上昇する海側遮水壁内側の水位

  以下に海側遮水壁内側2地点のトリチウム濃度を示します。
排出基準値以上で推移する海側遮水壁のトリチウム濃度

 ※(15)を集計
 図―6 海側遮水壁内側2地点のトリチウム濃度

 海側遮水壁の工事は9月10日から最終の工事が始まりました(16)。それ以前は概ね1リットル当たり1000ベクレル以下でしたが、工事が進むにつれ上昇し3000ベクレル程度になっています。サブドレンも地下水ドレンもトリチウムの排出基準は1リットル当たり1500ベクレルです(17)。東京電力はトリチウムは浄化できないと明言しているので(18)、汲みあげて海に流すこともできません。本来は浄化装置を通して海に流すはずでしたが、海に流せなくなりタービン建屋に入れたようです。
 東電の発表を集計すると11月5日から23日の19日で
  タービン建屋に移送      724立方メートル
  後で海に流す集水タンクへ移送 150立方メートル
  合計             874立方メートル
で大部分がタービン建屋の送られ、新たな汚染水増加の要因になりました。
 19日で874立方メートルなので、1日当たり46立方メートルです。でも当初の見込みでは海側遮水壁内側に1日に400立方メートル(トン)が流入するはずでした。残りの354立方メートルが行方不明です。(=^・^=)は海側遮水壁で汚染水の流れが堰き止められたので、脇から漏れたと思います。
汚染水の海洋流出新ルート
 ※(19)に加筆
 図-7 (=^・^=)が想像する新たな汚染水海洋流出ルート

 以下に港湾口の全ベータ濃度の昨年との比較を示します。
去年見つからなかった全ベータが今年は見つかる港湾口
 ※(15)を集計
 図―8 港湾口の全ベータ濃度

 海側遮水壁が出来た後も去年(2014年)の同時期には見つからなかった

4.データ掲載は濃度が上がる前まで
 2015年11月26日に廃炉・汚染水対策チーム会合 第24回事務局会議が開かれました(13)。その中で、海側遮水壁の効果を示すデータとして図ー3に示す「1~4号機取水口内南側」を記載していました。
放射性物質濃度が下がったと喧伝する東電資料
 ※(14)を抜粋・編集
 図―9 海側遮水壁が効果があったとする東電データ

 東電のデータは11月26日の会議なのに、9日前の11月17日で終わっています。おかしいと思い最新のデータをプロットしてみました。
再上昇した1~4号機取水口内南側の放射性物質濃度
※(15)を集計
 図ー10 1~4号機取水口内南側の放射性物質濃度

 東電のデータが終わっている2日後の11月19日には1リットル当たりで
  セシウム134  8.7ベクレル
  セシウム137 28ベクレル
  全ベータ    56ベクレル
との(19)と割と高い値が出ています。東電は海側遮水壁の効果を喧伝したいようですが、3項と合わせてみるとあまり効果がみられないのが実態のようです。

5.海側壁が地下水の圧力で傾く
 図ー5に示すように海側遮水壁内側の水位が上昇しています。その結果、海側遮水壁に圧力が加わり海側遮水壁が傾き、舗装にひび割れができたそうです
海側遮水壁の傾きを発表する東電資料
 ※(20)を抜粋
 図―11 水位上昇により海側遮水壁が傾き、舗装にひび割ができたと発表する東電

 海側遮水壁が傾いた結果、舗装面との間にできたようです。
傾いて隙間ができた海側遮水壁と舗装面
 ※(21)を引用
 図―12 舗装面と海側遮水壁の間にできた隙間

 以下にひび割れの様子を示します。
海側遮水壁の傾きで割れが生じた舗装面
※(21)を引用
 図ー13 舗装面にできた割れ目

 東電の会見を聞いていると(22)、当初より想定される事ですが「鋼材を補強中」の事ですし、(=^・^=)は従前に海側遮水壁が傾くかもしれないなど東電の発表を知らないので本当かなと思います。
 この件は福島では11月25日に発表されたそうです(23)。でも全国に向けて発表したのは資料(20)の日付に有る通り11月26日です。

6.タンクの増設が遅れます。
 福島第一では図ー1に示すように原子炉やタービン建屋に地下水が流れ込み、汚染水が増え続けています。
日々増え続ける福島第一汚染水
※(24)を集計
 図―14 日々増え続ける福島第一原発汚染水

 2014年11月26日から2015年11月27日のほぼ一年で約20万立方メートルの汚染水が増えています。汚染水タンクもこれに合わせ増設しなければ、汚染水は溢れてしまいます。
 東電は11月26日に汚染水タンクの増設が遅れるとの発表をしました(14)。以下に様子を示します。
大幅な遅延が確定した福島第一の汚染水タンク増設計画
※(14)を集計
 図―15 福島第一タンク増設計画

 今年4月の計画(14)を集計すると当初計画では2015年4月から16年3月の1年間で約20万立方メートルの汚染水タンクを増設する予定でしたが、見直し後の計画では約12万立方メートルと半減しています。図は最後に大幅に増えるように見えますが、予定は2017年10月以降です。東電の発表で完成日付が明示されているのは2017年9月までで、2015年12月から9月までに増設計画があるのは約10万立方メートルで現行の汚染水増加量には追い付きません。

7.サブドレン2ヶ月半、効果は見えず
 サブドレンは、原子炉やタービン建屋の直ぐ傍の井戸から汚染地下水を汲み上げ、直接にタービン建屋周囲の水位を下げ汚染水の増加量を抑えるものです(18)。サブドレンの運用は9月3日から始まったので(25)ほぼ2ヶ月以上が経過しました。効果を見る為に9月3日以降の汚染水増加量を去年(2014年)と比較してみました。
サブドレン稼働後も去年と変わらない福島第一の汚染水増加量
 ※(24)を集計
 図―16 福島第一の汚染水増加量

 サブドレンが稼働していない昨年より汚染水に比べ汚染水増加量が明確に減っていると言えないと思います。いまのところサブドレンの効果は見えません。6項で記載した通り汚染水タンクの増設計画は現行の汚染水増加ペースに追い付けません。このままでは溢れさせるか、マシな汚染水から海に流すしかありません。

8.汚染水タンクはパンク寸前
 図ー14に示す様に福島第一では日々汚染水が増えています。6項に示すように汚染水タンクの増設計画は大幅に遅れそうですし、7項に記載した通りサブドレンが効果があったとも言い難い状態です。以下に図―1に示す汚染水処理の最終段に当たる「処理水」の容量とタンク容量を示します。
容量は増えてもタンクが増えない処理水
 ※(24)を集計
 図―17 処理水の容量とタンク容量

 容量は増えていますが、タンク容量はあまり増えていません。タンク容量―処理水の量を空き容量としてその推移を示します。
どんどん減っていく処理水タンクの空き容量
 ※1(24)を集計
 ※2 最終の点は11月20日時点の東電想定
 図―18 処理水タンクの空き容量

 このまま行けば来月早々には処理水タンクが一杯にになり、多核種除去設備(ALPS)の全面停止に追い込まれそうです。

9.福島第一の駐車場が足りない
 福島第一では7千名程度の下請けさんが働いています。東電が福島第一原発で働く下請けさんにアンケートを実施し、6、527人の下請けさんから回答があったそうです(26)。
 福島第一には公共交通機関がないので、車で通勤するしかありません。気になるのが駐車場ですが東電のアンケートでは、
「構外駐車場が足りない」と1,273人(19.5%)と回答しています。Googleマップで見ると、汚染水タンクと駐車場は隣接しているように見えます。
駐車場と汚染水タンクが隣接する福島第一構内
 ※Google Mapを引用
 図―19 隣接する駐車場と汚染水タンク

 (=^・^=)が想像するに、どちらも平で主な仕事場や汚染水源である原子炉・タービン建屋近くが適しています。汚染水タンクにするか駐車場にするか厳しい選択があるようです。
 福島第一には今年、食堂ができました(27)。材料には風評被害払拭との理由で福島産を使うそうです(28)。下請けさんが利用するか興味があります。アンケートの結果によると利用すると答えたのは全体の2割程度の6,527人中1,445人でした(14)。あまり評判がよくないようです。


<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら(ブログ図表①)とこちら(ブログ図表②)を参照ください。それと長くなってすいません。それだけトラブルが多いのです。トラブル続きの福島第一、福島の方は不安だと思います。まして福島産米を避ける人が多い相馬や南相馬市では葬式(死者数)が増えていないのに、避ける人が半数以下の郡山市・三春町では増えています(29)。
  福島市のモモの出荷量は11,500トンで全国2位の出荷量ですが、リンゴの出荷量はモモより多く14,700トンです(30)。福島市にとってリンゴもモモも大事な果物です。福島のリンゴは今がシーズンです(31)。福島県は福島産リンゴは安全だと主張しています(32)。でも、福島県福島市のスーパーのチラシには福島産リンゴはありません。
他県産はあっても福島産リンゴが無い福島県福島市のスーパーのチラシ
 ※(33)を引用
 図―20 福島産リンゴが無い福島県福島市のスーパーのチラシ

 当然の結果です。(=^・^=)も福島県福島市の皆様も見習い「フクシマ産」は食べません。

―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(11月3週)―地下水バイパス止まる―
(2)汚染水対策の主な取り組み|東京電力
(3)原子炉の安定化|東京電力
(4)めげ猫「タマ」の日記 SR処理水について
(5)東京電力 写真・動画集| 保管中のHIC上の水たまりについて
(6)放射線分解(ホウシャセンブンカイ)とは - コトバンク
(7)第35回特定原子力施設監視・評価検討会 | 原子力規制委員会中の「資料2 HIC上のたまり水発生の原因と対策の検討・実施状況【PDF:2MB】」
(8)めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(5月4週)―汚染水漏れ容器に不良部品―
(9)2015年11月25日福島第一原子力発電所の状況について(日報) 【午後3時現在】
(10)めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(11月1週)―汚染水漏れ2件―
(11)側遮水壁|東京電力
(12)2015年10月26日福島第一原子力発電所 海側遮水壁閉合作業完了について(PDF 501KB)
(13)めげ猫「タマ」の日記 福島第一・地下水ドレンて運用できるの?
(14)中長期ロードマップ|東京電力中の「中長期ロードマップの進捗状況⇒2015年11月26日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第24回事務局会議)
(14)中の「【資料3-1】汚染水対策(9.18MB)」
(15)報道配布資料|東京電力中の「福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果 」
(16)2015年9月9日海側遮水壁閉合作業について(PDF 519KB)
(17)サンプリングによる監視|東京電力
(18)サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力
(19)2015年11月20日福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果(PDF 681KB)
(20)2015年11月26日福島第一原子力発電所 海側遮水壁閉合後の埋立地舗装面等の状況について(PDF 535KB)
(21)東京電力 写真・動画集| 福島第一原子力発電所 海側遮水壁閉合後の埋立地舗装面等の状況について
(22)【11月26日】東京電力「中長期ロードマップの進捗状況」に関する記者会見 - 2015/11/26 18:00開始 - ニコニコ生放送
(23)海側壁が地下水の圧力で傾く 東電「遮水性能に問題ない」:福島民友ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet
(24)プレスリリース|東京電力中の「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について 」
(25)(コメント)福島第一原子力発電所におけるサブドレン他水処理施設の運用開始について|東京電力
(26)(14)中の「【資料3-7】労働環境改善(3.72MB)」
(27)大型休憩所における食事提供の再開予定(PDF形式:211KB)
(28)2015年1月16日(いわき市漁協組合員説明会資料)風評被害対策について(PDF 325KB)
(29)めげ猫「タマ」の日記 「福島米」避けていないと所では葬式が9%増、避けた所は増えていない。―原発事故5年目―
(30)統計データ
(31)食べ頃カレンダー
(32)安全が確認された農林水産物(公開用簡易資料) - 福島県ホームページ
(33)ヨークベニマル/お店ガイド
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  1. 2015/11/28(土) 19:44:16|
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