福島第一原発汚染水の11月5週(11月23日から29日)の状況を纏めてました。先週に続き(1)、過去最高濃度(新記録)の放射性物質が見つかっています。
①外洋と港湾の境目からは21ベクレルの全ベータ
②地下水バイパス井戸からは排水基準を超えた放射性物質
③海岸付近の井戸からは過去最高濃度の放射性物質
④福島第一原発の排水路からは法令限度を超えた汚染水は「海」へ
⑤サブドレンからとトリチウム放出量は69億ベクレル超
1.外洋と港湾の境目からは21ベクレルの全ベータ
原発事故から4年8ヶ月以上になりましたが、外洋からは相変わらず放射性物質が見つかっています。

※1 (4)(5)で作成
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
※4 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(6)
図―1 福島第一原発近傍外洋の放射性物質濃度
.外洋と港湾の境目の「港湾口」からは1リットル当たりで
セシウム 1.5ベクレル
全ベータ 21ベクレル
見つかっています。直ぐ先は外洋ですので、そのまま「外洋」に拡散します。
以下に南放水口付近の放射性物質濃度を示します。

※1(5)を集計
※2 NDは検出限界未満を示す。
図―2 南放水口付近の放射性物質濃度
事故から4年8ヶ月以上が経過しましたが下がる気配がありません。
2.地下水バイパス井戸からは高濃度の放射性物質
地下水バイパスは、福島第一原発の汚染水対策として原子炉建屋に侵入する前の地下水を事前に汲み上げ汚染水の発生を抑えようとするものです(7)。海に流す水からは「トリチウム」が見つかっているので、(=^・^=)は立派な汚染水だと思います。東京電力は福島第一原発地下水バイパスの山側に井戸を掘って放射性物質濃度を調べています(8)。また地下水バイパスからくみ上げた汚染水の濃度も井戸毎に調べています(9)。以下に放射性物質濃度を示します。

※1 (8)(9)にて作成
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
図―3 地下水バイパスと山側(上流井戸)の放射性物質濃度
地下水バイパスやサブドレンの排水基準は1リットル当たりで
全ベータ 5ベクレル
トリチウム 1500ベクレル
ですので(2)、多くの場所で排水基準を超えた放射性物質が見つかっています。このうち地下水バイパスNo10井戸のトリチウム、1リットル当たり2,900ベクレルで排水基準を超えています。これについて東京電力は他の井戸から汲み上げた水で薄めて(混ぜて)海に流します(10)。
3.海岸付近の井戸からは過去最高濃度の放射性物質
東京電力は福島第一原発の海岸付近やタービン建屋周りの井戸の地下水の放射性物質濃度を調べています(5)。以下にそこでの放射性物質濃度を示します。

※1 (5)を集計
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
図―4 海岸付近の井戸の放射性物質濃度
このうち以降は1リットル当たりでNo3-4のトリチウム3,400ベクレルが過去最高(新記録)です(11)。以下にNo3-4井戸のトリチウムの推移を示します。

※1(5)を集計
※2 NDは検出限界未満を示す。
図―5 No3-4井戸のトリチウム濃度
今年の7月位から突然に上昇しただし過去最高(新記録)です。これからが心配です。
4.福島第一原発の排水路からは法令限度を超えた汚染水は「海」へ
福島第一原発構内には幾つもの排水路があります。

※(12)を転載
図―6 福島第一原発内の排水路
当然ながら福島第一構内は放射性物質で汚染されており、排水路に流れ込みます。1リットル当たりでセシウム137の法令限度は90ベクレル、ストロンチウム90の法令限度は1リットル当たり30ベクレルです(2)。全ベータ濃度のおよそ半分がストロンチウム90で(6)、、全ベータでみれば1リットル当たり60ベクレルになります。このうちK排水路では法令限度を超えた汚染水の流れが確認されています。
以下にK排水路の放射性物質濃度を示します。

※(13)を集計
図―7 K排水路の放射性物質濃度
法令限度を超えた放射性物質を含む汚染水が度々流れています。東電の発表(20)を見ると排水路は遮水壁を超えて海に繋がっているので、「海側遮水壁」が完成しても排水路の汚染水はブロックされません。
5.サブドレンからとトリチウム放出量は69億ベクレル超
サブドレンは、原子炉やタービン建屋の直ぐ傍の井戸から汚染地下水を汲み上げ、直接にタービン建屋周囲の水位を下げ汚染水の増加量を抑えるものです(14)。サブドレンの運用は9月3日から始まったので(15)ほぼ2ヶ月半が経過しました。東京電力はサブドレン廃水の放射性物質濃度も排出量も公表しているので(16)(17)、濃度×排出量で累積のトリチウム累積の排出量を求めてみました。

※(16)(17)を集計
図―8 サブドレンの累積排出量
累積で約69億ベクレルを超えました。
そしてもう一つ気になることがあります。以下にサブドレイン放流水のトリチウム濃度を示します。

図―9 サブドレンのトリチウムの測定結果
濃度は東京電力と他の機関(東電は第三者機関と呼ぶ)で二重に測定されています。東電の測定が低く出ています。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら(
ブログ図表①)と 図表が小さいとご不満の方はこちら(
ブログ図表②)を参照ください。
原発事故から4年8ヶ月以上も過ぎましたが、福島第一から海への汚染水漏れは続いています。それでも東京電力は福島産を避ける行為を「風評被害」だと主張しています(18)。まして福島産米を避ける人が多い相馬や南相馬市では葬式(死者数)が増えていないのに、避ける人が半数以下の郡山市・三春町では増えています(19)。これでは福島の方は不安だと思います。
福島県のリンゴ出荷量は23,000トンで全国2位のモモ(出荷量26,500トン)とそれ程には変りません(20)。福島のリンゴは今がシーズンです(21)。福島県は福島産リンゴは安全であると主張しています(22)。でも福島県会津若松市のスーパーのチラシには福島産リンゴはありません。

※(23)を引用
図―10 福島産リンゴが無い福島県会津若松市のスーパーのチラシ
当然の結果です。(=^・^=)も福島県会津若松市の皆様も見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一汚染水(11月4週)―港湾内の放射性物質濃度・再上昇、海側遮水壁の効果見えず(2)
サンプリングによる監視|東京電力(3)
報道配布資料|東京電力(4)(2)中の「1.海水(港湾外近傍)」および「南放水口・排水路」を11月322日に閲覧
(5)(3)中の「福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果」
(6)
めげ猫「タマ」の日記 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(7)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の地下水バイパスについて(8)(2)中の「H4エリア周辺観測孔」および「H6エリア周辺観測孔」
(9)(3)中の「福島第一 地下水バイパス揚水井 分析結果 」
(10)
2015年11月26日地下水バイパス揚水井のくみ上げにおける一時貯留タンクに対する評価結果について(その2)(PDF 78.0KB) (11)
2015年11月24日福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果(PDF 479KB)(12)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発―2週連続で下請けさんがケガ―(13)(3)中の「福島第一原子力発電所 K排水路排水口放射能分析結果」
(14)
サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力(15)
(コメント)福島第一原子力発電所におけるサブドレン他水処理施設の運用開始について|東京電力(16)(3)中の「サブドレン・地下水ドレン浄化水分析結果」
(17)
集水タンク・一時貯水タンクの運用状況|東京電力(18)
2015年1月16日(いわき市漁協組合員説明会資料)風評被害対策について(PDF 325KB)(19)
めげ猫「タマ」の日記 「福島米」避けていないと所では葬式が9%増、避けた所は増えていない。―原発事故5年目―(20)
3 統計からみた福島県の果樹産業(21)
食べ頃カレンダー(22)
安全が確認された農林水産物(公開用簡易資料) - 福島県ホームページ(23)
アピタ会津若松店│「イイこと、プラス。」 アピタ・ピアゴ
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- 2015/11/29(日) 19:51:51|
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