東京電力福島原発はトラブルが多く、トラブル毎に記事にするは面倒なので、まとめて記事にしています。先週につづき(1)、12月4週(12月20日から26日)もしっかりトラブルが起こっています。12月24日に廃炉・汚染水対策チーム会合 第25回事務局会議(中長期ロードマップ)が開かれました(2)。福島第一原発では11月5日の海側遮水壁併合後に汚染水の増加が加速している事は既に記事にした通りですが(1)、資料(2)や会見(3)を聞いている限りこの問題を徹底的にスルーものでした。
1.地下水ドレンのトリチウム濃度が下がらず
海側遮水壁は福島第一原子力発電所の1~4号機側の敷地から港湾内に流れている地下水をせき止め、海洋汚染を減らす為に設けらもので、2015年10月26日に完成しました(3)。

※(4)にて作成
図―1 海側遮水壁の概要
海側遮水壁に汚染水が流れ込み一杯になってしまったので、11月5日から海側遮水壁内側の汚染水の汲みあげをはじめました(4)。当初の予定では汲み上げた汚染水は浄化装置を通した後で、海に流すはずでした(4)(5)。以下にくみ上げた汚染水のトリチウム濃度を示します。

※(7)~(9)で作成
図-2 地下水ドレンのトリチウム濃度
概ね1リットル当たり6,000ベクレル程度で推移しています。海側遮水壁内側からくみ上げた汚染水を浄化装置を通し海に廃棄する一連の系を東京電力は地下水ドレンと命名していますが(5)、排水基準は1リットル当たり1,500ベクレル(10)で大きく超えています。東京電力はトリチウムは浄化できないと明言していますので(5)、海に捨てる事ができずタービン建屋に戻しているのが実態です(1)。
以下にA,B,Cの3系統の配置を示します。

※(6)にて作成
図-3 地下水ドレンの井戸と一時保管用のタンク
2.サブドレンの110日、効果見えず
福島第一でタービン建屋からくみ上げた汚染水を幾つかの処理装置で放射性物質を荒どりして最終的に「処理水」としてタンクに保管されます。

※(11)(12)(13)にて作成
図―4 福島第一原発の汚染水処理の流れ
汚染水は日々増え続け、これに合わせて汚染水タンクを作り続ける必要があります。そこで汚染水の増加を押される為にサブドレンが実施されました。
サブドレンは、原子炉建屋とタービン建屋近傍にある井戸のことです。サブドレンで地下水をくみ上げることにより、原子炉建屋およびタービン建屋へ流入する地下水が大幅に低減することが期待できます(5)。サブドレンの運用は9月3日から始まりました(14)。110日が経過しました。以下にサブドレンが稼働していない2014年と稼働後の2015年9月以降の原子炉・タービン建屋および汚染水タンク内の汚染水の増加量を集計してみました。

※(15)集計
図-5 汚染水増加量の2014年(サブドレン稼働前)と2015年(稼働後)の比較
サブドレン稼働前の去年(2014年)より今年の方が多くなっています。原因は1項で記載したように地下水ドレン汲み上げ汚染水のトリチウム濃度が高く海に流せないので、タービン建屋に戻しているためです(1)。
しかし東京電力が提示したのはタービン建屋への地下水流入量が減ったとの資料だけて汚染水全体の増加のペースが上がったとの資料は用意していません。以下に東京電力の資料の抜粋を示します。

※1(16)を抜粋・加筆
※2 サイズを小さくするために(=^・^=)の手が加わっています。
図-6 地下水流入量が減ったとだけ主張する東京電力
なんか都合のいい事だけいって、不都合な事は黙り込む見たいです。そして大丈夫である安全であると主張しているように見えます。なんか福島原発事故前に盛んに喧伝された「安全神話」(17)を思い起こしてしまいます。
3.汚染水タンクはひっ迫
図-4に示すようにタービン建屋から汲み上げられた汚染水は最終的には処理水になり処理水タンクに貯められます。以下に処理水のタンク容量と処理水量を示します。

※(15)を集計
図-7 処理水タンク容量と保管量
図に示す通り増加量がタンク容量の増加ペースに比べ保管量の増加が多く、空がどんどん減っています。
満水率=保管量÷タンク容量
で規定して、処理水の満水率の経過を見てみました。

※(15)を集計
図―8 処理水タンクの満水率
この所、約98%で推移しています。ここからは(=^・^=)の想像ですが、東電はこれが限度だと判断していると思います。タンクを満タンにすると地震などで生じるスロッシング(容器内の液体が外部からの比較的長周期な振動によって揺動すること。)でタンクから液体が漏れ出すことが知られています(18)。安全にくみ上げた汚染水を保管するにはある程度の「空」が必要です。
処理水で見れば汚染水タンクは満タン状態で、タンクができた分だけ処理して移す状態が続いています。処理できない汚染水はその前段で留め置かれる事になります。
4.汚染水タンクの増設計画はまた遅れます。
11月に汚染水タンクの増設計画が大幅に遅れる旨の発表がありました(19)。

※(19)を転載
図―9 福島第一タンク増設計画(11月)
その計画がさらに遅れるそうです。以下に12月のタンク増設計画を示します。

※(16)を集計
図―10 見直し後の福島第一タンク増設計画(12月)
でも(=^・^=)が心配なのは来年4月から6月の3ヶ月間は汚染水タンクの増設が止まることです。図ー8に示すようにタンクはできた直ちに汚染水が入れられ今も余裕がありません。東京電力の発表(15)をみると、海側遮水壁ができた11月(16)以降を12月24日時点までを平均すると毎日590立方メートルの汚染水が増えています。11月以降に完成したタンクは約2万500立方メートルです。11月から3月末までのタンク増設計画は8万立法メートルで残りは約5万5000立方メートルです。12月24日から3月末まで今のペースで汚染水が増えると約5万7000立方メートル(590×97)になり、おおよそ汚染水の増加分しかタンクが増設されません。以後、タンクの増設が止まれば汚染水は行き場を失い漏らすか、マシな物を海にすてるしかなくなります。
5.地下水ドレンは限界?
東京電力の会見を聞いていたら(3)、地下水ドレンの汲みあげで汚染水の総量が加速している問題の解決策として、サブドレンの汲みあげを強化して海側遮水側への地下水を抑える旨の発言がありました。そんなことが可能か(=^・^=)なりに調べてみました。
以下にタービン建屋と海側サブドレンの水位を示します。

※1(15)(16)にて作成
※2 色違いは観測場所の違い
図-11 海側サブドレンとタービン建屋水位
タービン建屋の水位は上昇していますが、サブドレンの水位は下がっています。サブドレンの最低水位とタービン建屋の最大水位の差は1m程度でしょうか?タービン建屋周辺の地下水位がタービン建屋の水位より低くなるとタービン建屋の汚染水が漏れ出すのでだんだん下げるのは難しい状況になっていると思います。
6.2号機格納容器調査は来年にずれ込みます。
今年8月末の計画(20)では福島第一2号機の格納容器の内部調査を12月中に実施する予定でした。しかし来年2月に延期されるそうです。

※(21)をキャプチャー
図ー12 2号機の調査が2月に連れ込む事を報じる福島のローカルTV局(FTV)
最新の日程では(22)を2016年2月以降に改定されていました。
7.フラガールを偽装?
福島のマスコミの用語の使い方を見ていると福島では「フラガール」は、普通名詞でなくスパリゾートハワイアンズ・ダンシングチームのメンバーを指す固有名詞のような気がします。東京電力の資料にもフラガールなる名乗る方々が登場しました(23)。

※(23)をキャプチャー
図-13 東京電力の資料に出て来たフラガール
どう見てもスパリゾートハワイアンズ・ダンシングチームのメンバーには見えません。スパリゾートハワイアンズ・ダンシングチームのメンバーの皆様はとっても綺麗ですが、東京電力のフラガールの皆様はとっても可愛いって感じです。スパリゾートハワイアンズのHP(24)に掲載されてるメンバーの写真と見比べたのですが、似ている方はいませんでした。
フラガールを偽装?
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちらと(
ブログ図表①)こちらを(
ブログ図表②)を参照ください。
(=^・^=)はこのまま行くとあと百日程度で、福島第一原発の汚染水汲みあげが行き詰まり、溢れさすかマシな汚染水を海に捨てるしか選択が無くなる気がします。そうならなないためには、正確な情報開示と福島の皆様の協力が必要だと思います。東京電力は海側遮水壁を併合したことで、港湾内の汚染水濃度が下がったと主張していますが(16)、福島第一港湾口からは去年は見つからなかった全ベータが今年は見つかっています。以下に福島第一港湾に注ぐK排水路(26)からは海側遮水壁併完成後も基準値を超える放射性物質が見つかっています。

※(26)(27)にて作成
図ー14 K排水路の放射性物質濃度
K排水路からの排水も当然ながら浄化後に放流を行うべきと考えます。以下にK排水路の放水量(日量)を示します。

※(26)にて作成
図-15 K排水路の排水量
日によって大きく変動しますが、平均すると日量約2000立方メートルです。流用の変動が大きいので、一時的に排水を貯める設備が必要ですが福島第一原発内には今もメガフロートが残っています(1)。ここに貯めたあと順次浄化して行けば、処理の均等化が図れます。仮に地下水ドレンの汲みあげ水と一体で処理するとして、これをのトリチウム濃度を1リットル当たり6000ベクレル、処理量を300立方メートル(1)として、K排水路の排水の排水路のトリチウム濃度は図ー14に示す通り高い時でも1リットル当たり500ベクレルなので、併せて処理すれば1リットル当たり1200ベクレル((6000×300+500×2000)÷(2000+300))程度で、排水基準をクリアします。これは例ですが、東京電力は地下水ドレンの汲みあげ汚染水から排水基準を超えたトリチウムが見つかった時点で対策を立案し準備を進めておくべきだったと思います。
トラブル続きの福島原発、問題があっても対策を考えない東京電力では福島の方は不安だと思います。クリスマスも終わり今年もあと僅となりました。もうすぐ大晦日です。大晦日の年越しソバを楽しみにしている方も多いと思います。福島にも美味しいソバはあるようです(29)(30)(31)。福島県は福島産ソバは安全だと主張しています(32)。でも福島県いわき市のスーパーのチラシには福島産ソバはりません。

※(33)を引用
図―16 福島産ソバが無い福島県いわき市のスーパーのチラシ
当然の結果です。(=^・^=)も福島県いわき市の皆様も見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(12月3週)―サブドレン稼働・現状は悪い方にいっている―(2)
中長期ロードマップ|東京電力中の「中長期ロードマップの進捗状況⇒2015年12月24日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第25回事務局会議)」
(3)
【12月24日】東京電力「中長期ロードマップの進捗状況」に関する記者会見 - 2015/12/24 18:00開始 - ニコニコ生放送(4)
海側遮水壁|東京電力(5)
サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力(6)
2015年12月7日サブドレン他浄化施設中継タンク分析結果(~2015年9月30日採取分)(PDF 360KB) (7)
015年12月7日サブドレン他浄化施設中継タンク分析結果(2015年10月1日~11月4日採取分)(PDF 360KB)(8)
2015年12月7日サブドレン他浄化施設中継タンク分析結果(2015年11月5日~12月2日採取分)(PDF 360KB) (9)
福島第一原子力発電所における日々の放射性物質の分析結果|東京電力中の「地下水⇒12月11日、18日および24日」
(10)
サンプリングによる監視|東京電力(11)
汚染水対策の主な取り組み|東京電力(12)
原子炉の安定化|東京電力(13)
めげ猫「タマ」の日記 SR処理水について(14)
(コメント)福島第一原子力発電所におけるサブドレン他水処理施設の運用開始について|東京電力(15)
プレスリリース|東京電力中の「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について 」
(16)(2)中の「【資料3-1】汚染水対策(14.6MB)」
(17)
東京新聞:国・東電の安全神話指弾 IAEA福島原発事故最終報告書:福島原発事故(TOKYO Web)(18)
スロッシング - Wikipedia(19)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(11月4週)―地下水ドレン水・浄化できず―(20)
中長期ロードマップ|東京電力中の「中長期ロードマップの進捗状況⇒2015年8月27日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第21回事務局会議)⇒【資料3-3】燃料デブリ取り出し準備(1.96MB)」
(21)
福島のニュース 福島テレビ(12月25日ひる放送) FTV8 (22)(2)中の「【資料3-3】燃料デブリ取り出し準備(15.1MB)」
(23)(2)中の「【資料3-7】労働環境改善(5.02MB)」
(24)
スパリゾートハワイアンズダンシングチーム|スパリゾートハワイアンズ(25)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一汚染水(12月3週)―去年より高い港湾内シロザケのセシウム濃度―(26)
報道配布資料|東京電力(27)(26)中の「福島第一原子力発電所構内排水路のサンプリングデータについて 」
(28)(26)中の「福島第一原子力発電所 K排水路排水口放射能分析結果 」
(29)
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第7回 南会津新そばまつり | 南会津町観光物産協会(32)
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