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めげ猫「タマ」の日記

一寸気になったどうでもいい事を記事に

福島第一汚染水(12月4週)―港湾口のストロンチウム90濃度は上昇中―

 福島第一原発汚染水の12月3週(12月21日から27日)の状況を纏めてました。先週に続き(1)、高濃度の放射性物質が見つかっています。
 ①事故から4年9ヶ月超、外洋からはトリチウム等の放射性物質
 ②港湾口のストロンチウム90濃度は海側遮水壁併合後に上昇傾向に
 ③地下水バイパス上流の井戸からは排水基準を超えた放射性物質
 ④海岸付近の井戸からは過去最高濃度の放射性物質
 ⑤サブドレンからとトリチウム放出量は約97億ベクレル超
 ⑥排水路からは法令限度を超える放射性物質

1.事故から4年9ヶ月超、外洋からはトリチウム等の放射性物質
 外洋からは相変わらず放射性物質が見つかっています。
事故から4年9ヶ月経ても放射性物質が見つかる福島第一外洋
  ※1 (4)(5)(6)で作成
  ※2  数値は1リットル当たりのベクレル数
  ※3  集計期間内の最大値
  ※4  全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(7)
 図―1 福島第一原発近傍外洋の放射性物質濃度

 このうち気になったのが排水路出口付近T-2のトリチウムです。以下に推移を示します。
トリチウムが時々見つかるようになった外洋T-2地点
 ※1(6)を集計
 ※2 NDは検出限界未満を示す。
 図―2 排水路出口付近T-2のトリチウム濃度

 図に示す通り、これまで殆ど見つかることはありませんでした。しかし12月に入り、2回トリチウムが見つかっています。特に12月10日の1リットル当たり4ベクレルは過去最高でした(8)。事故から4年9ヶ月以上たっていますが、福島第一原発の外洋流出はますますコントロールが困難になっている気がします。

2.港湾口のストロンチウム90濃度は上昇中
  港湾内からはもっと高濃度の汚染水が見つかっています。
高濃度の放射性物質が見つかる福島第一港湾内
 ※1 (5)で作成
  ※2  数値は1リットル当たりのベクレル数
  ※3  集計期間内の最大値  
  ※4  SR90はストロンチウム90を示し採取日は11月23日前後
 図―3 福島第一港湾内の放射性物質濃度

10月26日に海側遮水壁の工事が完了しました(9)。東京電力はこの効果で港湾内の放射性物質濃度は下がったと主張しています(10)。効果があれば汚染水の流れが悪くなり、全体の汚染水濃度が下がっていいはずです。以下に港湾口のストロンチウム90の濃度の推移を示します。
海側遮水壁完成後に上昇に転じた港湾口のストロンチウム90濃度
※1(5)を集計
 ※2 NDは検出限界未満を示す。
 図―4 港湾口のストロンチウム90濃度

海側遮水壁の工事が完了後の濃度をみると、上昇を続けています。海側遮水壁の効果は限定的なようです。港湾口の向こうは外洋です。いまも港湾口からストロンチウム90が外洋に流れ出しています。

3.地下水バイパス上流の井戸からは排水基準を超えた放射性物質
 地下水バイパスは、福島第一原発の汚染水対策として原子炉建屋に侵入する前の地下水を事前に汲み上げ汚染水の発生を抑えようとするものです(11)。海に流す水からは「トリチウム」が見つかっているので、(=^・^=)は立派な汚染水だと思います。東京電力は福島第一原発地下水バイパスの山側に井戸を掘って放射性物質濃度を調べています(12)。また地下水バイパスからくみ上げた汚染水の濃度も井戸毎に調べています(13)。以下に放射性物質濃度を示します。
排水限度を超えた放射性物質が見つかる山側井戸
 ※1 (12)(13)にて作成
 ※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
 ※3 集計期間内の最大値
 図―5 地下水バイパスと山側(上流井戸)の放射性物質濃度

地下水バイパスやサブドレンの排水基準は1リットル当たりで
  全ベータ  5ベクレル
  トリチウム 1500ベクレル
ですので(2)、多くの場所で排水基準を超えた放射性物質が見つかっています。このうち気になるがG-3井戸のトリチウム濃度です。
突然に急上昇したG-3井戸のトリチウム
 ※1(12)を集計
 ※2 NDは検出限界未満を示す。
 図―6 G-3井戸のトリチウム濃度

 今年に入り1リットル当たり300ベクレル前後で安定的に推移していたのですが、突然に急上昇し1000ベクレルを超えました。

4.海岸付近の井戸からは過去最高濃度の放射性物質
 東京電力は福島第一原発の海岸付近やタービン建屋周りの井戸の地下水の放射性物質濃度を調べています(5)。以下に放射性物質濃度を示します。
高濃度の汚染地下水が見つかる福島第一の海岸
 ※1 (5)を集計
 ※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
 ※3 集計期間内の最大値
 図―7 海岸付近の井戸の放射性物質濃度

 このうち以降は1リットル当たりの全ベータの値でNo1の14,000ベクレル、No14の42,000ベクレル、No2-5の全ベータ25万ベクレル、No3-3は過去最高(新記録)です。事故から4年9ヶ月が経過しましたが、海岸付近の井戸は先週に続き(1)、今週も記録更新ラッシュです。汚染水流出はますます酷くなっています。以下にNo1-14井戸の全ベータ濃度を示します。
上昇が続くNo1-14井戸の全ベータ
 ※(5)を集計
 図―8 No1-14井戸の全ベータ濃度

 10月末位から上昇に転じ、止まる気配がありません。これからも上昇が続きそうです。

5.サブドレンからとトリチウム放出量は97億ベクレル超
 サブドレンは、原子炉やタービン建屋の直ぐ傍の井戸から汚染地下水を汲み上げ、直接にタービン建屋周囲の水位を下げ汚染水の増加量を抑えるものです(14)。サブドレンの運用は9月3日から始まったので(15)ほぼ3ヶ月半が経過しました。東京電力はサブドレン廃水の放射性物質濃度も排出量も公表しているので(16)(17)、濃度×排出量で累積のトリチウム累積の排出量を求めてみました。
97億ベクレルを超えた福島第一サブドレンの累積トリチウム排出量
 ※(16)(17)を集計
 図―9 サブドレンの累積排出量

 累積で97億ベクレルを超えました。9月14日にサブドレン汚染水(トリチウム入り)の排水が始まってから100日ですので、概ね1日約1億ベクレルのペースでしょうか?

6.排水路からは法令限度を超える放射性物質
  福島第一原発構内には幾つもの排水路があります。
福島第一原発排水路
 ※(18)で作成
 図―10 福島第一原発内の排水路

 当然ながら福島第一構内は放射性物質で汚染されており、排水路に流れ込みます。1リットル当たりでセシウム137の法令限度は90ベクレル、ストロンチウム90の法令限度は1リットル当たり30ベクレルです(2)。全ベータ濃度のおよそ半分がストロンチウム90で(7)、、全ベータでみれば1リットル当たり60ベクレルになります。このうちK排水路では法令限度を超えた汚染水の流れが確認されています。 
 以下にK排水路の放射性物質濃度を示します。
法令限度を超えた汚染排水を垂れ流すk排水路
 ※(18)(19)を集計
 図―11 K排水路の放射性物質濃度

 法令限度を超えたのは全ベータで1リットル当たりで、今週発表分は以下の通りです。
  12月11日 90ベクレル
  12月24日 64ベクレル

 法令限度を超えた放射性物質を含む汚染水が度々流れています。東電の発表(18)(19)を見ると排水路は遮水壁を超えて海に繋がっているので、「海側遮水壁」が完成しても排水路の汚染水はブロックされません。


<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちらと(ブログ図表①)こちらと(ブログ図表②)こちらを(ブログ図表③)参照ください。
 東京電力福島第一原発事故に伴う南相馬市の特定避難勧奨地点の指定が解除され、12月28日で1年を迎えます。放射線への不安などから、いまだ帰還しない住民は多いようです。これについて国の担当者は
 「今後も不安払拭(ふっしょく)に努めたい」
と述べたそうです(20)。安全であることを前提に、いまも避難を余儀なくされている方を帰還するように説得するみたいな言い方です。でも(=^・^=)の試算では、避難指示が解除された2014年12月28日に帰還すると、2030年には、ICRPが発癌リスクが確認されているとする100ミリシーベルトを超えます(21)。安全とは言い難い状況です。避難指示解除に伴い2015年3月末で、東京電力の賠償が終わったそうです(20)。なんか、東京電力を負担を少なくするために「安全」とは言えない物を「安全」と主張している気がします。
 原発事故から4年9ヶ月以上も過ぎましたが、福島第一から海への汚染水漏れは続いています。それでも国は福島のお魚は「安全」だと主張しています(22)。(=^・^=)には同じ事に見えます。福島の方は心配なようです。
 福島県知事は福島県最大の人口を誇る福島県いわき市(23)のスーパーに福島産の拡販に行くようです。知事が出なけれな程に、福島県いわき市民の福島産離れは進んでいます。
知事来店を告知する福島県いわき市のスーパーのチラシ
 ※(24)を引用
 図―12 福島県知事来店を告知する福島県いわき市のスーパーのチラシ

 さすがに知事ご来店とあっては、お店も気を使い福島産干柿をチラシに載せたようです。福島県は福島産干柿は「安全」と主張していますが(25)、他県産に比べ大幅に安くなっています。福島産は福島県いわき市の方には評判がよくないようです。
他県産に比べ非常に安い福島産干し柿(あんぽ柿)
 ※1(24)を引用
 ※2 あんぽ柿は独特の製法で作られた福島特産の干柿の一種(26)
 図ー13 他県産に比べ大幅に安い福島産干柿

 当然の結果です。(=^・^=)も福島県いわき市の皆様も見習い「フクシマ産」は食べません。

―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)めげ猫「タマ」の日記 福島第一汚染水(12月3週)―去年より高い港湾内シロザケのセシウム濃度―
(2)サンプリングによる監視|東京電力
(3)報道配布資料|東京電力
(4)(2)中の「1.海水(港湾外近傍)」を12月27日に閲覧
(5)(3)中の「福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果」
(6)(2)中の「タンクの水漏れに関するモニタリング⇒南放水口・排水路」
(7)めげ猫「タマ」の日記 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質
(8)(2)中の「タンクの水漏れに関するモニタリング⇒南放水口・排水路⇒12日(その2) 」
(9)2015年10月26日福島第一原子力発電所 海側遮水壁閉合作業完了について(PDF 501KB)
(10)中長期ロードマップ|東京電力中の「中長期ロードマップの進捗状況⇒2015年12月24日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第25回事務局会議)⇒【資料3-1】汚染水対策(14.6MB)」
(11)めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の地下水バイパスについて
(12)(2)中の「H4エリア周辺観測孔」および「H6エリア周辺観測孔」
(13)(3)中の「福島第一 地下水バイパス揚水井 分析結果 」
(14)サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力
(15)(コメント)福島第一原子力発電所におけるサブドレン他水処理施設の運用開始について|東京電力
(16)(3)中の「サブドレン・地下水ドレン浄化水分析結果」
(17)集水タンク・一時貯水タンクの運用状況|東京電力
(18)(3)中の「福島第一原子力発電所構内排水路のサンプリングデータについて 」
(19)(3)中の「福島第一原子力発電所 K排水路排水口放射能分析結果」
(20)住民帰還わずか 追加除染求める声 南相馬「特定避難勧奨」あす解除1年 | 県内ニュース | 福島民報
(21)めげ猫「タマ」の日記 南相馬市の特定避難勧奨地点強制解除―本当に安全なの?―
(22)水産庁/水産物についてのご質問と回答(放射性物質調査)
(23)平成27年国勢調査速報(福島県の人口・世帯数)を掲載しました。 - 福島県ホームページ
(24)イトーヨーカドー 平店
(25)安全が確認された農林水産物(公開用簡易資料) - 福島県ホームページ
(26)あんぽ柿 - Wikipedia
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  1. 2015/12/27(日) 19:43:36|
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