東京電力福島原発はトラブルが多く、トラブル毎に記事にするは面倒なので、まとめて記事にしています。先週につづき(1)、1月5週(1月24日から30日)もしっかりトラブルが起こっています。
1.下請けさんのケガは全治3ヶ月
1月18日午前11時30分頃、福島第一原子力発電所構内の2号機建屋西側付近で、土嚢運搬作業を行っていた下請けさんが、土嚢とガードレールの間に左手薬指を挟みケガをして救急車で運ばれました旨を先週お伝えしましたが(1)、治療に3ヶ月かかるとの発表がありました(2)。発表は1月28日なのでケガ発生後10日です。なんか遅いって感じです。
2.タンクの増設計画は遅れます
福島第一原発では地下水や地下水ドレンからくみ上げた汚染水がタービン建屋に日々流入し増え続けています。タービン建屋に流れ込んだり、流し込んだりした汚染水は
タービン建屋⇒SARRY⇒SR処理水タンク⇒ALPS⇒処理水タンク
の順で処理されています(3)(4)(5)。最終的に「処理水タンク」に保管することになっています。増え続ける汚染水に対応するため、福島第一では汚染水タンクを作り続けなくてはなりません。以下に前回(2015年12月)と今回(2016年1月)の2015年12月1日を起点とした汚染水タンクの累積の増設計画を示します。

※(7)を集計
図-1 福島第一汚染水タンク増設計画
図に示す通り、前回計画より増設ペースが鈍っています。昨年12月にも見直しが行われており(8)、汚染水タンク増設計画はどんどん遅れています。
これまでの計画に加え、2016年7,8,9月に各1万立方メートル、合計で3万立方メートルの追加計画をしめしましたが(図ー1中の緑)、「追加設置検討中」と記されていますが、あくまで「検討中」です。日程を見ると明後日(2月1日)から「地盤改良・基礎設置」の工事が始まる日程になっています(7)。およそ具体性があるとは思えません。
3.フランジダンクも使います。
福島第一の汚染水タンクには「フランジタンク」「ブルータンク」そして「溶接型」の3タイプあるようです(7)。このうちフランジタンクは過去に汚染水漏れをお越し、寿命も5年と言われています(9)。事故から5年たったので、そろそろ新しいタンクに変えるべきですが、記者会見(10)を聞いていたら使い続けるそうです。

※(11)をキャプチャー
図-2 フランジ(ボルト型)タンクを継続して使用することを報じる福島のローカルTV局(FTV)
4.雨が降れば突然に増える地下水ドレン汲み上げ量
海側遮水壁は福島第一原子力発電所の1~4号機側の敷地から港湾内に流れている地下水をせき止め、海洋汚染をより一層防止するものです。2015年10月26日海側遮水壁に完成しました(12)。海側遮水壁によって汚染地下水の海への流れが阻害されるので、汚染地下水が海側遮水壁の内側に溜まっていきます。そこで海側遮水壁内側に溜まった汚染水を汲みあげています。これを東京電力は地下水ドレンと呼んでいます(13)。いまの所、汲み上げた汚染水はタービン建屋に戻しています(14)(15)。以下にタービン建屋に戻した汚染水量と福島第一原発近くのアメダス観測点「浪江」の降水量を示します。

※1(14)(15)(16)にて作成
※2ウエルポイントからの戻し量も含む
図ー3 地下水ドレン等の汲みあげ水の戻し量
1月18日に日量で64mmの雨が降りました。そしたらそれまで1日当たり200立方メートルだった戻し量が600立方メートルに増えました。東京電力は会見で(10)、雨が降った為に一時的に増えたような説明をしていましたが、気象庁のデータ(16)を集計する限りでは1月の累積降雨量は70mm程度です。過去30年間の平均は約50mmですので(16)、極端に多いわけではありません。以下に浪江の年平均の降水量を示します。

※(16)にて作成
図-4 福島第一原発近くのアメダス観測点(浪江)の月別の平均降水量
1月は比較的雨が少ない月です。これからどんどん雨が増えて行きます。汚染水の増加にタンクの増設がまにあうか心配です。
5.デブリ調査は見通したたず
原子力ムラの皆様は福島第一原発事故で溶け落ちた核燃料を「デブリ」と呼んでいます(17)。(=^・^=)などは「溶融核燃料」で十分な気がしますが、外国語由来の一般には分かり難い名称を付けるのが好きみたいです。デブリの取り出しが2022年3月までには始める予定でいます(18)。日程は以下の通りです。
2017年6月 取り出し方針の決定
2018年9月まで 取り出し方法の確定
2022年3月まで 燃料デブリ取り出しの開始
となっています(18)。これらのことを調査するにはデブリの状況を知る必要がありますが、事故から5年近くたってもデブリは見つかっていません。そこでデブリの調査が計画されています(19)。会見(20)や報道(21)によれば2016年4月以降に延期されるそうです。

※(22)を1月29日に閲覧
図-5 デブリ調査の遅延を報じる福島県の地方紙・福島民報
ただし、何時から開始するかは発表がありませんでした。2016年4月以降ですから、デブリの取り出し方針を決定する2017年6月まで1年程しかありません。その間に必要な情報を集め「取り出し方針の決定」することになりますが出来るんですかね?経済産業省資源エネルギー庁の担当者は「現時点で工程への影響はない」としているそうです(21)。日程が明示されていないので、事実上は「見通しただず」ですが・・・
6.クレーンが劣化
1号機建屋カバー解体工事にて使用している750tクローラークレーン(2号機)の年次点検を12月初旬より実施しているが、点検中にジブの変形(凹み)と腐食が確認されたそうです(23)。

※(23)を抜粋、加筆
図―6 腐食が確認されたクレーンの部位
放射線量が高くまともな点検はできなかったと思います。事故から5年近くが経過して劣化が進んでいる感じです。
7.凍土壁の実質議論できず
東京電力と国(資源エネルギー庁)は福島第一原発のタービンや原子炉建屋の回りを氷の壁で取り囲み、汚染水の元となる地下水の流入を抑える「凍土壁」を計画しています(24)。1月27日に凍土壁の「安全」を原子力規制委員会が審査する「第39回特定原子力施設監視・評価検討会」が開かれました(25)。聞いていたのですが、凍土壁については実質議論はなく「論点整理」でした。論点15件中の12件が合意しておらず、この先まだまだ時間がかかりそうです(26)。
以下に東京電力が発表した汚染水量とタンク容量の見積もりを示します。

※(7)抜粋、加筆
図-7 汚染水量とタンク容量の見積もり
4月から汚染水の増加が減少する計画になっています。会見を聞いていると(10)、凍土壁の運用が始まることが前提です。あと2ヶ月で出来る訳がないので単なる「希望」です。
8.東電社員様は単身赴任
東京電力は昨年9月に避難指示が解除された福島原発の20km圏内に位置する楢葉町(27)等の社宅を整備するそうです(28)。

※(29)をキャプチャー
図ー8 東京電力の社宅整備を報じる福島県ローカルTV局(FCT)
でも間取りは1Kとの事なので、基本はお一人様です。東京電力は福島第一への赴任は単身赴任が前提なようです。
福島第一原発の廃炉作業は大変な作業だと思います。ご家族のサポートがあった方がいいはずですが。それに東京電力は福島を恐れこれを避ける行為を「風評被害」としています(30)。「風評被害」対策を考えるなら福島第一原発の実情を良く知る東電社員様がご家族で赴任されれば、多くの方は安心すると思います。楢葉町は教育に力をいれるとしているので(31)、お子さんの教育の心配もありません。それでも単身赴任って、やっぱり多くの東電社員様が福島は家族と住むにはまだ「危険」と考えているのでしょうか。家族同伴の赴任をすすめるか、「風評被害」との主張を取り下げるかどちらかにしていただきたいと(=^・^=)は思います。
付.顧客情報が行方不明
東電社員様が約81万軒の顧客の個人情報(氏名、電話番号、住所、電気料金、電気使用量)が含まれているUSBメモリを紛失したそうです(31)。(=^・^=)の感覚ではUSBを使うこと自体が信じられないのですが?
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら(
ブログ図表)を参照ください。
トラブル続きの福島原発!これでは福島の方は不安だと思います。
福島県郡山市産米の全数・全袋検査数は135万件を超え、福島県随一です(32)。福島県郡山市のお米はツヤ、香り、味、粘り、柔らかさ等、美味しさの条件をすべて備えた全国に誇れるお米だそうです(33)。このお米は「安全」とされ学校給食にも使われています(34)。福島県は福島産米のテレビCMも流しています(35)。でも、福島県郡山市のスーパーのチラシには米を含め福島産はありません。

※(36)を引用
図―9 福島産が無い福島県郡山市のスーパーのチラシ
当然の結果です。(=^・^=)も福島県郡山市の皆様も見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(1月4週)―2週連続で下請けさんがケガ―(2)
福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力(3)
汚染水対策の主な取り組み|東京電力(4)
原子炉の安定化|東京電力(5)
めげ猫「タマ」の日記 SR処理水について(6)
中長期ロードマップ|東京電力(7)(6)中の「中長期ロードマップの進捗状況」⇒「2016年1月28日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第26回事務局会議)」「【資料3-1】汚染水対策(9.54MB)」
(8)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(12月4週)―福島第一汚染水対策は綱渡り―(9)
タンク耐用年数、根拠なし 第一原発 | 東日本大震災 | 福島民報(10)
【2016年1月18日】東京電力 記者会見 - 2016/01/18 17:30開始 - ニコニコ生放送(11)
福島のニュース 福島テレビ(1月26日ひる放送) FTV8 (12)
海側遮水壁|東京電力(13)
サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力(14)
2016年1月18日建屋への地下水ドレン移送量・地下水流入量等の推移(PDF 182KB(15)
2016年1月25日建屋への地下水ドレン移送量・地下水流入量等の推移(PDF 161KB)(16)
気象庁|過去の気象データ検索(17)
福島復興に向けた技術を開発する | 日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所(18)(6)中の「2015年6月12日(廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議第2回)⇒(資料3)東京電力(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ(案)(1.43MB)」
(19)(6)中の「中長期ロードマップの進捗状況⇒2016年1月28日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第26回事務局会議)⇒【資料3-3】燃料デブリ取り出し準備(3.18MB)」
(20)
【2016年1月28日】東京電力「中長期ロードマップの進捗状況」に関する記者会見 - 2016/01/28 18:30開始 - ニコニコ生放送(21)
第一原発1号機、ロボット調査見直し 新年度に延期 | 東日本大震災 | 福島民報(22)
福島民報(23)(6)中の「中長期ロードマップの進捗状況⇒2016年1月28日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第26回事務局会議)⇒【資料3-2】使用済燃料プール対策(26.4MB)」
(24)
陸側遮水壁|東京電力(25)
第39回特定原子力施設監視・評価検討会 | 原子力規制委員会(26)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一凍土壁、論点15で合意は3―この先まだまだかかる―(27)
楢葉町 - Wikipedia(28)
楢葉に廃炉関連社宅 大和ハウス整備へ | 県内ニュース | 福島民報(29)
ダイジェスト動画|ゴジてれ Chu!|福島中央テレビ中の「2016年1月27日(水)放送」
(30)
2015年1月16日(いわき市漁協組合員説明会資料)風評被害対策について(PDF 325KB)(31)
「楢葉町復興計画〈第二次〉第二版(案)」に関する町民意見の募集|楢葉町公式ホームページ(32)
ふくしまの恵み安全対策協議会 放射性物質検査情報(33)
JA郡山市|農産物のご案内(34)
JA郡山市|事業PR(35)
TVCM ふくしまプライド。 「天のつぶ」 篇 | ふくしま 新発売。(36)
マックスバリュ南東北 - ザ・ビッグ郡山店中の「チラシ情報」
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- 2016/01/30(土) 19:51:15|
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| コメント:1
手を挟んで全治3ヵ月って、凄い重症なんだけど!完全に粉砕骨折、、、。
きっと元には戻らない、、。
それにしても下請けさんの死人は何人も出すは。下請けさんのけが人は何十人も出してるのに、なんのお咎めも無い企業って何なの!?普通なら完全に潰れてる(怒)
- 2016/01/30(土) 21:24:55 |
- URL |
- 武尊43 #-
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