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めげ猫「タマ」の日記

一寸気になったどうでもいい事を記事に

福島第一汚染水(2月1週)―外洋から17ベクレルの全ベータ―

福島第一原発汚染水の2月1週(2月1日から7日)の状況を纏めてました。先週に続き(1)、高濃度の放射性物質が見つかっています。
 ①外洋から17ベクレルの全ベータ
 ②港湾口からは前年同時期には見つからない全ベータ
 ③地下水バイパスや上流の井戸3本から過去最高のトリチウム
 ④海岸付近の井戸3本から過去最高のストロンチウム90
 ⑤サブドレンからとトリチウム放出がペースアップ
 ⑥法令限度を超えた汚染水が排水路から海へ

1.外洋から17ベクレルの全ベータ
 事故から5年近くになりました。時間が経ても外洋からは相変わらず放射性物質が見つかっています。
事故から5年経ても放射性物質が見つかる福島第一沖外洋
 ※1 (4)(5)(6)で作成
  ※2  数値は1リットル当たりのベクレル数
  ※3  集計期間内の最大値
  ※4  全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(7)
 図―1 福島第一原発近傍外洋の放射性物質濃度

このうち気になったのが排水路出口付近(T-2)の全ベータ濃度です。以下に推移を示します。
外洋にては高い濃度の全ベータが見つかったT-2地点
 ※1(6)(8)を集計
 ※2 NDは検出限界未満を示す。
 図―2 排水路出口付近(T-2)の放射性物質濃度

 ここでは全ベータが検出されることは少ないのですが、2月2日に地下水バイパスからの汚染水を排出中に採取した海水から1リットル当たり17ベクレルの全ベータが見つかりました。(=^・^=)の知る限り「外洋」で見つかった全ベータ濃度としては高い濃度です。ちなみに南放水口付近の過去最高値は1リットル当たりで16ベクレルです。
 原発事故から5年が経過しましたが、福島第一原発から海洋への放射性物質漏れは収まっていません。

2.港湾口からは前年同時期には見つからない全ベータ
 港湾内からはもっと高濃度の汚染水が見つかっています。
セシウム等も見つかる港湾内
 図―3 福島第一港湾内の放射性物質濃度

10月26日に海側遮水壁の工事が完了しました(9)。東京電力はこの効果で港湾内の放射性物質濃度は下がったと主張しています(10)。効果があれば汚染水の流れが悪くなり、全体の汚染水濃度が下がっていいはずです。以下に港湾口の2014年と15年10月からの全ベータ濃度を示します。
前年はみつからない全ベータが見つかる港湾口
 ※1 (5)で作成
  ※2  数値は1リットル当たりのベクレル数
  ※3  集計期間内の最大値
  ※4  SR90はストロンチウム90を示し、採取日は2015年12月28日  
 図―3 福島第一港湾内の放射性物質濃度

 港湾口は港湾と外洋の境界に当たる場所です。ここでの放射性物質濃度が低減されなれば外洋への流出が防止できたことになりません。図―4に示す通り、海側遮水壁ができる前の1年前は全ベータは見つかっていません。でも海側遮水壁が完成した2015年10月26日以降を見ると全ベータが見つかっています。一昨年末より海側遮水壁が完成した昨年末の方が全ベータ濃度が高くなっています。現時点では海側遮水壁の効果は見えません。
 これまで海側遮水壁内側の「3,4号機取水口間」と「4号機スクリーン」の放射性物質濃度を紹介してきましたが(1)、東京電力の会見(11)によると海側遮水壁内側は埋め立てるので、サンプル採取ができなくなったそうです。

3.地下水バイパスや上流の井戸3本から過去最高のトリチウム
 地下水バイパスは、福島第一原発の汚染水対策として原子炉建屋に侵入する前の地下水を事前に汲み上げ汚染水の発生を抑えようとするものです(12)。海に流す水からは「トリチウム」が見つかっているので、(=^・^=)は立派な汚染水だと思います。東京電力は福島第一原発地下水バイパスの山側に井戸を掘って放射性物質濃度を調べています(13)。また地下水バイパスからくみ上げた汚染水の濃度も井戸毎に調べています(14)。以下に放射性物質濃度を示します。
排水基準を超えた放射性物質が見つかる地下水バイパスと山側井戸
 ※1 (13)(14)にて作成
 ※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
 ※3 集計期間内の最大値
 図―5 地下水バイパスと山側(上流井戸)の放射性物質濃度

地下水バイパスやサブドレンの排水基準は1リットル当たりで
  全ベータ  5ベクレル
  トリチウム 1500ベクレル
ですので(2)、多くの場所で排水基準を超えた放射性物質が見つかっています。さらに1リットル当たりの値で以下の地下水バイパス井戸のトリチウムは過去最高です(15)。
 No9    500ベクレル
 No10 3,300ベクレル
 No11 1,100ベクレル

 以下に地下水バイパスNo10井戸のトリチウム濃度を示します。
どんどん上昇し過去最高を記録した地下水バイパスNo12井戸
※(11)を集計
 図―6 地下水バイパスNo10井戸のトリチウム濃度

 ずっと上昇を続けています。この先が心配です。

4.海岸付近の井戸3本から過去最高のストロンチウム90
 東京電力は福島第一原発の海岸付近やタービン建屋周りの井戸の地下水の放射性物質濃度を調べています(5)。以下に今週、最高濃度(新記録)の放射性物質が見つかった井戸の位置を示します。
高濃度のストロンチウム90が見つかる海岸の井戸
 ※1 (5)を集計
 ※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
 ※3 集計期間内の最大値
 ※4  SR90はストロンチウム90を示し、採取日は1月1日
 図―7 海岸付近の井戸の放射性物質濃度

 図に示す全ての井戸で過去最高を記録しています。1リットル当たりの値で
  No1    ストロンチウム90 16,000ベクレル
  No1-12 ストロンチウム90  3,200ベクレル
  No1-14 ストロンチウム90 54,000ベクレル
  No1-17 セシウム       1,220ベクレル
です。3本の井戸から同時に過去最高ストロンチウム90が見つかっています。採取日は1月1日です(16)。
 以下にNo1井戸の放射性物質濃度を示します。
どんどん上昇し過去最高を記録したNo1井戸のストロンチウム
※(5)を集計
 図―8 No1井戸の放射性物質濃度

 昨年4月位から上昇しだし、止まる気配がありません。福島第一の放射性物質が海に迫っている感じです。

5.サブドレンからとトリチウム放出がペースアップ
 サブドレンは、原子炉やタービン建屋の直ぐ傍の井戸から汚染地下水を汲み上げ、直接にタービン建屋周囲の水位を下げ汚染水の増加量を抑えるものです(17)。サブドレンの運用は9月3日から始まったので(18)ほぼ4ヶ月が経過しました。東京電力はサブドレン廃水の放射性物質濃度も排出量も公表しているので(19)(20)、濃度×排出量で累積のトリチウム累積の排出量を求めてみました。
ペースアップしたサブドレントリチウム排出量
 ※(15)(16)を集計
 図―9 サブドレンの累積排出量

 累積で約142億ベクレルになりました。昨年9月14日にサブドレン汚染水(トリチウム入り)の排水が始まってから1月24日までの132日間の累積排出量は約126億ベクレルで、概ね1日約1億ベクレルのペースでした。1月31日から2月6日の7日間の排出量は約17億ベクレルで1日当たり2.4億ベクレルにペースアップしました。累積で157億ベクレルです。

6.法令限度を超えた汚染水が排水路から海へ
 福島第一原発構内には幾つもの排水路があります。
福島第一原発排水路
 ※(21)で作成
 図―10 福島第一原発内の排水路

 当然ながら福島第一構内は放射性物質で汚染されており、排水路に流れ込みます。1リットル当たりでセシウム137の法令限度は90ベクレル、ストロンチウム90の法令限度は1リットル当たり30ベクレルです(2)。全ベータ濃度のおよそ半分がストロンチウム90で(7)、、全ベータでみれば1リットル当たり60ベクレルになります。このうちK排水路では法令限度を超えた汚染水の流れが確認されています。 
 以下にK排水路の放射性物質濃度を示します。
排水基準を超えた汚染水が流れたK排水路
 ※(21)を集計
 図―11 K排水路の放射性物質濃度

 K排水路の全ベータ濃度は1リットル当たりで
  1月23日  68ベクレル
  1月27日 210ベクレル
で共に法令限度を超えています。東電の発表(21)を見ると排水路は遮水壁を超えて海に繋がっているので、「海側遮水壁」が完成しても排水路の汚染水はブロックされません。


<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら(ブログ図表①)こちら(ブログ図表②)を参照ください。
報道によると原発南側に位置する福島県大熊町や富岡町の沿岸に生息するフジツボや巻き貝などの無脊椎動物が大幅に減少したそうです(22)。魚を取らなくった為かとも思ったのですが、福島第一原発北側の南相馬市小高区では減っていないので、報道の通り福島第一原発からの放射性物質漏れに起因すると思います。
 今日(2月7日)に北朝鮮がミサイルを発射しました(23)。
北朝鮮のミサイル発射を伝える福島県の地方紙・福島民報
 ※(24)を2月7日閲覧
 図-12 北朝鮮のミサイル発射を伝える福島県の地方紙・福島民報

リスクを考えれば、北朝鮮のミサイルより福島第一原発の汚染水漏れの方が大きいと思います。北朝鮮のミサイルで沖縄の海が汚染され環境影響がでる可能性は少ないと思います。でも福島第一の汚染水漏れは明確に環境影響を引き起こしています。
 ところがNHKは福島の魚は安全だとプロパガンダをニュースと称し流しています(25)。
国の基準より厳しい基準と嘘を流すNHK
 ※(25)をキャプチャー
 図―13 「国より厳しい基準で検査」と嘘をつくNHK

 NHKは「(福島県漁連の)国の基準より厳しい1キログラムあたり50ベクレルの基準で検査が行われている」としていますが(25)、福島県漁連の検査はスクリーニング検査です(26)。スクリーニング検査場合には国は「1キログラムあたり50ベクレル」を基準として定めています(227)。国の基準より厳しいのでなく国の基準通りの検査です。さらには「セシウムは水に溶けやすいため海水の放射性セシウムの濃度が下がる」とも報じています。福島県楢葉町の水源となるダム湖の湖底からは1キログラム当たり1万ベクレル程度のセシウムが見つかっていますが、水道水からはセシウムは見つかっていません(28)。セシウムは水に溶けにくいのです。
セシウムは水に溶けないとする国などの資料
 ※(28)を引用
 図-14 セシウムは水に溶けにくいとする国等の資料

 福島県も福島の海で採れた魚は安全だとしています(29)。根拠になっているのは福島県の検査で「基準超」が殆ど無くなった(30)ことだと思います。だだしこの主張が成立するには「福島県の検査」が「正しく」なければなりません。以下にスズキの検査結果を示します。
 千葉・銚子は全数セシウム入りだが、福島・いわきは全数NDとのスズキの検査結果
 ※1(31)を転載
 ※2NDは検出限界未満を示す。
 ※3日付は捕獲日
 図-15 福島県いわき市、茨城県、千葉県銚子市のスズキの検査結果

 福島県実施したいわき市産のスズキは全数が検出限界未満(ND)ですが、千葉県が実施した銚子市産のスズキでは全数、茨城県が実施した茨城産でもそこそこセシウムが見つかっています。汚染源に近い福島県いわき市産の魚が茨城産や千葉県銚子市産にくらべセシウム汚染が少ないなどあり得ません。福島県の検査は他より値が低く出る検査です。
 福島の海は福島第一原発の汚染水漏れで環境影響を受けています(22)。それでも嘘や信頼でききない検査を元に福島産は「安全」とされ、福島産を避ける行為は「風評被害」だとされます(32)。これでは福島の方は不安だと思います。
 福島県郡山市産米の全数・全袋検査数は135万件を超え、福島県随一です(23)。福島県郡山市のお米はツヤ、香り、味、粘り、柔らかさ等、美味しさの条件をすべて備えた全国に誇れるお米だそうです(24)。このお米は「安全」とされ学校給食にも使われています(25)。福島県は福島産米のテレビCMも流しています(26)。でも、福島県郡山市のスーパーのチラシには福島産米はありません。
他県産はあっても福島産米が無い福島県郡山市のスーパーのチラシ
 ※(27)を引用
 図―16 福島産米が無い福島県郡山市のスーパーのチラシ

 当然の結果です。(=^・^=)も福島県郡山市の皆様も見習い「フクシマ産」は食べません。


―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)めげ猫「タマ」の日記 福島第一汚染水(1月5週)―法令限度を超えた汚染水が排水路から海へ―
(2)サンプリングによる監視|東京電力
(3)報道配布資料|東京電力
(4)(2)中の「1.海水(港湾外近傍)」を2月7日に閲覧
(5)(3)中の「福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果」
(6)2016年2月4日福島第一原子力発電所 地下水バイパス排水に関するサンプリング結果(南放水口付近)(PDF 383KB)PDF
(7)めげ猫「タマ」の日記 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質
(8)(2)中の「タンクの水漏れに関するモニタリング⇒南放水口・排水路」を2月7日に閲覧
(9)2015年10月26日福島第一原子力発電所 海側遮水壁閉合作業完了について(PDF 501KB)
(10)中長期ロードマップ|東京電力中の「中長期ロードマップの進捗状況⇒2015年12月24日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第25回事務局会議)⇒【資料3-1】汚染水対策(14.6MB)」
(11)2016年2月1日】東京電力 記者会見 - 2016/02/01 17:30開始 - ニコニコ生放送
(12)めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の地下水バイパスについて
(13)(2)中の「H4エリア周辺観測孔」および「H6エリア周辺観測孔」
(14)(3)中の「福島第一 地下水バイパス揚水井 分析結果 」
(15)2016年2月6日福島第一 地下水バイパス揚水井 分析結果(PDF 121KB)
(16)2016年2月5日福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果(PDF 646KB)PDF
(17)サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力
(18)(コメント)福島第一原子力発電所におけるサブドレン他水処理施設の運用開始について|東京電力
(19)(3)中の「サブドレン・地下水ドレン浄化水分析結果」
(20)集水タンク・一時貯水タンクの運用状況|東京電力
(21)(3)中の「福島第一原子力発電所構内排水路のサンプリングデータについて 」
(22)<原発事故>フジツボや巻き貝 大幅に減少 河北新報 2月5日
(23)北朝鮮が弾道ミサイル発射 | 国内外ニュース | 福島民報
(24)福島民報
(25)魚介類の安全性学ぶ勉強会 - NHK福島県のニュース
(26)福島県における魚介類の試験操業に関するポータルサイトです中の「検査体制」
(27)食品中の放射性セシウムスクリーニング法の一部改正について |報道発表資料|厚生労働省
(28)小山浄水堲が供給する水道水の現状と安心に向けた取組について
(29)安全が確認された農林水産物(公開用簡易資料) - 福島県ホームページ中の「海産魚介類(試験操業対象種)編 [PDFファイル/123KB]」および「しらす [PDFファイル/103KB] 」
(30)本県沖の放射性物質検査 魚介類基準超大幅減 | 県内ニュース | 福島民報
(31)めげ猫「タマ」の日記 食品中の放射性セシウム検査のまとめ(2月1週)―千葉・銚子は全数セシウム入り、福島・いわきは全数ND、おかしなスズキの検査結果―
(32)「おいしい ふくしま いただきます!」キャンペーン - 福島県ホームページ
(33)ふくしまの恵み安全対策協議会 放射性物質検査情報
(34)JA郡山市|農産物のご案内
(35)JA郡山市|事業PR
(36)TVCM ふくしまプライド。 「天のつぶ」 篇 | ふくしま 新発売。
(37)イトーヨーカドー 郡山店
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