東京電力福島原発はトラブルが多く、トラブル毎に記事にするは面倒なので、まとめて記事にしています。先週につづき(1)、2月2週(2月7日から13日)もしっかりトラブルが起こっています。
①雨が降れば地下水ドレンからタービン建屋への移送量が増える
②凍土壁完成、運用はできません
③労働環境にクレーム
④焼却炉から「水漏れ」
⑤廃棄物の分析に20年
⑥処理水タンクの満タン状態が続く、建物潰して汚染水タンク?
⑦使用済燃料プール代替冷却系のポンプが停止、4日間秘匿します
1.雨が降れば地下水ドレンからタービン建屋への移送量が増える
海側遮水壁は福島第一原子力発電所の1~4号機側の敷地から港湾内に流れている地下水をせき止め、海洋汚染を減らす為に設けらもので、2015年11月5日から海側遮水壁内側の汚染水の汲みあげをはじめました(3)。当初の予定では汲み上げた汚染水は浄化装置を通した後で、海に流すはずでしたが(2)(3)、浄化装置を通しても排水基準を満たす宛てが無く、タービン建屋に送り込んでいます(1)。 以下に地下水ドレン等から汲み上げ、タービン建屋に戻した汚染水の量と福島第一原発近くのアメダス観測点「浪江」の降水量を示します。

※1(4)(5)(6)(7)(8)にて作成
※2 降雨量はアメダス観測点「浪江」の値
※3 ウエルポイント(海側遮水壁手前の汲み上げ用井戸)からの移送量も含む
図―1 地下水ドレン等からの移送量と降水量
1月29日に12mの雨が降りました。そしたら一週間ほど移送量が大きく増えました。雨が降る前の3日間(1月26日から28日)の平均の汲み上げ量は1日当たり170立方メートルですが、雨がふった後の6日間(1月29日から3日)の平均の汲み上げ量は1日当たり388立方メートルで133立方メートルです。6日間で1309立方メートル(133×6)で、雨1mm当たり109立方メートル(1309÷12)です。浪江には年間で1511mmの雨が降ります(8)。年間に直すと16万5千立方メートルです(109×1511)。1日当たりで451立方メートルになります。浪江では1月1日から14日間は雨が降りませんでした。1月1日前日の12月31日の汚染の総量は86万3441立方メートルであり(9)、14日は86万9342立方メートルで14日間で5901立方メートルで(10)、1日当たり421立法メートルです。合計すると1日当たり872立方メートル増える計算になります。ところが東京電力は今年4月以降は1日当たり250立方メートル程度です(12)。東電の汚染水計画は間もなく破綻しそうです。そしたら溢れさすか、マシな汚染水から海に流すしか選択肢がなくなります。
2.凍土壁完成、運用はできません
凍土壁は福島第一原発のタービン・建屋の回りを氷の壁て囲い地下水の流入を抑え汚染水の増加を抑える事を目指すものです(13)。

※Google Mapと(14)にて作成
図-2 凍土壁、サブドレンと海側遮水壁
2月9日に工事が完了しました(15)。但し、運用できません(16)。原子力規制委員会は凍土壁の「安全性」について疑念を持っているようで、なかなか運用の許可が下りそうにもありません(17)。
凍土壁は極めてリスキーだと(=^・^=)は考えます。凍土壁の内側にはタービン・原子炉建屋への地下水の流入を阻止するために地下水を汲み上げ海に流すサブドレン井戸があります(18)。1項に記載の通り海側遮水壁内側に溜まった汚染水を汲みあげタービン建屋に戻しています。今は雨が降っても一部はサブドレン井戸で汲み上げられています。以下に(=^・^=)が想定する凍土壁凍結後の雨水の流れを示します。

※(=^・^=)の想像図
図-3 凍土壁完成後の雨水の流れ
凍土壁が凍結するとサブドレン側に雨水が流れなくなり、全てが海側遮水壁側に流れるようになります。海側遮水壁側にいままで以上の汚染水が流れ汲み上げ量が増えます。汚染水の増加を加速する危険があります。福島県の地方紙の福島民友は社説で「政府も前面に出て安全な運用に責任を負わなければならないことを銘記したい。」と論じていますが(19)、(=^・^=)の見るかぎり「安全な運用」は無理な気がします。凍土壁は税金で作られました(19)。安倍の無駄遣いに終わりそうです。
3.労働環境にクレーム
2月9日に原子力規制委員長が東京電力の社長と会ったそうです。そこで規制委員長は
「避難区域が設定された12市町村の首長との意見交換で、福島第一原発の現状に対する不安の声が大きかったことにも触れ、『汚染水漏えいや労働災害が相次いでいることが原因だ』と指摘した。1、2号機共用の排気筒(高さ約120メートル)が鋼材接合部の破断により倒壊の恐れもあるとして、撤去に向けた検討を進めるよう求めた。」
と申し入れたそうです(20)。
昨年(2015)をみると、下請けさんに係るトラブルが17件ありうち6名の下請けさんが亡くなっています(21)。今年に入っても2名の下請けさんがケガをしました(22)。福島県の地方紙の福島民友は
「作業効率は悪いかもしれないが、(作業の安全確保は)徹底されている。それだけ基準が厳しくなったんだ。」
との下請けさんの声を載せていますが(23)、それでも事故が起こっています。福島第一がそれだけ厳しい場所だからと思います。
不思議な事に東電社員様にはトラブルがありません(21)(22)。何故ですかね?
4.焼却炉から「水漏れ」
福島第一では日々、ゴミが溜まっています(24)。だだし放射能に汚染されているので外に持ち出しで処分するわけには行きません。福島では除染作業で使われたとみられる用具が、コンビニエンスストアのゴミ箱や家庭用ゴミ置き場に捨てられていることが問題になっています(25)。東京電力は廃炉作業で出たゴミのうち、防護服などの焼却する施設の整備を進めています(26)。焼却設備が完成し2月10日から燃やし始める予定でしたが、焼却設備の一部で水滴が漏れていたため、焼却炉の運転を止め設備を点検することになりました(27)(28)。
5.廃棄物の分析に20年
福島第一原発では廃炉作業に伴い色々な「ゴミ」が溜まっています。このゴミを今後、どうするかの検討会が2月12日に開かれました(24)。ゴミを処理するには分別する必要があるそうですが、分別の為には「分析」が必要とのことです。ところが今の所、「分析」にあと20年かかるそうです(29)。東京電力は福島第一の廃炉を30から40年と主張しています(30)。既に原発事故から5年経過しているので、ゴミの分別の前作業である「分析」が終わるのが廃炉予定の5から15年前になります。それから分別して処理することになります。東京電力は福島第一の廃炉を30から40年でするつもりがあるのですかね?
6.処理水タンクの満タン状態が続く、建物潰して汚染水タンク?
東京電力は週毎に汚染水の量を公表しています(23)。以下に週毎の汚染水の増加量を示します。

※(31)を集計
図ー4 福島第一の汚染水増加量(日量)
図に示す通り、地下水ドレン汲み上げ開始後に汚染水の増加が加速し改善の兆しがありません。
福島第一原発では地下水や地下水ドレンからくみ上げた汚染水がタービン建屋に日々流入し増え続けています。タービン建屋の汚染水は汲み上げてて
タービン建屋⇒SARRY⇒SR処理水タンク⇒ALPS⇒処理水タンク
の順で処理されています(32)(33)(34)。最終段の処理水について
満水率を「汚染水保管容量÷汚染水タンク容量」
と規定し、推移を示します。

※(31)を集計
図ー5 福島第一の「処理水タンク」の満水率
この所、約96~98%で推移しています。ここからは(=^・^=)の想像ですが、東電はこれが限度だと判断していると思います。タンクを満タンにすると地震などで生じるスロッシング(容器内の液体が外部からの比較的長周期な振動によって揺動すること。)でタンクから液体が漏れ出すことが知られています(31)。安全にくみ上げた汚染水を保管するにはある程度の「空」が必要です。事実上は満タン状態です。
2月12日に東京電力は福島第一原発内の企業棟等の建物を解体すると発表しました(35)。

※(35)とGoogle Mapで作成
図ー6 東電が解体すると発表したエリア
汚染水タンクの側のエリアが解体される見たいです。跡地を何に使うかは明示されてませんでしたが「土地」が必要の様です。
7.使用済燃料プール代替冷却系のポンプが停止、4日間秘匿します
2月9日午前 6時25分頃、使用済燃料プール代替冷却系(SFP)の漏えいを示す警報が発生し、ポンプが自動停止そうです。2月9日の出来事ですが、発表は2月13日です(37)。4日間秘匿されていました。ポンプが止まったてことは冷却水の流れが止まったはずで、核燃料プールの冷却停止?もしそうならこれを4日間も秘匿する東京電力はスーパー隠ぺい体質?詳しくは来週に報告します。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら(
ブログ図表)を参照ください。
福島第一原発はトラブル続です。除染で出た廃棄物の処理も上手く進んでいません。福島県の地方2紙は3日連続で今日(2月12日)も除染で出た放射性廃棄物を集約する中間貯蔵施設が上手く行ってい事を批判する記事を配信していました(37)(38)。

※(40)を引用
図-7 中間貯蔵の遅れを批判する福島県の地方紙・福島民報
これでは福島の方は不安だと思います。
福島県郡山市産米の全数・全袋検査数は135万件を超え、福島県随一です(41)。福島県郡山市のお米はツヤ、香り、味、粘り、柔らかさ等、美味しさの条件をすべて備えた全国に誇れるお米だそうです(42)。このお米は「安全」とされ学校給食にも使われています(43)。福島県は福島産米のテレビCMも流しています(44)。でも、福島県郡山市のスーパーのチラシには福島産米はありません。

※(45)を引用
図―8 福島産米が無い福島県郡山市のスーパーのチラシ
当然の結果です。(=^・^=)も福島県郡山市の皆様も見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(2月1週)―汚染水処理は綱渡り―(2)
海側遮水壁|東京電力(3)
サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力(4)
2016年1月18日建屋への地下水ドレン移送量・地下水流入量等の推移(PDF 182KB) (5)
2016年1月25日建屋への地下水ドレン移送量・地下水流入量等の推移(PDF 161KB) (6)
2016年2月1日建屋への地下水ドレン移送量・地下水流入量等の推移(PDF 218KB)PD(7)
"2016年2月8日建屋への地下水ドレン移送量・地下水流入量等の推移(PDF 158KB) (8)
気象庁|過去の気象データ検索(9)
福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第234報)|東京電力を集計
(10)
福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第235報)|東京電力(11)
中長期ロードマップ|東京電力中の「中長期ロードマップの進捗状況」⇒「2016年1月28日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第26回事務局会議)」
(12)(11)中の「【資料3-1】汚染水対策(9.54MB)」
(13)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の凍土壁は税金の無駄遣い?(14)(11)中の「【資料2】中長期ロードマップの進捗状況(概要版)(7.16MB)」
(15)
2016年2月12日福島第一原子力発電所の状況(記者会見資料)(PDF 19.7KB) (16)
「凍土遮水壁」の建設完了 福島第1原発、運用には課題:福島民友ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet(17)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一凍土壁、論点15で合意は3―この先まだまだかかる―(18)
サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力(19)
【2月11日付社説】凍土遮水壁/安全な運用方法の確立急げ:社説:福島民友新聞社 みんゆうNet(20)
労働環境改善を要求 規制委の田中委員長 東電社長と会談 | 県内ニュース | 福島民報(21)
めげ猫「タマ」の日記 勝手に福島原発十大トラブル2015(22)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(1月4週)―2週連続で下請けさんがケガ―(23)
【作業員-6】廃炉従事「不安ない」 基準厳しく安全徹底:復興の道標:福島民友新聞社 みんゆうNet(24)
第2回特定原子力施設放射性廃棄物規制検討会 | 原子力規制委員会(25)
除染用具、福島で投棄やまず 住宅街やコンビニに :日本経済新聞(26)(24)中の「資料5 :焼却対象物について(使用済保護衣等、伐採木、及びその他焼却対象物)[東京電力]【PDF:291KB】」
(27)
【2016年2月10日】東京電力 記者会見 - 2016/02/10 17:30開始 - ニコニコ生放送(28)
防護服など燃やす「試験焼却」延期 第1原発の作業廃棄物:福島民友ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet(29)(24)中の「資料4 :福島第一事故廃棄物の分析能力について[東京電力]【PDF:674KB】」
(30)
福島第一原子力発電所廃炉に向けた取り組み・スペシャル|2017新卒採用サイト|東京電力|東京電力(31)
プレスリリース|東京電力中の「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について 」
(32)
汚染水対策の主な取り組み|東京電力(33)
原子炉の安定化|東京電力(34)
めげ猫「タマ」の日記 SR処理水について(35)
スロッシング - Wikipedia(36)(24)中の「資料3-1:瓦礫等発生量の内訳について[東京電力]【PDF:1MB】」
(37)
2016年2月13日福島第一原子力発電所の状況について(日報) 【午後3時現在】(38)
「霞が関」の都合(3) 用地取得 長期化の様相 迅速さ欠く算定 加速策も効果不透明 | 東日本大震災 | 福島民報(39)
【検証・中間貯蔵施設】仮置き延長なし崩し 「現場保管」の状態続く:福島民友ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet(40)
福島民報を2月13日に閲覧
(41)
ふくしまの恵み安全対策協議会 放射性物質検査情報(42)
JA郡山市|農産物のご案内(43)
JA郡山市|事業PR(44)
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