東京電力福島原発はトラブルが多く、トラブル毎に記事にするは面倒なので、まとめて記事にしています。先週につづき(1)、2月3週(2月14日から20日)もしっかりトラブルが起こっています。
①地下水バイパスの汲みあげ停止
②核燃料プールの冷却停止は4号機
③焼却炉は部品に傷で水漏れ
④満タン状態が続く汚染水タンク
⑤2転3転するフランジタンクの説明
⑥凍土壁は海側だけ
1.地下水バイパスの汲みあげ停止
地下水バイパスは、福島第一原発の汚染水対策として原子炉建屋に侵入する前の地下水を事前に汲み上げ汚染水の発生を抑えようとするものです(2)。2月14日午前9時47分に汲み上げた汚染地下水を一時的に貯めるタンクの水位が高くなった(満タン)との警報が発生し、タンクへの汚染水の移送が止まりました(3)。
地下水バイパスが止まっても影響は殆どないのは確かですが、福島第一では地下水バイパス以外にもサブドレンや地下水ドレンなどで汚染水を汲みあげ、トリチウムが除去できない浄化装置を経由して海に流しています(4)。地下水ドレンは海岸に作った汚染水が海に流れるのをブロックする壁(海側遮水壁)(5)の内側から汲み上げるものです。ここからの汚染水汲み上げが止まれば、汚染水が直接に海に溢れ出ます。
2.核燃料プールの冷却停止は4号機
先週に福島第一で核燃料プールの冷却が停止した旨の記事を書きました(1)。東京電力の会見(5)によれば停止したのは4号機です。4号機の使用済み核燃料の取り出しは終っているので(6)、直接的な影響はありませんが1~3号機が心配です。1,2号機の使用済み核燃料取り出しが始まるのは5年後の2021年3月頃、3号機の取り出しが始まるのは2年後の2018年3月頃です。しくなくともそれまでは「冷却」が必要です。同じ事が1~3号機で起きないか心配です。
3.焼却炉は部品に傷で水漏れ
先週の記事で福島第一で汚染ゴミを燃やす「焼却炉」が水漏れお越し、運転が止まった旨の記事を書きました(1)。東京電力の会見(8)で原因がカスケットと呼ばれる部品に「傷」があったと口頭で発表がありました。ガスケットは配管の継ぎ手や圧力容器のマンホールやバルブボンネットへ挟み込んで圧縮し、その隙間を塞ぎ、水などの流体の漏れを防止する部品です。いわばパッキンのようなものです(9)。傷があればそこから水漏れを起こすのは当たり前です。確り検査しなかったんですかね!不良部品が使われる福島第一の廃炉設備って不安を覚えます。
4.満タン状態が続く汚染水タンク
福島第一原発では地下水や地下水ドレンからくみ上げた汚染水がタービン建屋に日々流入し増え続けています。東京電力は週毎に汚染水の量を公表しています(10)。以下に示します。

※(10)を集計
図-1 日々増え続ける福島第一汚染水
福島原発事故後に増え続け総量は(=^・^=)の集計で約89万立方メートルに達しました。東京ドームの容量は124万立方メートルなので(11)、東京ドームの7割以上が汚染水で埋まってしまう計算です。
タービン建屋から汚染水が溢れ出ないよにこれを汲み上げてて
タービン建屋⇒SARRY⇒SR処理水タンク⇒ALPS⇒処理水タンク
の順で処理されています(12)(13)(14)。最終段の処理水について
満水率を「汚染水保管容量÷汚染水タンク容量」
と規定し、推移を示します。

※(10)を集計
図ー2 福島第一の「処理水タンク」の満水率
この所、約96~98%で推移しています。ここからは(=^・^=)の想像ですが、東電はこれが限度だと判断していると思います。タンクを満タンにすると地震などで生じるスロッシング(容器内の液体が外部からの比較的長周期な振動によって揺動すること。)でタンクから液体が漏れ出すことが知られています(15)。安全にくみ上げた汚染水を保管するにはある程度の「空」が必要です。事実上は満タン状態です。
5.2転3転するフランジタンクの説明
4項で記載した通り最終段の汚染水タンクは満タンです。2月15日の原子力規制委員会が開催した「第40回特定原子力施設監視・評価検討会」で(16)フランジタンクの継続使用を東京電力が求めました。海側遮水壁の閉合以降,地下水ドレンの汲上量が想定より多く,また,塩分濃度,トリチウム濃度等も高いことから,地下水ドレンをタービン建屋へ移送しており,多核種除去設備(以下,ALPS)で処理すべき汚染水が増加し、これまでは,溶接型タンクの空き容量で対応してきたが,空き容量が減少してきたことから,今後は,Sr処理水を貯留しているフランジ型タンクの空き容量についても活用したいとのことです(17)。
Sr処理水はストロンチウムとセシウムが荒どりされただけなので(14)、ALPSで処理した汚染水(以下処理水とします)の方がリスクが少なくなっています。福島第一の汚染水タンクには「フランジタンク」と「溶接型」がありますが(17)、フランジタンクは過去に汚染水漏れをお越し、寿命も5年と言われています(18)。リスクの高いSr処理水をボロいフランジタンクで保管するより溶接型タンクで保管する方が安全です。何故にSr処理水をフランジタンクで保管するか、議論(19)を聞いていたら福島県には新しいタンクを汚したくない、監視・評価検討会の席では「配管が繋がっていない」との説明をしてました。相手によって説明が変わるようではおよそ信用されないと思います。
6.凍土壁は海側だけ
凍土壁は福島第一原発のタービンや原子炉建屋を氷の壁で囲い汚染水の元となる地下水の流入を阻止することを目論んで設置されたものです(20)。2月15日に事実上の認可がでました。ただし海側だてす(18)(19)。海側の凍土壁だけでは地下水を流入する効果は無いそうです(21)。議論を聞いていたのですが(18)、新たな汚染水増加要因になるか減らせるかの議論はありませんでした。海側凍土壁を運用したら汚染水がさらに増えないか(=^・^=)は心配です(22)。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら(
ブログ図表)を参照ください。
トラブル続きの福島原発!これでは福島の方は不安だと思います。
福島県棚倉町では田んぼアートが開催されます(23)。米作りに思いがある町だと思います。同町産米の全袋検査数は15万袋を超えました(24)。人口12,515人の町(25)なので十分な量です。鏡石町あたりは日本有数の米どころで、阿武隈川流域の肥よくな大地と奥羽山系・阿武隈山系の豊かな清流に恵まれ、米づくりには理想的な環境だそうです(26)。福島県は福島県産米は全数検査を実施しており「安全」だと主張してます(27)。テレビCMも流しています(28)。でも福島県鏡石町のスーパーのチラシには福島産米はありません。

※(29)を引用
図―3 福島産米が無い福島県鏡石町のスーパーのチラシ
当然の結果です。(=^・^=)も福島県鏡石町の皆様も見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(2月2週)―使用済燃料プール代替冷却系のポンプが停止、4日間秘匿します―(2)
地下水バイパス|東京電力(3)
2016年2月14日福島第一原子力発電所の状況について(日報) 【午後3時現在】 (4)
サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力(5)
【2016年2月15日】東京電力 記者会見 - 2016/02/15 17:30開始 - ニコニコ生放送(6)
燃料取り出し|東京電力(7)
中長期ロードマップ|東京電力中の「2015年6月12日(廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議第2回)」⇒「(資料1)中長期ロードマップ改訂案について(133KB」
(8)
【2016年2月18日】東京電力 記者会見 - 2016/02/18 17:30開始 - ニコニコ生放送(9)
ガスケット - Wikipedia(10)
プレスリリース|東京電力中の「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について 」
(11)
東京ドーム (単位) - Wikipedia(12)
汚染水対策の主な取り組み|東京電力(13)
原子炉の安定化|東京電力(14)
めげ猫「タマ」の日記 SR処理水について(15)
スロッシング - Wikipedia(16)
第40回特定原子力施設監視・評価検討会 | 原子力規制委員会(17)(16)中の「資料2 :使用中フランジ型タンクの継続活用[東京電力]【PDF:1MB】」
(18)
タンク耐用年数、根拠なし 第一原発 | 東日本大震災 | 福島民報(18)(16)中の「会議映像 YouTube」
(19)(16)中の「資料1-1:陸側遮水壁の検討結果(概要) [東京電力]【PDF:156KB」
(20)
陸側遮水壁|東京電力(21)(16)中の「資料1-2:陸側遮水壁の検討結果 [東京電力]【PDF:8MB】」
(22)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(2月1週)―汚染水処理は綱渡り―(23)
かがみいし2015田んぼアート|鏡石町公式ホームページ[福島県](24)
ふくしまの恵み安全対策協議会 放射性物質検査情報を2月19日に閲覧
(25)
鏡石町公式ホームページ[福島県](26)
お米 - JAすかがわ岩瀬-実りの大地でみんなが笑顔(27)
水田畑作課 - 福島県ホームページ(28)
TVCM ふくしまプライド。 「天のつぶ」 篇 | ふくしま 新発売。(29)
イオンスーパーセンター | ネットチラシ中の「鏡石店」
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- 2016/02/20(土) 19:54:54|
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| コメント:3
批判ではないのですが、
主様はどのような立場から何のためにこんなブログを日々更新しておられるのですか?
- 2016/02/21(日) 13:09:24 |
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匿名様
お問い合わせありがとうございます。以下解答します。
Q>主様はどのような立場から何のためにこんなブログを日々更新しておられるのですか?
A>福島第一原発事故は未曽有の人災であり個人的興味を持っています。公表されるデータ等の元に(=^・^=)が解析して得られた結果と報道とのかい離が酷く(=^・^=)の解析結果などを公表し多くの方のご意見を伺うことで、事実関係が明らかになると思っています。政治的な意図や使命感は全くありません。
だたし(=^・^=)の意図とは関係なく福島の皆様の復興には役だっていると認識しております。楢葉町は復興の目標を
「地震・津波災害と原子力災害を克服し、より健康で暮らしやすい、新しい楢葉の礎をつくる
〜住む人すべてが安心して健康に暮らす、先進モデルの町を目指して〜」(
http://www.town.naraha.lg.jp/information/info/001193.html)。これは福島の他の町にも共通する理念だと思います。「住む人すべてが安心して健康に暮らす」を実現するのは、安全な物と危険な物を切り分ける必要があります。一般に「安全」との主張は第三者がチェックする仕組みが一般的です。原子力発電所は電力会社が安全とする根拠を原子力規制委委員会が確認する仕組みになっています(
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E8%A6%8F%E5%88%B6%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A_(%E6%97%A5%E6%9C%AC))。安全については当事者(飛行機なら航空会社、自動車なら自動車メーカー)が責任を持つのが第一ですがこれに加え公的機関が安全をチェックする仕組みが通例です。ところが福島の安全について根拠となるデータをチェックする仕組みは存在しません。これでは不安になる方も多いと思います。(=^・^=)のように福島が「安全」との根拠なるデータをチェックする活動があれば、万が一にも国、福島県あるいは東京電力が実態以上に「安全」と主張したくなったとしても一定の歯止めになり、「住む人すべてが安心して健康に暮らす」に寄与します。
- 2016/02/21(日) 19:05:25 |
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- mekenekotama #-
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