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めげ猫「タマ」の日記

一寸気になったどうでもいい事を記事に

トラブルいっぱい福島原発(5月2週)―凍土壁・効果が見えず―

東京電力福島原発はトラブルが多く、トラブル毎に記事にするは面倒なので、まとめて記事にしています。先週につづき(1)、5月2週(5月8日から14日)もしっかりトラブルが起こっています。
 ①凍土壁・効果が見えず
 ②保安規定違反、「このような不適切な現場管理はあり得ない」と規制庁
 ③サミット中、福島第一原発の作業休止

1.凍土壁・効果見えず
 凍土壁は福島第一原発の原子炉やタービン建屋の回りを氷の壁で囲い汚染水の増加を抑えようとするものです(2)。福島第一では凍土壁に先立ち、海岸に水を通さない「壁」を作り海岸から海への汚染水の防止する「海側遮水壁」を完成させました(3)。それまでは「海」に流れていた汚染水が「海側遮水壁」の内側に溜まり放置すると溢れるので、これを汲みあげています(4)。汲み上げた汚染水は「海」へな流せず現状ではタービン建屋に送っています(6)。そこでタービン建屋と海側遮水壁の間に氷の壁(凍土壁)を作りタービン建屋側から海側遮水壁への汚染水の流れを阻止し、汚染水増加量を抑える試みがなされています(7)。
 凍土壁の効果
 ※1(3)、(4)、(6)、(7)、(8)なので作成
 ※2 SDはサブドレンの略
 図-1 凍土壁の期待される効果(フェーズ1)

 この他に原子炉やタービン建屋の近傍に井戸を掘り、そこから地下水を汲み上げ建屋への流入を抑えるサブドレンも行われています(4)。凍土壁の両側には地下水位を観測する井戸RWとCoが設けられています。
 当初の見込みでは凍土壁は一ヶ月半程度で効果が出てくるとされていました(9)。3月31日に凍結が始まったので(7)なので、そろそろ効果が出てきて良いはずです。以下に東京電力が「海4-①」となずけた場所の図1に示すSD,RW,Coおよび地中温度の観測点の水平位置を示します。
海1-①付近の平面配置
 ※(8)(10)およびGoogle Mapにて作成
 図-2 「海1-①」付近の水平配置

 図に示すようにタービン建屋側から海に向かって地下水を汲み上げるサブドレン(SD)2、地下水位を観測するRW30、凍土壁、凍土壁を挟み海側に地下水位を観測するCo-15と並んでいます。そしてRW21と凍土壁の間に温度観測点No20があります。
 凍土壁が凍るには地中温度が0℃以下になる必要があります。以下に温度観測点No20の温度を示します。
0℃に達しないNo20の地中温度
 ※(8)を引用・加筆
 図-3 温度観測点No20の温度

図に示す様に0℃を超えています。当然ながら凍る訳がありません。
 凍土壁に遮水効果が表れれば、凍土壁の山側のRW30の水位が上昇し、海側のCo15の水位が下がるはずです。以下にRW30,Co15の水位を示します。
当初と変わらない地下水位
 ※(8)を引用・加筆
 図-4 「海4-①」付近の地下水位

 4月半ば以降を見るとRW30の水位が上昇しており、一見して効果があったに見えます。良く見ると4月10日にRW30の水位が下がり出し再び上昇しています。直ぐ北側にトレンチ(地下トンネル)がありますが(10)、このトレンチの天井は凍土壁により周囲の水が温度が下がる事によって縮んだり、凍る事によって膨らむなどして壊れ、周囲の汚染地下水が流れ込みました(10)(111)。トレンチに地下水が流れ込み凍土壁の遮水効果とは無関係にRW30の水位が下がりました。その後にトレンチが汚染水で満たされると再び水位が上昇したと解すべきです。でも東京電力の会見(12)を聞いていると、水位の上昇は凍土壁の遮水効果のあらわれたかのように説明していました。勿論、凍土壁がトレンチの天井を壊し一時的に周囲の地下水位が下がったなどの説明はありません。
 以下に地下水ドレン等からタービン建屋への移送量をしめします。
凍土壁凍結開始後に増えた地下水ドレン移送量
 ※1(6)を集計
 ※2 降水量は(13)による。
 図-5 地下水ドレン等からタービン建屋への移送量

凍土壁の凍結が始まっても減るどころが逆に増えています。以下に汚染水の増加量を示します。
凍土壁凍結開始後に増えた汚染水増加量
 ※1(14)を集計
 ※2 降水量は(13)による。
 図-6 汚染水増加量

 汚染水の増加も低減していません。今の所は「凍土壁」の効果は見えません。それでも東京電力の会見を聞いていたら(12)、明言は避けましたが効果があったかのような言い方をしていました。これを受けてでしょうか?福島県の地方紙に福島民友は凍土壁について
「(東京電力の)担当者は、凍土壁の地下水遮水効果など詳細な評価は今後まとめるとしながらも『期待が持てる状況が進んでいる』としている。」
と報じていました(15)。福島第一原発の汚染水対策は効果が無くても効果があったように「喧伝」されるみたいです。

2.保安規定違反、「このような不適切な現場管理はあり得ない」と規制庁
 原子力発電所の「保安規定」は発電所の運転の際に実施すべき事項や、従業員の保安教育の実施方針など原子力発電所の保安のために必要な基本的な事項が記載されているもので、、電力会社は、これを遵守しなければなりません。原子力発電所の運転を始める前に、「保安規定」の認可を受けなければなりません(16)。
 3月末に「セシウム吸着装置(キュリオン社)」から汚染水を漏らす事故を起こしました。原子力規制委会の許可を受けないまま下請さんが、配管を切断しそこから汚染水がどっともれだしました(17)。これについて原子力規制委は「保安規定」違反を認定しました(18)(19)。 福島県庁で記者会見した規制庁の地域原子力規制統括管理官は「事故から5年もたって、このような不適切な現場管理はあり得ない」と述べたそうです(18)。
 東京電力も保安規定違反と認定された事を発表していますが(19)、他にも違反があり合計で福島第一で4件、福島第二で1件起こしています。同じ違反が従前に柏崎刈羽でも起こったとのことです。東京電力は守らなけれなならない「保安規定」が守れないみたいです。

3.サミット中、福島第一原発の作業休止
 5月26日、27日に三重県志摩市で伊勢志摩サミットが開かれます(20)。これのあわせ福島第一原発での、原子炉冷却や汚染水処理、パトロールなど止められない作業以外の、汚染水タンク建設などの作業を休止することを決めたそうです。東京電力の広報担当者は「余計なニュースが起きないようにということ」と説明しているようですが(21)、東京電力も福島第一はいつトラブルが起こっても起こっても不思議ではないと考えているようです。
 サミット期間中にトラブルを起こし世界の注目を浴びるのはいやだってことでしょうか?でも下請けさんは大変なようです。
 「休業補償は出ない。作業の休止前と再開前は点検になることが多く、これでは作業が全然進まない」
との下請けさんの声があるそうです(21)。(=^・^=)も心配です。福島第一のタービン建屋には日々、汚染水が流れ込んでいます。放置すると溢れてしまうので
 タービン建屋⇒貯蔵施設⇒セシウム吸着装置⇒SR処理水タンク⇒ALPS⇒処理水タンク
の順で処理されています(18)。最終段の処理水について
  満水率を「汚染水保管容量÷汚染水タンク容量」
と規定し、推移を示します。 
満タン状態が続く処理水タンク
 ※(14)を集計
 図ー7 福島第一の「処理水タンク」の満水率

 この所、約96~98%で推移しています。ここからは(=^・^=)の想像ですが、東電はこれが限度だと判断していると思います。タンクを満タンにすると地震などで生じるスロッシング(容器内の液体が外部からの比較的長周期な振動によって揺動すること。)でタンクから液体が漏れ出すことが知られています(22)。くみ上げた汚染水を安全に保管するにはある程度の「空」が必要です。事実上は満タン状態です。1項で記載したように「凍土壁」には期待が持てません。汚染水タンク工事が中断すればいまでも厳しい汚染水タンクがもっと厳しくなります。6月になれば福島も梅雨入りです(23)。汚染水量がタンク容量を超えてしまい「福島第一の汚染水は海に流すしかありません」なんて発表があるかも知れません(24)。

<余談>
  図表が小さいとご不満の方はこちら(ブログ図表)を参照ください。
トラブル続きの福島原発!これでは福島の方は不安だと思います。
 福島県が力をいれている野菜にトマトとキュウリがあります(25)。福島にはトマト工場があり(26)、福島産トマトは一年中楽しめます(27)。福島のトマトは美味しいそうです(28)。福島県のキュウリの一大産地の須川市では(29)、キュウリの出荷が始まりました(30)。福島県はキュウリのシーズンです。福島県は福島産トマトもキュウリも「安全」だと主張しています(31)。でも福島県会津若松市のスーパーのチラシには福島産キュウリもトマトはありません。
他県産はあっても福島産トマトやキュウリが無い福島県会津若松市のスーパーのチラシ
 ※(32)を引用
 図―8 福島産トマトとキュウリが無い福島県会津若松市のスーパーのチラシ

 当然の結果です。(=^・^=)も福島県会津若松市の皆様も見習い「フクシマ産」は食べません。

―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(5月1週)―汚染水タンクは計画通りには増えず―
(2)陸側遮水壁|東京電力
(3)海側遮水壁|東京電力
(4)サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力
(5)報道配布資料|東京電力
(6)(5)中の「建屋への地下水ドレン移送量・地下水流入量等の推移 」
(7)2016年3月31日 福島第一原子力発電所 陸側遮水壁の凍結運転開始についてPDF
(8)2016年5月12日陸側遮水壁の状況(第一段階フェーズ1)(PDF 4.24MB)
(9)第41回特定原子力施設監視・評価検討会 | 原子力規制委員会中の「資料3:陸側遮水壁の閉合について【PDF:3MB】」
(10)第42回特定原子力施設監視・評価検討会 | 原子力規制委員会中の「資料3:陸側遮水壁の状況について(第一段階フェーズ1)[東京電力]【PDF:9MB】」
(11)めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(4月5週)―凍土壁は地下トンネルを壊す?―
(12)【2016年5月12日】東京電力 記者会見 - 2016/05/12 17:30開始 - ニコニコ生放送
(13)(5)中の「福島第一原子力発電所構内排水路のサンプリングデータについて 」
(14)プレスリリース|リリース・お知らせ一覧|東京電力ホールディングス株式会社中の「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について」
(15)東京電力...凍土壁「期待が持てる」 地中温度の氷点下拡大:福島民友ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet
(16)原子力施設等の安全規制 - 原子力施設と法律 | 電気事業連合会
(17)めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(4月1週)―無許可工事で汚染水漏れ―
(18)<福島第1>汚染水漏れは「保安規定違反」5月12日 河北新報
(19)当社原子力発電所における原子力規制庁による2015年度第4回保安検査および保安調査の結果について|プレスリリース|東京電力ホールディングス株式会社
(20)G7 伊勢志摩2016|伊勢志摩サミット
(21)東京新聞:サミット中、福島第一原発の作業休止 東電「リスク減らす」:社会(TOKYO Web)
(22)スロッシング - Wikipedia
(23)気象庁|平成28年の梅雨入りと梅雨明け(速報値)
(24)めげ猫「タマ」の日記 原子力規制委、東京電力に汚染水の海洋放出をせまる
(25)ふくしまイレブンエッセイ - 福島県ホームページ
(26)福島)南相馬にトマト工場 年産660トン、3月出荷へ:朝日新聞デジタル
(27)旬の食材 青果 | 一般社団法人福島市公設地方卸売市場協会
(28)今年もおいしい、トマト!トマト!トマト! | ふくしま 新発売。
(29)福島県 すかがわ岩瀬農業協同組合 (きゅうり)~「パリッと新鮮でおいしい 岩瀬きゅうり」~ 月報 野菜情報-産地紹介-2010年9月
(30)トピックス | JA夢みなみ
(31)安全が確認された農林水産物(公開用簡易資料) - 福島県ホームページ
(32)アピタ会津若松店│「イイこと、プラス。」 アピタ・ピアゴ
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  1. 2016/05/14(土) 19:43:12|
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