めげ猫「タマ」の日記

一寸気になったどうでもいい事を記事に

トラブルいっぱい福島原発(5月3週)―「凍土壁」凍らず―

 東京電力福島原発はトラブルが多く、トラブル毎に記事にするは面倒なので、まとめて記事にしています。先週につづき(1)、5月3週(5月15日から21日)もしっかりトラブルが起こっています。
 ①「凍土壁」凍らず
 ②汚染水の増加は止まず
 ③汚染水タンクの増設は遅れ気味

1.「凍土壁」凍らず
 凍土壁は福島第一原発の原子炉やタービン建屋の回りを氷の壁で囲い汚染水の増加を抑えようとするものです(2)。福島第一では凍土壁に先立ち、海岸に水を通さない「壁」を作り海岸から海への汚染水の防止する「海側遮水壁」を完成させました(3)。それまでは「海」に流れていた汚染水が「海側遮水壁」の内側に溜まり放置すると溢れるので、これを汲みあげています(4)。汲み上げた汚染水は「海」へな流せず現状ではタービン建屋に送っています(6)。そこでタービン建屋と海側遮水壁の間に氷の壁(凍土壁)を作りタービン建屋側から海側遮水壁への汚染水の流れを阻止し、汚染水増加量を抑える試みがなされています(7)。
 凍土壁の効果
 ※1(3)、(4)、(6)、(7)、(8)なので作成
 ※2 SDはサブドレンの略
 図-1 凍土壁の期待される効果(フェーズ1)

 この他に原子炉やタービン建屋の近傍に井戸を掘り、そこから地下水を汲み上げ建屋への流入を抑えるサブドレンも行われています(4)。凍土壁の両側には地下水位を観測する井戸RWとCoが設けられています。
 当初の見込みでは凍土壁は一ヶ月半程度で効果が出てくるとされていました(9)。3月31日に凍結が始まったので(7)なので、効果が出ていなければならない時期になりました。以下に「凍土壁」と海側遮水壁の配置を示します。
コナー部に位置する海1-①と海4-①
 ※(3)、(4)、(6)、(7)、(8)なので作成
 図-2 凍土壁と海側遮水壁の配置

山側から流れて来た地下水はタービンや原子炉建屋にブロッコされ両サイドに流れを変え、建屋と凍土壁の隙間から海に向かって流れるはずです。海側の凍土壁の両サイド(図中の海1-①、海4―①)に流れが集中するはずです。流れが集中する場所が凍らなければ実質的な遮水効果は期待できません。一方で流れる水は凍りません(10)。図-2に示す「海1-①」と海「4―①」が凍るかが凍土壁の成否の鍵と考えられます。
 以下に「海4―①」付近の配置を示します。
海4-①の配置
 ※(8)(11)およびGoogle Mapにて作成
 図-3 「海4-①」付近の水平配置

 図に示すようにタービン建屋側から海に向かって地下水位を観測するRW21、温度観測点No16、地下水を汲み上げるサブドレン(SD)56、凍土壁、凍土壁を挟み海側に地下水位を観測するCo-10と並んでいます。
 凍土壁が凍るには地中温度が0℃以下になる必要があります。以下に温度観測点No16の温度を示します。
温度が0℃を超えている海4-①の地中温度
※(8)(12)にて作成
 図-5 「海4-①」付近の地下水位

 図に示す通り凍土壁内側のRW21の水位は上がっていません。RW21と凍土壁を挟んで反対側にあるCo-10との水位差は減少傾向にあり、遮水効果はありません。
 以下に東京電力が「海1-①」のSD2,RW30,Co15および地中温度20の観測点の水平位置を示します。
海1-①付近の平面配置
 ※(8)(10)およびGoogle Mapにて作成
 図-6 「海1-①」付近の水平配置

 図に示すようにタービン建屋側から海に向かって地下水を汲み上げるサブドレン(SD)2、地下水位を観測するRW30、凍土壁、凍土壁を挟み海側に地下水位を観測するCo-15と並んでいます。そしてRW21と凍土壁の間に温度観測点No20があります。
 凍土壁が凍るには地中温度が0℃以下になる必要があります。以下に温度観測点No20の温度を示します。
温度が0℃を超えている海1-①の地中温度
 ※(8)を引用・加筆
 図-7 温度観測点No20の温度

図に示す様に0℃を超えています。当然ながら凍る訳がありません。
 以下にRW30,Co15の水位を示します。
元の水位に戻っただけの海1-①の凍土壁内側水位
 ※(8)(12)を引用・加筆
 図-8 「海1-①」付近の地下水位

 4月半ば以降を見るとRW30の水位が上昇しており、一見して効果があったに見えます。良く見ると4月10日にRW30の水位が下がり出し再び上昇しています。直ぐ北側にトレンチ(地下トンネル)がありますが(13)、このトレンチの天井は凍土壁により周囲の水が温度が下がる事によって縮んだり、凍る事によって膨らむなどして壊れ、周囲の汚染地下水が流れ込みました(13)(14)。トレンチに地下水が流れ込み凍土壁の遮水効果とは無関係にRW30の水位が下がりました。その後にトレンチが汚染水で満たされると再び水位が上昇したと解すべきです。でも東京電力の会見(15)を聞いていると、水位の上昇は凍土壁の遮水効果のあらわれたかのように説明していました。勿論、凍土壁がトレンチの天井を壊し一時的に周囲の地下水位が下がったなどの説明はありません。
 以下に地下水ドレン等からタービン建屋への移送量を示します。
凍結開始後も減らない地下水ドレンからタービン建屋への移送量
 ※1(6)を集計
 ※2 降水量は(16)による。
 図-9 地下水ドレン等からタービン建屋への移送量

 図に示す通り地下水ドレン等からタービン建屋への移送量は凍土壁凍結開始後に逆にに増えていて、当初に期待していた海側遮水壁への汚染水の流れを抑える効果は見えません。
 以下に5月19日に東京電力が発表した海1-①付近の地下水位を示します。
海1-①凍土壁内側の上がった部分のみ発表する東京電力
 ※(8)を引用(縦横比は変更)
 図-10 「海1-①」付近の地下水位(5月19日発表)

 図に示す通り4月17日以降のデータしかなく、水位が下がった履歴がありません。見えるのはRW30の水位が上がり、凍土壁の反対側にあるCo15の水位が下がっている様子だけです。これなら凍土壁に効果があったように見えてしまいます。
 こんなわけでしょうか。NHKは凍土壁について
「凍った壁によって、一部で地下水の流れをせき止める効果が表れていることが分かりました。」
と報じていました(17)。凍土壁は320億円の税金がつぎ込まれています(18)。国のプロパガンダになる「嘘」を流すNHKってこの世に必要なんですかね?

2.汚染水の増加は止まず
 福島第一の汚染水はタービン建屋⇒貯蔵施設⇒セシウム吸着装置⇒SR処理水タンク⇒ALPS⇒処理水タンク
の順に移動します(19)。最終段の「処理水タンク」とその前の「SR処理水タンク」に蓄えられた汚染水を東京電力は「処理水等」と呼んでいるようです(20)。タンクに保管されている汚染水の大分部をしめます(21)。以下に「処理水等」の見込み量と実績を示します。
計画では5月中旬から減るはずの汚染水増加量
図-11 「処理水等」の見込みと実績

 少し見にくいかもしれませんが5月中旬から増加が抑制される計画です。しかし汚染水の増加は抑制されていません。以下にこれまでの汚染水増加量の実績を示します。
凍土壁凍結開始後も減る気配が無い汚染水増加量
※1(22)を集計
 ※2 降水量は(16)による
 図―12 汚染水の増加量と降水量

 図に示す通り凍土壁が凍結を開始した3月31日(7)以降、汚染水は概ね毎日470立方メートルづつ増加しており、増加が抑えられる気配がありません。

3.汚染水タンクの増設は遅れ気味
 以下に汚染水の最終段の「処理水タンク」の増設計画と実績を示します。
遅れ気味の処理水タンクの増設
 ※(21)(22)にて作成
 図-13 「処理水タンク」増設の計画と実績

 このところ遅れ気味です。来週の25、26、27日の3日間はサミットの為に汚染水タンクの増設工事は中止になるとのことです(15)。来週のタンクの増設は期待できません。2項で示したように汚染水量は見込みよる増えるのに、汚染水タンクの増設は遅れ気味です。このままでは汚染水量がタンク容量に追い付き溢れさすかマシな汚染水から海に捨ているしかなくなります。


<余談>
  図表が小さいとご不満の方はこちら(ブログ図表①)とこちら(ブログ図表②)を参照ください。
以下に福島第一原発の汚染水量の推移を示します。
原発事故後、増え続けたままの福島第一汚染水
 ※(22)を集計
 図―14 福島第一の汚染水量

 図に示す通り福島第一原発事故後に増え続けて、勢いが衰えません。2013年4月2日時点の汚染水の総量は約37万立方メートル(23)、2014年4月3日3日時点の総量は約54万立方メートル(24)で、この間の364日で17万立方メートル増えています。1日当たり約470立方メートルの増加です。今年3月31日に凍土壁の運用が始まってからの1日当たりの増加量を2項で示すように1日当たり約470立方メートルです。この間に地下水バイパス、サブドレンそして凍土壁等の対策が取られてきましたが(25)、なんの効果もありません。
 もし、対策があるとしたら地下水ドレンで汲み上げた汚染水をタービン建屋に送らずに福島の海へ流すことだと思います。これには福島の皆様の理解と協力が必要です。東京電力には出来もしない事を「できた」と主張するのでなく、事実をありのままに説明する責務があると思います。でもそのような事はしません。
 福島県が力をいれている野菜にトマトがあります(26)。福島県いわき市に新たなトマトの栽培施設が完成し、開所式が行われたそうです(27)。でも未来は厳しいようです。福島には年間を通じトマトを出荷できる栽培施設があり(28)、福島産トマトは年間を通して楽しめるそうです(29)。福島のトマトは美味しいそうです(30)。福島県は福島産トマトは「安全」だと主張しています(31)。でも福島県いわき市のスーパーのチラシには福島産トマトはありません。
熊本産はあっても福島産トマトが無い福島県いわき市のスーパーのチラシ
※(32)を引用
 図―15 福島産トマトが無い福島県いわき市のスーパーのチラシ

 当然の結果です。(=^・^=)も福島県いわき市の皆様も見習い「フクシマ産」でなく「熊本産」を食べて応援します。

―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(5月2週)―凍土壁・効果が見えず―
(2)陸側遮水壁|東京電力
(3)海側遮水壁|東京電力
(4)サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力
(5)報道配布資料|東京電力
(6)(5)中の「建屋への地下水ドレン移送量・地下水流入量等の推移 」
(7)2016年3月31日 福島第一原子力発電所 陸側遮水壁の凍結運転開始についてPDF
(8)"2016年5月19日陸側遮水壁の状況(第一段階 フェーズ1)(PDF 4.89MB)PDF
(9)第41回特定原子力施設監視・評価検討会 | 原子力規制委員会中の「資料3:陸側遮水壁の閉合について【PDF:3MB】」
(10)山ノ中ニ有リblog 流水はなぜ凍らないのだろう
(11)第42回特定原子力施設監視・評価検討会 | 原子力規制委員会中の「資料3:陸側遮水壁の状況について(第一段階フェーズ1)[東京電力]【PDF:9MB】」
(12)2016年5月12日陸側遮水壁の状況(第一段階フェーズ1)(PDF 4.24MB)
(13)第42回特定原子力施設監視・評価検討会 | 原子力規制委員会中の「資料3:陸側遮水壁の状況について(第一段階フェーズ1)[東京電力]【PDF:9MB】」
(14)めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(4月5週)―凍土壁は地下トンネルを壊す?―
(15)【2016年5月19日】東京電力 記者会見 - 2016/05/19 17:30開始 - ニコニコ生放送
(16)(5)中の「福島第一原子力発電所構内排水路のサンプリングデータについて 」
(17)福島第一原発 凍土壁のせき止め効果表れる | NHKニュース
(18)汚染水対策、3本柱で始動 東電が凍土壁を初公開  :日本経済新聞
(19)めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(4月1週)―無許可工事で汚染水漏れ―
(20)中長期ロードマップ|東京電力中の「中長期ロードマップの進捗状況」
(21)(20)中の「2016年4月28日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第29回事務局会議)」⇒「【資料3-1】汚染水対策(29.0MB)」
(22)プレスリリース|リリース・お知らせ一覧|東京電力ホールディングス株式会社中の「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について」
(23)福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第93報)|東京電力を集計
(24)福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第144報)|東京電力
(25)汚染水対策の主な取り組み|東京電力
(26)ふくしまイレブンエッセイ - 福島県ホームページ
(27)「とまとランド」完成 いわき太陽光利用し栽培開始 | 県内ニュース | 福島民報
(28)福島)南相馬にトマト工場 年産660トン、3月出荷へ:朝日新聞デジタル
(29)旬の食材 青果 | 一般社団法人福島市公設地方卸売市場協会
(30)今年もおいしい、トマト!トマト!トマト! | ふくしま 新発売。
(31)安全が確認された農林水産物(公開用簡易資料) - 福島県ホームページ
(32)イトーヨーカドー 平店
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  1. 2016/05/21(土) 19:47:21|
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