東京電力福島原発はトラブルが多く、トラブル毎に記事にするは面倒なので、まとめて記事にしています。先週につづき(1)、5月4週(5月22日から28日)もしっかりトラブルが起こっています。
①凍土遮水壁凍らず、追加工事で対応します。
②想定以上に増える福島第一原発汚染水
③サミットのために「国」の意で廃炉工事を休みます。
④メルトダウン公表遅れ発覚3ヶ月、全ては第三者委員会に!ダンマリ決め込む東京電力
1.凍土遮水壁凍らず、追加工事で対応します。
凍土遮水壁は福島第一原発の原子炉やタービン建屋の回りを氷の壁で囲い汚染水の増加を抑えようとするものです(2)。福島第一では凍土壁に先立ち、海岸に水を通さない「壁」を作り海岸から海への汚染水の防止する「海側遮水壁」を完成させました(3)。それまでは「海」に流れていた汚染水が「海側遮水壁」の内側に溜まり放置すると溢れるので、これを汲みあげています(4)。汲み上げた汚染水は「海」へな流せず現状ではタービン建屋に送っています(6)。そこでタービン建屋と海側遮水壁の間に氷の壁(凍土壁)を作りタービン建屋側から海側遮水壁への汚染水の流れを阻止し、汚染水増加量を抑える試みがなされています(7)。

※1(3)、(4)、(6)、(7)、(8)なので作成
※2 SDはサブドレンの略
図-1 凍土壁の期待される効果(フェーズ1)
山側から流れて来た地下水はタービンや原子炉建屋にブロックされ両サイドに流れを変え、建屋と凍土壁の隙間から海に向かって流れるはずです。海側の凍土壁の両サイドに流れが集中するはずです。流れが集中する場所が凍らなければ実質的な遮水効果は期待できません。一方で流れる水は凍りません(9)。以下に南側過度に位置する「海4―①」付近の配置を示します。

※(8)(11)およびGoogle Mapにて作成
図-2 「海4-①」付近の水平配置
図に示すようにタービン建屋側から海に向かって地下水位を観測するRW21、温度観測点No16、地下水を汲み上げるサブドレン(SD)56、凍土壁、凍土壁を挟み海側に地下水位を観測するCo-10と並んでいます。
凍土壁が凍るには地中温度が0℃以下になる必要があります。以下に温度観測点No16の温度を示します。

※(11)にて作成
図-3 温度観測点No16(海4-①付近)の温度
図に示すように0℃に達していません。当然ながら凍る訳がありません。
以下にRW21,Co10の水位を示します。

※(11)(12)を引用・加筆
図-4 「海4-①」付近の地下水位
凍土遮水壁が効果を示すなら、山側に地下水が溜り凍土遮水壁の山側にあるRW21の水位が上がり、反対側(海側)にあるCo10の水位が下がるはずでですがそのような事はありません。
以下に地下水ドレン等からタービン建屋への移送量を示します。

※1(6)を集計
※2 降水量は(12)による。
図-5 地下水ドレン等からタービン建屋への移送量
図に示す通り地下水ドレン等からタービン建屋への移送量は凍土壁凍結開始後に逆にに増えていて、当初に期待していた海側遮水壁への汚染水の流れを抑える効果は見えません。
東京電力は土壌中に石の量が多い場所で地下水の流れが速く、凍りにくくなっている考え追加工事をすることを決めたようです。特殊な薬剤を注入し、地下水の流れを止めるなどの対策を講じる考えだとの事です(13)。ただしこのやり方は過去に失敗しています。福島第一のタービン建屋から海に向かって地下道(トレンチ)が伸びています。そこには高濃度の放射性物質に汚染された地下水が詰まっていました。放っておくと海に流れ出す危険があるので、根本の部分を凍結して水の流れを止め汚染水を抜く計画を進めました。氷点下に温度が下がらない部分あり、対策として
①氷やドライアイスを投入して温度を下げて凍らす
②わりにコンクリートの壁を作って止める(今回と同じ発想です)
を実施しましが失敗しました。

※(14)を転載
図―6 地下道(トレンチ)止水の失敗履歴
仕方がないので地下道(トレンチ)をセメントで埋めることにしました(14)。
東京電力の廃炉の最高責任者の方は5月26日の会見(15)の初めの方で
「凍結範囲の9割以上で0度以下にさがっれいます」
と発言し順調に行っているいうな言い方でした。でも実際は上手く行っておらず追加工事をすることになりました。追加工事については記者が質問するまで触れませんでした。東京電力は上手く行かなくてむ上手くいったふりをするようです。そういえば「安全」とは言えない福島第一原発を「安全」と言っていた気がします。
凍土遮水壁の今後については6月2日に開催予定の「第43回特定原子力施設監視・評価検討会」で詳細が議論されると思います(16)。来週は凍土遮水壁にいてより詳しくお伝へできると思います。
2.汚染水の増加は止まず
福島第一の汚染水は
タービン建屋⇒貯蔵施設⇒セシウム吸着装置⇒SR処理水タンク⇒ALPS⇒処理水タンク
の順に移動します(19)。このうちセシウム吸着装置装置の後のSR処理水タンクや処理水タンクに保管される汚染水を「処理水等」と呼んでいるようです(12)(18)。以下に「処理水等」の最新の想定(12)と実績示します。

※1 想定は(12)による
※2 実績は(19)による
図―7 処理水等の量の想定と実績
図に示す通り想定を超えて増えています。これについて東京電力は会見(15)で、記者の質問に対し、あくまでも仮定であり、凍土遮水壁が効果が出たなかった場合についても公表している旨を回答しました。従前に確かにそのような想定は公表していますが(18)、最新の公表(12)では凍土遮水壁の効果出て汚染水の増加量が減るいうな想定でだけです。
以下に汚染水増加量の推移を示します。

※(19)を集計
図―8 日々の汚染水増加量
図に示す通り凍土遮水壁の凍結開始後に減る気配がありません。1項で記載した通り凍土壁が効果を上げてない以上は仕方がないようです。東京電力は柏崎刈羽原発は「安全」だとCMを流しているようです(20)。

※(21)をキャプチャー
図-9 東京電力が新潟県で流しているCM
次に事故ったら「想定外」でなく「仮定の話」と言われそうです。
3.サミットのために「国」の意で廃炉工事を休みます
5月26,27日にサミットが行われました(22)。無事に終了してなによりよです。これに合わせ福島第一原発では原子炉冷却や汚染水処理、パトロールなど止められない作業以外の、汚染水タンク建設などの作業を休止することになりました(23)。理由について5月23日の東京電力の会見(24)で、記者の質問にきわめて曖昧な回答をしていました。ところが福島のローカルTV局のTUFは
「政府が警備・連絡体制を強化するように求めたのを受けて実施」
と報じていました。

※(25)をキャプチャー
図―10 廃炉作業中止は「政府が警備・連絡体制を強化するように求めたのを受けて実施」と報じるTUF
今回の廃炉作業中止は安倍出戻り内閣の「意」を受けて実施されたようです。最初はそのように説明すれば極めて分かり易い説明です。東京電力は不正確な情報発信に努めているようです。
4.メルトダウン公表遅れ発覚3ヶ月、全ては第三者委員会に!ダンマリ決め込む東京電力
福島第一原発のメルトダウンが公表されたのは事故後2ヵ月を過ぎた2011年5月でした(26)。ところが2月24日に東京電力のマニュアルに照らせば、事故から3日後にメルトダウンと判定できたこた事が発覚しました(26)(27)。それから3ヶ月が経過しましたが、東京電力は明確な説明をしていません。ただ「第三者委員会」にゆだねるとするだてけです(28)。事故当時の福島第二原発の所長で現在は福島第一原発の廃炉責任者であった方は「今は答えない方がいい」と会見で繰り返すようです(29)。この3ヶ月を見ていると「第三者委員会」は東京電力の隠れ蓑になった感じです。
なにか疑惑をもたれたら「第三者委員会」を設置すると回答し、後は一切の回答を拒否する手法が広まった感じがします(30)。
そろそろ「第三者委員会」の結論が出てもいいころだとおもいます。もし参議院選挙の直前に当時の政権に責任転嫁する内容が発表されたら安倍出戻り総理は喜ぶと思います。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら(
ブログ図表)を参照ください。
福島第一原発の汚染水の状況をみていると非常に厳しい状態におかれています。(=^・^=)が思う限り以下の3つの選択しかないような気がします。
①下請けさんの犠牲(31)を覚悟の上で無理な汚染水タンク増設工事を行う。
②マシな汚染水から順次、海へ流す(32)。
③地下水ドレンの汲みあげ水のタービン建屋への移送を止め、海に流す。
どれもそれなりのリスクを伴うと思います。福島第一の廃炉作業を見ているとノンリスクはあり得ません。どれがマシかを選択するしかありません。これには福島の皆様の協力が必要だと思います。それには情報を隠すのでなく、きっちと「本音」を語る必要があります。でも東京電力の動きは逆です。背後に大きな力が働いている気がします。
福島産果物のキャンペーンクルーのミスピーチ皆さんがいらっしゃいます。名前はミスピーチですが、今年もミセスが混入しました(33)。5月27日にミスピーチの皆様の出発式が行われたそうです(34)。

※(35)をキャプチャー
図―11 出発式に臨む綺麗なミセス入りミスピーチの皆さん
東京電力がこのような姿勢では今年のミスピーチの皆さんも報われる事はないと思います(36)。
福島県が力をいれている農産物に牛肉があります(37)。福島牛は、鮮やかな色合いと良質の霜降りをもつ絶品の牛肉とのことです(38)。福島県は福島産牛肉は「安全」だと主張しています(39)。でも福島県いわき市のスーパーのチラシには福島産牛肉はありません。

※(40)を引用
図―12 福島産牛肉が無い福島県いわき市のスーパーのチラシ
当然の結果です。(=^・^=)も福島県いわき市の皆さまを見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(5月3週)―「凍土壁」凍らず―(2)
陸側遮水壁|東京電力(3)
海側遮水壁|東京電力(4)
サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力(5)
報道配布資料|東京電力(6)(5)中の「建屋への地下水ドレン移送量・地下水流入量等の推移 」
(7)
2016年3月31日 福島第一原子力発電所 陸側遮水壁の凍結運転開始についてPDF(8)
"2016年5月19日陸側遮水壁の状況(第一段階 フェーズ1)(PDF 4.89MB)PDF (9)
山ノ中ニ有リblog 流水はなぜ凍らないのだろう(10)
中長期ロードマップ|東京電力中の「中長期ロードマップの進捗状況」
(11)(10)中の「2016年5月26日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第30回事務局会議)」⇒「【資料3-1】汚染水対策(13.0MB)PDF 」(http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images1/images1/d160526_06-j.pdf)
(12)(10)中の「2016年4月28日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第29回事務局会議)」⇒「【資料3-1】汚染水対策(29.0MB)PDF」(http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images1/images1/d160428_06-j.pdf)
(12)(5)中の「福島第一原子力発電所構内排水路のサンプリングデータについて 」
(13)
凍土遮水壁1割凍らず 運用から2カ月特殊な薬剤注入検討 | 東日本大震災 | 福島民報(14)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発 ―トレンチの止水失敗―(15)
【2016年5月26日】東京電力 「中長期ロードマップの進捗状況」に関する記者会見 - 2016/05/26 19:00開始 - ニコニコ生放送(16)
第43回特定原子力施設監視・評価検討会 | 原子力規制委員会(17)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(4月1週)―無許可工事で汚染水漏れ―(18)
第42回特定原子力施設監視・評価検討会 | 原子力規制委員会中の「資料2:今後のタンク運用計画について[東京電力]【PDF:3MB】」
(19)
プレスリリース|リリース・お知らせ一覧|東京電力ホールディングス株式会社中の「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について」
(20)
TVCM・新聞・雑誌広告中の「TVCM」
(21)(20)中の「一人ひとりの決意編①」(30秒)」
(22)
G7 伊勢志摩2016|伊勢志摩サミット(23)
東京新聞:サミット中、福島第一原発の作業休止 東電「リスク減らす」:社会(TOKYO Web)(24)
2016/05/23(月) 原子力定例記者会見(25)
スイッチ20160525 TUFchannel(26)
福島第1の炉心溶融 公表2カ月遅れ 東電、基準見過ごす :日本経済新聞(27)
福島第一原子力発電所事故当時における通報・報告状況について|プレスリリース|東京電力ホールディングス株式会社(28)
「福島第一原子力発電所事故に係る通報・報告に関する第三者検証委員会」の設置について|プレスリリース|東京電力ホールディングス株式会社(29)
【復興の道標・不信の連鎖-6】続く東電の隠蔽体質 「今は答えない方が」:復興の道標:福島民友新聞社 みんゆうNet(30)
舛添都知事一問一答(1)美術館の視察は「文化振興という目的」スポーツ報知(31)
めげ猫「タマ」の日記 福島原発で死んだ下請けさんは「国策」の犠牲者―でも何もしない安倍出戻り総理―(32)
めげ猫「タマ」の日記 原子力規制委、東京電力に汚染水の海洋放出をせまる(33)
ミスピーチ10人決定 県産果物や観光PR | 県内ニュース | 福島民報(34)
ミスピーチが出発式 | 県内ニュース | 福島民報(35)
福島のニュース 福島テレビ(5月27日ひる放送) FTV8 (36)
めげ猫「タマ」の日記 今年(2015年)活躍した福島の10人(組)の女性(37)
ふくしまイレブンエッセイ - 福島県ホームページ(38)(37)中の「福島牛」
(39)
安全が確認された農林水産物(公開用簡易資料) - 福島県ホームページ(40)
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