東京電力福島原発はトラブルが多く、トラブル毎に記事にするは面倒なので、まとめて記事にしています。先週につづき(1)、8月1週(7月31日から8月1日)もしっかりトラブルが起こっています。
①3ヶ月連続でダストモニタ警報!原因は爆発で飛び散た核燃料?
②汚染水の増加は減らず
③2号機原子炉圧力容器の温度計故障、残りは8台
④材料違い配管を原発で使用
⑤密告は6件、福島第一原発事故の謎は闇の中
1.3ヶ月連続でダストモニタ警報!原因は爆発でとびっちた核燃料?
ダストモニタは空気中の放射性物質濃度を連続的に測る装置です(2)。

※(3)を引用・加筆
図-1 ダストモニタの原理
①真空ポンプで吸い込み空気中のダスト(ほこり)をろ紙で集める。
②ほこりを集めたろ紙を、シリコン半導体検出器にて放射能量を測定する。
③流量計で測定した空気流量で放射能量を割って、濃度を算出する。
との原理で空気中の放射性物質濃度を測定します(3)。以下に福島第一原発のダストモニタの配置をしめします。

※1(4)とGoogle Mapにて作成
※2 風向き警報発生日は後述による
図-2 ダストモニタと警報発生時の風向き
8月2日に福島第一原子力発電所のモニタリングポストNo.7付近に設置している連続ダストモニタにおいて、放射能濃度が上昇したことを示す「高警報」(警報設定値:1立方メートル当たり10ベクレル)が発生しました(5)。発生の状況は以下の通りです。
①13時30分 1回目の警報発生
②17時08分 2回目の警報発生
③20時09分 3回目の警報発生
以下に警報発生前後のダストモニタで計測した空気中の放射性物質濃度を示します。

※(6)を8月5日に引用
図―3 福島第一ダストモニタ測定結果
図に示す通り8月2日には警報設定値である1立方メートル当たり10ベクレルを超える放射性物質が見つかっています。
このうち1回目の警報が出た時に放射性物質を物質を調べたら1立方メートル当たりで
セシウム137 0.0069ベクレル
鉛(PB)214 0.030ベクレル
が見つかったそうです(5)。
鉛214は半減期が26.8分と短く(7)、手早く分析をしないと消えてしまうので、警報発生時の濃度はもっとたかった思います。また鉛214は
鉛214(半減期26.8分)⇒ビスマス214(半減期19.9分)⇒ポロニウム214(半減期0.00016秒⇒タリウム210(半減期1.3分)
と(7)放射線を出しながら短い半減期で次々と変わっていきます。1個の鉛214は短時間で4回の放射線をある意味でだすので、量的な説明は可能です。これで6、7、8月と3ヶ月連続してダストモニタが警報を出しています。
6月1日 MP-2付近のダストモニタが警報発生、東京電力推定原因は機器の故障、風向きは西(4)(8)。
7月3日 MP-8付近のダストモニタが警報発生、東京電力推定原因はビスマス214、風向きは南南西(9)(10)。
8月2日 MP-8付近のダストモニタが警報発生、東京電力推定原因は調査中、1回目の警報時の風向きは南東(5)。
今回の警報の原因は鉛214や鉛214から派生するビスマス214だと(=^・^=)は思います。鉛214やビスマス214はウラン238から派生します(7)。ウランは天然に存在するので(11)、鉛214やビスマス214は天然由来の放射性物質として説明されます(12)。ただし(=^・^=)には気になることがかります。以下に2015年度の柏崎刈羽原子力発電所の空気中の放射性物質濃度を示します。

※(13)を集計
図―4 柏崎刈羽原子力発電所の空気中の放射性物質濃度
図に示すように高くても図に示す用に1立方メートル当たり3ベクレル程度で10ベクレルを超える事はありません。天然由来なのに福島第一の空気中の放射性物質濃度は柏崎刈羽の3倍です。以下にサンプル直後と5時間後の空気中の放射性物質濃度を示します。

※(13)を集計
図―5 柏崎刈羽原子力発電所の空気中の放射性物質濃度(サンプル直後と5時間後)
図に示す通り5時間で大幅に下がっており主因は半減期の短い鉛214やビスマス214で説明可能です。
福島第一のダストモニタの警報には以下の特徴があります。
①柏崎刈羽に比べ濃度が高く「天然由来」での説明だけでは困難
②最近は増えている。今年1月にもダストモニタが警報を出しているので(14)、今年(2016年)は4件です。一方で昨年(2015年)は2件です(15)(16)。
③昨年の警報は福島第一の中から外に向かって風が吹いていると時に起こっていますが(16)、今年は1月も含め外から中に向かって風が吹くときに発生している。
④警報の原因物質はウラン238の生成物である。
以上から今年のダストモニタの警報が発生した要因は
①福島第一の外にある。
②原因はウラン238の生成物である。
③去年(2015年)より今年(2016年)は増えている。
です。①②からして福島第一の外にウラン238の塊があるのは確かです。
2011年3月12日と14日に福島第一は爆発を起こしました。

※(17)を転載
図-6 水素爆発する福島第一原発1号機
この時に粒子状に細かくなった放射性物質だけでなく、ウラン238を含む核燃料も吹き飛ばされたはずです。一部が福島第一の外に飛び出た可能性も否定できません。実際に福島第一原発から20km弱離れた福島県楢葉町からは、高濃度の放射性物質に汚染された瓦礫が見つかっています(18)。図―2を見るとMP-7,8の間の南側に何かがありそうです。
以下にビスマス214の増加の計算結果を示します。

(a)線形表示 (b)対数表示
※1 最初の警報が出た6月1日を1とした相対値
※2 (18)を転載
図―7 ビスマス214の見積もり(相対値)
図に示す通り、今後は大幅な増加が見込まれます。いまは月1回程度のダストモニタの警報ですが、やがて週1回になり、そのうちに毎日になるかも知れません。福島の復興の大きな障害になると思います。
①福島第一で働く下請けさんの内部被ばくのリスクが増大し、廃炉作業の妨げとなる。
②福島第一原発の周囲に計画されている中間貯蔵施設(19)の建設や運営の障害になる。
2020年までには福島第一原発の近くの常磐線の再開が計画されています(20)。再開することには鉛214やビスマス214だらけになりそうです。
2.汚染水の増加は減らず
福島第一では日々、汚染水が増え続けています。これについて東京電力は1日当たりの増加量を8月15日から1日当たり250トンにまで減らすと発表しています(22)。東京電力は週に1回のベースで福島第一原発に保管・滞留している汚染水の量を発表しています(24)。これを元に日々の汚染水の増加量を(=^・^=)なりに集計してみました。

※1(24)を集計
※2 濃縮塩水を除く
図―8 福島第一の汚染水増加量
一日当たりの汚染水増加量は
7月5週 1日当たり361トン(7月21日から27日)
8月1周 1日当たり359トン(7月28日から8月3日)
で改善されている様子がありません。
図に示す通り、雨が降ると汚染水の増加量は増えます。8月9日には台風5号が福島を直撃しそうです(24)

※(24)を引用
図―9 台風5号の進路予想
大量の雨が降りそうです。来週は今週より増加しそうです。
3.2号機原子炉圧力容器の温度計故障、残りは8台
福島第一2号機の原子炉圧力容器内の温度計1台が故障したとの発表がありました。正常に機能すると東京電力が判定した温度計は41台中8台になりました(24)。以下に福島第一2号機の原子炉圧力容器内の温度計の台数の推移を示します。

※1(25)(26)(27)(28)(29)にて作成
※2 「監視に使用可」を「正常」それ以外を「異常」と記載
図―10 福島第一2号機、原子炉圧力容器内の温度計の異常・正常の数
図に示す通り2014年以降は年1台のペースで故障しています。単純計算するとあと8年で全ての温度計が使い物にならなくなります。廃炉まで30年とも40年とも言われてます(30)。廃炉工程の早い段階で温度計が全滅しそうです。
以下に号機別の原子炉圧力容器内の温度計の正常の台数を示します。
1号機 42台中26台が正常
2号機 41台中8台が正常
3号機 42台中41台が正常
で、2号機は1,3号機に比べ大幅に少なくなっています。2号機には1,3号機に無い「魔物」が住みついているようです。(=^・^=)は2号機の再臨界を疑っています(31)(32)(33)。
4.材料違い配管を原発で使用
東京電力の発表(34)によると、柏崎刈羽原電発と福島第一原発の配管に火力発電所用の配管材料で作られた配管が使われたそうです。配管メーカーが東京電力から柏崎刈羽原電発と福島第一原発の多核種除去設備配管および川崎火力発電所の配管を受注したのですが、材料を取り違え柏崎刈羽原電発と福島第一原発の配管を川崎火力発電所の材料で作り、川崎火力発電所の配管を柏崎刈羽原電発と福島第一原発で作ったとの事です。
5.密告は6件、福島第一原発事故の謎は闇の中
東京電力は福島第1原発事故で不適切な対応がなかったかどうか調べるために、東京電力社内で情報提供を呼び掛けたところ、6月下旬以降、6件寄せられたと8月2日に明らかにしたそうです(35)(36)。東電社員様が敷地内の排水路で放射性物質を測定するよう提案し、上司に却下されていたことを明らかにしたそうです(36)。排水路を高濃度の汚染水が流れている事を発表したのは2015年2月24日で(37)、割と遅い時期です。但し調査は2014年4月に始まっています(37)。それ以前に調査してればもっと早い段階で分かったも知れませんが、結果論です。東京電力の会見を聞いていると(38)、福島第一は輻輳しておりやるべき作業が直ちに全てができるような状況ではないようです。やるべき作業に優先順位をつけ順次実施していくしか手はないようです。だから敷地内の排水路で放射性物質を測定するとの提案を上司に却下しても不当な事ではありません。まして不確かな状況把握を元に判断しなくてはなりません。最適な行動など取れる状況にはありません。
東京電力の情報公開で最も曖昧にされているのは。福島第一原発事故の原因です。原因として
①東京電力の技術能力ではいくら努力しても、2011年3月11日の津波の想定が不可能で十分な対策が取れず事故に至った。
②本来ではあれば、津波にもっと注意を払うべきであったが、注意不足から津波を想定する機会を失い事故に至った。
③2011年3月11日の津波について薄々は分かっていたが、対策に莫大な費用(最悪の場合は福島第一の廃炉)が必要なので、確率が低いので「放置し」事故に至った。
が考えられると思いまう(39)。東京電力は事故直後は①の立場ですが(40)、最近は②の立場になったと思います(41)。ただし東京電力の説明(40)を見ても(=^・^=)は納得できるもではありません。たぶんに思惑がありそうです。①の立場なら東京電力は無能であり、原発を安全に運転する能力は無い事になり、③の立場ばら東京電力は悪い企業であり、原発を安全に運転などされらない事になり、東京電力による原発の再稼働は無理です。でも②の立場なら事故を反省し「安全」に原発を運転する体制が整った主張し(42)、再稼働の可能性が残ります。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。
まずは長くなってすいません(__)。それだけ福島第一には問題が多いんです。これでは福島の皆様は心配だと思います。
福島県知事がスーパーのチラシに登場しました。

※(43)
図-11 福島県内のスーパーのチラシに登場する福島県知事
福島県知事もスーパーに出向いたそうです(44)。スーパー側からのリクエストか、福島県がスーパーに泣きついたかは分かりませんが、知事の権限は絶大です。知事に泣きつかれたらスーパーは断る事はできないと思います。これについて福島の地方紙の福島民報は「(福島)県産食材も豊富に扱い、地元での消費拡大を図る。」と報じていますが(44)、福島では知事がチラシに登場したりスーパーに出向かなければしなければならない位に福島産離れが進んでいるので「消費拡大」の余地が多分にあるとゆうことでしょうか?。図に示す通り知事が登場したスーパーのチラシにはさすがに福島産がありますが、他は違うようです。
福島県が力をいれている農畜産物に牛肉があります(45)。福島の牛肉はた福島牛は、鮮やかな色合いと良質の霜降りをもつ絶品だそうです(46)。福島県は福島産牛肉は安全だと主張しています(47)。でも福島県いわき市のスーパーのチラシには福島産牛肉がありません。

※(47)を引用
図―12 福島産牛肉が無い福島県いわき市のスーパーのチラシ
当然の結果です。(=^・^=)も福島県いわき市の皆様も見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(7月5週)―下請けさんが亡くなりました―(2)
空気汚染モニタ (09-04-03-09) - ATOMICA -(3)
連続ダストモニタの警報発生について - 東京電力(4)
2016年6月1日福島第一原子力発電所 敷地境界連続ダストモニタ警報発生について(モニタリングポスト2近傍)(PDF 1.46MB)(5)
2016年08月03日福島第一原子力発電所の状況について(日報)【午後3時現在】 (6)
福島第一原子力発電所敷地境界付近でのダストモニタ計測状況|東京電力(7)
ウラン系列 - Wikipedia(8)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(6月1週)―凍土遮水壁に大穴―(9)
2016年7月4日福島第一原子力発電所 敷地境界連続ダストモニタ警報発生について(モニタリングポスト8近傍)(PDF 77.2KB) (10)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(7月2週)―汚染水増加470トン/日、250トン/日になる予定でした(11)
ウラン - Wikipedia(12)
おもな放射性核種(13)
2015年度(平成27年度)|柏崎刈羽原子力発電所|東京電力中の「放射線監視調査報告書」⇒「監視調査結果PDF(四半期毎)」⇒「 Q4」(
http://www.tepco.co.jp/kk-np/data/collection/pdf/2015/07kanshi_q4.pdf)
(14)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(1月3週)―汚染水タンク工事で下請けさんが骨折―(15)
めげ猫「タマ」の日記 勝手に福島原発十大トラブル2015(16)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(8月2週)―下請けさんがWで死亡―(17)
めげ猫「タマ」の日記 2015年、セシウム汚染食品の拡販に貢献した方々(18)
めげ猫「タマ」の日記 南相馬市小高、避難指示解除、ウラン238生成物は大丈夫?(19)
中間貯蔵施設について|除染で取り除いた土壌等の管理|除染情報サイト:環境省(20)
常磐線の全線運転再開の見通しについて” (PDF) (プレスリリース), 東日本旅客鉄道(21)
中長期ロードマップ|東京電力(22)(21)中の「中長期ロードマップの進捗状況」⇒「2016年7月28日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第32回事務局会議)」⇒「【資料3-1】汚染水対策(31.5MB)」(
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images1/images2/d160728_06-j.pdf)
(23)
プレスリリース|リリース・お知らせ一覧|東京電力ホールディングス株式会社中の「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について」
(24)
気象庁 | 台風情報を8月6日に閲覧
(25)
福島第一原子力発電所1~3号機における原子炉内温度計および原子炉格納容器内温度計の信頼性評価について(2016年8月提出)|プレスリリース|東京電力ホールディングス株式会社(26)
【120801】福島第一原子力発電所1~3号機における原子炉内温度計および原子炉格納容器内温度計の信頼性評価について(平成24年8月提出)|TEPCOニュース|東京電力(27)
福島第一原子力発電所1~3号機における原子炉内温度計および原子炉格納容器内温度計の信頼性評価について(平成25年8月提出)|東京電力(28)
福島第一原子力発電所1~3号機における原子炉内温度計および原子炉格納容器内温度計の信頼性評価について(平成26年8月提出)|東京電力(29)
福島第一原子力発電所1~3号機における原子炉内温度計および原子炉格納容器内温度計の信頼性評価について(2015年8月提出)|東京電力(30)(21)中の「2015年6月12日(廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議第2回)」⇒「(資料1)中長期ロードマップ改訂案について(133KB」(
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images/t150612_03-j.pdf)
(31)
めげ猫「タマ」の日記 再臨界について(32)
めげ猫「タマ」の日記 福島の下水汚泥から2カ所同時にヨウ素131、再臨界?(33)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一、再臨界監視システムは機能するの?(34)
コベルコ鋼管株式会社による「異材誤出荷事象について」を受けて|プレスリリース|東京電力ホールディングス株式会社(35)
東電、内部から情報提供6件 | 国内外ニュース | 福島民報(36)
排水路測定、上司が却下=福島第1、内部通報で判明-東電 時事(37)
2015年2月24日2号機原子炉建屋大物搬入口屋上部の溜まり水調査結果(PDF 960KB)(38)
2016/08/04(木) 原子力定例記者会見(39)
めげ猫「タマ」の日記 福島原発事故は「未必の故意」?(40)
福島原子力事故調査 中間報告書の公表について|TEPCOニュース|東京電力(41)
安全改革|原子力安全改革の取り組み|東京電力ホールディングス株式会社(42)
発電所の安全対策|柏崎刈羽原子力発電所|東京電力(43)
イオン福島店(44)
福島県産食材の魅力PR イオン県内5店 | 県内ニュース | 福島民報(45)
ふくしまイレブンエッセイ - 福島県ホームページ(46)(45)中の「福島牛」(
https://www.pref.fukushima.lg.jp/download/1/ushishi.pdf)
(47)
安全が確認された農林水産物(公開用簡易資料) - 福島県ホームページ(48)
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