福島第一原発汚染水の8月3週(8月15日から21日)の状況を纏めてました。
①外洋からセシウム等の放射性物質が見つかる
②構内放水路の放射性物質濃度が急上昇
③排水路からは法令限度以上に汚染された排水が海へ
④港湾内海水からは法令限度を超える汚染海水
⑤海岸付近の井戸のストロンチウム90は上昇中
⑥サブドレン・トリチウムの累積排出量は約839億ベクレル
等が確認されました。福島は台風が襲いました(1)。雨が降り、汚染水漏れは先週(2)より酷くなった感じです。
1.外洋からセシウム等の放射性物質
事故から5年5ヶ月以上経過しましたが、外洋からは相変わらずトリチウム等の放射性物質が見つかっています。

※1 (5)(6)(7)で作成
※2 数値は1リットルまたは1キログラム当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
※4 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(8)
図―1 福島第一原発外洋の放射性物質濃度
事故から5年5ヶ月以上が過ぎましたが図に示す通り、外洋からセシウム等の放射性物質が見つかっています。
以下に南放水口付近のセシウム濃度を示します。

※1(6)を集計
※2 NDは検出限界未満(セシウムが見つからないこと)を示す。
図―2 南放水口付近のセシウム濃度
今年はずっと検出限界未満が続いていたのですが、突然の上昇です。この先が心配です。
2.構内放水路の放射性物質濃度が急上昇
以下に福島第一の降水量を示します。

※(9)を集計
図―3 福島第一の降水量
福島では7月末に梅雨が明け(10)、雨が少ない状態が続いていましたが台風シーズンが到来したようです。8月17日には台風が福島を襲い雨を降らしました(2)。一日当たりの降雨量を見ると
8月17日 11mm
8月18日 86mm
8月19日 0mm
8月20日 22.5mm
です(9)。今日も台風9号が来ているので、大雨が降りそうです。

※(11)を8月22日にキャプチャー
図―4 台風で福島第一付近に降った降雨の分布
福島第一に溜まった放射性物質が流れ出ないか心配です。
図―1に示す様に福島第一原発のタービン建屋と海の間には放水路があります(9)。以下に2号放水路上流の放射性物質濃度を示します、

※1(9)を集計
※2 NDは検出限界未満(見つからないこと)を示す。
図―5 2号放水路上流の放射性物質濃度
8月18日に突然の上昇をしました。上昇するということは何処からか放射性物質が流れ込んでいることを示します。当然ながら流れ出すこともあり得ます。福島第一の放水路の放射性物質は放水路に閉じ込められている訳ではありません。
3.排水路からは法令限度以上に汚染された排水が海へ
福島第一原発構内には幾つもの排水路が走っています(8)。以下に今週観測された各排水路の放射性物質濃度を示します。

※1(8)(12)を集計
※2 値は1リットル当たりで集計期間の最高値
※3 赤丸(
●)はサンプリング地点
図-6 福島第一原発排水路の放射性物質濃度
放射性物質の法令限度は1リットル当たりで、セシウム137が90ベクレル、ストロンチウム90が30ベクレルです(3)。全ベータのおよそ半分がストロンチウム90なので(8)、全ベータでは60ベクレルになります。図に示す通り全ての排水路から放射性物質が見つかっています。K排水路からは法令限度の数倍の汚染水が海に流れています。
以下にK排水路の放射性物質濃度を示します。

※1(8)を集計
※2 NDは検出限界未満(見つからないこと)を示す。
図―7 K排水路の放射性物質濃度
今回だけでなく時々、法令限度を超えて汚染される状況が時々みられます。図―3と比較してわかることは、雨が降ると高濃度の汚染水が流れ海をより汚します。今日(8月22日)は台風が来たので、来週も同じような記事を書くことになりそうです。
4.港湾内海水からは法令限度を超える汚染海水
排水路から汚染水が流れればその先の海洋汚染が心配です。以下に今週の港湾内の汚染状況を纏めます。

※1 (6)(7)を集計
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
※4 SR90はストロンチウム90を示し、採取日は7月11日
※5 排水口の位置は(8)、サブドレン排水口の位置は(13)による。
図―8 福島第一港湾内の放射性物質濃度
図に示す様に港湾内3箇所で法令限度の1リットル60ベクレルを超える汚染海水が見つかっています。法令限度を超えた全ベータ見つかった3地点の全ベータ濃度を示します。

※1(8)を集計
※2 NDは検出限界未満(見つからないこと)を示す。
図―9 港湾内3地点の全ベータ濃度
図―7と同じような恰好をしています。福島第一では
降雨⇒排水路から高濃度の汚染水⇒港湾内の汚染
の構図があります。港湾は外洋と繋がっており、いづれ流れ出し福島の海や魚を汚染します。
5.海岸付近の井戸のストロンチウム90は上昇中
海岸付近井戸からは高濃度に汚染された地下水が見つかっています。

※1 (6)を集計
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
※4 SR90はストロンチウム90を示し、採取日は7月初旬
図―10 海岸付近の井戸の放射性物質濃度
この中でNo1-17井戸のストロンチウム90が気になります。推移を全ベータと共に示します。

※1(5)を集計
※2 NDは検出限界未満(見つからない事)を示す。
※3 ストロンチウム90はSR90と略す
図―11 No1-17井戸の放射性物質濃度
図に示す通り、今年4月位から上昇を続けいます。図に示す通り全ベータも同期しています。全ベータに下がる気配が無いのでこのまま高止まりしそうです。
6.サブドレン・トリチウムの累積排出量は約839億ベクレル
サブドレンは、原子炉やタービン建屋の直ぐ傍の井戸から汚染地下水を汲み上げ、直接にタービン建屋周囲の水位を下げ汚染水の増加量を抑えるものです(14)。サブドレンの運用は2015年9月3日から始まったので(15)まもなく1年です。東京電力はサブドレン廃水の放射性物質濃度も排出量も公表しているので(16)(17)、濃度×排出量で累積のトリチウム排出量を求めてみました。

※(16)(17)を集計
図―12 サブドレンの累積のトリチウム排出量
図に示す通り運用開始後からトリチウムの排出量が増え続け、累積で約839億ベクレルになりました。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。
事故から5年5ヶ月以上が過ぎましたが、福島第一原発の汚染水漏れは止まる気配がありません。福島の皆様は不安だと思います。
福島県は夏野菜のテレビCMを流しています。そこには福島産トマトも登場します(18)。原発事故後、福島県相馬地方のトマトは話題に上がることが多い気がします(19)。福島県相馬地方のトマトは、しっかりとした甘味とほんのりとした酸味が特徴です。(20)。福島県は福島産トマトは「安全」だと主張しています(21)。でも、福島県相馬市のスーパーのチラシには福島産トマトはありません。

※(22)を引用
図―13 福島産トマトが無い福島県白河市近郊のスーパーのチラシ
当然の結果です。(=^・^=)も福島県白河市や近郊の皆さまを見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
県道が崩落、台風7号で福島県内大雨 列車一時運転見合わせ、浸水被害も:福島民友ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet(2)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一汚染水(8月2週)―外洋からトリチウム―(3)
サンプリングによる監視|東京電力(4)
報道配布資料|東京電力(5)(3)中の「1.海水(港湾外近傍)」を5月12日に閲覧
(6)(4)中の「福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果」
(7)(4)中の「福島第一原子力発電所構内1号機、2号機放水路サンプリング結果 」
(8)
めげ猫「タマ」の日記 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(9)(4)中の「福島第一原子力発電所構内排水路のサンプリングデータについて 」
(10)
気象庁|平成28年の梅雨入りと梅雨明け(速報値)(11)
気象庁 | 高解像度降水ナウキャスト(12)(3)中の「タンクの水漏れに関するモニタリング」⇒「南放水口・排水路」
(13)
2015年9月2日 海洋汚染をより確実に防止するための取り組み(PDF 3.53MB)(14)
サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力(15)
(コメント)福島第一原子力発電所におけるサブドレン他水処理施設の運用開始について|東京電力(16)(4)中の「サブドレン・地下水ドレン浄化水分析結果」
(17)
集水タンク・一時貯水タンクの運用状況|東京電力(18)
TVCM(ふくしまプライド。「野菜」篇) | ふくしま 新発売。(19)
復興相が新地のトマト栽培視察 JR原ノ町駅なども | 県内ニュース | 福島民報(20)
特産品情報 | 地区別くらし情報 そうま地区 | JAふくしま未来(21)
安全が確認された農林水産物(公開用簡易資料) - 福島県ホームページ(22)
Webチラシ情報 | フレスコキクチ
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- 2016/08/22(月) 19:46:00|
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