福島県の地方紙の福島の福島民友が福島第一原発で進められてる凍土壁の効果を危ぶむ記事を載せていました(1)。失敗の理由は「完全凍結」しないと流量を減らす効果はないが、完全凍結は無理であるとのものです。
凍土壁は冷凍機・クーリングタワーで冷却した冷媒(ブライン)をブライン移送管で圧送し,地中に配置した凍結管の中を循環させることで周辺の地盤を凍結さ、水の流れを遮断し、汚染水の流れを阻止するものです(2)。東京電力の正式名称は「陸側遮水壁」ですし(2)、報道などでは「凍土遮水壁」との用語が用いられる事もあります(1)。

※(2)(3)(4)にて作成
図―1 サブドレン、凍土壁、地下水ドレン、海側遮水壁
福島第一では日々・汚染水が増え続けています。

※(5)を集計
図―2 日々増え続ける福島第一汚染水
最新のデータ(6)を集計すると約96万トンに達し、まもなく100万トンを突破しそうです。汚染水が増加する要因は幾つかありそうですが、その一つにタービン建屋側から海に向かって流れ出した汚染地下水を途中で汲み上げダービン建屋に送り、貯め込んでいることがあります(8)。以下にタービン建屋と海の間から汲み上げた汚染地下水の内、タービン建屋に送った量の推移を示します。

※(8)を集計
図―3 タービン建屋と海の間から汲み上げた汚染地下水の内、タービン建屋に送った量
図に示す通り多い時には1日で500トンを超えます。なお(=^・^=)は記事でこの送った量を「地下水ドレン等からの移送量」との表現を良く使います。
汚染水の増加を抑える方策の一つして、タービン建屋側から海にへの汚染水流量を抑え汲み上げ量を減らすことが考えられます。以下に福島第一にタービン建屋から海までの断面の模式図を示します。

※(2)~(4)、(9)~(12)で作成
図―4 福島第一・海岸部の模式図
タービン建屋側から、サブドレンピット、凍土壁、ウエルポイント、地盤改良、地下水ドレン等が並んでいます。
汚染水の増加要因に地下水が原子炉やタービン建屋に流れ込む事があります。サブドレンは地下水が建屋に流れ込む前に、汲み上げこれを阻止しようとするものです(4)。サブドレンで汲み上げられなかった地下水は建屋に流れ込むか、海に向かって流れだします。放置するとそのまま海に流れだし、福島の海を汚します。そこで、水を通さないようにした地盤改良部を設けています(10)(11)。さらには海岸に水の流れを阻止する「海側遮水壁」を設けています(3)。流れを阻止された汚染地下水は、地盤改良部や海側遮水壁の内側(タービン建屋側)に溜まってしまい放置すれば溢れてしまいます。そこで地盤改良部の手前(タービン建屋側)にウエルポイントを、海側遮水壁の内側に地下水ドレンを設け汲み上げています。以下に汲み上げ量の推移を示します。

※1(14)を編集
※2 図中の数値は月平均の1日当たりの汲み上げ量
図―5 海側遮水壁等から汲み上げる汚染水量
当初の計画では汲み上げた汚染水は浄化装置を通して、海に流す計画でした(4)。以下に地下水ドレンから汲み上げた汚染地下水のうちで中継タンクAの放射性物質濃度を示します。

※(15)を集計
図―6 地下水ドレン中継タンクAの放射性物質濃度
図に示す通りトリチウムは全ベータは1リットル当たりで3000から5000ベクレルで推移いています。トリチウムの排水基準は1リットル当たりで1500ベクレルですので(16)、倍以上です。東京電力は浄化装置を通してもトリチウムは浄化できないと説明しています(4)。結局は海に排水すつ事が出来ず、図―3に示すように地下水ドレン等から汲み上げた汚染水をタービン建屋に送り、汚染水増加の一因になっています。
東京電力はタービン建屋の海側に氷の壁「凍土壁」を作り、タービン建屋側から海への汚染地下水の流れを阻止し、地下水ドレン等からの汲み上げ量を減少させる対策を実施しています(17)(18)。今年(2016年)3月31日にタービン建屋の海側の凍土壁を(18)、6月8日からタービン建屋の山側の大部分の凍土壁の凍結を開始しました(19)。海側の凍土壁の凍結を開始してから5ヶ月近く経過しましたが、図-5に示す様にタービン建屋側から海への汚染地下水の流用が減ることもなく、結果として図―3に示す様ように地下水ドレン等から汲み上げた汚染水をタービン建屋に送る量が減ることもありません。8月22日にタービン建屋に送った量は546トン(20)で、凍結開始後の最高値です。福島県の地方紙の福島の福島民友が福島第一原発で進められてる凍土壁の効果を危ぶむ記事を載せていました(1)。

※(21)を8月28日に閲覧
図-7 凍土壁の効果を危ぶむ記事を掲載した福島県の地方紙の福島民友
記事では
「東京電力は、福島第1原発の汚染水対策の切り札「凍土遮水壁」について、遮水効果を9月後半にまとめる。」
と報じていましたが(1)、5ヶ月間効果が無かったものが1ヶ月の9月に効果がでるとは考えらません。凍土壁は「失敗」です。その原因を(=^・^=)なりに纏めてみました。
凍土壁がある程度凍れば、水の流れをある程度は阻止されます。その結果、凍土壁の内側(タービン建屋側)の水位は上昇し、外側(海側)との間に水位差が生じます。

※1(=^・^=)の見積もり
※2「∝」は比例を示す記号
※3√は平方根を示す記号で、自乗すると元の値に等しくなる数(22)。例えば1.4142×1.4142≒2なので、√2=1.4142
※4 落差hと流量の関係式は(22)による。
図-8 落差と流量
流量を規定するのは凍土壁内外の水位差でなく、凍土壁海側と海岸の水位差です。この値が下がらなければ、流量は減りません。以下に凍土壁と海側遮水壁の水平配置を示します。

※(23)とGoogle Mapで作成
図―9 海側遮水壁と凍土壁
以下にこのうち海3-②と東京電力が呼んでいる部分の配置を示します。

※(24)(25)およびGoogle Mapで作成
図―10 海3-②付近
図に示す様に、タービン建屋から海に向かって
「タービン建屋」⇒「観測孔Gi-17」⇒「凍土壁」⇒「観測孔Go-13」⇒「観測孔No3」⇒「ウエルポイント」⇒「観測孔No3-4」⇒「地盤改良部」⇒「海側遮水壁」⇒「海(港湾)」
並んでいます。「観測孔Go-13」と「観測孔No3」の水位差が縮まらない限り流量は減少しません。以下に図―10に示す各観測孔の地下水位を示します。

※(24)~(28)で作成
図―11 海3-②付近の地下水位
図に示す通り観測孔Go-13とNo3の水位差は概ね0.5mで安定しており流量の減少は見込めません。
以下に海①-1の配置を示します。

※(24)にて作成
図―12 海1-①付近の配置
このたりで凍土壁は折れ曲がっており流れが集中する場所です。以下に水位を示します。以下に海1-①付近の地下水位を示します。

※1(24)にて作成
※2 SD2は地下水を汲み上げる為のサブドレンピット
図―13 海1-①付近の地下水位
内側(タービン建屋側)の観測孔RW30外側の水位が上昇していますが、凍土壁の外側(海側)にある観測孔Co15の水位はあまり変化していません。以下に海1-①付近の地下の温度分布を示します。

※1(24)にて作成
※2 出典がOPで記載しているが、(=^・^=)が海抜に換算
図―14 海1-①地下の温度分布
図に示す通り水位観測点Co15の北側の海抜0~3m付近(地下-9m)に0℃を超える「大穴」が開いています。凍土壁によって地下水の流れが難い構造ができでも、弱い部分に流れが集中し、流れ難い構造の分だけ地下水位が上昇し流れの圧力が増すので全体としての流量は下がりません。
東京電力は補助工法との名称で、大穴付近にセメントを注入する作業を実施してます。以下のその結果を示します。

※1(24)にて作成
※2 下段の図中の数値は「海抜」(原資料はO.P.を(=^・^=)が換算)
※3 温度観測点は図―14中の「温度測定」示す位置
※4 「注入」が補助工法実施時期を示す。
図―15 海1-①で補助工法実施時の地下水位
図に示す通り「補助工法」を実施しても凍土壁外側のCo-15の水位は下がらず、内側のRW30の水位が上がっています。温度推移を見ても「大穴」の空いている海抜0m付近の温度は0℃に届きそうにありません。
流れる水は凍りません(29)。凍土壁によって水が流れにくい構造を作っても、地下水位がその分だけ上昇し、弱い所に流れが集中し流量は変らず、弱い場所は流れが速いので凍結しなくなります。凍土壁が流量を下げる効果は期待できません。
それでも東京電力は効果があったと主張しています。東京電力によれば凍土壁海側の平均の地下水が下がったそうです。以下に東京電力のデータと降水量を示します。

※(24)および(8)を集計
図―16 凍土壁海側平均地下水位と降水量
どう見ても雨が降ると水位が上がり、降らないと下がらない傾向にしか見えません。当該の発表は8月25日ですが、データは8月14日までしかありません。そして8月15日以降に福島第一では雨が降っています。その間のデータはありません。東京電力はデータの都合の良い部分をピックアップし、効果のなものを「効果があった」と主張しています。今日(8月30日)に福島を台風10号が襲っています(30)。

※(31)を8月30日に閲覧
図―17 台風10号接近を伝える福島の地方紙・福島民報
大雨がるはずです。来週は更新されたデータは出てこないと思います。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。
凍土壁は効果が見込めないのに、都合の良いデータをピックアップし効果があるかのように喧伝されているのは本文に記載の通りです。同じように(=^・^=)の解析では同じように福島産もまた都合の良いデータで「安全」とされています(32)。福島では廃炉は順調に進み、福島産は安全と根拠も無く喧伝されています。これでは福島の皆様は不安だと思います。
福島を代表する夏野菜にピーマンがあります。福島のピーマンは生食でも味わい良く、加熱すると柔らかくなり、独特のにおいも和らぐ風味の良いピーマンです(33)。福島県は福島産ピーマンは「安全」だと主張しています(34)。でも福島県福島市のスーパーのチラシには福島産ピーマンはありません。

※(35)を引用
図―18 福島産ピーマンが無い福島県福島市のスーパーのチラシ
当然の結果です。(=^・^=)も福島県*の皆様も見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
遮水効果明示が鍵、凍土壁進行に正念場 東電、9月後半に評価:福島民友ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet(2)
陸側遮水壁|東京電力(3)
海側遮水壁|東京電力(4)
サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力(5)
プレスリリース|リリース・お知らせ一覧|東京電力ホールディングス株式会社(6)
福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第267報)|プレスリリース|東京電力ホールディングス株式会社(7)
報道配布資料|東京電力(8)(7)中の「建屋への地下水ドレン移送量・地下水流入量等の推移 」
(9)
サブドレンピット|電気・電力辞典|東京電力(10)
資料2 福島第一原子力発電所の汚染水の状況と対策について[PDF ...(11)
地下水流入抑制のための対応方策 - 東京電力(12)
pitの意味 - 英和辞典 Weblio辞書(13)
第45回特定原子力施設監視・評価検討会 | 原子力規制委員会(14)(13)中の「資料4-1:陸側遮水壁の状況[東京電力]【PDF:1MB】」(
http://www.nsr.go.jp/data/000161042.pdf)
(15)
X.地下水|東京電力中の「地下水ドレンポンド・中継タンク水質分析」⇒「地下水ドレンポンド中継タンク水質分析(H28年度分)」⇒「CSV」
(16)
サンプリングによる監視|東京電力(17)(9)中の「会議映像 YouTube」(
https://www.youtube.com/watch?v=UBoN064wLcY)
(18)
2016年3月31日 福島第一原子力発電所 陸側遮水壁の凍結運転開始についてPDF (19)
2016年6月6日 福島第一原子力発電所 陸側遮水壁第一段階(フェーズ2)開始について PDF(20)
2016年8月29日建屋への地下水ドレン移送量・地下水流入量等の推移(PDF 74.6KB) (21)
福島民友新聞社 みんゆうNet -福島県のニュース・スポーツ-(22)
平方根 - Wikipedia(23)
水力発電所の出力と有効落差の関係(24)
2016年8月25日陸側遮水壁の状況(第一段階 フェーズ2)(PDF 8.29MB)(25)
2016年5月6日タービン建屋東側における地下水及び海水中の放射性物質濃度の状況について(PDF 3.21MB)(26)
2016年5月27日タービン建屋東側における地下水及び海水中の放射性物質濃度の状況について(PDF 2.44MB)(27)
2016年7月1日タービン建屋東側における地下水及び海水中の放射性物質濃度の状況について(PDF 3.33MB)(28)
2016年8月26日タービン建屋東側における地下水及び海水中の放射性物質濃度の状況について(PDF 3.50MB)(29)
0℃でも凍らない水(30)
福島県3市町で「避難準備情報」 台風10号・午前11時現在:福島民友ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet(31)
福島民報(32)
めげ猫「タマ」の日記 福島産について(33)
夏 | ふくしまの野菜 | JA全農福島(34)
安全が確認された農林水産物(公開用簡易資料) - 福島県ホームページ(35)
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