東京電力福島原発はトラブルが多く、トラブル毎に記事にするは面倒なので、まとめて記事にしています。先週につづき(1)、9月4週(9月18日から24日)もしっかりトラブルが起こっています。
①地下水ドレンがオーバーフロー
②港湾内地下水汚染、やや高めと東京電力、実は過去最高
③9月15日から汚染水増加は日量250トンの予定が実績は1000トン
④メガフロート、解体日程のみ決まる

※1 参照先は本文に記載
※2 「海側遮水壁」は参考
図―1 福島第一原発トラブルマップ(9月4週)
1.地下水ドレンがオーバーフロー
福島第一原発では、海への汚染水の流を防止しるために、海岸に汚染水の流をブロックする海側遮水壁を設けています(2)。海側遮水壁の内側にには汚染水がたまり続けています。以下に濃度を示します。

※2 ストロンチウム90はSR90と略す
※3 NDは検出限界未満(見つからない事)を示す。
図―2 地下水ドレン汲み上げ水の放射性物質濃度(中継タンクA)
ストロンチウム90の法定限度は1リットル当たり30ベクレルですが(3)、図に示す通り数倍の1リットル当たり2000ベクレルを超えるストロンチウム90に汚染されています。放置すると溢れて海に流れ出し、海洋汚染を引き起こすので、これを汲みあげています。東京電力はこれを「地下水ドレン」と呼んでいます(4)。
今週も福島第一には「雨」が降りました。

※(7)を集計
図―3 福島第一原発の降水量
このため汚染水の汲みあげが間に合わず、地下水位が地表より高くなってしまいました(8)。

※(9)をキャプチャー
図―4 地下水位が地表面を超えたと報じる福島のローカルTV局・TUF
以下に地表面に対する地下水ドレンの水位を示します。

※1(10)の口頭発表を字お越し
※2 地表面の高さは(8)による
図-5 地下水ドレンの地下水位(対地表面)
図に示す通り、相当の期間で地表面を超えた状態が続きました。海洋汚染が心配されますが、福島のマスコミは事実よりも「安心」を伝えることに重点を置いたようです。福島のローカルTV局のFCTは、地下すドレンの放射性物質濃度が法定限度の数倍以上である事には触れず
「周辺の地下水の放射性物質濃度は、建屋内の高濃度のものに比べるとかなり低い」
と報じていました。

※(11)をキャプチャ
図―6 「周辺の地下水の放射性物質濃度は、建屋内の高濃度のものに比べるとかなり低い」と報じるFCT
福島県の地方紙の福島民報は9月22日に
「地下水位上昇後の港湾内の海水のベータ線を含む放射性物質濃度の最高値は1リットル当たり27ベクレルで水位上昇以前の値から大きな変動がなかった。」
と報じていました(12)。ただし海水を汲み上げたから、分析までに時間がかかります。もれた汚染水が海洋汚染をしたかはその後の経緯をみないと分かりません。以下に港湾内の3地点の位置を示します。

※(13)にて作成
図―7 東京電力が定期的に観測している港湾内のサンプリングポイント
図に示さいていないサンプリングも多々ありますが、このうち1~5号機取水口内北側、1~4号機取水構内南側、1号機取水口の全ベータ濃度を示します。

※1(13)にて作成
※2 NDは検出限界未満(見つからない事)を示す
図―8 港湾内3地点の全ベータ濃度
全ベータはストロンチウム由来の放射性物質で、半分がストロンチウム90だとされています(14)。ストロンチウム90の法定限度が1リットル当たり30ベクレルなら、全ベータでは60ベクレルになります。図に示す通り後に上昇傾向を示し、法定限度を超えています。福島民報の電子版(15)を見る限り、追加の報道がないので、低いうちに報道してその後に上がっても大きくは扱われないようです。なお、次項に示す様に港湾内の海水からは過去最高のセシウム137等も見つかっていますが、図-2に示すように地下水ドレンの汚染水はセシウム濃度がそれ程には高くないので別の汚染源で上昇したと思います。
2.港湾内地下水汚染、やや高めと東京電力、実は過去最高
以下に港湾内3地点のセシウム137濃度の推移を示します。

※1(13)にて作成
※2 NDは検出限界未満(見つからない事)を示す
図―9 港湾内3地点のセシウム137濃度
図に示すようにどんどん上昇し法定限度の1リットル90ベクレルを超える95ベクレルを記録しました。また「1~4号機取水口内北側」と「1号機取水口」の値は「過去最高」です(16)。これについて東京電力は
「港湾内の2地点においてセシウム137が最近の変動から見るとやや高めの傾向を示していますが、これは過去の降雨時にも同様の傾向が見られており、降雨による構内排水路等からの流れ込みの影響と考えております。
・1~4号機取水口内北側:74Bq/L(9月21日採取)
・1号機取水口 :95Bq/L(9月21日採取)」
と広報発表しました(17)。過去最高で法定限度を超えているのに「やや高め」との広報発表です。これについて福島県の地方紙の福島民友は
「矮小(わいしょう)化するような表現で発表していた。」
と報じています(18)。
東京電力の全国向けの会見(10)ではなかったのですが、福島の会見では
「 東電によると『有意な変動』とは、放射性物質濃度が10倍以上に上昇した場合を指している。」
との説明があったそうです。
以下にC排水路の(C-2-1)地点の全ベータ濃度の推移について示します。

※(20)を集計
図―10 C排水路の(C-2-1)地点の全ベータ濃度
図に示すように9月22日のサンプリングで、過去最高の1リットル当たり350ベクレルを記録しました(21)。これについて東京電力は
「前回公表までの最高値を超えているが、有意な変動ではない。」
との注釈をつけています(21)。1リットル当たりの数値で見ると
9月19日 32ベクレル
9月20日 36ベクレル(前日の約1.1倍)
9月21日 220ベクレル(前日の約6.1倍)
9月22日 350ベクレル(前日の約1.6倍)
で、1日で10倍になった日はありません。ただし9月22日は19日の約11倍です。東京電力の10倍とは前回に比べ10倍との意味のようです。すると1日10倍が2日連続して100倍になっても、それぞれが前日と比較して10倍以下なら「有意な変動」ではありません。これが東京電力の「有意な変動」の定義です。
3.9月15日から汚染水増加は日量250トンの予定が実績は1000トン
東京電力は9月16日から汚染水の増加量が1日当たり250トンにはると発表しました(22)。

※(22)を引用
図―11 9月16日から汚染水増加量が1日250トンになると発表する東京電力
9月16日から1週間がたったので週毎の汚染水増加量を纏めて、いました。

※(23)を集計
図―12 日々の福島第一の汚染水増加量
図に示す通り、減る気配がないどころか、この所は増えています。凍土壁の効果を当てにしていたようですが(24)、効果はないようです。汚染水の総量は
9月16日発表(25)を集計すると977,352トン
9月23日発表(26)を集計すると984,904トン
で、
7,552トンの増加
です。
1日当たり1079トン増加
です。凍土壁の効果で1日当たり250トンになるはずが、4倍以上の1079トンです。凍土壁の効果は見られません。
図―12に示すように汚染水の増加はこのところ加速しています。想定外に増えた汚染水に処理が追いつかないようです。以下にタービン建屋の水位を示します、

※(23)を集計
図ー13 福島第一ダービン建屋水位
図に示す様にどんどん上昇しています。想定外に増えた汚染水はタービン建屋に放置されています。そのうち溢れださないか心配です。
4.メガフロート、解体日程のみ決まる
メガフロートは人工の浮島で、福島第一原発事故直後に、静岡市で使われていたものを汚染水を保管する為に、福島第一に運ばれてきました。現在は役割を終えましたが(27)、内部に1リットル当たり7ベクレルのセシウムに汚染された水が約8,000トン保管されてたまま、福島第一港湾内に置きっぱなしにされています(28)。

※Google Mapで作成
図―14 5年半の間、福島第一港湾内に置きっぱなしにされたままのメガフロート
これについて2年後の2018年には処分されることが、9月21日の原子力規制員会で決まりました(29)(30)。ただし具体的な解体方法は決まっていません(26)。下請けさんの「安全」を考えれば、船舶専用のスクラップ工場で解体するのがベストですが、スクラップ工場がある人は猛反対すると思います。福島第一原発内での解体となれば、廃炉作業の妨げになりますし、福島県は反発すると思います。これらはもめそうです。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。トラブル続きの福島原発では福島の皆様は心配だと思います。
福島県は福島の日本酒は4年連続で日本一だと言っています(31)。でも今年は(=^・^=)が知るが限りで、2つの酒蔵が経営破たんしました(32)(33)。

※(34)を9月22日に閲覧
図―15 福島の酒蔵の経営破綻を報じる福島の地方紙・福島民友
福島の皆様は福島の地酒が嫌いになったのかもしれません。そんな訳でしょうか?福島県福島市のスーパーのチラシには福島の地酒はありません。

※(35)を引用
図―16 福島の地酒が無い福島県福島市のスーパーのチラシ
当然の結果です。(=^・^=)も福島県福島市の皆様を見習い「フクシマ産」は飲んだり、食べたりしません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい福島原発(9月3週)―侵入警報装置を切っていた―(2)
海側遮水壁|東京電力(3)
X.地下水|東京電力中の「地下水ドレンポンド中継タンク通常水質分析(H28年度分)」⇒「CSV」
(4)
サンプリングによる監視|東京電力(5)
サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力(6)
報道配布資料|東京電力(7)(6)中の「福島第一原子力発電所構内排水路のサンプリングデータについて 」
(8)
2016年09月23日福島第一原子力発電所の状況について(日報)【午後3時現在】(9)
スイッチ20160923 TUFchannel(10)
2016/09/23(金) 原子力定例記者会見(11)
ダイジェスト動画|ゴジてれ Chu!|福島中央テレビ中の「2016年9月21日(水)放送」
(12)
地下水一時地表超え 井戸からはあふれず 第一原発 | 県内ニュース | 福島民報(13)(6)中の「福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果 」
(14)
めげ猫「タマ」の日記 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(15)
福島民報(16)
2016年9月22日福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果(PDF 724KB) (17)
福島第一原子力発電所護岸付近の水位上昇について(続報2)|報道関係各位一斉メール|東京電力ホールディングス株式会社(18)
セシウム評価を矮小化 福島第1原発港湾内、最高値を「やや高め」:福島民友ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet(19)
セシウム評価、東電が釈明 「もう少し適切な表現あった」:福島民友ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet(20)(4)中の「タンクの水漏れに関するモニタリング」⇒「南放水口・排水路」
(21)(20)中の「(2016年9月)22日」(
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/smp/2016/images3/south_discharge_16092301-j.pdf)
(22)
中長期ロードマップ|東京電力中の「中長期ロードマップの進捗状況」⇒「2016年8月25日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第33回事務局会議)」⇒「【資料3-1】汚染水対策(21.7MB)」(
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images1/images2/d160825_06-j.pdf)
(23)
プレスリリース|リリース・お知らせ一覧|東京電力ホールディングス株式会社(24)
2016年3月31日 福島第一原子力発電所 陸側遮水壁の凍結運転開始についてPDF(25)
福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第270報)|プレスリリース|東京電力ホールディングス株式会社(26)
福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第271報)|プレスリリース|東京電力ホールディングス株式会社(27)
第一原発沖 汚染水保管の人工浮島 31年度上期まで処分へ | 県内ニュース | 福島民報(28)
第39回特定原子力施設監視・評価検討会 | 原子力規制委員会中の「参考2 福島第一原子力発電所構内における主な貯留水・溜まり水の状況(2015.12時点の取り纏め状況)【一部修正版】【PDF:3MB】」(
http://www.nsr.go.jp/data/000137653.pdf)
(29)
第33回原子力規制委員会 | 原子力規制委員会(30)(28)中の「資料4 福島第一原子力発電所の中期的リスクの低減目標マップ(平成28年9月版)(案)について【PDF:387KB】」(
https://www.nsr.go.jp/data/000164302.pdf)
(31)
全国新酒鑑評会金賞受賞数4年連続日本一記念「日本一のふくしまの酒まつり」を開催します! - 福島県ホームページ(32)
福島・栄川酒造を支援=ヨシムラ傘下で再建-地域活性化機構 時事通信-2016/06/27(33)
福島県の花春酒造、事業譲渡 新会社へ、銘柄と雇用は維持:福島民友ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet(34)
福島民友新聞社 みんゆうNet -福島県のニュース・スポーツ-(35)
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