福島第一原発汚染水の10月1週(9月26日から10月1日)の状況を纏めてました。先週に続き(1)、各所で汚染が見つかっています。
①C排水路から過去最高の全ベータ
②港湾口のストロンチウム90が上昇
③外洋から過去最高の全ベータ
④海岸付近の井戸から過去最高の全ベータ
⑤サブドレン9月のトリチウム排出量は103億ベクレル、8月より50%増
C排水路、港湾内、海岸で「過去最高」(新記録)がでました。
1.C排水路から過去最高の全ベータ
福島第一原発構内には幾つもの排水路が走っています(3)。以下に今週観測された各排水路の放射性物質濃度と付近のE-1井戸の位置を示します。

※1(4)(5)を集計
※2 値は1リットル当たりで集計期間の最高値
※3 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(6)
※4 赤丸(
●)はサンプリング地点
図-1 福島第一原発排水路の放射性物質濃度
以下にC排水路およびC-2-1地点の全ベータ濃度を示します。

※1(5)を集計
※2 NDは検出限界未満(見つからない事)を示す
図―2 C排水路2点の全ベータ濃度
図に示す通り9月後半から急上昇しています。そして9月26日には1リットル当たりで
構内側溝排水路放射線モニタ近傍 430ベクレル
C-2-1 360ベクレル
を記録しました。共に過去最高(新記録)です。これについて東京電力は
「前回公表までの最高値を超えているが、有意な変動ではない。」
とコメントをしています(7)。図に示すように8月までと9月以降を比べれば、どう見ても明確な差があるのですが・・・。
図―1に示す様にC排水路に合流するB排水路の直ぐ山側(西側)にはE-1井戸があります。以下にE-1井戸の放射性物質濃度を示します。

※1(8)を集計
※2 NDは検出限界未満(見つからない事)を示す
図―3 E-1地点の放射性物質濃度
同じく9月中旬から急上昇しています。E-1地点の山側(西側)には図―1で示すように汚染水タンクがあります。汚染水タンクの寿命は5年と説明されていました(9)。事故から5年7ヶ月が過ぎ、寿命を迎える汚染水タンクも出てくる頃です。C排水路とE-1井戸の全ベータ濃度の上昇は同期しています。
以下にK排水路の放射性物質濃度を示します。

※1(4)を集計
※2 NDは検出限界未満(見つからない事)を示す。
図-4 福島第一K排水路の放射性物質濃度
放射性物質の法定限度は1リットル当たりで、セシウム137が90ベクレル、ストロンチウム90が30ベクレルです(3)。全ベータのおよそ半分がストロンチウム90なので(6)、全ベータでは60ベクレルになります。図に示す様に法定限度を超え、法律違反の汚染排水が度々流ています。
2.港湾口のストロンチウム90が上昇
排水路から汚染水が流れればその先の海洋汚染が心配です。以下に今週の港湾内の汚染状況を纏めます。

※1 (10)を集計
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
※4 SR90はストロンチウム90を示し、採取日は8月22日
図―5 福島第一港湾内の放射性物質濃度
この中で気になるのが港湾口のストロンチウム90です。以下に推移を示します。

※1(10)を集計
※2 NDは検出限界未満(見つからない事)を示す
図―6 港湾口のストロンチウム90濃度
図に示す通り大幅に上昇しています。当然ながら外洋にも影響しているはずです。
3.外洋から過去最高の全ベータ
福島第一の港湾と海洋は繋がっています。港湾内に法令に違反する排水が流れ込み、港湾内の海水が汚染されれば、その海水は外洋に出ていきます。以下に「外洋」の汚染状況を示します。

※1 (5)(10)(11)で作成
※2 数値は1リットルまたは1キログラム当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
図―7 福島第一原発外洋の放射性物質濃度
事故から5年半以上が経ちましたが、外洋からは放射性物資が見つかっています。この中T-2地点の全ベータは過去最高(新記録)です。ただし、9月15日から検出限界値を下げた測定に切り替わっています。以下にT-2地点とA排水路の全ベータ濃度を示します。

※1(4)(5)を集計
※2 NDは検出限界未満(見つからない事)を示す
図―8 T-2地点とA排水路の全ベータ濃度
図に示すように共に9月28日にピーク(T-2地点は過去最高)を出しています。図―1に示す様にA排水路は直接に外洋に流れています。他の排水路に比べ外洋への影響が早くでます。
4.海岸付近の井戸から過去最高の全ベータ
以下に海岸付近の井戸の地下水の放射性物質濃度を示します。

※1 (10)を集計
※2 数値は1リットル当たりのベクレル数
※3 集計期間内の最大値
図―9 海岸付近の井戸の放射性物質濃度
図に示す様に事故から5年7ヶ月が経過しましたが、法定限度や排水基準を大きく超えて汚染された地下水が見つかっています。この中で 1リットル当たりで
No2-3井戸のトリチウム 4,900ベクレル
No3-2井戸の全ベータ 3,500ベクレル
は過去最高(新記録)です。特にNo3-2が気になるので以下に推移を示します。

※1(10)を集計
※2 NDは検出限界未満(見つからない事)を示す。
図-10 No3-2井戸の放射性物質濃度
全ベータもトリチウムもしばらくは1リットル当たり1000ベクレル弱で安定したのですが、共に急に上昇し、全ベータは過去最高を記録しました。この先が心配です。
5.サブドレン9月のトリチウム排出量は103億ベクレル、8月より50%増
サブドレンは、原子炉やタービン建屋の直ぐ傍の井戸から汚染地下水を汲み上げ、直接にタービン建屋周囲の水位を下げ汚染水の増加量を抑えるものです(12)。サブドレンの運用は2015年9月3日から始りました(13)。東京電力はサブドレン廃水の放射性物質濃度も排出量も公表しているので(14)(15)、濃度×排出量で月別のトリチウム放出量を求めてみました。

※(14)(15)を集計
図―11 月別のサブドレンからのトリチウム放出量
図に示す通り、8月、9月と2ヵ月連続して増えています。9月の放出量は8月より50%増の103億ベクレルです。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。
最近は東京電力の福島第一の汚染水検査データのアップが遅れる事があり19時を過ぎる事があります。今週から主に前日までのデータで記事を書くことにしました。
事故から5年7ヶ月が経過し、福島第一の汚染水漏れは止まる気配がありません。福島の皆様は不安だと思います。
10月になり福島からは稲刈りのニュースが流れています(16)。いわき市のフラガールの皆様も稲刈りをしたそうです(17)。福島は新米の季節です。福島県いわき市産米の全数全袋検査数は約5万件となりました(18)。いわき市民は約35万人なので(19)、市民が食べるには十分な量です。いわき市産のお米は「Iwaki Laiki」と呼ばれるブランド米だそうです(20)。福島県は福島産米は「安全」だと主張しています(21)。でも、福島県いわき市のスーパーのチラシには福島産新米はありません。

※(22)を引用
図―12 福島産新米が無い福島県いわき市のスーパーのチラシ
当然の結果です。(=^・^=)も福島県いわき市の皆様を見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一汚染水(9月4週)―港湾内、排水路、海岸で過去最高の汚染―(2)
報道配布資料|東京電力(3)
サンプリングによる監視|東京電力(4)(2)中の「福島第一原子力発電所構内排水路のサンプリングデータについて 」
(5)(3)中の「タンクの水漏れに関するモニタリング」⇒「南放水口・排水路」
(6)
めげ猫「タマ」の日記 全ベータはストロンチウム90由来の放射性物質(7)(5)中の「2016年9月27日(
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/smp/2016/images3/south_discharge_16092701-j.pdf)
(8)(3)中の「H4エリア周辺観測孔」および「H6エリア周辺観測孔」
(9)
タンク耐用年数、根拠なし 第一原発 | 東日本大震災 | 福島民報(10)(2)中の「福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果」
(11)(3)中の「1.海水(港湾外近傍)」
(12)
サブドレン・地下水ドレンによる地下水のくみ上げ|東京電力(13)
(コメント)福島第一原子力発電所におけるサブドレン他水処理施設の運用開始について|東京電力(14)
集水タンク・一時貯水タンクの運用状況|東京電力(15)(2)中の「サブドレン・地下水ドレン浄化水分析結果」
(16)
福島)福大生、南相馬で稲刈り体験:朝日新聞デジタル(17)
神戸新聞NEXT|全国海外|生活|福島のフラガールらが稲刈り(18)
ふくしまの恵み安全対策協議会 放射性物質検査情報を10月2日に閲覧
(19)
地区別世帯数・男女別人口 | いわき市役所(20)
いわき市産ブランド米「Iwaki Laiki」好評販売中 | いわき市 観光情報サイト(21)
水田畑作課 - 福島県ホームページ(22)
イオンいわき店
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- 2016/10/02(日) 19:48:53|
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