7月10日に開催された原子力規制委員会と東京電力会長・社長の意見交換で(1)、原子力規制から出された7つの課題(2)について、東京電力は「文書」で回答を求められました(3)。このうち「福島第1原発の汚染水の処分方法を盛り込まない方針を固めた」とのことです(4)。これでは原子力規制委の期待に東京電力は答えることが出来ず柏崎刈羽の審査合格は遠のきました。
柏崎刈羽原子力発電所は事故を起こした東京電力の発電所です。福島では事故を起こしたのに柏崎刈羽は安全に運転できるとして原子力規制委に適合性審査(安全審査では無い)を申請しています。柏崎刈羽発電所は立地する新潟に電気を供給しておらず、2007年の地震では放射能漏れと火災を起こしました(6)。

※(7)を転載
図-1 煙もくもく柏崎刈羽原子力発電所
東京電力は社長が交代し、新会長・社長が就任しました(7)。7月10日に開かれた原子力規制委員会に新会長・社長が出席しました(1)。そこで原子力規制委は7つの課題を示しました(2)。すなわち
1. 福島第一原子力発電所の廃炉を主体的に取り組み、やりきる覚悟と実績を示すことができない事業者に、柏崎刈羽原子力発電所の運転をする資格は無い。
2. 福島第一原子力発電所の廃炉に多額を要する中で、柏崎刈羽原子力発電所に対する事業者責任を全うできる見込みが無いと、柏崎刈羽原子力発電所の運転を再開することはできない。
3. 原子力事業については、経済性よりも安全性追求を優先しなくてはならない。
4. 不確実・未確定な段階でも、リスクに対する取り組みを実施しなくてはならない。
5. 規制基準の遵守は最低限の要求でしか無く、事業者自らが原子力施設のさらなる安全性向上に取り組まなくてはならない。
6. 原子力事業に関する責任の所在の変更を意味する体制変更を予定しているのであれば、変更後の体制のもとで柏崎刈羽原子力発電所について再申請するべき。
7. 社内の関係部門の異なる意見や知見が、一元的に把握され、原子力施設の安全性向上に的確に反映されなければならない。
です。これについて7月10日の会合で原子力規制委は東京電力に対し「文書」で回答を求めたました(3)。
1項の
「福島第一原子力発電所の廃炉を主体的に取り組み、やりきる覚悟と実績を示すことができない事業者に、柏崎刈羽原子力発電所の運転をする資格は無い。」
の実態は汚染水問題です。
福島第一では日々汚染水がたまり続けています。

※(8)を集計
図―2 溜まり続ける福島第一汚染水
最新のデータを集計すると約106万トンになります(9)。最終的にどのようにするかわは今のところ決まっていません。7月10日の会合で原子力規制委員長は
「私どもがこれまで1F(福島第一原子力発電所)の廃止検討会、更田委員を中心として随分議論して進めているわけですけれども、汚染水のトリチウムの問題、トリチウム処理水の排水の問題、それから、デブリ取り出しについての格納容器の調査、あるいは、汚染水と関係しますけれども、凍土壁の問題、それから、もろもろの廃棄物の問題、余りにも多くの課題を抱えていて、正直言いまして、東京電力の主体性というのがさっぱり見えないというところがあります。そういう点について、私どもは非常に危機感を持っているのです」
と発言し、1項の「福島第一原子力発電所の廃炉を主体的に取り組み」として福島第一汚染水の海洋放出をせまっています。
あせったのか東京電力会長は7月13日に報道各社のインタビューで、「(東電として)判断はもうしている」と述べ、海に放出する方針を明言しました(10)。

※(11)を7月14日に閲覧
図―3 東京電力の会長が福島第一汚染水の海洋放出を明言を報じる福島民報
東京電力はタービン建屋から汲み上げた汚染水を浄化装置に通した後で保管していると主張していますが、浄化装置で全ての放射性物質が取り除ける訳ではありません。特にトリチウムは全く取り除けません(12)。以下に汚染水のトリチウム濃度を示します。

※(14)を集計
図―4 福島第一汚染水のトリチウム濃度
図に示すように法令限度の1リットル当たり6万ベクレル(15)の20倍近い100万ベクレル程度で推移しています。これを薄めて海に捨てるようです。以下に福島第一の汚染水発生量を示します。

※(16)を集計
図―5 福島第一の日々の汚染水増加量
図に示す通り毎日150トン程度のペースで汚染水が増加しています。海洋放出をするして最低でもこの量は処理しなくてはなりません。仮に20倍に薄めてだすとすると1日3000トンです。法令限度ぎりぎりの汚染排水を毎日3000トンを海に流すとなれば多くの方が不安を抱くと思います。(=^・^=)は現状ではトリチウムが「安全」だと言い切るデータは揃っていないと考えます(17)。福島では反発の声が上がりました(18)。

※(19)を7月15日に閲覧
図―6 海洋放出に反発する声を報じる福島の地方紙
海洋放出となれば、多くの皆様が不安を感じ、東京電力などが「風評被害」と呼ぶ(119)福島離れが加速します。結局は海洋放出の明言を断念しました(4)。

※(11)を8月25日に閲覧
図―7 「汚染水処理策しめさず」と報じる福島民報
福島第一原発汚染水を永遠に貯めておくのは無理です。何時かは海洋放出をしなければならない時期がきます。その事情を説明し福島の皆様の理解を得るのも事故を起こした東京電力の責任です。東京電力はこの責任を回避しました。福島第一原子力発電所の廃炉を主体的に取り組み、やりきる覚悟と実績を示すことができない東京電力に、柏崎刈羽原子力発電所の運転をする資格はありません。東京電力は原子力規制委の期待に答えることができないので柏崎刈羽の審査合格は遠のきました。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。
東京電力は事故を起こした責任者として福島の皆様と向き合うべきですがしません。これでは福島の皆様は不安だと思います。
福島県会津若松市では「会津食の陣」が開かれています。今の主役はトマトです(20)。福島県会津若松市等が属する福島県会津地方(21)は福島を代表するトマトの産地です。福島県会津地方のトマトの味は格別だそうです(22)。福島県は福島産トマトは「安全」だと主張しています(23)。でも、福島県会津若松市のスーパーのチラシには福島産トマトはありません。

※(24)を引用
図―8 福島産トマトが無い福島県会津若松市のスーパーのチラシ
当然の結果です。(=^・^=)も福島県会津若松市の皆様を見習い「福島産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
第22回原子力規制委員会 臨時会議 | 原子力規制委員会(2)(1)中の
参考資料 基本的考え方【PDF:38KB】(3)(1)中の
議事録【PDF:266KB】(4)
原発汚染水の処分策示さず 規制委指示に東電経営陣 - 共同通信 47NEWS(5)
めげ猫「タマ」の日記 東電・柏崎刈羽免震重要棟耐震偽装言い訳へチラシ、反省がありません。(6)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい東電原発(3月1週)―柏崎刈羽・安全審査の申請書を再提出―(7)
<東京電>社長ら福島訪問 廃炉明言せず | 河北新報オンラインニュース(8)
プレスリリース|リリース・お知らせ一覧|東京電力ホールディングス株式会社(9)
福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第316報)|プレスリリース|東京電力ホールディングス株式会社(10)
柏崎原発も廃炉検討対象 東電会長、費用対効果を重視|社会|新潟県内のニュース|新潟日報モア(11)
福島民報(12)
汚染水の浄化処理|東京電力(13)
報道配布資料|東京電力(14)(13)中の「水処理設備の放射能濃度測定結果 」
(15)
サンプリングによる監視|東京電力(16)(13)中の「建屋への地下水ドレン移送量・地下水流入量等の推移」
(17)
めげ猫「タマ」の日記 トリチウムは危険・安全?(18)
復興相、海洋放出に反対 風評懸念「漁業者追い詰めるな」 | 県内ニュース | 福島民報(19)
2015年1月16日(いわき市漁協組合員説明会資料)風評被害対策について(PDF 325KB)(20)
会津トマト2017 | あいづ食の陣公式サイト(21)
会津若松市 - Wikipedia(22)
ふくしまイレブンエッセイ - 福島県ホームページ(23)
トマト | JA会津よつば(24)
安全が確認された農林水産物(公開用簡易資料) - 福島県ホームページ(25)
アピタ会津若松店│「イイこと、プラス。」 アピタ・ピアゴ
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- 2017/08/24(木) 19:54:50|
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