この2~3日のニュースをみていると、この夏は原発再開で電力不足を乗り切ることを政府は考えているような気がします。
「枝野経済産業大臣は、原発がない沖縄電力の管内を除いた全国の電気料金について、「原発の分が火力発電などに代われば、燃料代のコストなどが増加する。ある程度まとまった数字の値上がりがいずれくることは否定できないと思う」と述べ、全国の原発が再稼働しない場合、すでに値上げの方針を示している東京電力以外の各電力会社についても、いずれ、一定程度の電気料金の値上げを行う可能性があるという考えを明らかにしました。」(1)
とニュースがありました。
―原発が嫌なら電気料金が上がると脅しをかけるのでしょうか―
「 野田佳彦首相は24日、内閣記者会のインタビューで、定期検査で停止中の原子力発電所の再稼働に意欲を示したうえで「原子力規制庁ができる前に判断することもあるかもしれない」と表明した。規制庁発足を予定する4月より前に再稼働を決断する可能性に言及したものだ。」(2)
―場合によっては4月にはげどこかの原発が再稼働するかもしれません―
そして「北海道電力は24日、稼働中の泊原発(後志管内泊村)3号機を5月5日前後に停止して、定期検査入りする方向で調整を始めた。」(3)。
そして、今、動いている原発が最後にとまるのは5月です。で、こんなストリーを考えてしまいました。
①電気料金を上げをしないためには、原発が必要と言って原発を再稼働しやすくする。
②4月には、どれでもいいから1機の原発は再稼働
③いまの原発は、なんとか1機は5月まで動かし、原発「0」だけれは避ける。
④あとは、順番に原発を再開して、この夏を乗り切る。
です。でも、うまくいくでしょうか?(=^・^=)が調べた限りでは、
原発が再開しても、東日本の電力供給は安定しない。復活できる可能性のある原発は1機(東通)しかありません。東日本では、東京電力が放射性物質をばらまく前は18機の(福島第一6機、第二4機、柏崎刈羽4機、女川3機、東通1機)の原発が動いていました。でも、再開できそうなのは1機です。これでは、議論するだけ無駄
なんて結論になりました。
引っ越し先によっては、それまでの電気製品の一部が使えなくなるみたいです。たとえば、電機メーカーさんのホープページに
「(周波数)の異なる地域で電子レンジを使用される場合は、お使いになる電源に合わせた部品( 50Hz、60Hz )に交換する必要があります。」(4)
なんて記述を見つけました。日本の電気は東日本の50Hz(ヘルツ)帯と西日本の60Hz対に分かれているみたいです。だから、西日本で作った電気を東日本にもってくるには周波数を変換する必要があります。いま、その設備の能力は100万kW程度みたいです(5)。
次に、北海道から本州への送電ですが、北海道と本州を結ぶ送電線は
「2012年1月25日、3本ある海底送電ケーブルのうち1本が損傷、一時的にすべての送電が停止された。まもなく2本の送電は再開され、30万kWの送電能力が復活したが、当分の間、託送分を除いた20万kw分の電力融通しか出来なくなった」
とあるように30万kWしか送れないみたいです。結局、東本州がよそからもってこれる電気は130万kWが限界です。
東京電力の原発の周りの人は東京電力から電気を買ってません。東京電力の原発の周り(福島県、新潟県)に電気を供給しているのは、東北電力です。だから、「電気料金を上げないためには、原発が必要」と言われたって他人の電気代です。他人の電気代の為にリスクを取る人がいるでしょうか?再開は無理だと思います。
ばらまき前は、東京電力は17機の原発を所有し、14機を運転していました(3機は中越沖地震の復旧作業中)。東北電力は4機と、合計18機の原発が動いていました。東北電力の原子力発電所は女川と東通がありましたが、女川は地震でダーメージを受けているので、再開できそうなのは出力110万kWの東通のみです(12)。本州の東側に限れば18機の原発のうち、再開できるのはたった1機になります。ごれでは、原発が再開してもあまり効果はないと思います。
では、どれくらいの電気が供給できて、どれくらい必要か(=^・^=)なり計算してみました。
柏崎刈羽原子力は発電所の停止(1月25日)以降の2月24日までの東京電力の最大供給電力は5,500万kWでした(7)。2月25日、柏崎刈羽原子力発電所の
6号機が動き、135.6万kWの発電をしていますが(8)、3月末には止まります。すると、東京電力が手にする電気は
原発が再開できた場合:5,500(現状)-135.6(原発減分)+130(他からの融通)=5,494.4万kW
原発が再開できない場合:5,500(現状)-135.6(原発減分)=5,369.4万kW
になります。
需要はどうかということで、2010年と12年(2月)までの、電力需要を図にしてみました。

図―1 東京電力の2010年と12年の電力需要の比較
この1~2月を見る限り、放射性物質ばらまき事故直後の節電ムードもなくなり、2012年の電気需要は10年と同じになっているみたいです。2010年は6,000万kW程度の電気が使われているので、原発の再開に関係なく、ひょっとしたら足りなくなるかもしれません。
では、東北電力は
東北電力の最大の供給力は1,445kWです(10)。ただし、北海電力からの供給分も含むと思います(11)。原発が動いたとして
原発が再開できた場合:1,445(現状)-30(北海道電力分)+110(原発)=1,525万kW
原発が再開できない場合:1,445(現状)-30(北海道電力分)=1,415万kW
です。需要はどうかということで、2010年と12年(2月)までの、電力需要を図にしてみました。

データは(13)による。
図―2 東北電力の2010年と12年の電力需要の比較
この1~2月を見る限り、震災による電力需要の落ち込みも回復し、2012年の電気需要は10年と同じになっているみたいです。2010年は1,539万kW程度の電気が使われているので、どっちにしても足りなくなる可能性があると思います。すくなくとも、原発が復活しても東京電力に回す余裕はないと思います。
<余談>
この問題の解決策は、東京電力の責任よる需要抑制しかないと思います。今回の電力危機は、(=^・^=)は原子力発電所を襲う災害に対し適切な防護措置ができず事故を起こした東京電力のオペレーションミスだと思います。そのようなオペレーションを放置した大株主(たとえば東京都)やユーザー(東京電力から電気を買っている方)にも連帯責任はあると思います。需要と供給にミスマッチがある以上、需要を抑制するしかありません。市場原理にゆだねるなら「値上げ」しかないと思います。
(1)
“再稼働なければ電気料金値上げも”(2)
首相、原発再稼働4月前に判断も 規制庁の発足待たず
(3)
泊3号機、5月5日ごろ定検入り 全3基が停止 国内稼働原発ゼロも-北海道新聞[道内](4)
よくあるご質問(電子レンジ) : 引越しましたがヘルツ(周波数)切り替えは必要ですか? - 富士通ゼネラル JP(5)
商用電源周波数 - Wikipedia(5)
北海道・本州間連系設備 - Wikipedia(6)
柏崎刈羽原子力発電所5号機の定期検査開始について(7)
最大電力実績カレンダー|でんき予報|東京電力(8)
TEPCO : 柏崎刈羽原子力発電所 | トップページ(9)
TEPCO : でんき予報|過去の電力使用実績データのダウンロード(10)
新潟火力発電所6号機の運転再開について| 東北電力(11)
本日の融通電力の状況 | 東北電力(12)
平成22年度決算説明資料(13)
過去実績データのダウンロード | 東北電力
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- 2012/02/25(土) 21:09:08|
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