今年10月に改定された「放射線副読本」の10ページ目に
「人が放射線を受けた影響が、その人の子供に伝わるという遺伝性影響を示す根拠はこれまで報告されていません。 」
との記述しています(1)。(=^・^=)なりに調べると、福島では調べていません。
福島の核汚染と広島・長崎の原爆投下による放射線では大きな違いがあります。原爆は被ばく者には「被爆者健康手帳」が発行されましたが、その条件は広島市の場合は、爆弾投下時点に指定区域にいた方か、1945年8月20日までに指定区域に入った方です(2)。広島原爆は8月6日に投下されたので(3)、原爆による放射能汚染は概ね14日で解消したようです。また、ICRPが一般公衆の線量限界として勧告してる年1ミリシーベルト(4)を超えた範囲は爆心地から3.25km以内だそうです(5)。
以下に2017年11月の福島の放射線量分布を示します。

※1 (6)にて作成
※2 旧計画的避難区域は(7)
図―1 福島の放射線量分布(2017年11月時点)
事故から6年8ヶ月を経た2017年11月時点でも、年1ミリシーベルトに相当する毎時0.23マイクロシーベルト(8)を超える地域が広がっています。特に北西方向には約80km程でほぼ連続しています。福島の汚染は、広島と比べ長期で広範囲です。
事故から現在では半減期が30年とヨウ素131やセシウム134に比べて長いセシウム137(9)の影響が強いと思います。放出されたセシウム137の量を見ると
福島第一原発事故 15,000兆ベクレル
広島原爆 100兆ベクレル
です(10)。
福島事故では広島原爆の150倍のセシウム137がばら撒かれ、福島を汚染し続けています。
放射線を生物に当てると突然変異等の「遺伝的影響」が出ることが知られています(11)。福島でも事故後に色々な異常が見つかっています。動物学において、アルビノ(albino)は、遺伝子の欠陥で先天的にメラニン(色素)が欠乏する疾患です(12)(13)。沼沢湖は福島県西部の山中にあるカルデラ湖で(14)、ヒメマスが生息しています(15)。原発事故でに沼沢湖のヒメマスは汚染されました。

※(16)を集計
図-2 沼沢湖ヒメマスのセシウム濃度
2016年5月にはアルビノのヒメマスが見つかっていたそうです(17)。

※(18)を転載
図-3 沼沢湖で見つかったアルビノのヒメマス
福島では蝶の一種のヤマトシジミ(19)で放射線の影響と思われる異常が見つかっています。昨年には福島県内でアルビノのスズメも見つかりました(20)。
福島の皆様は人間への影響を心配しているようです。福島県県民健康管理調査によれば
「将来生まれてくる自分の子や孫など次世代以降の人への影響(次世代影響)が起こる<中略>『可能性は高い』は 20.9%、『可能性は非常に高い』は 15.2%であった。」
と(21)、福島事故による遺伝的影響を36.1%の方が心配しています(「可能性が高い」、「可能性は非常に高い」の合計)。ABCCは1947年にアメリカ政府で設立された研究機関で、広島や長崎に投下された原爆の影響について調査しました。その後1972年に日米共同の「放射線影響研究所」に改組され(22)、現在も続いています。放射線影響研究所は我が国において放射線影響に関し最も実績のある研究機関です。そこが広島・長崎の原爆投下では遺伝的影響がないとしています(23)。
このような研究結果を引用する形と思いますが、今年10月に改定された「放射線副読本」の10ページ目に
「人が放射線を受けた影響が、その人の子供に伝わるという遺伝性影響を示す根拠はこれまで報告されていません。 」
との記述しています(1)。
既に述べたように、福島の被ばくは広島や長崎と違い、長期かつ広範囲の被ばくです。放出されたセシウム137は広島の150倍です。広島や長崎で起こらなかった事が、福島で起きても不思議はありません。
福島事故直後に二種類の避難区域が設定されました。警戒区域と計画的避難区域です。警戒区域は事故直後の2011年3月12日に設定されました。計画的避難区域は事故後にしばらくしてから放射線量が高いことが判明し設定された避難区域で、設定されたのは事故から1ヶ月以上が過ぎた2011年4月22日です(7)。さらには、警戒区域では残された家畜は殺処分となりました(24)。一方で、計画的避難区域では一定の条件下で家畜の持ち出しが認められました(25)。計画的避難区域は逃げ遅れた、さらには家畜の持ち出し等の為になかなか逃げなった避難区域です。図―1に示す通り、飯舘村の全域と葛尾村の大部分が計画的避難区域になりました。また、逆に全域ないしは大部分が計画的避難区域に指定されたのは飯舘村と葛尾村だけす(7)。事故前の飯舘村には「飯舘牛」なるブランド牛がありました(26)。葛尾村では3,448頭の牛と3,863頭の豚が飼育されていした(27)。これは葛尾村の事故前の人口1,531人(28)を超えます。両村とも畜産が盛んでした。家畜の移動で被ばくした方も多いと思います。福島事故で何かが起こるとすれば、この2村で強く出るはずです。
放射線影響研究所は広島・長崎で、遺伝的影響が無かった根拠の一つに生まれて来る赤ちゃんの男女比、出生性比(29)に「異常」が無かった事をあげています(30)。以下に各年(通年)の2村(飯舘・葛尾村)合計の赤ちゃん誕生数を示します。

※1(31)を集計
※2 2018年は9月末まで
図―4 2村(飯舘・葛尾村)合計の赤ちゃん誕生数
妊娠期間280日(32)を考慮すると、事故後に懐妊した赤ちゃんは2011年12月後半から生まれることになります。影響がでるとしたら2012年からです。影響が出ないであろう2010,11年を合計すると
男の子 53人
女の子 49人
で、統計的な差がある訳ではありませんが、男の子が多く生まれています。ところが、影響が出るであろう2012年は
男の子 19人
女の子 38人
で、男の子の倍の女の子が生まれています。このような事が偶然に起こる確率を計算したら、統計的な差があるとされる5%(33)を下回る1.2%でした。以下に偶然に起こる確率の計算結果を示します。
表―1 偶然に起こる確率の計算結果(2012年)
※計算方法は(=^・^=)の過去の記事(34)による。

さらに2012年1月以降、2018年9月末までの合計では
男の子 181人
女の子 243人
です。このような事が偶然起こる確率は0.3%でした。以下に計算結果を示します。
表―2 偶然に起こる確率の計算結果(2012~18年)
※計算方法は(=^・^=)の過去の記事(34)による。

通常は男の子が多く生まれるので(30)、「異常」です。福島では広島や長崎では見つからなかった、出生性比の「異常」が見つかっています。
放射線影響研究所は広島・長崎で遺伝的影響が生じなかった別の理由として、自然死産が増加していな事をあげています(31)。以下に、福島県の2010年から13年の自然死産の推移を示します。

※(32)を集計
図―5 福島県の自然死産率
図に示す様に、事故後に懐妊した赤ちゃんが生まれるであろう2012年以降に急に増えています。以下に各年の数値を示します。
表―3 福島県の赤ちゃん誕生数と自然死産数
※(32)を集計

これを2010,11年と12,13の二つのグループに分けて、偶然に起こる確率を計算したら統計的な差があるとされる5%(33)を下回る1.3%でした。以下に偶然に起こる確率の計算結果を示します。
表―4 偶然に起こる確率の計算結果(自然死産)
※計算方法は(=^・^=)の過去の記事(34)による。

福島では広島や長崎では見つからなかった自然死産の「異常」も見つかっています。
放射線影響研究所は、広島や長崎で遺伝的な影響が生じていない理由に「出生性性比」や「自然死産」に「異常」が無い事をあげています。福島では「異常」が見つかっています。福島の汚染は、広島と比べ長期で広範囲です。広島や長崎で起きていない「異常」が起これば、広島や長崎の結果を適応するには「非科学的」です。ところが、今年10月に改定された放射線副読本は広島・長崎の結果をそのまま使い、10ページ目に
「人が放射線を受けた影響が、その人の子供に伝わるという遺伝性影響を示す根拠はこれまで報告されていません。 」
との記述しています(1)。福島を調査せずに、適当に引用しています。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。改定された副読本(1)はデマがいっぱいあります。
デタラメ、放射線副読本(平成30年10月改訂)にまとめています(37)。よかったら見て下さい。放射線影響研究所では「被爆者の子供のDNA調査」をすすめています(38)。前政権時代に福島でも計画され、昨年で調査を終える予定でした(39)。でも、安倍が出戻ってから「ウヤムヤ」です。彼の政権の福島対応を見ていると、とにかく調査しないにつきる思います。ストロンチウム90はカルシウムと化学的性質が似ています(40)。牛乳はカルシウムを取るのに適した食品です(41)。福島産牛乳のストロンチウム90を心配して換え控えた方が多くいたと思います。このような不安を解消するには、牛乳のストロンチウム90を検査sれば良いだけですが、この7年半の間、検査結果を知りません。多くの消費者は福島産牛乳に不信感を持ち続ける結果になったと思います。福島県福島市に乳業メーカーがありました(42)。今年、営業を停止しました(43)。もし、ストロンチウム90を検査していれば、消費者の不信が和らぎ、生き残っていたかもしれません。こんな行政では福島の皆様は不安だと思います。
10月に入り福島県いわき市では稲刈り体験が行われました(44)。同市は新米の季節です。同市産産米の全量全袋検査数が約37万件になりました(45)。同市は人口約34万人の市なので(46)、市民がとりあえず食べるには充分な量です。同市のお米は「Iwaki Laiki」といってお米はおしいお米です(47)。福島県は福島産米は「安全」だと主張しています(48)。でも、福島県いわき市のスーパーのチラシには福島産米はありません。

※(49)を引用
図―6 福島産米が無い福島県いわき市のスーパーのチラシ
(=^・^=)も福島県いわき市の皆さまを見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
放射線副読本(平成30年10月改訂):文部科学省(2)
被爆者健康手帳 - Wikipedia(3)
広島市への原子爆弾投下 - Wikipedia(4)
ICRP勧告(1990年)による個人の線量限度の考え (09-04-01-08) - ATOMICA -(5)
原爆放射線について|厚生労働省(6)
航空機モニタリングによる空間線量率の測定結果 | 原子力規制委員会中の「福島県及びその近隣県における航空機モニタリング(平成29年9月9日~11月16日測定) 平成30年02月20日 (KMZ, CSV)」
(7)
避難区域見直し等について - 福島県ホームページ(8)
国(環境省)が示す毎時0.23マイクロシーベルトの算出根拠|東京都環境局 その他について(9)
半減期 - Wikipedia(10)
チェルノブイリ事故との比較 - Wikipedia(11)
放射線と突然変異 (09-02-06-02) - ATOMICA -(12)
アルビノ - Wikipedia(13)
メラニン - Wikipedia(14)
沼沢湖 - Wikipedia(15)
妖精の里 かねやま 沼沢湖(16)
報道発表資料 |厚生労働省(17)
金山町 ふるさと情報発信事業 - 金色に輝くヒメマスは金山に福をもたらすか!?... | Facebook(18)
めげ猫「タマ」の日記 福島に遺伝的欠陥で色素が合成できないアルビノ・ヒメマス現る。(19)
大瀧研究室 | フクシマプロジェクト(20)
めげ猫「タマ」の日記 2017年度も女の子が多く生まれる福島県川俣町(21)
第31回福島県「県民健康調査」検討委員会(平成30年6月18日)の開催について - 福島県ホームページ中の
資料2-1 平成28年度「こころの健康度・生活習慣に関する調査」結果概要 [PDFファイル/332KB](22)
原爆傷害調査委員会 - Wikipedia(23)
原爆被爆者の子供における放射線の遺伝的影響 ? 公益財団法人 放射線影響研究所 RERF(24)
警戒区域内の家畜の安楽死処分の対応に関するQ&A:農林水産省(25)
計画的避難区域及び緊急時避難準備区域における家畜の取扱い等について:農林水産省(26)
「飯舘牛」復活へ向け、牧草地に放牧の実証実験 : 福島原発 : 読売詳報_緊急特集グループ : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)(27)
わが葛尾村の農業 -022/036page(28)
葛尾村 - Wikipedia(29)
出生性比(30)
全文 - 放射線影響研究所(31)
福島県の推計人口(平成30年10月1日現在)を掲載しました。 - 福島県ホームページ(32)
「十月十日」妊娠週数の数え方・出産予定日の計算 [妊娠の基礎知識] All About(33)
有意水準とは - 統計学用語 Weblio辞書(34)
めげ猫「タマ」の日記 偶然に起こる確率の計算方法について(35)
出生時障害(1948-1954年の調査) ? 公益財団法人 放射線影響研究所 RERF(36)
保健福祉部関係の統計情報データベース(過去倉庫) - 福島県ホームページ(37)
めげ猫「タマ」の日記 デタラメ、放射線副読本(平成30年10月改訂)(38)
被爆者の子供のDNA調査(1985年-現在) ? 公益財団法人 放射線影響研究所 RERF(39)
(新)福島におけるゲノム解析による放射線遺伝影響調査(福島ゲノム調査)(40)
ストロンチウム90 - Wikipedia(41)
牛乳とカルシウム | findNew 牛乳乳製品の知識(42)
福島乳業株式会社 | ものづくりふくしまウェブ(43)
『福ちゃん牛乳』の福島乳業(福島)が事業停止|日刊食品速報は食品業界に特化した信用調査機関です。(44)
【いわき市・農業体験・1日】野菜の収穫体験!若手農家と農場めぐり|アソビュー(45)
ふくしまの恵み安全対策協議会 放射性物質検査情報(46)
地区別世帯数・男女別人口 | いわき市役所(47)
いわき産コシヒカリのブランド米「Iwaki Laiki-いわきライキ」(48)
全量全袋検査に関するよくある質問 - 福島県ホームページ(49)
イトーヨーカドー 平店
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