昨年10月に改定された「放射線副読本」は、
「放射能が風邪のように人から人にうつることもありません。」
と記述し(1)、あたかも放射能がうつらないような記述をしています。でも、放射能はうつります。
放射線と放射能は似て非なる概念です。放射線は高い運動エネルギーをもって流れる物質粒子と高エネルギーの電磁波(ガンマ線とX線のような電磁放射線)の総称です(2)。ベータ線は電子の流れです(3)。質量(重さ)やエネルギーから速度を相対性理論(4)で計算すると殆ど光速(秒速30万km)です。おなじ電子の流れでも電流は秒速0.07ミリメートルだそうです(5)。これはカメさん(秒速76cm)(6)に比べてもかなり遅いスピードです。放射線に人体がさらされると「がん」などの放射線障害が起こり得ます(7)。福島では事故当時18歳以下だった子ども214人から甲状腺がんないしは悪性の疑いの方が見つかっていますが(8)、これにつては事故の影響が疑われています(9)。
放射能は放射線を出す能力で、概ね放射性物質が担います(10)。
放射線が人体に与える影響はシーベルト(Sv)で、1000分の1の0.001シーベルトを1ミリシーベルト(mSv)、1ミリシーベルトの1000分の1の0.001ミリシーベルトを1マイクロシーベルト(μSv)としています(11)。100ミリシーベルト以上の被ばくでがんに罹患し得ることが分かっています(12)。1999年に茨城県東海村で発生した被ばく事故では推定16 - 20シーベルト以上の被ばくされた方は染色体破壊により、新しい細胞が生成できない状態となり、事故から83日後に多臓器不全でなくなりました。推定6 - 10シーベルトの被ばくをされた方は放射線障害を患い事故から211日後に多臓器不全で亡くなりました(13)。なお100ミリ-ベルト以下でのがんの発生が見つかっていませんが(12)、これは100ミリシーベルト以下なら「がん」の心配が皆無との意味ではなく、単に見つかっいないとの意味です(14)。本当は放射線によってがんになったのに、分からなかった事が十分にあり得ます。ベクレル(Bq)は1秒間に発生する放射線の数をいいます。現行の食品の基準値である1キログラム当たり100ベクレル(15)の牛ステーキ200gを食べたとすると(16)、お腹のなかでは毎秒20発(100×0.2)、毎時72,000発(20×60×60)、毎日1,728,1000(72,000×24)の放射線が発生することになります。
放射能と放射線の関係は鉄砲と鉄砲玉ににていると思います。鉄砲でひとが傷つくことはあまりありませんが、鉄砲玉に当たればケガをしたり死んだりします。同じように放射能に触れても直接は放射線障害は起こりませんが、放射能から出る放射線に当たれば放射線障害が起こり得ます。
このように放射線と放射能は密接に関連していますが、別の概念です。でも福島では混用が目立つようです。福島県は「福島県放射能測定マップ」なるものを公開しています(17)。以下に示します。

※(17)を引用
図―1 福島県放射能測定マップ
図に示す様に単位はSv(シーベルト)であり、測定しているのは「放射能」でなく「放射線」(の影響)量です。福島県の情報公開はこの程度の精度しかないようです。
東京電力は事故前には、原発は五重の壁に守られており放射能漏れはないと主張していました(18)。

※(18)を引用
図―2 5重の壁で安全を主張する東京電力の2010年7月14日付資料
福島事故では5重の壁の内側にあるべき放射能が、ここをすり抜け福島各地に移りました。

※1(19)の数値データを元に(20)に示す手法で2月1日時点に換算
※2 避難地域は(21)による。
図―3 事故から8年近く経て汚染されている福島
図に示すように国が除染が必要だとする毎時0.23マイクロシーベルトを超える(22)地域が福島を中心に広がっています。福島第一原発事故では福島を中心に放射能が福島第一原発から「うつり」、8年近く経て、福島を汚染し続けています。
福島に移った放射能はそこから食べものにも移りました。

※1 (23)を集計
※2 NDは検出限界未満(みつからない事)を示す
図―4 福島県福島市産リンゴの検査結果
事故8年目の昨年も、福島市産リンゴに「放射能」がうつりました。
放射能は人にも移ります。福島では人や着衣に放射能がうつっていないかを調べるスクリーニング検査を実施しました。そしたら2011年3月中の検査で114,488人中102人から、「基準」を超える放射能が見つかりました(24)。
福島では避難区域から出る時に、持ち物などが放射能に汚染されていいかを調べるスクリーニング検査が行われています(25)。

※(26)を引用
図―5 持ち出し品のスクリーニング検査
放射能に汚染された「物」に触れれば、放射能は触れた人にうつる危険性があります。
ところが昨年10月に改定された「放射線副読本」の15ページには
「放射線や放射能が風邪のように人から人にうつることもありません。」
と記述しています(1)。放射線はうつりませんが、放射能はうつります。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。
改定された副読本(1)は他にもデマでいっぱいです。
めげ猫「タマ」の日記 デタラメ、放射線副読本(平成30年10月改訂)にまとめました(27)。よかったら見て下さい。
子供達に放射線の「デマ」を擦り込もうとする安倍出戻り内閣では福島の皆様は不安だと思います。
子供達に放射線の「デマ」を擦り込もうとする安倍出戻り内閣では福島の皆様は不安だと思います。
福島のイチゴが、幼稚園の子どもたちにプレゼントされたそうです。

※(28)をキャプチャー
図―6 福島産イチゴを食べる勇気ある女の子
福島はイチゴの季節です。福島県福島市のイチゴはあまいそうです(29)。福島県は福島産イチゴは安全だと主張しています(30)。でも、福島県福島市のスーパーのチラシには福島産イチゴはありません。

※(31)を引用
図―7 福島産イチゴが無い福島県福島市のスーパーのチラシ
(=^・^=)も福島県本宮市の皆さまを見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
放射線副読本(平成30年10月改訂):文部科学省(2)
放射線 - Wikipedia(3)
ベータ粒子 - Wikipedia(4)
特殊相対性理論 - Wikipedia(5)
Current and Fermi energy(6)
世界で最も足が遅い動物(ランキングトップ10) | ailovei(7)
放射線障害 - Wikipedia(8)
めげ猫「タマ」の日記 福島・小児甲状腺がん214人、まだまだ増える(9)
「福島の子供の甲状腺がん発症率は20~50倍」 津田敏秀氏ら論文で指摘 | ハフポスト(10)
放射能 - Wikipedia(11)
シーベルト - Wikipedia(12)
ちょっと詳しく放射線|放射線が健康に及ぼす影響(13)
東海村JCO臨界事故 - Wikipedia(14)
LNT(しきい値なし直線)仮説について ― 放射線安全研究センター ―(15)
食品中の放射性物質への対応|厚生労働省(16)
ステーキ300gは一般人としては食べごたえのある重さですか? - 一... - Yahoo!知恵袋(17)
福島県放射能測定マップ(18)
エネルギー館リニューアルオープン - 東京電力(19)
航空機モニタリングによる空間線量率の測定結果 | 原子力規制委員会中の「福島県及びその近隣県における航空機モニタリング(平成29年9月9日~11月16日測定) 平成30年02月20日 (KMZ, CSV)」
(20)
めげ猫「タマ」の日記 半減期でしか下がらない福島の放射線(2017年)(21)
避難区域見直し等について - 福島県ホームページ(22)
国(環境省)が示す毎時0.23マイクロシーベルトの算出根拠|東京都環境局 その他について(23)
報道発表資料 |厚生労働省(24)
緊急被ばくスクリーニングの活動状況について - 福島県ホームページ(25)
平成30年度 一時立入りのお知らせ - 大熊町公式ホームページ(26)
めげ猫「タマ」の日記 福島復興発信は綺麗な女性で(27)
めげ猫「タマ」の日記 デタラメ、放射線副読本(平成30年10月改訂)(28)
旬のイチゴ 園児にプレゼント|NHK 福島県のニュース(29)
特産品情報 | 地区別くらし情報 福島地区 | JAふくしま未来(30)
安全が確認された農林水産物(公開用簡易資料) - 福島県ホームページ(31)
チラシ情報 | スーパーマーケットいちい
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- 2019/02/22(金) 19:46:26|
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「副読本」に多くの誤りやミスリードがあることは認めますが。「風邪の様に人から人に」感染はしない、というのは誤りではないと思います。
確かに放射能を持つ微粒子が付着すれば、物から物や人に放射性物質が移動する事はありうることですが、他人の体内に入った放射性物質が有する放射能が、体内で増殖して他人に伝染する病原体の様に感染する、というのは言い過ぎと思います。
「副読本」については廃止を求める署名も起きていますが、正しい理由を挙げなければ却って運動の障害となるので注意が必要と思います。
- 2019/02/24(日) 14:56:54 |
- URL |
- 戦争とはこういう物 #RmmEyTeQ
- [ 編集 ]
戦争とはこういう物様
お問い合わせありがとうございます。以下、回答します。
Q1>「風邪の様に人から人に」感染はしない、というのは誤りではないと思います。
A1>副読本は「感染はしない」でなく「うつることもありません」との表現を使っています。うつるとは「移動する」するです(
https://www.weblio.jp/content/%E3%81%86%E3%81%A4%E3%82%8B)。インフルエンザウイルスが人から別の人に移動します。同様に放射能も移動します。すなわち「うつります」。本文に記載のように、福島原発事故では五重の壁を突き破り、各地に移り、福島を汚染しました。そして今も、汚染が続いています。
貴殿は「うつる」と「感染」を同義ように扱っていますが、
「感染とは、生物の体内もしくは表面に、より体積の小さい微生物等の病原体が寄生し、増殖するようになる事」(
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9F%E6%9F%93)であり、単なる移動(うつる)とは全く別の意味をもつ言葉です。
Q2>正しい理由を挙げなければ却って運動の障害となるので注意が必要と思います。
A2>A1に記載の通り、本記事は「放射能がうつらない」との誤った表現です。正しい理由をあげています。
- 2019/02/24(日) 18:41:19 |
- URL |
- mekenekotama #-
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