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めげ猫「タマ」の日記

一寸気になったどうでもいい事を記事に

福島第一原発汚染水、福島以外での処分は無理

 東京電力福島第1原発でたまり続ける汚染水の処分方法などを議論する政府の小委員会の会合が12月23日に開かれ(2)、「海洋放出」、「大気放出」または両者の併用の3案に絞り込みました(3)(4)(5)。これについて、福島県の地方紙・福島民報は社説で
「本県のみが実施場所とされるのは、さらなる風評につながり、絶対に許されず、認められない。」
と論じ、福島県外での処分を主張していました(6)。でも、無理です。
 福島第一では地下水が山から流れて来て、原子炉やタービン建屋(以下建屋と略す)に流入しています。あるいは海までに達しています。原子炉建屋にデブリ等がむき出しで放置されています。デブリ等に触れた水は放射能に汚染されます(7)。汚染されれば海に流せないので、これを汲みあげ浄化装置を通した後で海に流しています。ただし全ての放射性物質が浄化できる訳ではありません。東京電力はトリチウムは浄化できないとしています(8)。以下に福島第一汚染水のトリチウム濃度を示します。  
100万(Bq/l)程度で推移する福島第一汚染水のトリチウム濃度
 ※(9)(10)にて作成
 図―1 福島第一汚染水のトリチウム濃度

 図に示す様に最新では1リットル当たり100万ベクレル程度です。国の排水基準は1リットル当たり6万ベクレルですので(11)、20倍弱です。このままでは、海に流せないので東京電力は福島第一構内に汚染水タンクを作り保管しています。
どんどん増える福島第一汚染水
 ※(12)(13)を集計
 図―2 どんどん増える福島第一汚染水

 最新の発表(14)を集計すると、東京ドーム一杯分の容積124万立方メートル(15)とほぼ同じ122万立方メートルの汚染水が溜まっています。
 福島第一の敷地の広さには限界があり、何時かは行き詰るとの見方があります。
 福島第一に保管されている汚染水の総量は東京電力の発表を集計すると
  2018年12月20日時点 1,157,081立方メートル(16)
  2019年12月19日時点 1,217,214立方メートル(14)
です。364日間で60,133立方メートル、1日当たり165立方メートル増えています。
 行き詰まりを避ける為に、経済産業省は「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」(以下小委員会と略す)を立ち上げ、処分方法の検討を進めています(17)。
 8月9日開催された小委員会で(18)東京電力は2022年夏には、タンクがいっぱいになるとの資料を提出しました(19)。
3年後に福島第一の汚染水タンクが一杯となるとする東京電力資料
 ※1(19)を引用
 ※2 ALPS処理水は「汚染水」の最終形態(20)
 図―3 2022年夏には、タンクがいっぱいになるとの東京電力資料

 政府の小委員会の会合が12月23日に開かれ(2)、「海洋放出」、「大気放出」または両者の併用の3案に絞り込みました(3)(4)(5)。
福島第一汚染水の処分について海洋放出と大気放出の併記を報じる福島県の地方紙
 ※(21)を12月24日に閲覧
 図―4 汚染水の「海洋放出」または「大気放出」を報じる福島県の地方紙・福島民報

 ただ、汚染水の環境中への放出は福島では評判が良くないようです。朝日新聞が報じるところによれば、今年(2019年)2月に福島県民を対象に実施した世論調査で、福島第一汚染数の「海洋放出」について、賛成19%、反対65%で、多くの方が汚染水の環境中への排出に反対しています。
 当然です。トリチウムの別名は3重水素です(23)。言い換えれば放射性水素です。東京電力によれば概ね水として存在します(24)。ただし、光合成によって植物に取り込まれ(25)、食べることもあります。東京電力は飲んでも大丈夫と主張していましが、食べても大丈夫をは言っていません(24)。危険性を指摘する方がいます(26)。(=^・^=)はリファレス(27)に示す通り「安全」とは考えていません。
 だいたい経済産業省の言っていることがどこまであてになるか分かりません。1979年にメルトダウン事故を起こした米国のスリーマイル原発では(28)、汚染水の大気放出が行われました(29)。経済産業省の資料はこれを「実績」としているようでうすが、トリチウムの総放出量は24兆ベクレルで(30)、福島第一のトリチウム総量860ベクレルの約16分の1です(31)。これを実績といえるのか(=^・^=)は疑問です。
 経済産業省が信用できるかも疑問です。経済産業省の組織であった旧原子力保安院(32)、事故前は福島第一は安全だ主張していました(33)。
 このような事情を考えれば、福島の皆様が福島からの汚染水の環境中への放出に反対するのは当然だと思います。
 経済産業省の小委員会の議論や資料を見ると(17)、まったく議論されていない事があります。何処で処分するかです。こうした事情からでしょうか?福島県の地方紙・福島民報は「【原発処理水の放出】「本県のみ」は認めない(12月27日)」との社説で福島第一汚染水の処分について
「本県沖や本県上空が最初、あるいは本県のみが実施場所とされるのは、さらなる風評につながり、絶対に許されず、認められない。」
と論じていました。そして、当該社説を
「政府が、それぞれの方法の安全性を強調するのならば、全国のどの場所から放出しても問題ないはずだ。ただし『福島で』の結論ありきで議論が進まないように政府に強く求める。」
で終えていました(6)。
 でも、議論されなかったのは「福島」、正確には福島第一原発構内からの放出が大前提だったからです。
 福島第一原発からトリチウムを含む「水」は今も排水されえいます。その一つに福島第一g根発のタービンや原子炉建屋近傍の井戸から地下水をくみ上げるサブドレンがあります。汲み上げた地下水は貯めておけないので、浄化装置をとうした後で海にながされます。ただし、この浄化装置ではトリチウムは除けません(34)。分析結果を見ると(35)、自然界に比べて大幅に高い1リットル当たり1000ベクレル弱のトリチウムを含んでいます。サブドレンの運用を始める前に福島の漁師さんから
「浄化水が安全だというのなら県外の海で流せばいい」
との声が上がりました(36)。でも、サブドレン排水は福島第一構内から福島の海に流され続けています。
 以下に9月27日に開かれた福島第一原発の汚染水の処分方法を検討する委員会(17)で東京電力は海洋放出や気中放出する場合の概略を示しました。
福島第一からの海洋放出を説明している東京電力資料 ALPSからパイプでつながる汚染水の気中放出設備
 (a)海洋放出                        (b)大気中の放出
 ※(38)を引用
 図―5 汚染水処分方法法を示しす東京電力資料

 海洋放出の場合は「港湾内」から汲み上げた海水で直接に汚染水を希釈し「外洋」に流す計画です。あきらかに福島第一原発を想定しています。大気中の放出の場合はALPSから構内貯留タンクに汚染水を送り、さらにボイラーで熱を加え蒸発させる図になっています。ALPSとは多核種除去設備の略称で、福島第一原発に設置された汚染水処理装置です。ALPSからボイラーまで配管が繋がっているので、全てを福島第一原発ないで処理を想定しています。
 また、12月23日に開かれた第16回の小委員会の資料では
「このように、ALPS 処理水の敷地外への搬出は、相応の準備と事前調整が必要であり、解決の難しい問題が残る。」
との記載があり(40)、汚染水を敷地外に持ち出せないとしています。敷地外に持とち出せない以上は、福島県外に輸送することが出来ません。福島第一構内での処分しかありません。
 小委員会では何処で処分するかは、議論になっていません。これは、福島第一構内以外の選択肢はないとの前提がるからです。福島第一原発汚染水の処分は「福島で」の結論ありきで議論が進められています。
 福島県の地方紙・福島民報は社説で
「本県のみが実施場所とされるのは、さらなる風評につながり、絶対に許されず、認められない。」
と論じていますが(6)、安倍出戻り内閣は「福島県のみが実施場所とする」前提で検討をすすめており、福島県外の処分は無理です。

<余談>
 図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。
12月27日に福島第一の廃炉計画の改定が発表されました。そこに新たな目標として
 2025年内に「汚染水発生量を100m/日以下に抑制 」
が追加になりました(41)。汚染水の増加を抑える目的は汚染水タンクを増設を抑制することが目的です。図-3に示す様に東京電力は2022年夏に汚染水タンクがいっぱいになると説明しています。それ以降は汚染水を環境中に放出する事になる(放出するしかなくなる)ので、汚染水がいくら増えようがタンクの増設は不要(不可能)になるので、汚染水の増加を抑える意味が無くなります。なぜこのような目標が加えらたのか不可解です。
 東京電力は柏崎刈羽原子力発電所の再稼働を目指し、原子力規制委に適合性審査(安全審査ではない)を申請しています(42)。適合性審査は「設置許可」「工事計画認可」「保安規定認可」等の段階があります(43)。2017年12月27日に「設置許可」に合格しました(44)。ただし、「工事計画認可」「保安規定認可」はまだです。
 2017年7月10日の第22回原子力規制委員会 臨時会議に東京電力社長が呼ばれ、
「福島第一原子力発電所の廃炉を主体的に取り組み、やりきる覚悟と実績を示すこと」
を求められました。当時の委員長は東京電力社長に対し
「福島第一原子力発電所の廃炉を主体的に取り組んで、<中略>汚染水のトリチウムの問題、トリチウム処理水の排水の問題」
と発言しいるので(44)、「福島第一原子力発電所の廃炉を主体的に取り組み」は福島第一汚染水の海洋放出です。そして昨年9月20日の第38回原子力規制委員会で、ことことを柏崎刈羽原発の保安規定に盛り込むことが、安全審査合格の条件になりました(45)。汚染水の海洋放出を実質に規定に記載する以上は「海洋放出」が柏崎刈羽原発の適合性審査合格の条件になりました。
 適合性審査は6,7号機でなされていますが(42)、 6,7号機は合計で271.2万kWの出力があり(46)、稼働率を75%と見込むと(47)、年間178.2億kWh(271.2万×365×24×0.75)の発電が可能です。ガスタービン発電の燃料費は1kWh当たり13円だそうです(48)。東京電力は柏崎刈羽原発の再稼働で年間2,316億円(178.2億×13)の燃料費が節約できます。東京電力からみれば柏崎刈羽原発再稼働は打ち出の小槌です。汚染水の海洋放出は東京電力の悲願です。より早く海洋放出するなら、福島第一構内からがベストです。
 なにか良く分からない状況になっています。これでは福島の皆様は不安だと思います。
 福島では12月はナガイモの季節です(50)。福島のナガイモは・肌色が良く、甘味・栄養価が高いのが特長で国内でも最高品質との事です(51)。福島県は福島産は「安全」だと主張しています(52)。でも、福島県福島市のスーパーのチラシには福島産ナガイモはありません。
他県産はあっても福島産ナガイモが無い福島県福島市のスーパーのチラシ
 ※(53)を引用
 図―6 福島産ナガイモが無い福島県福島市のスーパーのチラシ

 (=^・^=)も福島県福島市の皆さまを見習い「フクシマ産」は食べません。


―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第16回)‐配布資料(METI/経済産業省)
(2)(1)⇒議事次第(PDF形式:0KB)
(3)福島第1原発処理水放出 政府小委「海洋」「大気」「両方」3案提示 | 河北新報オンラインニュース
(4)処理水放出、海洋と水蒸気 政府小委二つの方法軸に議論 第一原発 | 福島民報
(5) 福島第1原発の処理水処分に3案 政府小委、長期保管含まず:震災・原発関連ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet
(6)【原発処理水の放出】「本県のみ」は認めない(12月27日) | 福島民報
(7)汚染水対策の状況 - 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社
(8)汚染水の浄化処理 - 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社
(9)福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果|アーカイブ|東京電力中の「水処理設備の分析結果⇒水処理設備の放射能濃度測定結果 」
(10)福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果アーカイブ|データ|東京電力ホールディングス株式会社の「水処理設備の分析結果」
(11)周辺の分析結果ー分析結果 - 廃炉プロジェクト|データ|東京電力ホールディングス株式会社
(12)プレスリリース|リリース・お知らせ一覧|東京電力ホールディングス株式会社ちゅの「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について」
(13)福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について - 廃炉プロジェクト|公表資料|東京電力ホールディングス株式会社
(14)2019年のアーカイブ|公表資料|東京電力ホールディングス株式会社⇒12月⇒ 23日
(15)東京ドーム (単位) - Wikipedia
(16)2018年のアーカイブ|公表資料|東京電力ホールディングス株式会社⇒12月⇒ 25日
(17)福島第一原子力発電所における汚染水対策 (METI/経済産業省)
(18)多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第13回)‐配布資料(METI/経済産業省)
(19)(18)中の多核種除去設備等処理水の貯留の見通し
(20)汚染水の浄化処理 - 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社
(21)福島民報社
(22)復興への道筋「ついた」52% 福島県民対象の世論調査:朝日新聞デジタル
(23)三重水素 - Wikipedia
(24)福島第一原子力発電所でのトリチウムについて 平成25年2月28日 東京電力株式会社
(25)光合成 - Wikipedia
(26)DNAの中にまで入り込むトリチウムの特別な危険性
(27)めげ猫「タマ」の日記 トリチウムは危険・安全?
(28)スリーマイル島原子力発電所事故 - Wikipedia
(29)東京新聞:スリーマイル島事故40年 原発延命論 不安続く:社会(TOKYO Web)
(30)多核種除去設備等処理水の取扱いに係る説明・公聴会 (METI/経済産業省)中の・多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 説明・公聴会資料(pdf:5518KB)
(31)多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第15回)‐配布資料(METI/経済産業省)資料3 ALPS処理水の放出による放射線の影響について(PDF形式:0KB)
(32)経済産業省 > 産業保安 > 審議会 > 旧原子力安全・保安院の審議会情報 > 審議会・研究会一覧
(33)福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所の耐震安全性
(34)サブドレンからの地下水汲み上げ - 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社
(35)周辺の分析結果ー分析結果 - 廃炉プロジェクト|データ|東京電力ホールディングス株式会社中の「一時貯水タンク・集水タンクの分析結果」
(36)地下水放出計画、国と東電が漁業者に説明会 福島・いわき  :日本経済新聞
(37)サブドレン等集水タンク・一時貯水タンクの運用状況 - 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社
(38)(17)中の資料5 多核種除去設備等処理水の処分方法と風評抑制(PDF形式:415KB)
(39)多核種除去設備 (ALPS)|東京電力
(40)多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第16回)‐配布資料(METI/経済産業省)資料4 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 取りまとめ(案)(PDF形式:2,109KB)PDFファイル
(41)2019年のアーカイブ - 廃炉プロジェクト|公表資料|東京電力ホールディングス株式会社
(42)東京電力ホールディングス株式会社 柏崎刈羽原子力発電所(6・7号炉)審査状況 | 原子力規制委員会
(43)設計・建設段階の安全規制 | 原子力規制委員会
(44)第57回原子力規制委員会 | 原子力規制委員会
(45)第22回原子力規制委員会 臨時会議 | 原子力規制委員会
(46)第38回原子力規制委員会 | 原子力規制委員会中の資料1 申請者の原子炉設置者としての適格性についての確認結果(案)
(47)柏崎刈羽原子力発電所 - Wikipedia
(48)原子力発電所の設備利用率|発電所等データ|資料室(発電所運転データ他)|原子力情報センター(KNIC)|公開情報|原子力発電について|エネルギー|エネルギー・安定供給|関西電力
(49)化石燃料に依存する日本の電力事情(1):電力の88%を火力で作る
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(51)本宮の特産 白沢とろろ芋|本宮市商工会
(52)食の安全に関する取組 - ふくしま復興ステーション - 福島県ホームページ
(53)イオン 福島店のチラシ・特売情報 | トクバイ
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  1. 2019/12/29(日) 19:50:21|
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