10月27日に決定が予定されていた菅政権による福島第一汚染水の福島第一原発からの海洋放出決定延期(1)について、福島の読売系テレビ局FCTは「福島第一原発処理水問題 政府決定を先送り」と「先送り」と報じていました。
福島第一では山から流れて来た地下水の一部が、原子炉やタービン建屋(以下建屋と略す)に流入しています。原子炉建屋にデブリ等がむき出しで放置されています。デブリ等に触れた水は放射能に汚染されます(4)。浄化装置で全ての放射性物質が浄化できる訳ではありません。東京電力はトリチウムは浄化できないとしています(5)。どう見ても汚染水なのですが、何故か「処理水」(6)とか、「トリチウム水」(7)呼ばれることが多くなっています。
デブリに触れた汚染水を簡単に排出できる訳がありません。海に流せないので東京電力は福島第一構内に汚染水タンクを作り保管しています。

※(8)(9)を集計
図―1 どんどん増える福島第一汚染水
最新の発表(10)を集計すると、東京ドーム一杯分の容積124万立方メートル(11)を超える127万立方メートルの汚染水が溜まっています。
福島第一の敷地の広さには限界があり、何時かは行き詰るとの見方があります。
福島第一に保管されている汚染水のうち、浄化装置を通しタンクに保管されている汚染水(SR処理水および処理水)の総量は東京電力の発表を集計すると
2019年10月17日時点 1,116,150立方メートル(12)
2020年10月15日時点 1,230,819立方メートル(10)
です。364日間で69,319立方メートル、1日当たり194立方メートル増えています。
行き詰まりを避ける為に、経済産業省は「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」(以下小委員会と略す)を立ち上げ、処分方法の検討を進めていました(13)。
2019年8月9日開催された小委員会で(14)東京電力は2022年夏には、タンクがいっぱいになるとの資料を提出しました(15)。

※1(14)を引用
※2 ALPS処理水は「汚染水」の最終形態(16)
図―2 2022年夏には、タンクがいっぱいになるとの東京電力資料
東京電力は汚染水タンクを136.5万立方メートル(処理水134万、SR処理水2.5万立法メートル)までと主張しています(15)。すると残りは134,181立方メートルです(136.5万―1,230,819)。すると705日後(134,181÷190)の2022年夏の終わり頃に汚染水タンクがいっぱいになり、以後は汚染水を汲み上げることができなくなります。
2018年8月に公聴会を開いたら、汚染水の環境放出に反対する意見が続出しました(17)。いくつかの論点がありましたが、第一にトリチウムです。以下に福島第一汚染水のトリチウム濃度を示します。

※(18)(19)にて作成
図―3 福島第一汚染水のトリチウム濃度
図に示す様に最新では1リットル当たり100万ベクレル程度です。国の排水基準は1リットル当たり6万ベクレルですので(20)、20倍弱です。全ての「汚染水」は基準超です。
東京電力は浄化装置(ALPS)で、62種の放射性物質は取り除けるとしていますが、トリチウムは取り除けないのしています(21)。汚染水を環境に放出するばいには、基準超のトリチウムに汚染された「汚染水」由来のものを環境中に放出する事になります。当然、リスクが懸念されます(22)。
第二に、東京電力ができると言っていた浄化もできていいなことです。東京電力は62種の放射性物質は取り除けると主張していました(21)。ところが、これも環境中に放出する際の基準を超えていることが判明しました(23)。これについて東京電力は、「汚染水」の最終形態のALPS処理水のうち72%が基準を超えており、環境放出前には再度の処理をして、基準値以下にしてから環境放出すると発表しました(24)。そして10月に、東京電力は再浄化試験の速報値を発表しました。この中にはトリチウムの分析結果は含まれていません(25)。
昨年12月23日に開かれた小委員会で、「海洋放出」、「大気放出」または両者の併用の3案に絞り込みました(26)。その後、今年4月16日より7月31日まで意見募集が行われました。当初は5月11日に終える予定でしたが、3回延長されました(27)。そして、寄せられた意見の結果が10月23日に発表になりました。寄せられた4,011件のなかで、汚染水の安全性への懸念が約2,700件、福島忌避の拡大(風評)の懸念が約1,000件、合意プロセスへの懸念が約1,400件と海洋放出を懸念する意見が5,000件を超えました(28)。

※(29)を10月24日に閲覧
図―4 「海洋放出懸念 最多5000件超」と報じる福島県の地方紙・福島民報
10月27日に決定が予定されていた菅政権による福島第一汚染水の福島第一原発からの海洋放出決定されるはずでしが延期になると発表されました(1)。これについて福島の読売系テレビ局FCT(2)は「福島第一原発処理水問題 政府決定を
先送り」と「先送り」と報じていました。

※(3)を引用
図―5 「福島第一原発処理水問題 政府決定を先送り」と報じる福島のローカルTV局・FCT
<余談>
図表が小さいとご不満の方は、画像をクリックしてください。
1955年(昭和30年)12月19日に原子力基本法が成立し、原子力利用の大綱が定められました。そして基本法成立を受けて1956年1月1日に原子力委員会が設置されました。初代の委員長は読売新聞社社主でもあった正力松太郎です。正力は翌1957年4月29日に原子力平和利用懇談会を立ち上げ、さらに同年5月19日に発足した科学技術庁の初代長官となり、原子力平和利用博覧会の開催や、読売新聞や系列のメディアを駆使し、原子力の日本への導入に大きな影響力を発揮しました。このことから、正力は日本の「原子力の父」とも呼ばれています(30)。読売系メディアは原子力ムラの係わっています。そして系列のFCTは、「福島第一原発処理水問題 政府決定を
先送り」と「見送り」でなく(1)「先送り」と報じました。まるで早々に決定しなければならないこと、先延ばししたような表現です。
多くの原発でトリチウムを放出していますが(31)、通常の原発から放出されるトリチウムは、水が中性子を吸収してできたものであるのに対し(32)、福島第一原発のトリチウムは核分裂によってできたものです(33)。トリチウム以外に核分裂に関連した放射性物質が混じります。東京電力は62種類は取り除けるといっています(21)。ただし、操作を適切にしないと62種類の中にある放射性物質は残ります(22)。さらにいえば62種類以外の放射性物質は取り除けません。たとえばウランは取り除ける62種類の中に入っていません(21)。東京電力は飲んでも大丈夫と主張していましが、食べても大丈夫をは言っていません(33)。危険性を指摘する方がいます(22)。(=^・^=)はリファレス(34)に示す通り「安全」とは思えません。
そして菅総理では、「安全」を国民に説明することは困難です。モリ、カケ、サクラでは説明責任を果たしていません(35)。学問に介入するので(36)、彼の内閣が依頼した専門家がいくら安全といっても「御用学者」と思われるだけだけです。菅総理は福島を避ける行為を「風評被害」と主張しています(37)。でも、福島の皆様は信用していません。
福島県いわき産米の全量全袋検査は約44万件です(38)。同市の人口は約34万人なので(39)、とりあえず市民が食べるには充分な量です。同市のお米は「Iwaki Laiki(いわきライキ)」といっておいしいお米です(40)。福島県は福島産は安全だと主張しています(41)。でも、福島県いわき市のスーパーのチラシに福島産米はありません。

※(42)を引用
図―6 福島産米が無い福島県いわき市のスーパーのチラシ
(=^・^=)も福島県いわき市の皆さまを見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にさせて頂いたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
福島第1処理水 政府、月内の方針決定見送りへ 風評対策具体化に時間 | 河北新報オンラインニュース(2)
福島中央テレビ - Wikipedia(3)
ニュース|福島中央テレビ(4)
多核種除去設備 (ALPS)|東京電力(5)
汚染水対策の状況 - 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社(6)
福島第1処理水の処分、海洋・大気放出に絞る 経産省案 :日本経済新聞(7)
【風評被害】【トリチウム水】リスク高い処理水海洋放出|月刊 政経東北|note(8)
プレスリリース|リリース・お知らせ一覧|東京電力ホールディングス株式会社中の「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について」
(9)
福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について - 廃炉プロジェクト|公表資料|東京電力ホールディングス株式会社(10)
2020年のアーカイブ|公表資料|東京電力ホールディングス株式会社⇒10月⇒
19日(11)
東京ドーム (単位) - Wikipedia(12)
2019年のアーカイブ|公表資料|東京電力ホールディングス株式会社⇒10月⇒
21日(13)
福島第一原子力発電所における汚染水対策 (METI/経済産業省)(14)
多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第13回)‐配布資料(METI/経済産業省)(15)(14)中の
多核種除去設備等処理水の貯留の見通し(16)
汚染水の浄化処理 - 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社(17)
多核種除去設備等処理水の取扱いに係る説明・公聴会 (METI/経済産業省)(18)
福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果|アーカイブ|東京電力中の「水処理設備の分析結果⇒水処理設備の放射能濃度測定結果 」
(19)
福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果アーカイブ|データ|東京電力ホールディングス株式会社の「水処理設備の分析結果」
(20)
周辺の分析結果ー分析結果 - 廃炉プロジェクト|データ|東京電力ホールディングス株式会社(21)
多核種除去設備 (ALPS)|東京電力(22)
DNAの中にまで入り込むトリチウムの特別な危険性(23)
ALPS処理水、ヨウ素129などトリチウム以外核種の残留~「説明・公聴会」の前提は崩れた | FoE Japa(24)
2020年3月24日 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書を受けた当社の検討素案について(2.48MB)(25)
福島第一原子力発電所 多核種除去設備等処理水の二次処理性能確認試験結果(速報) (320KB)(26)
>多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書について(METI/経済産業省)(27)
パブリックコメント:意見募集中案件詳細|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ(28)
>第一原発処理水 海洋放出懸念最多5000件超 政府意見公募 | 福島民報(29)
福島民報社(30)
日本の原子力政策 - Wikipedia(31)
<参考資料>トリチウム 日本の発電用原子炉トリチウム放出量 (2002年~2011年度)(32)
トリチウムについて(33)
福島第一原子力発電所でのトリチウムについて 平成 ... - 東京電力(34)
めげ猫「タマ」の日記 トリチウムは危険・安全?(35)
>負の遺産「モリカケ桜」菅氏は「解明不要」 石破、岸田氏との違い鮮明:東京新聞 TOKYO Web(36)
官房長官に国会出席要求 野党「学問への介入」 :日本経済新聞(37)
就任後初 菅首相福島へ “風評払拭”生徒と懇談(38)
ふくしまの恵み(39)
福島県の推計人口(令和2年9月1日現在)を掲載しました。 - 福島県ホームページ(40)
ふくしま県!いわき市の米作りとフラガール! | ごはん彩々(全米販)(41)
福島県の食の安全の動画について - 福島県ホームページ(42)
マルト 岡小名店のチラシ・特売情報 | トクバイ
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- 2020/10/24(土) 19:42:27|
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私が総理大臣だったら、絶対に貯めた汚染水は海洋放出させない。
だって、世界史に悪名が残るもの。
理由は、自己中でも次の世代のためでも地球環境のためでも。
どの理由を選んでも、海に放射能の汚れた水を捨てるなんて、絶対しないよな。
- 2020/10/25(日) 13:07:59 |
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