福島第一原発の汚染水処分について、東京電力はこれまで汚染水タンクが満杯になるは来年夏としてきましたが、1月28日の会見で「来秋以降」と記者の質問に答えました(1)。でも、(=^・^=)なりに計算すると再来年です。
福島第一では山から流れて来た地下水の一部が、原子炉やタービン建屋(以下建屋と略す)に流入しています。原子炉建屋にデブリ等がむき出しで放置されています。デブリ等に触れた水は放射能に汚染されます(2)。浄化装置で全ての放射性物質が浄化できる訳ではありません。東京電力はトリチウムは浄化できないとしています(3)。どう見ても汚染水なのですが、何故か「処理水」(4)とか、「トリチウム水」(5)呼ばれることが多くなっています。以下に福島第一汚染水のトリチウム濃度を示します。

※(6)(7)にて作成
図―1 福島第一汚染水のトリチウム濃度
図に示す様に最新では1リットル当たり100万ベクレル前後で推移しています。国の排水基準は1リットル当たり6万ベクレルですので(8)、20倍弱です。このままでは、海に流せないので東京電力は福島第一構内に汚染水タンクを作り保管しています。

※(9)(10)を集計
図―2 どんどん増える福島第一汚染水
最新の発表(11)を集計すると、東京ドーム一杯分の容積124万立方メートル(12)を超える127万立方メートルの汚染水が溜まっています。
福島第一の敷地の広さには限界があり、何時かは行き詰るとの見方があります。
福島第一に保管されている汚染水の総量は東京電力の発表を集計すると
2020年1月2日時点 1,228,059立方メートル(14)
2020年12月31日時点 1,271,872立方メートル(15)
です。364日間で43,813立方メートル、1日当たり120立方メートル増えています。
行き詰まりを避ける為に、経済産業省は「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」(以下小委員会と略す)を立ち上げ、処分方法の検討を進めていました(16)。
2018年8月に公聴会を開いたら、汚染水の環境放出に反対する意見が続出しました(17)。
2019年8月9日開催された小委員会で(18)東京電力は2022年夏には、タンクがいっぱいになるとの資料を提出しました(19)。

※1(19)を引用
※2 ALPS処理水は「汚染水」の最終形態(20)
図―3 2022年夏には、タンクがいっぱいになるとの東京電力資料
東京電力は汚染水タンクを136.5万立方メートル(処理水34万、SR処理水2.5万立法メートル)まで増設できると主張しています。最新の発表(1月21日時点)で処理水とSR処理水の合計は1,230,731立方メートルです。すると残りは139,437立方メートルです(136.5万―1,230,731)(19)。すでに記載の通り、昨年(2020年)の実績として1日当たりの汚染水の増加量は120立方メートルです。1,032日後(139,437÷120)の2023年11月頃にに汚染水タンクがいっぱいになり、以後は汚染水を汲み上げることができなくなります。
2019年12月23日に開かれた小委員会で、「海洋放出」、「大気放出」または両者の併用の3案に絞り込みました(21)。小委員会は公聴会で反対が多かった「環境放出」を選びました。
そして昨年4月に入り、福島県で国は福島で処分方法について意見を聞く会を開いました。公聴会と異なり「危険性」を述べる意見はでませんでしたが、放出先の産品を避ける「風評被害」を懸念する意見がでました。また、汚染水の環境放出に対する意見募集が行われました。4月6日からですが、締め切りは7月31日です(22)。期限が3回延長されました(23)。意見募集では多くの反対意見がでました(24)。これは福島県の地方紙・福島民報の今年の十大ニュースにも選ばれました(25)。それだけ、福島の皆様の関心が高い問題だと思います。
菅総理は昨年9月26日に福島第一原発を訪れ、そこで「できるだけ早く政府として責任もって処分方針を決めたい」と言っています。また、就任前の自民党総裁選の際には「最終的判断をもうする時期だ」との認識を示しています。直ぐも決定されそうな雰囲気でした(26)。 少なくとも、昨年の10月位までは「2020年内」に決定する見られていました(27)。菅総理福島訪問4ヵ月ですが、今のところ決定は出されていません。
一方で、全国漁業協同組合連合会(全漁連)は昨年6月23日、通常総会を開き、東京電力福島第1原子力発電所で増え続ける処理水に関し「海洋放出に断固反対する」との特別決議を全会一致で採択しました。新型コロナウイルスの感染拡大防止に国民が努力し続ける中で一部関係者が方針決定への議論を進めているとして「強い不信と憤りを禁じ得ない」と表明。海洋放出で今以上に風評被害が広がることを懸念し「わが国の漁業の将来に壊滅的な影響を与えかねない重大な問題だ」と強調しました(28)。
汚染水の環境中への放出を実現するには、実効性のある「風評被害」対策が不可欠です(29)。事故10年目ですが「風評被害」対策はうまくいっていません。以下に福島を代表する果物であるモモ(30)価格の推移を示します。

※(31)を集計
図―4 山梨・福島のモモ価格
山梨がモモの最大産地ですが(32)、福島のモモは事故後に山梨産くらべ安くなり今も回復しません。菅総理は「風評被害」と呼んでいますが(33)、汚染された地や汚染水が流された海の産物をさけるのは当然のことです。「風評」が原因でなく「汚染」が原因で避けられています。汚染水を海洋放出するには、有効な風評被害対策がもとめられますが(29)、そのような対策はありません。
東京電力は1月28日の会見で2020年の汚染水の増加量を1日当たりで140立方メートルと発表しました(34)。そして汚染水タンクが満杯になる時期を「来秋以降」と記者の質問に答えました(1)。でも、東京電力の発表(35)を分析すると汚染水の増加量は1日当たり120立方メートルであり、タンクが満杯になる時期は2023年11月頃です。東京電力は実際以上に状況を悪く発表しています。
海洋放出の準備には2年かかるそうです(36)。あと1年は先送りできます。衆議院の任期は来年10月21日までです(37)。それまでには総選挙があります。風評被害対策の目途が立たない現状では、汚染水の海洋放出は評判がよくありません(38)。評判が悪い施策を選挙前に決定することはないと思います。一方で、東京電力は政府に早く海洋放出を決定して欲しいようです(39)。
<余談>
図表が小さいとご不満の方は、画像をクリックしてください。
(=^・^=)はトリチウムを「安全」とは考えていません(40)。そして、「安全」のはずのものが実際は危険であった例は過去にいくらでもあります。
昔は福島県であったに新潟県鹿瀬町(現阿賀町)(41)の昭和電工が水銀を含む排水を川に流し、水銀中毒を発生させました。昭和電工は「農薬の水銀」が原因として、自社の瑕疵を認めませでした(42)。公害病では原因者はなかなか瑕疵を認めません(43)。
事故前、東京電力は原発内の放射能は5重の壁に守られており、外に漏れることはないと喧伝していました(44)。事故が起こると、放射能が漏れたのは「想定外の津波」為とし(45)、今もって福島事故については「加害者」でなく「当事者」を主張し、責任のがれをしています。
菅政権は福島の放射能についても「安全」を主張し続けるはずです。放射線の影響は広島や長崎の調査で得られたものです(46)。広島や長崎で見られなかった女の子が多く生まれる出生異常が福島で起きています(47)。広島・長崎のデータを元に福島を「安全」と主張するのは非科学的です。
福島の冬を代表するくだものにイチゴがあります(48)。福島県棚倉町もイチゴの産地です(49)。福島県は福島産は「安全」だと主張しています(50)。でも、福島県棚倉町のスーパーのチラシには福島産イチゴはありません。

※(51)を引用
図―5 福島産イチゴが無い福島県棚倉町のスーパーのチラシ
(=^・^=)も福島県棚倉町の皆様を見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にさせて頂いたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
動画アーカイブ|写真・映像ライブラリー|東京電力ホールディングス株式会社(2)
多核種除去設備 (ALPS)|東京電力(3)
汚染水対策の状況 - 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社(4)
第一原発処理水、タンク満杯「来秋以降」 東電、発生量低減で先延ばし | 福島民報(5)
【風評被害】【トリチウム水】リスク高い処理水海洋放出|月刊 政経東北|note(6)
福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果|アーカイブ|東京電力中の「水処理設備の分析結果⇒水処理設備の放射能濃度測定結果 」
(7)
福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果アーカイブ|データ|東京電力ホールディングス株式会社の「水処理設備の分析結果」
(8)
周辺の分析結果ー分析結果 - 廃炉プロジェクト|データ|東京電力ホールディングス株式会社(9)
プレスリリース|リリース・お知らせ一覧|東京電力ホールディングス株式会社中の「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について」
(10)
福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について - 廃炉プロジェクト|公表資料|東京電力ホールディングス株式会社
(11)2021年のアーカイブ|公表資料|東京電力ホールディングス株式会社⇒1月
(12)(11)⇒
25日(13)
東京ドーム (単位) - Wikipedia(14)
2020年のアーカイブ|公表資料|東京電力ホールディングス株式会社⇒1月⇒
9日(15)(11)⇒
7日(16)
福島第一原子力発電所における汚染水対策 (METI/経済産業省)(17)
多核種除去設備等処理水の取扱いに係る説明・公聴会 (METI/経済産業省)(18)
多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第13回)‐配布資料(METI/経済産業省)(19)(18)中の
多核種除去設備等処理水の貯留の見通し(20)
汚染水の浄化処理 - 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社(21)
多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第16回)‐配布資料(METI/経済産業省)⇒
資料4 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 取りまとめ(案)(PDF形式:2,109KB)(22)
多核種除去設備等処理水の取扱いに係る関係者の御意見を伺う場 及び 書面による御意見の募集について(METI/経済産業省)(23)
7月末までに、3度目の延長 福島第一原発の処理水処分で意見募集:東京新聞 TOKYO Web(24)
資料1 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する御意見(25)
1位「エール」、2位は中合福島店閉店 読者が選ぶ福島県内十大ニュース | 福島民報(26)
菅首相が福島初訪問 汚染水処分「できるだけ早く方針」:朝日新聞デジタル(27)
福島第1原発の処理水処分、年内に一本化 海洋放出を軸に政府調整 | 河北新報オンラインニュース(28)
「海洋放出に断固反対」 原発処理水で全漁連決議 :日本経済新聞(29)
【風評の深層・処理水の行方】処理水放出...リスクのしかかる漁師:風評の深層:福島民友新聞社 みんゆうNet(30)
モモ – くだもの消費拡大委員会(31)
東京都中央卸売市場-統計情報検索各年7月について、大分類⇒果実、中分類⇒もも類で検索
(32)
もも(モモ・桃)の都道府県別生産量(収穫量)/グラフ/地図/一覧表|統(33)
就任後初 菅首相福島へ “風評払拭”生徒と懇談 2020/09/26 FNNプライムオンライン(34)
>2021年のアーカイブ - 廃炉プロジェクト|公表資料|東京電力ホールディングス株式会社⇒2021年1月28日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第86回事務局会議)⇒
【資料2】中長期ロードマップの進捗状況(概要版)(4.69MB)(35)
福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について - 廃炉プロジェクト|公表資料|東京電力ホールディングス株式会社(36)
福島第一原発の処理水、海洋放出へ 政府が最終調整:朝日新聞デジタル(37)
解散、菅首相に三つの選択肢 「年内」見送りの公算:時事ドットコム(38)
福島第一の処理水、海放出「反対」57% 県民世論調査:朝日新聞デジタル(39)
福島第1原発処理水 東電がタンク増設検討 政府の方針決定遅れで | 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS(40)
>めげ猫「タマ」の日記 トリチウムは危険・安全?(41)
>東蒲原郡 - Wikipedia(42)
第二水俣病 - Wikipedia(43)
公害病 - Wikipedia(44)
スライド タイトルなし - 東京電力(45)
今回の津波は、それまでの知見では想定できない大規模なものでした|東京電力(46)
研究について – 公益財団法人 放射線影響研究所 RERF(47)
めげ猫「タマ」の日記 2020年も女の子が多く生まれる避難指示解除の葛尾村(48)
冬 | ふくしまの果物 | JA全農福島(49)
>私たちのいちご|いちご家族(50)
福島県の食の安全の動画について - 福島県ホームページ(51)
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