中央リニア新幹線の静岡県区間の工事を静岡県が許可せず工事が止まっており、開業時期が不透明になっています(1)。JR東海は下流のダムから山梨県に流している水を静岡県側に戻す提案を行いましたが不評のようです(2)。
中央リニア新幹線は品川駅から新大阪駅を超電導リニアで結ぶ新幹線です。このうち品川ー名古屋間285.6kmの工事が進められています。完成すれば品川ー名古屋間の所要時間が40分とされています(3)。

※(4)を引用
図ー1 中央リニア新幹線の路線
同線は図に示すように東京都、神奈川県、山梨県、静岡県、岐阜県、愛知県を経由しますが、静岡県にだけ駅ができません(3)。一方で、静岡県はトンネルを掘ると、トンネルを伝わって水が流れ出し、大井川の水量が減り、渇水が起こる危険性を指摘し(5)、中央新幹線の静岡県内での工事を認めていません(3)。
静岡県庁は「のぞみ通過」に不快感を示しており、2002年(平成14年)12月9日に静岡県知事石川嘉延は、静岡県議会の本会議で「県内素通りの『のぞみ号』に対して通行税を取る」と発言しました。この発言を受けて、2002年12月27日に同県交通政策室の幹部が「臨時列車を除いた東海道新幹線の停車本数は、静岡駅で101本、浜松駅で81本であり、東北新幹線は宇都宮駅で106本、郡山駅で94本、山陽新幹線は岡山駅で229本、広島駅で199本、姫路駅で127本であり、人口60万人(2002年当時)の浜松市なのに、(同市と比較して約6割の人口である)人口34万人の郡山市より本数が少ない」と発言しました(6)。JR東海にも言い分はあると思いますが、静岡県が新幹線の停車本数に不満があるのは事実です。
中央新幹線ができても静岡県に明確なメリットがありません。2027年の開業予定ですが、困難な状況です(2)。。
東京電力は、送配電区域を超えた地域から水をくみ出し、水力発電を行っている会社です。本来は福島県に流れるはずの尾瀬沼から、群馬県の片品川に水路を引き、下流で水力発電を行っています(7)。新潟県では清津川から水を取水し、これを魚野川に流し発電をしています。そして水騒動を起きています(8)。静岡県では大井川に田代ダムを運営し、水を抜き取り山梨県の発電所で発電しています。このため、ここでも水騒動を起こしています(9)。誰だって他人(首都圏など)の電気のために「水」を抜き取られては不快になります。=^_^=の感覚では東電ならぬ「盗電」です。以下に田代ダムの位置を示します。

※(4)(10)
図ー2 中央リニアルートと田代ダム
図に示すように直ぐ北は中央リニア・南アルプストンネル予定地です。そこでJR東海はJR東海は大井川最上流部から富士川に水を流している東京電力田代ダムの取水を抑制し、大井川に流す案をだしました(2)。JR東海の推計によれば工事期間中に流出する湧水(ゆうすい)の総量を500万トンです(11)。これが1年間で流れ出るとすると、1日当たり13,699トン(500万÷365)、毎秒0.16トン(3,699トン÷3600÷24)です。田代ダムの水は地図で見ると田代川第二発電所に送られています。最大流用は毎秒5,34トンです。有効落差500m、6,200kWです(12)。有効落差:H〔m〕、水の流量Q、水車、発電機の効率をηt、ηgとすると、水力発電所の出力P〔kW〕は
P=9.8QHηtηg〔kW〕
になります(13)。すなわち流量Qは
Q=(P÷9.8QHηtηg)
になります。効率を1として、流用は毎秒で
6,2000÷9.8÷500=1.3トン
になります。流用を1割程度を発電所に送らず大井川に流せば実現可能です。大井川に中部電力の水力発電所が多くあります(14)。でも、中央リニア工事で水が無くなれば、発電が止まります。でも、クレームを出した様子はありません。
リニア工事で減少するかも知れない大井川の流用は田代ダムの放水量を調整することで、補えます。でも、静岡県の反応は違います。
「渇水期に田代ダム上流の水が減って、ダムに水がたまらなければ前提が崩れてしまう」
とか
「案としては十分あり得るが、現実性があるのかは別の問題」
との意見がでています(2)。
中央リニアが開通しても静岡県にメリットはありません。さらに工事で500万トンの水を失うのも事実です。メリットがないのにデメリットを負います。JR東海は、静岡県に対し中央リニアが開通したときのメリットを具体的に示し、静岡県の歓心を得ることが問題解決の鍵となるはずです。
中央リニアが開通すれば、名古屋ー東京間の乗客が減ります。その分だけ静岡県内に停車しない「のぞみ」(6)の運行本数が減り、空きができます。この空きを静岡県内に停車する「ひかり」や「こだま」の運行に回し、本数を増やすことが可能です。JR東海が中央リニア開業後に増やす本数を明示すれば、静岡県の歓心を得られます。
静岡県内の新幹線の駅は6つです(15)。これは新潟県や岩手県の7駅(16)(17)(18)よりすくなっています。静岡空港は東海道新幹線の真上に作られました(19)。

※(20)を引用
図ー3 静岡空港
静岡県は、空港連絡鉄道として新幹線新駅の実現が求めています(21)。一方でJR東海は
①駅間の距離が短くなりすぎて、新幹線の高速性能を損なうという。
②人家の少ない丘陵地に位置する空港のため、新駅設置で期待される乗客増加効果が少ない
との理由で、できないとしています(21)。地図みると静岡空港に最も近い新幹線・掛川駅から静岡空港まで15kmです。この秋に開業予定の西九州新幹線は全長66kmに5駅あり、4区間です(22)。平均15.6kmです。それでも新幹線として成立します。東海道新幹線はダイヤが過密で今は無理ですが、中央リニア開業すれば余裕ができるので、可能性はあります。また、東北新幹線「いわて沼宮内駅(いわてぬまくないえき)」の乗車人員は2020年度で1日当たり32人です(23)。政治的理由があるかも知れませんが、それでも新幹線の駅として存在します。
中央リニアの静岡県区間の工事が始められていません(1)。中央リニア新幹線が開業すれば、東海道新幹線のダイヤに余裕ができ、静岡県内に停車するひかり、こだまの増発や静岡県内への新駅が可能になります。JR東海が500万トンの水よりも大きなメリットを静岡県に提示できれば、静岡県が工事開始に同意する可能性が高まります。
静岡県はメリットがない以上はノンリスクでない限り、中央リニア工事には同意しないはずです。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。
この問題はJR東海にして見れば、500万トンの水は微量であり静岡県は許容しなければならないと考えている気がします。そして、仮に静岡県にメリットを提示すれば、余計なコストがかかります。自公政権は福島第一汚染水の海洋放出を進めています。根底にはほぼ「安全」であり、許容されるべきもの(24)との考えがあるとはずです。どちらも、ほぼ問題はなから許容すべきとの考えです。でも、住民の利益を第一に考えるなら、メリットがないのにリスクを取れなど無茶苦茶な話です。こんな自公政権では、福島の皆様は不安だと思います。
福島を代表する野菜にキュウリがあります(25)。今年も出荷が始まりました(26)。福島県伊達市は福島の主要なキュウリの産地です(25)。福島のキュウリはみずみずしく、パリットした食感です(27)。福島県は福島産は「安全」だと言っています(28)。でも、福島県伊達市のスーパーのチラシには福島産キュウリはありません。

※(29)を引用
図-4 福島産キュウリが無い福島県伊達市のスーパーのチラシ
(=^・^=)も福島県伊達市の皆様を見らない「フクシマ産」は食べません。
―参考にさせて頂いたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
社説)リニア建設 中断し説明と再検証を:朝日新聞デジタル(2)
田代ダム取水抑制案、JR初提示 専門部会、少雨時水量ただす【大井川とリニア】|あなたの静岡新聞(3)
中央新幹線 - Wikipedia(4)
1.南アルプストンネルの計画概要 - 国土交通省(5)
リニア中央新幹線工事 「大井川の水問題」ってなに?|あなたの静岡新聞(6)
のぞみ (列車) - Wikipedia(7)
片品川 - Wikipedia(8)
東京電力湯沢発電所の水利権問題 - Wikipedia(9)
田代ダム - Wikipedia(10)
地理院地図 / GSI Maps|国土地理院(11)
リニア工事 山梨県側への湧水流出500万トン JR東海、有識者会議で提示へ | 毎日新聞(12)
水力発電所ギャラリー 東京電力リニューアブルパワー田代川第二発電所 - 水力ドットコム(13)
水力発電所の発電方式と運用(電験過去問付) | 音声付き電気技術解説講座 | 公益社団法人 日本電気技術者協会(14)
>大井川 - Wikipedia(15)
東海道新幹線 - Wikipedia(16)
上越新幹線 - Wikipedia(17)
北陸新幹線 - Wikipedia(18)
東北新幹線 - Wikipedia(19)
>静岡空港 - Wikipedia(20)
google map(21)
「新幹線静岡空港駅は不可能」 JR東海社長 - 日本経済新聞(22)
西九州新幹線 - Wikipedia(23)
いわて沼宮内駅 - Wikipedia(24)
社説(3/12):東日本大震災11年 福島/処理水問題 今年が正念場 | 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS(25)
ふくしまイレブンエッセイ - 福島県ホームページ(26)
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福島県 - ふくしまプライド。(28)
福島県の食の安全の動画について - 福島県ホームページ(29)
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- 2022/04/30(土) 20:01:29|
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