福島県地方2紙が、阿武隈高地復興の柱として、同地域の畜産振興を論じていた(1)(2)。だたし、阿武隈高地は福島県県内でも汚染がひどい地域であり、福島産畜産物は原発事故直後の稲わら牛問題が起きています(3)。産業として成立するか疑問です。
福島県は南北方向に3つの3山脈が縦断しています。東から阿武隈高地、奥羽山脈、越後山脈です(4)。以下に示します。

※1(5)(6)にて作成
※2 避難区域・旧避難区域は(7)による
※3 その他は地図による
図-1 汚染がひどい阿武隈高地
阿武隈高地は標高が400~1000m程度と、奥羽山脈や越後山脈に比べ低く(4)、その分だけ山奥まで人が住めます。ただし「阿武隈高地を越えた双方」を結ぶ路線は、鉄道では平と郡山を結ぶ磐越東線1本のみで、本数は少なく複線化もされていません。同じく、中村から福島または白石を結ぶ鉄道は、計画倒れに終わりました(8)。阿武隈高地は交通の便は良くありません。さらに、図に示すように福島原発事故で避難指示が出た区域が広がっています。そして、ICRPが公衆の被ばく限度とする年1ミリシーベルト(9)を超えた地域が広がっています。事故から11年以上ですが染されています。
以下に福島県上位10市町村の牛の飼育頭数を示します。

※(10)を集計
図-2 福島県上位10市町村の牛の飼育頭数
図に示すように1位は郡山市ですが2位は田村市です。そしてそれほどの差ありません。郡山市は人口30万人を超える市ですが、田村市は3万人程度です(11)。その分、田村市の方が畜産が盛んです。7,10位に石川町と平田村がランクインしています。人口は合わせて2万人程度です(11)。この町と村は石川郡に属しています(12)。そこそこ畜産が盛んです。図-1に示すように、田村市も石川郡も阿武隈高地に位置します。阿武隈高地は阿武隈高地は、全体的に牧畜が盛んです(8)。
こうした事を受け、福島県の地方紙・福島民報は「【阿武隈山地の畜産】一大産地に育てよう(6月9日)」との社説で
「阿武隈山地北部の畜産が復活に向けて動き出した。葛尾村は和牛の繁殖から肥育までの一貫生産と増産体制を整えつつあり、飯舘村では『飯舘牛』のブランド再生が始動した。気候や風土を生かした持続可能な産業として期待が高まる」
と論じていました(1)。もう一方の地方紙・福島民友は「【6月12日付社説】葛尾の避難解除/農畜産振興で野行に活力を」との社説で、
「葛尾村はかつて軍馬や競走馬などの産地だった。昭和50年代に肉牛への転換が本格化し、畜産が基幹産業に育った。<中略>村は農畜産業を柱の一つとして復興再生に取り組んできた。来年春の稼働に向け、和牛の繁殖と肥育を担う施設や、大規模酪農施設、水稲育苗施設などの整備が各地区で進められている。」
と論じていました(2)。葛尾村は阿武隈高原に位置する村です(12)。両紙とも、避難指示解除区域を含め、畜産を阿武隈高原の基幹産業に育てるような主張です。
原発事故後に福島は稲わら牛問題を起こしました(3)。以下に2011年の福島産牛肉の検査結果を示します。
以下に2011年の福島産牛肉の検査結果を示します。

※1(14)を集計
※2 NDは検出限界未満を示す
※3 日付は牛さんがお肉になった日
※4 福島県の検査は出荷前検査で福島県農業総合センターが実施
図―3 福島産牛肉の検査結果
図に示す通り福島県の検査では見つからないのに「消費地」の検査では当時の暫定基準の1キログラム当たり500ベクレル(9)を大きく超えるセシウムに汚染された牛肉が見つかりました。不思議な事に福島県の出荷前検査では、基準超(当時)は見つからないのに、消費地(福島県外)の検査で多くの基準超が見つかっています。福島県の検査がいい加減としか言いようがありません。
その状況は今も変わっていません。以下に海産魚の検査結果を示します。

※1(14)(15)を集計
※2 NDは検出限界未満(見つからない事)を示す。
※3 日付けは採取日
図―4 海産魚の検査結果
図に示すように北海道から神奈川県まで広い範囲でセシウム入り海産魚が見つかっています。一方で福島県が検査した福島産海産魚からは見つかっていません。海は繋がっています。他では見つかっているのに、汚染源がある福島産から見つからないなどはおかしな話です。
福島産牛肉は稲わら牛問題で信用を失い舞いました。以下に福島産と全国平均の牛肉価格を示します。

※(16)を集計
図-5 牛肉価格
図に示すように福島産牛肉は事故後に全国平均に比べ安くなりました。以下に全国平均に対する福島産牛肉価格の下げ幅を示します。

※(16)を集計
図-5 福島産牛肉の価格差
福島産牛肉は今も全国平均に比べ10%程度の安値で取引されています。福島のセシウムが一桁下がるには100年かかります(17)。福島の牛肉の安値はこれらも続きます。畜産を阿武隈高原の基幹産業にするには無理です。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。
福島民報の社説を
「高品質・高付加価値の畜産が軌道に乗れば、産業基盤が安定するだけでなく、阿武隈山地のイメージ向上につながる。行政、農畜産団体などが枠組みを超えた広域的な推進体制をつくり、流通・消費、観光振興を含む地域戦略を描いてはどうか。」
と結んでいます(1)。これには阿武隈産牛肉のブランド化が必要です。2016年頃から石川郡産牛肉を「いしかわ牛」としてブランド化する動きがありました(18)。でも、旨く行っていません。
図-2に示すように平田村は石川郡2位の牛が飼育されています。福島県は福島産は安全だと主張sています(19)。でも、福島県石川郡平田村のスーパーのチラシに福島産牛肉はありません。

※(20)を引用
図-21 福島産牛肉が無い福島県平田村のスーパーのチラシ
(=^・^=)も福島県平田村の皆さまを見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にさせて頂いたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
【阿武隈山地の畜産】一大産地に育てよう(6月9日) | 福島民報(2)
【6月12日付社説】葛尾の避難解除/農畜産振興で野行に活力を:社説:福島民友新聞社 みんゆうNet(3)
セシウム汚染疑い牛、新たに福島で411頭 - 日本経済新聞(4)
福島県 - Wikipedia(5)
航空機モニタリングによる空間線量率の測定結果 | 原子力規制委員会⇒
福島県及びその近隣県における航空機モニタリング(令和2年8月25日~10月30日測定)(6)
第13回原子力規制委員会 | 原子力規制委員会⇒
資料1 帰還困難区域の放射線防護対策について(特定復興再生拠点区域外における土地活用関連)【PDF:440KB(7)
避難区域の変遷について-解説- - 福島県ホームページ(8)
阿武隈高地 - Wikipedia(9)
ICRP勧告(1990年)による個人の線量限度の考え (09-04-01-08) - ATOMICA -(10)
届出情報の統計-目的別索引-牛の個体識別情報検索サービス⇒【令和3年11月26日公表】⇒飼養頭数 牛の種別 市区町村別 令和3年9月末時点⇒Excel(294KB)
(11)
石川郡 - Wikipedia(12)
福島県の推計人口(令和4年5月1日現在)を掲載しました。 - 福島県ホームページ(13)
葛尾村 - Wikipedia(14)
報道発表資料 |厚生労働省(15)
農林水産物の緊急時環境放射線モニタリング結果【詳細】 - 福島県ホームページ(16)
東京都中央卸売市場-統計情報検索(17)
半減期 - Wikipedia(18)
いしかわ牛特集 - JA夢みなみ(19)
福島県の食の安全の動画について - 福島県ホームページ(20)
鎌倉屋 平田店のチラシ・特売情報 | トクバイ
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- 2022/06/17(金) 20:19:40|
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