1978年に西九州新幹線は放射能漏れを起こした原子力船「むつ」の修理を長崎県が引き受けることの見返りに、優先着工が決まりました(1)。そして、今日(9月23)開業しましまた(2)。ただし、開業するのは僅かに66kmでしかも他の新幹線とは繋がっておらず(3)、あまり時間短縮効果がありません。
新幹線は、JR各社が運営している日本の高速鉄道です。1964年に東海道新幹線(東京‐新大阪間)が開業しました。その後に次々と延長されていきました。

※(4)等で作成
図-1 どんどん伸びる新幹線
西九州新幹線が開業した事により今日からはフル規格延長は 2,830.6 kmです(4)。
新幹線の路線(4)を見ると、県内に新幹線の駅はあるのに県庁所在地に新幹線駅が無いが2県あります。群馬県と佐賀県です。群馬には高崎駅、上毛高原駅(5)、安中榛名駅(6)の3つの新幹線駅がありますが、県庁所在地の前橋市内にはありません。佐賀県は新鳥栖駅がありましが(7)、県庁所在地の佐賀市内には新幹線の駅はありません。ただ、高崎市と前橋市は近くにあり、時刻表でみると高崎駅(高崎市)と前橋駅(前橋市)は鉄道で14分程度です。そんなわけで新幹線の前橋伸長などとの動きは(=^・^=)が調べた限りありません。群馬県の皆様は県庁所在地の前橋に新幹線を伸長する必要は無いと考えています。佐賀市も鳥栖市の近くにあり、時刻表でみると新鳥栖駅(鳥栖市)と佐賀駅(佐賀市)は鉄道で14分程度です。佐賀県にとって、これ以上の新幹線は不要な存在です。ところが、九州新幹線から分岐し、佐賀県を経由し長崎県に至る九州新幹線・西九州ルート(長崎新幹線)計画があります。佐賀県にとっては迷惑な話だと思います。新幹線ができると地方に負担が生じます。ひとつは建設費の負担です。整備新幹線では建設費の一部をその距離に応じて負担することになります(8)。ふたつめは並行在来線です。新幹線ができると、これまであった在来線はJRから切り離されます(9)。西九州新幹線ができと鳥栖‐諫早間が並行在来線の対象になります(10)。佐賀県区間の鳥栖‐肥前大浦駅間は75.6kmですが、長崎県区間の肥前大浦駅‐諫早間は24.8kmです(11)。そんなわけで佐賀県は西九州新幹線開業のデメリットを主張しています(12)。

※(12)を引用
図-2 西九州新幹線開業のデメリットを主張する佐賀県
長崎県は、西九州新幹線が全線で開通すると博多‐長崎間が現行の1時間50分から51分になるとしています(13)。九州新幹線・西九州ルートは佐賀県に負担で長崎県がメリットを享受する新幹線です。なお、北海道には新幹線駅がありますが、札幌には今はありません。でも、札幌までの新幹線工事が進められています(14)。
多分、西九州新幹線が現行のルートでなく、長崎本線に平行するルートなら、佐賀県の怒りは押されら思います。それでも、自民党政権は長崎県だけにメリットのあるルートを選択しました。
原子力は今は発電でしか使われていませんが、従前には原子力を動力とする「原子力船」が作られました。船名を「むつ」と言います。「むつ」は1974年8月28日に原子炉が臨海に達しました。ところが同年9月1日に、設計ミスが原因の放射能漏れが見つかりました。そして1976年に長崎県佐世保市に修理の受け入れを要請しました。長崎県や佐世保市の修理受け入れの見返りとして、整備新幹線の西九州ルートの優先着工を求めました。これに応じ、優先着工する旨の文書に政権与党である自由民主党の大平正芳幹事長、中曽根康弘総務会長、江崎真澄政調会長が連名で署名し長崎県に渡しました(むつ念書)。原本は長崎県庁で保管されているます。1978年10月に佐世保港に入港し修理が始まりました(1)。
長崎県や佐世保市はむつの修理受け入れと引き換えに新幹線の乗り入れを政権与党に約束させました。そして、1985年に国鉄は佐世保駅から8.9km(14)離れた早岐駅(はいきえき)経由の博多 - 長崎間のルートを公表しました(8)。以下に位置関係を示します。

※(7)に加筆
図-3 長崎本線、大村線、早岐駅
早岐駅は、佐世保線と大村線の分岐駅です(15)。西九州新幹線は、長崎本線に沿って建設されるのでなく、諫早駅を経由し佐世保線、大村線に沿って建設されることになりました。諫早駅は佐世保市内にあり、これでむつの修理を引き受けた佐世保市に新幹線の駅ができることになりました。
ところが、1987年に国鉄が解体され、九州の鉄道を引く次ぐJR九州が発足しました。JR九州は国鉄とは違い民間会社です(17)。1987年(昭和62年)、JR九州は「早岐経由では、全額公的負担で整備しても収支改善効果は現れない」との意見表明を行いました(8)。新幹線の建設にはJRの同意が必要です(17)。これで「早岐」経由は無くなりました。ただし、佐世保駅から31.1kmの「武雄温泉駅」に停車します(3)。東北新幹線は、1982年の開業時には大宮止まりでした。大宮-東京間は在来線で30.3kmほぼ同じです(18)。開業時はリレー号で結んでいました(19)。同様に武雄温泉-佐世保間をリレー号で結ぶことができます。
鉄道の鉄道の線路を構成する左右の軌条(レール)の間隔を軌間と言います(20)。新幹線と新幹線ができる前からあった鉄道(在来線)(21)では、軌間が違います。在来線の軌間は概ね狭軌(1,067mm)ですが、新幹線は標準軌 (1,435mm) を用です。このため在来線‐新幹線間の直通運転はできません(4)。武雄温泉 - 長崎間の暫定整備計画を決定しました(7)。ただし、図-3に示す様にこの区間は、他の新幹線と接続していません。そこで軌道は在来線と同じ軌間の1,067 mm(狭軌)として建設するスーパー特急方式(22)での計画決定となりました(8)。ただ、佐賀県との調整は手間取ったようです。図―1に示す様に長崎本線肥前鹿島駅(佐賀県鹿島市)は、新幹線開通で今は停車している特急が無くなり(23)、しかも並行在来線化されます(3)。一方で今は特急が走っていない長崎県大村市には新幹線の駅ができます(3)(24)。しかも同市を走る大村線は並行在来線化されません(3)。負担は佐賀県に利益は長崎県との構図になっています。それでも2007年に佐賀県、長崎県、JR九州の三者は、
JR九州は肥前山口駅 - 諫早駅の全区間を経営分離せず、上下分離方式により新幹線開業後20年間運行を維持する。
JR九州は線路等の設備の修繕を行った上で、佐賀県・長崎県に14億円で資産譲渡を行う。
という合意に達した、工事が始まりました(8)。
標準軌(1,435 mm)と狭軌(1,067 mm)の両方の線路上を走行可能なフリーゲージトレイン(FGT)の開発が1994年より始まりました。そして1999年に山陰本線(米子 - 安来)で走行試験が行われました。さらに、2009年には九州新幹線内で実験が行われました(25)。そして、FGTを前提として2012年に標準軌での建設するフル規格(26)に変更されました。多分、新鳥栖までと、武雄温泉 - 長崎間は新幹線を走り、新鳥栖‐武雄温泉を在来線を走る計画です。ところが2017年、JR九州は、「フリーゲージトレインによる運営は困難」だとして、長崎新幹線へのフリーゲージトレイン導入を断念すると発表し、博多 - 長崎間の全線フル規格での整備を求める考えも示しました。これを受けて、当面は武雄温泉駅での対面乗り換えが決定しました。そしておおよそ1年後の2022年秋に武雄温泉 - 長崎間、在来線特急との対面乗り換え方式で開業がきまりました(7)。
対面乗り換えは2004年から11年の7年間、新八代駅で行われた実績があります。ただし、新八代から終着の鹿児島中央までは125.8kmあります。駅は5駅(26)、4区間で駅の間隔は31.5km(125.8÷4)です。一方で、西九州新幹線は66kmで、駅は同じく5駅(10)4区間で駅の間隔は16.5km(66.8÷4)です。総延長も駅間隔も半分になっています。距離が短いので、時間短縮の効果はあまりありません。しかも駅間隔が短いので、日本一の遅い新幹線になりました。
以下に新幹線の平均速度を示します。
表-1 新幹線の平均速度
※1 速度は平均速度で単位は(km/h)、実距離÷平均所要時間で算出
※2 実距離は(11)のリンク先で確認
※3 平均所要時間は、速達タイプの起点から終点までの所要時間の平均
※4 山形新幹線は東京-山形間を、他は起点から終点までを走行する列車のみを集計対象とした。
※5 上越、北陸、秋田、山形の起点は東京とした。
※6 東海道、山陽はひかり、こだま、さくら、つばめ、九州はつばめ、北陸ははくたか、つるぎ、あさまを集計対象外
※7 東北新幹線で青森まで行くのははやぶさのみ
※8 西九州新幹線は(10)(28)で新幹線区間のみ集計

表に示すように示すように、西九州新幹線の平均速度は毎時137kmで最低です。遅いと評判の北海道新幹線よりも遅くなっています(29)。また、博多-長崎の147.9km(鹿児島本線博多-鳥栖間28.6km(30)、長崎本線鳥栖-肥前山口間13.7km(11)、佐世保線肥前山口-武生温泉間13.7km(15)、西九州新幹線66km(10)の合計)では、時刻表(28)を集計すると時速95キロメートルです。在来線の最速特急はサンダーバード9号の時速104kmで(31)、これより遅くなっています。西九州新幹線は「新幹線」としていますが、実質は在来線特急なみです。
長崎県は最速で1時間20分と言っていますが(13)、時刻表を見ると(28)、1時間20分で走るのは1往復のみです。平均では1時間33分です。それでも約6197億円が使われ(32)、さらに肥前山口駅 - 武雄温泉駅間は単線のため、西九州新幹線の開業に合わせ複線化・路盤強化に約120億円がかかります(15)。合計で6,317億円です。
以下に年表を示します。
1973年 九州新幹線・西九州ルートが整備新幹線となる。
1976年 むつ念書(佐世保市でのむつ修理容認と引き換えに、与党幹部が九州新幹線・西九州ルートの早期実現を約束)
1985年 国鉄が佐世保市近郊の早岐駅経由するルート発表
1987年 国鉄解体、JR九州発足、JR九州は「早岐経由」を事実上拒否
2001年 武雄温泉 - 長崎間をスーパー特急方式で整備する暫定整備計画を決定
2007年 並行在来線の扱いについて佐賀県、長崎県、JR九州の三者が合意し、工事開始
2009年 FGTの実験を九州新幹線で実施される
2012年 FGTを前提にフル規格新幹線に計画変更
2017年 JR九州はFGT導入断念を発表、武雄温泉駅での対面乗り換えが決定
2022年 武雄温泉 - 長崎間、開業
西九州新幹線は原子力船「むつ」の修理を長崎県が受け入れてもらうために、当時の与党(自民党)幹部が実現を約束した新幹線です(1)。今日(9月23日)に開業しました(2)。ただし、長崎県に配慮したために、佐賀県には受け入れないルートです。そして、部分開通で途中のりかえが必要です(10)。延々と途中のりかえが続きます。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。
西九州新幹線はスーパー特急方式でした(22)。ところがFGTを前提にフル規格の新幹線に変更されました(8)。FGTが実現可能ならミニ新幹線(33)でなく、FGTで良かったはずです。自民政権は、佐賀県の利益を無視し、むつの修理を引き受けた長崎県に有利なルート設定をし、フル規格の新幹線を強行しました。その結果、残りのルートの設置の見込みたたず(34)、永遠の対面のりかえが続きそうです。とんだ原子力の置き土産です。自公政権はむつの修理を受け入れた長崎県に配慮しています。たとえば九州新幹線より先に長崎本線にそったルートで西九州新幹線を建設する等、佐賀県に配慮した方策を示していれば、博多から長崎まで新幹線で繋がったと思います。でも、自公政権は原子力の為には合理性を欠いた政策決定をするようです。こんな政権では福島の皆様は不安だと思います。
福島を代表するくだものにリンゴやブドウがあります。9月も下旬となり福島はリンゴやブドウの季節になりました(35)。須賀川市は福島県3位の産地です(36)。今、同市ではブドウ狩りが楽しめます(37)同市あたりのリンゴは最高の食材です(38)。同市のブドウは甘いそうです(37)。福島県は福島産は「安全」だとしています(39)。でも、福島県須賀川市のスーパーのチラシには福島産リンゴ、ブドウはありません。

※(40)を引用
図-4 福島産リンゴとブドウが無い福島県須賀川市のスーパーのチラシ
(=^・^=)も福島県須賀川市の皆さまを見習い「フクシマ産」は食べません。。
―参考にさせて頂いたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
むつ (原子力船) - Wikipedia(2)
西九州新幹線が開業 佐賀・武雄―長崎66キロ | 共同通信(3)
西九州新幹線 - Wikipedia(4)
新幹線 - Wikipedia(5)
上越新幹線 - Wikipedia(6)
北陸新幹線 - Wikipedia(7)
>九州新幹線 - Wikipedia(8)
九州新幹線 (整備新幹線) - Wikipedia(9)
鉄道:新幹線鉄道について - 国土交通省(10)
西九州新幹線 - Wikipedia(11)
長崎本線 - Wikipedia(12)
西九州ルートの概要 / 佐賀県(13)
西九州新幹線 開業! | 長崎-武雄温泉(14)
北海道新幹線 - Wikipedia(15)
佐世保線 - Wikipedia(16)
九州旅客鉄道 - Wikipedia(17)
新幹線鉄道の整備(18)
東北新幹線 - Wikipedia(19)
新幹線リレー号 - Wikipedia(20)
軌間 - Wikipedia(21)
>在来線 - Wikipedia(22)
新幹線鉄道規格新線 - Wikipedia(23)
肥前鹿島駅 - Wikipedia(24)
大村線 - Wikipedia(25)
軌間可変電車 - Wikipedia(26)
>大村市/全線フル規格化の実現に向けて(27)
九州新幹線 - Wikipedia(28)
西九州新幹線、特急列車時刻表(2022年秋ダイヤ)(29)
北海道新幹線はなぜ遅い!? 260km/hまでの理由とは? | T-LOG(30)
>鹿児島本線 - Wikipedia(31)
日本最速の列車、新幹線・在来線・私鉄のTOPは!? 2022年版(32)
九州新幹線西九州ルートの工事費が増加、6000億円台に…佐世保線の複線化は大町-高橋間に | レスポンス(Response.jp)(33)
ミニ新幹線 - Wikipedia(34)
全線開業が見通せない西九州新幹線、反対する佐賀県の「あの出身者」が原因 「鉄道なにコレ!?」(第32回)(47NEWS) - Yahoo!ニュース(35)
ブドウ – くだもの消費拡大委員会(36)
くだものづくりがさかんな福島盆地(37)
佐藤果樹園 須賀川市 (@satoufruit) / Twitter(38)
特産品 - すかがわ岩瀬 | JA夢みなみ(39)
福島県の食の安全の動画について - 福島県ホームページ(40)
ザ・ビッグ須賀川店 | 宮城県、福島県のイオングループのスーパーマーケット「ザ・ビッグ」 | マックスバリュ南東北
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- 2022/09/23(金) 19:40:40|
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