東海第二原発は1978年11月28日に稼働しました(1)。今日で44年になります。これまでですと、あと16年で60年になり「廃炉」になるはずでしたが、自民党は運転延長を認める方針を示しました(2)。自民党の案では、安全対策工事の完了予定の2024年9月(3)に再稼働したとして、2050年1月まで運転可能です。実に運転開始から71年超です。
日本原子力発電株式会社(にほんげんしりょくはつでん)は、茨城県那珂郡東海村と福井県敦賀市に原子力発電所を持つ卸電気事業者です。設立は1957年で、東海村にあった東海発電所は日本最初の商業用原子炉です。略称として原電(げんでん)または日本原電(にほんげんでん)が使われます。日本に商用原子力発電を導入するために、電気事業連合会加盟の電力会社9社と電源開発の出資によって設立されました(4)。
東海村の原発は震災で自動停止し(1)、その後の2011年5月に定期点検に入りました(5)。敦賀の原発は2011年8月に停止し(6)、以後は発電していません。以下にに発電量の推移を示します。

※(7)(8)を集計
図―1 日本原電の年度毎の発電量
図に示す通り2011年度はほぼ0、2012年以降はまったく発電していません。普通の会社では11年以上の間、サービスや製品(日本原電の場合は電気)を提供しなければ破産すると思いますが、日本原電は今も生き残っています(3)。
2021年度の売上高は930億円です(9)。これは事故前に日本原電から電力供給を受けた電力5社(東京、東北、関西、中部、北陸)(1)(10)が原発の維持、管理費などを「基本料金」として支払っている為です(11)。以下に日本原電の売り上げを示します。

※(7)(8)にて作成
図―2 日本原電の売上高
その総額は2011年度から21年度の11年間で12,991憶円で1兆円を超えました。
このような不自然な状態を解消する方策の一つに、同社原発の再稼働があります。ところが、事故当時に所有していた原発3機のうち、敦賀1号は1970年に稼働で古く、電気出力も35.7万kWで小さく廃炉になりました(10)。同2号機は原子炉直下に活断層とあると判定されて、原子力規制委の適合性審査(安全審査ではない)を通る見込みがありません(10)(12)。原子の適合性審査は基本設計の妥当性を審査する「設置(変更)認可」、詳細設計を審査する「工事計画認可」、運転管理を審査する「保安規定認可」と手順で進められます(13)。さらに40年以上の運転をするには、これとは別に運転延長の審査に合格する必要があります(14)。ただし、運転できるのは現状は60年までです(2)。東海第二原発は2018年11月7日に原子力規制委員会に対する最後の手続きである「運転延長」の認可を受けました(15)(16)。これで地元同意と安全対策工事が終われば再稼働に進める状態になりました。でも、地元同意の見通しは立っていまあせん(3)。安全対策工事も進んでいません。現時点では2024年9月までかかる見込みです(17)。さらに、2021年3月には裁判所から運転停止を命じる判決を受けました(18)。60年の期限がどんどん迫っています。今日で稼働から44年です。残りは16年になりました。一方で安全対策工事には3,500億円かかると見積もられています(19)。巨額の安全対策投資を回収する期間が日々減っています。そのうち、安全対策工事して再稼働してもペイしなくなります。こうなると、日本原電は全ての発電所を失い、唯一の事業である電気卸売りができなくなります。一般的には会社解散ですが、原発は不要になっても廃炉作業を終えないと放射能汚染を引き起こすリスクがあります。廃炉を進め、廃炉が完了するまで管理し続ける必要があります。
ところが、原発に優しい自民党は40年ないし60年の運転期間から、震災後の新たな安全規制の導入や行政・裁判所の命令といった理由で止まっていた期間を除外する案をだしました(2)。震災後の新たな安全規制の導入で運転できなかった期間は福島原発事故が起きた2011年3月11日から、運転延長の認可も含め原子力委員会の審査が完了した2018年11月7日までの2,798日は除外されます。さらに2021年3月18日以降は、裁判所の命令で運転ができない状態なので、除外されます。日本原電は、安全対策工事が終わり地元同意が取れるまでは、時間稼ぎの為に裁判を長引かせるはずです。2011年3月11日から東海第二が稼働してから60年に当たる2038年11月27日までは11,791日です。このうち原子力規制委の審査に最終的に合格した2018年11月7日から裁判所から運転停止命令を受けた2021年3月18にちまの862日間を除き、運転期間60年から除外されます。すると10,123日の運転が可能です。仮に安全対策工事完了予定の2024年9月に再稼働したとして、運転が終了するのは2050年1月です。このまま行けば東海第二は70年を超える老朽原発になります。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。
最近は電力会社が日本原電に支払う「基本料金」が取り上げられることは無くなりました。11月24日に東北電力は電気料金の大幅値上げを発表しました。東北電力が日本原電に支払う「基本料金」もコストの含まれるはずですが、東北電力の発表資料では触れられていません(20)。
原発は事故を起こせば大変な被害が生じる事が福島原発事故で実証されました。厳格な安全管理が必要です。70年以上の老朽原発で厳格な安全管理ができるか不安です。このような政策を平然実施する岸田政権では福島の皆様は不安だと思います。
福島県郡山市は福島最大のお米の産地です(21)。同市のお米は「あさか舞」といいておいしいお米です(22)。安全なので2011年産米すら、学校給食に使われました(23)。でも、福島県郡山市のスーパーのチラシには福島産米はありません。

※(24)を引用
図‐3 福島産米が無い福島県郡山市のスーパーのチラシ
(=^・^=)も福島県郡山市の皆さまを見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にさせて頂いたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
東海第二発電所 - Wikipedia(2)
停止期間外し原発運転延長 政府・与党、上限撤廃見送りhttps://www.nikkei.com ? article(3)
東海第二原発の安全対策工事、設計変更で完了2年遅れに : 読売新聞オンライン(4)
日本原子力発電 - Wikipedia(5)
東海第二発電所検査状況 | 日本原子力発電株式会社(6)
発電所定期検査状況 - 敦賀発電所2号機 | 日本原子力発電株式会社(7)
2015年度プレスリリース | 日本原子力発電株式会社⇒
平成26年度決算概況について(8)
財務状況 | 日本原子力発電株式会社(9)(8)⇒
2021年度 決算概況(10)
敦賀発電所 - Wikipedia(11)
発電ほぼゼロで収入1兆円 日本原電8年間分、本紙集計:朝日新聞デジタル (12)
新規制基準適合性に係る審査・検査の流れ | 原子力規制委員会⇒
実用発電用原子炉に関する審査業務の流れについて【PDF:17MB】(13)
原子力発電所の運転期間と制度|あくなき安全性の追求|原子力発電について|エネルギー|事業概要|関西電力(14)
第40回原子力規制委員会|原子力規制委員会(15)
日本の原子力発電所 - Wikipedia(16)
>第40回原子力規制委員会|原子力規制委員会(17)
原発再稼働 政府が方針 東海第2周辺 なお慎重 - 日本経済新聞https://www.nikkei.com ? article(18)
2020年度プレスリリース | 日本原子力発電株式会社⇒
2021年03月18日(当社コメント) 東海第二発電所の運転差止等訴訟の判決について(19)
東海第二原発工事、700億円予算オーバー 回避困難か:朝日新聞デジタル(20)
小売規制料金の値上げ申請等について | 東北電力(21)
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福島県郡山産米 あさか舞 - 郡山市公式ホームページ(23)
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- 2022/11/28(月) 19:56:52|
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