福島県の地方紙・福島民友は「【4月15日付社説】『福、笑い』販路拡大/食味や品質の認知度高めよ」との社説を
「『福、笑い』の安全性や品質へのこだわりもアピールし、その役割を果たしてもらいたい。」
と結んでいました。でも、福島産を「安全」とは言い切れず、「福、笑い」が普及する見込みはありません。
今から12年前の3月11日、津波対策の不備により(2)、国際原子力事象評価尺度(INES)において、最上位のレベル7(深刻な事故)を事故を起こしました。これはチェルノブイリと同じです(3)。

※(4)を転載
図-1 水素爆発する福島第一原発1号機
原発から放射能漏れ出した放射能で、福島は汚染されました。

※1(6)(7)にて作成
※2 避難区域は(8)による
図―2 特異的に汚染されている福島
事故から図に示す様にICRPが公衆の被ばく限度とする年1ミリシーベルト(9)を超えた地域が広がっています。事故から10年半が経過しましたが、福島は汚染されたままです。
既に除染は終っており(10)、今後は自然に放射線量が下がるのを待つしかありません。福島で放射線源はセシウム137です(11)。セシウム137は半分になるのに30年かかります。4分の1になるには60年、一桁下がるには100年がかかります(12)。多くの方が福島から逃げ出しました。
※(13)を集計
図―3 福島からの県外避難者数
福島の皆様の不安解消の為でしょうか、福島県は2013年3月31日から4月1日かけて、放射線測定器を放射線量が低い場所に移す人為的操作を加えました(14)。

※1(15)にて作成
※2 日付け中2013年は省略
図―4 突然下がる福島県各地の放射線量
図に示す様にこの操作で放射線量が大幅に下がりました。
原発事故では台地だけでなく、外に置いていた福島の「稲わら」も汚染されました。福島の畜産農家さんは、これを餌として牛に与えました(稲わら牛問題)(16)。以下に福島産牛肉の検査結果を示します。

※1(17)を集計
※2 NDは検出限界未満を示す
※3 日付は牛さんがお肉になった日
図―5 福島産牛肉の検査結果
図に示す通り「消費地」の検査では当時の基準の1キログラムあたりを500ベクレル(18)を超えるセシウムに汚染された牛肉が見つかりました。でも「フクシマ」の行政が実施した検査では「基準超」は見つかりませんでした。
福島県のおかしな検査結果は事故から12年を経た今も続いています。以下に海産魚の検査結果を示します。
スズキは淡水域でも生息します(19)。そこで、スズキのように淡水でも生息できる魚を除いた純海産魚の検査結果を以下に示します。

※1(17)(20)を集計
※2 NDは検出限界未満(見つからない事)を示す。
※3 日付けは採取日
図―6 純海産魚の検査結果
図に示すように宮城、茨城、千葉県産ではセシウムが見つかっています。一方、福島県が検査した福島産純海産魚は厚生労働省や福島県の発表(17)(20)を数えると1,196件連続で検出限界未満(ND)です。海は繋がっているのに汚染源がある福島産からはセシウムが見つから無い等はおかしな話です。
福島の魚は「福島県漁連」も検査しています(21)。検査マニュアルが公開されていますが、(=^・^=)なりにみて確りしています(22)。2021年2月に、福島県漁連の検査で、福島産クロソイから、現行の基準値である1キログラム当たり100ベクレルの5倍の同500ベクレルのセシウムが見つかりました(23)。福島県が実施した検査ではクロソイで基準値未満が続きました。そこで2022年12月に、出荷制限が解除されました。そして漁が再開されました。ところが、2022年1月に「漁連」の検査で、「フクシマ」産クロソイから基準値の14倍の1キログラム当たり1,400ベクレルのセシウムが見つかりました(24)。

※(25)を転載
図-7 福島産クロソイから基準値の14倍のセシウム検出を報じる福島県のローカルTV局・FTV
クロソイは再び出荷制限され、今も続いています(26)。一方、厚生労働省や福島県の発表(17)(20)を見ると、福島県の検査では検出限界未満(ND)が続いています。
厚生労働省の発表(17)を見ると、純海産魚等の福島産農水産物の出荷前検査を実施しているのは福島県農林水産部に属している福島県農業総合センターです(27)。中立性に疑問があります。
このような状況では、福島の皆様の健康が心配になります。 福島県にあるひらた中央病院は、福島産米や野菜について避けるか否かのアンケート結果を発表しています。以下に示します。
表―1 福島産を許容すかのアンケート結果
※(28)を集計

福島県は福島を7つの生活圏に区分しています。県中地域に属する郡山市・三春町、相双地域に属する相馬・南相馬市(29)をひとまとめにして比較してみることにしました。

※1 (6)(7)にて作成
※2 避難地域は(8)による。
図―8 福島県郡山市・三春町、相馬・南相馬市、いわき市
表から計算すると、郡山市・三春町では福島産米や野菜を共に許容する方は67%です。一方で相馬・南相馬市では7%です。また、いわき市は37%です。同じ福島県内でも地域によって福島産に対して温度差があります。そこで事故直前の1年と事故12年目の死者数を福島県の発表(30)から集計してみました。
福島産米と野菜を共に許容する方が67%の福島県郡山市・三春町の葬式(死者)数は
事故直前1年(2010年3月~11年2月)3,163人
事故12年目(2022年3月~23年3月)4,079人
で、29%増えています。
福島産米と野菜を共に許容する方が7%の相馬・南相馬市の葬式(死者)数は
事故直前1年(2010年3月~11年2月)1,294人
事故12年目(2022年3月~23年3月)1,415人
で、あまり変わりありません。このような事が偶然に起こる確率を計算したら0.4%でした(31)。
福島産米と野菜を共に許容する方が37%のいわき市の葬式(死者)数は
事故直前1年(2010年3月~11年2月)4,007人
事故12年目(2022年3月~23年3月)4,749人
で19%増えています。郡山市と相馬市・南相馬市の中間でしょうか?
以下に、葬式(死者)数の増加率と福島産米や野菜を共に許容する方の割合をまとめました。

※(28)(30)を集計
図―9 葬式(死者)数の増加率と福島産の許容割合
図に示す様に福島産を許容する程に葬式(死者数)が増えています。以下に相関図を示します。

※(28)(30)を集計
図―10 葬式(死者)数の増加率と福島産の許容割合との相関
図に示す様に1直線です。
当然ながら、福島産は避けられました。以下に米の福島産と全国平均の価格の推移を示します。

※(32)を集計
図-11 米の価格推移
図に示す様に事故後は安くなりました。さらに言えば、一般消費者が避けれて、主な用途は加工後(たいた後)は、産地の明示が不要な「業務用」が主流です(33)。図-2に示しように福島は特異的に汚染されています。特に主力のコシヒカリは(34)、日本各地で栽培されています(35)。敢えて放射能に汚染された地で採れた福島産を食べる必要はありません。
福島県は原発事故後にオリジナル品種を次々にだしています。2012年に「天の粒」を出しました(36)。天の粒は「味」の割に、収量が多いのが特徴のようです(37)。福島県で沿岸部(浜通り)に住んでいるのは178万人中44万人で、大部分が内陸で住んでいます(38)。そのためか、かなり標高が高い場所でも米作が行われています。福島を代表する湖に猪苗代湖があります。標高は514mですが(39)、周囲に水田が広がっています。

※(39)を引用
図-12 水田が広がる猪苗代湖周辺
こうした中山間地域向け(標高300メートル以上)に里山のつぶを2017年に出しました(40)。そして2021年に最高級米として「福、笑い」を出しました(41)。これについて、福島県の地方紙・福島民友は「【4月15日付社説】『福、笑い』販路拡大/食味や品質の認知度高めよ」との社説を
「本県のトップブランド米として市場での存在感を高め、県産米全体の販売量の拡大、価格の上昇につなげてほしい。」
と書き出していました(1)。でも、トップブランド米か各県で出しています。福島周辺(東北地方や隣県)北から青森県の「はれわたり」(42)、秋田県の「サキホコレ」(43)、岩手県の「金色の風」(44)、宮城県の「だて正夢」(45)、山形県の「つや姫」(46)、新潟県の「新之助」(47)、栃木県の「とちぎの星」(48)等があります。全国を探したらもっとありそうです。この中で、ただでさえ消費者に避けられている福島産米を取り扱う小売業者がいるでしょうか?
当該社説は
「県やJAなどは、香りや甘み、食感の良さなど『福、笑い』の特長を流通業者や消費者に分かりやすく伝え、商品の訴求力を高めることが重要だ。」
とも論じていました(1)。
でも、既に記載の様に競争相手は多数あります。それなりの競争力があるのでしょうか?新潟県の比較をしてみます。新潟県のお米のラインナップは、
低価格ならが美味しいとする「こしいぶき」
主力の「コシヒカリ」
トップブランド米の「新之助」
です(49)。福島産米との比較では「こしいぶき」が「天の粒」や「里山のつぶ」と競合関係になります。そして、主力の「コシヒカリ」は正面からぶつかります。そして「新之助」と「福、笑い」がぶつかります。新潟は福島に比べれば、放射能汚染は極微量です。これだけでも、福島産米に勝ち目はありません。新潟県産米の収穫時期は
こしいぶき/9月上旬(コシヒカリよりも約10日早く収穫)
コシヒカリ/9月中旬
新之助/9月下旬
で(49)、収穫時期がずれています。こしいぶきとコシヒカリの収穫時期をずらした理由について、新潟県は
「こしいぶきの開発の背景には、コシヒカリに作付が集中したことにより、収穫作業が集中し、生産コストの増大や病害虫・気象災害による被害拡大という問題が懸念されたこと」
としています(50)。すなわち
①稲刈りの時期をずらし、稲刈り作業の集中を避ける。
②生育時期をずらす事により、病害虫・気象災害による被害集中を抑える。
との効果を期待しています。新之助は逆にコシヒカリに比べ遅れて収穫されますが、同じ効果が期待できます。同一の農業事業者が「こしいぶき」「コシヒカリ」「新之助」を栽培すれば、稲刈りの期間が長くなります。自脱型コンバインのような農業機械(51)が長く使えるのでコストが抑えられます。生育時期のずれが広がるので、病害虫・気象災害による被害集中を抑られます。
成熟期は福、笑いが9月29日で、コシヒカリは9月27日で殆ど同じです(52)。混米を避け為には、共に生産することは避けなければなりません。福島の農業事業者はどちらかを選ばなくてはなりません。これでは生産者は増えません。
次に、既存のブランド米との競争です。既存の魚沼産コシヒカリ(53)との競争もあります。福、笑いが対抗できない米に「朱鷺と暮らす郷」があります(54)。新潟県佐渡市では朱鷺が生息しています(55)。佐渡市で田んぼまたは周囲の水を絶やさない。農薬や化学肥料を減らした農法で、朱鷺の餌となる生物を増やす試みをしています。認証制度があり、認証に合格した水田で栽培された米には「朱鷺と暮らす郷」が認められます(54)。それないの効果があり、野生下でも繁殖が確認され、2020年(令和2年)9月24日時点で、推定458羽が生息しています(55)。こうした米作りは、放射能に汚染された福島では不可能です。
当該社説は
「県は名称の縁起の良さなどの利点を生かし、贈答用の販売などを強化する方針だ。」
とも論じています(1)。富山県は似たよう名称の「富富富」を開発しました(56)。でも、あえなく失敗です(57)。
当該社説は
「東京電力福島第1原発事故以降、県産農産物が風評被害や価格の低迷に苦しむなか、「福、笑い」に期待されているのは県産米全体のイメージ向上だ。」
とも論じています(1)。でも、福島産米がイメージが劣化したのは、米の品質劣化によるもでなく、福島原発事故による放射能汚染によるものです。福島の放射能汚染が無くならい限り、福島産のイメージは向上しません。
当該社説は
「『福、笑い』の安全性や品質へのこだわりもアピールし、その役割を果たしてもらいたい。」
と結んでいます。
福島産が「安全」である根拠は「検査」です(58)。でも、本文に記載の通り福島産の「検査」には疑義があります。福島産の「安全」を担保するデータはありません。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。
福島の皆様も福島産を「安全」とは考えていません。
福島を代表する野菜にキュウリがあります。福島県須賀川市は主要な産地です(59)。同市で、キュウリの選果作業が始まりました(60)。同市はキュウリの季節です。同市あたりのキュウリはみずみずしい香りでパリッとした歯切れのよいとの事です(61)。福島県は「フクシマ産」の安全を主張しています(62)。でも、福島県須賀川市のスーパーのチラシには福島産キュウリはありません。

※(63)を引用
図-12 福島産キュウリが無い福島県須賀川市のスーパーのチラシ
(=^・^=)も福島県須賀川市の皆さまを見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
【4月15日付社説】「福、笑い」販路拡大/食味や品質の認知度高めよ:社説:福島民友新聞社 みんゆうNet(3)
フクシマは本当に「想定外」だったのか - 日本経済新聞(4)
福島第一原子力発電所事故 - Wikipedia(5)
1号機水素爆発 vs3号機爆発 vs 小型核爆発の比較/福島原発事故の真実とは? newsforum1 (6)
航空機モニタリングによる空間線量率の測定結果 | 原子力規制委員会⇒
福島県及びその近隣県における航空機モニタリング(令和4年9月1日~10月21日測定) 令和5年03月10日 (7)
第13回原子力規制委員会 | 原子力規制委員会⇒
資料1 帰還困難区域の放射線防護対策について(特定復興再生拠点区域外における土地活用関連)【PDF:440KB(8)
避難区域の変遷について-解説- - 福島県ホームページ(9)
ICRP勧告(1990年)による個人の線量限度の考え (09-04-01-08) - ATOMICA -(10)
除染情報サイト:環境省(11)
めげ猫「タマ」の日記 半減期でしか下がらない福島の放射線(2017年)(12)
半減期 - Wikipedia(13)
県外への避難者数の状況 - 福島県ホームページ⇒
福島県から県外への避難状況(推移) 令和5年2月1日現在 [PDFファイル/679KB](令和5年3月8日更新)(14)
めげ猫「タマ」の日記 移転してもまだ線量の高いモニタリングポスト(放射線線量測定点)を除染する福島県(15)
平成22・23・24年度 県内7方部環境放射能測定結果 - 福島県ホームページ(16)
福島の肉用牛に出荷制限 政府、移動も禁止 (写真=共同) :日本経済新聞(17)
報道発表資料 |厚生労働省(18)
食品中の放射性物質への対応 - さらに詳しい情報|厚生労働省⇒
食品中の放射性物質の基準値についての概要はこちら [PDF形式:1,549KB](19)
スズキ (魚) - Wikipedia(20)
農林水産物の緊急時環境放射線モニタリング結果【詳細】 - 福島県ホームページ(21)
JF福島漁連(22)(21)⇒
スクリーニングマニュアル(22)
クロソイから基準超えセシウム 福島沖で漁獲、出荷停止:朝日新聞デジタル(23)
原子力災害対策特別措置法第20条第2項の規定に基づく食品の出荷制限の解除|厚生労働省(24)
福島沖のクロソイ、基準超える放射性物質で出荷停止 - 産経ニュース(25)
めげ猫「タマ」の日記 原発事故12年目の課題(26)
原子力災害対策特別措置法に基づく出荷制限及び摂取制限等について - 福島県ホームページ⇒
原子力災害特別措置法に基づく出荷制限および摂取制限について [PDFファイル/306KB](27)
農林水産部 - 福島県ホームページ(28)
研究報告|ひらた中央病院 | 医療法人 誠励会 | 福島県 医療 介護 リハビリ(29)
福島県の位置・人口・面積 - 福島県ホームページ(30)
福島県の推計人口(令和5年3月1日現在) - 福島県ホームページ(31)
めげ猫「タマ」の日記 福島産、食べて応援、あの世行き(事故12年目)(32)
「復興・再生のあゆみ」「ふくしま復興のあゆみ」を更新しました。 - 福島県ホームページ⇒
復興・再生のあゆみ(第10版)/令和5年3月27日発行 [PDFファイル/10.22MB](33)
堂々と「福島」出したいけれど 県産米、支えは業務用:朝日新聞デジタル(34)
ふくしまの自慢のお米の種類|ふくしまの米(35)
コシヒカリ - Wikipedia(36)
天のつぶ - Wikipedia(37)
天にまっすぐ 天のつぶ 天にまっすぐ 天のつぶ - 福島県(38)
福島県 - Wikipedia(39)
猪苗代湖 - Wikipedia(40)
里山のつぶ - Wikipedia(41)
福島県の新しいお米「福、笑い」 - 福島県ホームページ(42)
青森県産米 はれわたり(43)
特設ページ(サキホコレについて) – ごはんのふるさと秋田へ(44)
金色の風 (米) - Wikipedia(45)
つや姫 - Wikipedia(47)
新之助 - Wikipedi(48)
とちぎの星|お米|とれたて大百科|食や農を学ぶ|JAグループ(49)
新潟の稲刈りの時期はいつ?お米の年間スケジュールを解説 | にいがたクリップ(50)
水稲早生品種「こしいぶき」について - 新潟県ホームページ(51)
自脱型コンバイン - Wikipedia(52)
福島県の新しいお米「福、笑い」 - 福島県ホームページ⇒
〔生産者向けパンフレット〕(53)
魚沼コシヒカリ - Wikipedia(54)
「朱鷺と暮らす郷づくり」認証制度のご案内 - 新潟県佐渡市公式ホームページ(55)
トキ - Wikipedia(56)
富富富 - Wikipedia(57)
定まらない販売戦略、苦戦するブランド米「富富富」 : 読売新聞(58)
復興庁FAQページ | 福島の食品は安全か?(59)
ふくしまイレブンエッセイ - 福島県ホームページ(60)
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- 2023/04/22(土) 20:04:50|
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