福島県の地方紙・福島民友は福島県が推し進める「ホープツーリズム」(1)につて、「【5月24日付社説】復興旅行/質にこだわり満足度高めよ」との社説で論じ「訪日客に分かりやすく復興の姿を伝える環境を整えたい。」と結んでいた(2)。でも、福島の復興は不可能であり、伝えるべき「復興の姿」はありません。
日本には核の惨劇を受けた場所が3つあります。原爆で核の惨劇が起きたヒロシマとナガサキと(3)、原発事故によって放射能に汚染されたフクシマです(4)。そして似たような施設があります。まずは資料館です(5)(6)(7)。そして遺構です(8)(9)(10)。そして公園です(11)(12)(13)。ヒロシマ、ナガサキ、フクシマには資料館、遺構、公園がワンセットであります。

※(14)をキャプチャー
図-1 離接するフクシマの資料館、遺構、祈念公園
でも、ヒロシマ、ナガサキの施設とフクシマの施設では大きな違いがあります。ヒロシマとナガサキの資料館の展示は原爆の惨劇を伝えるものです(5)(6)。一方で、福島の資料館の名前は「東日本大震災・原子力災害伝承館」で、原発事故をあたかも災害のように表現しています。さらに「復興」が重要な展示内容になっています(7)。ヒロシマとナガサキの震災遺構が原爆投下の惨劇を示しいますが(8)(9)、福島の遺構は津波被害を扱った遺構で、福島には原発事故を扱った遺構はありません(15)。ヒロシマの公園の名称は「広島平和記念公園」(11)、ナガサキは「平和公園」です(12)。一方で、フクシマは「福島県復興祈念公園」です。フクシマでは復興が強調さています。
ヒロシマやナガサキとフクシマの核被害の最大の違いはフクシマは放射能汚染による惨劇である事です。(=^・^=)の計算では、東京電力がフクシマにばら撒いた放射能は、アメリカが原爆でヒロシマにばら撒いた放射能の17倍です。そして、フクシマの放射能汚染は事故から12年以上経た今も続いています。

※1(16)(17)にて作成
※2 避難区域は(18)による
図―2 特異的に汚染されている福島
図に示す様にICRPが公衆の被ばく限度とする年1ミリシーベルト(19)を超えた地域が広がっています。 当然、福島の皆様は放射能を恐れていると思います。
今から5年前の2018年4月に福島には43,911人の10代後半女性がいました。5年が経ち彼女達は20代前半になっています。今年(2023年)4月の福島の20代前半女性は29,137人で(1)、残ったのは66.4%です。2017年10月時点で10代後半だった福島の女性のうち3分の1以上の方が、この5年間で福島から逃げ出しています。以下に福島の10代後半の方が5年後に残っている割合を示します。

※1(20)を集計
※2 日付けは10代後半時点
図―3 福島の10代後半の方が5年後に残っている割合
事故前から若い方の福島脱出はありました。事故前の2001年から2006年3月までの平均を取ると男性75.6%、女性74.2%で、男女に大きな差はありませんでした。それが近々の2017年5月~18年3月(10代後半時点)の1年間の平均では、男性75.6%、女性66.7%で、男性は変わりありませんが、女性は落ち込みました。事故後に福島の若い女性の逃げ出しています。
福島の合計特殊出生率は1.39です(9)。一人の若い女性が福島を去ることをは、彼女が将来産むであろう1.39人の子どもも一緒に去って行くことを意味します。
以下に各年度(4月~翌年3月までの1年間)の福島での赤ちゃん誕生数を示します。

※(20)をを各年度(4月から翌年3月の1年間)で集計
図―4 福島の赤ちゃん誕生数
年々減り続けています。数値を記載すると
事故前(2009年度)16,260人(男の子8,309人、女の子7,951人)
昨年度(2022年度) 9,544人(男の子4,919人、女の子4,625人)
で、事故前の40%以上の減で、1万人を切りました。
福島からは若い女性が去ってき、子供が生まれなくなりました。フクシマは復興するどころか衰退しています。
フクシマは原発事故後に11市町村の全部または一部で避難指示がでました(18)。以下に示します。

※1(16)(17)にて作成
※2 避難区域と解除区域は(18)による。
図-5 避難区域と解除区域
図に示しように全市町村で一部または全部の避難指示が解除されました。以下に川内村を除く10町村の居住状況をしめします。

※1(21)~(33)を集計
※2 事故時の人口は(20)(28)(31)(32)による。
※2 川内村を除く
※3 避難者数は対象者数―解除区域の居住者数で集計
図―4 避難指示が解除された区域の居住数と避難者数(川内村を除く)
図に示す様に、避難指示は解除されましたが住民はあまり戻っていません。数値を記載すると4月1日時点で
住民登録 64,305人中15,733人(住民登録の24%)
です。全ての特定復興再生拠で避難指示が解除されたのですが(1)、住民は戻りません。
なお川内村で避難指示が出た区域は一部に限られ、昨年4月1日の人口は2,393人で(20)、このうち旧避難地域に住んでいたのは261人で(33)、ごく一部です。
以下に避難指示が出た11市町村の出生数(避難先での出生を含む)を示します。

※(20)を各年度で集計
図-5 避難11市町村の出生数
2015年以降は減少が続いています。数値を記載すると
2014年度 1,284人(男の子 652人、女の子 632人)
2022年度 617人(男の子 323人、女の子 294人)
で、8年で半分以下に減少しています。
避難指示が解除されても住民は戻りません。子供はどんどん減っています。
福島を代表する果物にモモがあります(35)。最大産地の山梨県(福島県は2位)(36)と各年7、8月のモモの価格を比較してみました。

※(37)を集計
図―5 山梨・福島のモモ価格
福島のモモは事故前から山梨産に比べ安かったですが、事故後にさらに安くなりました。
事故から12年以上が経過しましたが、
・福島は汚染されたままである。
・若い女性が福島から出て行き、子供が生まれなくなっている。
・避難指示が解除されも住民が戻らない。
・福島産の価格低迷は解消されていない。
などの状況があり、復興とは程遠い状態です。
一方で、福島県は避難指示が出た市町村を対象に復興したとされる施設をめぐるホープツーリズムを進めています(1)(37)。これについて、福島県の地方紙・福島民友は「【5月24日付社説】復興旅行/質にこだわり満足度高めよ」との社説で論じていました(2)。
当該社説は「被災地を訪ねてこそ感じ、理解できることがある。」で書き出しています(2)。でも、避難指示が出た地域は「被災地」とゆうとりは「放射能汚染地」です。図-5に示す様に事故から12年以上過ぎても汚染されています。
また、「2016年度から展開している旅行企画「ホープツーリズム」が着実に浸透しつつある。」とも論じています。福島県は観光客の入込数を発表しています(38)。その中でJヴィレッジ、夜ノ森の桜、東日本大震災・原子力災害伝承館、請戸小学校などが「ホープツーリズム」の対象です。以下に11市町村の観光客入込数を示します。

※1(38)を集計
※2 復興関連は(1)による。
図-6 避難指示解除11市町村の観光客入込数
図に示しように観光客は回復しいません。復興関連の施設も、原発事故前を下回っています。およそ「着実に浸透しつつある。」ような状況ではありません。
また、「原子力災害からの復興は途上にある。」とも論じています。でも、福島はどんどん荒廃してます。福島に復興の目途はありません。福島の復興は困難です。
当該社説は「訪日客に分かりやすく復興の姿を伝える環境を整えたい。」と結んでいた(2)。でも、福島の復興は不可能であり、伝えるべき「復興の姿」はありません。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。
原発にはいろいろと意見があると思います。でも、原発を推進するならフクシマの核の惨劇を伝える遺構がひつようだと思います。そうすれば、原発事故の悲惨さが体感でき、原発には高度な安全が必要な事が実感できると思います。
(=^・^=)は大熊中学校が良かったと思います。大熊中学校は2011年3月11日に卒業式がありました(39)。そのあとで原発事故です。そして、卒業式会場は11年間片付けられることなく放置されました。

※(40)をキャプチャー
図-7 11年間放置された大熊中学校
でも、昨年に解体がはじまりました(41)。
事故から12年以上が経ましたが、福島の皆様は今も放射能を気にした生活を送っています。
福島を代表する野菜にキュウリがあります(42)。今年もキュウリの季節となりました(43)。福島県会津若松市あたりのキュウリは甘みと食感が最高です(44)。福島県は「フクシマ産」の安全を主張しています(245)。でも、福島県会津若松市のスーパーのチラシには福島産キュウリはありません。

※(46)を引用
図-8 福島産キュウリが無い福島県会津若松市のスーパーのチラシ
(=^・^=)も福島県会津若松市の皆さまを見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
福島県ホープツーリズム(2)
【5月24日付社説】復興旅行/質にこだわり満足度高めよ:社説:福島民友新聞社 みんゆうNet(3)
日本への原子爆弾投下 - Wikipedia(4)
福島第一原子力発電所事故 - Wikipedia(5)
広島平和記念資料館 - Wikipedia(6)
長崎原爆資料館 - Wikipedia(7)
東日本大震災・原子力災害伝承館 - Wikipedia(8)
原爆ドーム - Wikipedia(9)
国指定史跡「長崎原爆遺跡」 | 長崎原爆資料館 周辺施設・関連施設 | 訪れる | ながさきの平和【公式】(10)
【公式】震災遺構・浪江町立請戸小学校(11)
広島平和記念公園 - Wikipedia(12)
平和公園 - Wikipedia(13)
みちのく公園と追悼祈念プロジェクト 東北国営公園事務所 - 国営追悼・祈念施設(仮称)(14)
Google マップ(15)
3.11伝承ロードふくしま | あの日を伝える13施設があなたを待っています (16)
航空機モニタリングによる空間線量率の測定結果 | 原子力規制委員会⇒
福島県及びその近隣県における航空機モニタリング(令和4年9月1日~10月21日測定) 令和5年03月10日 (17)
第13回原子力規制委員会 | 原子力規制委員会⇒
資料1 帰還困難区域の放射線防護対策について(特定復興再生拠点区域外における土地活用関連)【PDF:440KB(18)
避難区域の変遷について-解説- - 福島県ホームページ(19)
ICRP勧告(1990年)による個人の線量限度の考え (09-04-01-08) - ATOMICA -(20)
福島県の推計人口(令和5年4月1日現在) - 福島県ホームページ(21)
楢葉町内居住者数について|楢葉町公式ホームページ(22)
避難指示区域別居住状況/南相馬市公式ウェブサイト -Minamisoma City-(南相馬市)
(23)
広報なみえ - 広報なみえ - 浪江町ホームページ(24)
広報とみおか/富岡町(25)
県内外の避難・居住先別人数/富岡町(26)
ホーム/富岡町(27)
令和5年5月1日現在の村民の避難状況について - 飯舘村ホームページ(28)
山木屋地区の居住の状況 - 川俣町公式ホームページ(川俣町)
(29)
住民生活課 - 葛尾村ホームページ(30)
広報かつらお - 葛尾村ホームページ(31)
田村市民の避難状況動向調査報告 - 福島県田村市ホームページ(32)
居住・避難状況 - 大熊町公式ホームページ(33)
避難状況| 双葉町公式ホームページ(34)(22)⇒
令和5年3月31日現在 (PDFファイル: 194.9KB)(35)
ふくしまイレブンエッセイ - 福島県ホームページ(36)
ももの生産量はどこの県が多いのですか。:農林水産省(37)
東京都中央卸売市場-統計情報検索各年7月について、大分類⇒果実、中分類⇒もも類で検索
(38)
統計資料一覧 - 福島県ホームページ(39)
大熊中学校卒業式(2011年3月11日撮影) - 大熊町公式ホームページ(40)
大熊中学校 最後の公開 - YouTube(41)
大熊中校舎の解体始まる - 大熊町公式ホームページ(42)
ふくしまイレブンエッセイ - 福島県ホームページ(43)
【みどりの食料システム戦略】組合長からの挨拶(2023年5月) - YouTube(44)
きゅうり | JA会津よつば(45)
福島県の食の安全の動画について - 福島県ホームページ(46)
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