西九州新幹線が2022年9月23日に開業して、昨日で1年になります(1)。この新幹線は他の新幹線と繋がっておらず孤立した新幹線です(2)。孤立解消の為の佐賀県と国の協議は中断しており(3)、孤立解消の目途はたっていません。
新幹線は、JR各社が運営している日本の高速鉄道です。1964年に東海道新幹線(東京‐新大阪間)が開業しました。その後に次々と延長されていきました。

※(4)等で作成
図-1 どんどん伸びる新幹線
西九州新幹線が開業した事により今日からはフル規格延長は 2,830kmです(4)。以下に佐賀県付近の新幹線路線を示します。

※(1)を引用
図-2 佐賀県付近の新幹線路線
図に示す様に西九州新幹線は孤立しています。佐賀県は新幹線のメリットよりデメリットが多く考えています。
新幹線の路線(4)を見ると、県内に新幹線の駅はあるのに県庁所在地に新幹線駅が無いが2県あります。群馬県と佐賀県です。群馬には高崎駅、上毛高原駅(5)、安中榛名駅(6)の3つの新幹線駅がありますが、県庁所在地の前橋市内にはありません。佐賀県は新鳥栖駅がありますが(7)、県庁所在地の佐賀市内には新幹線の駅はありません。ただ、高崎市と前橋市は近くにあり、時刻表でみると高崎駅(高崎市)と前橋駅(前橋市)は鉄道で14分程度です。そんなわけで新幹線の前橋伸長などとの動きは(=^・^=)が調べた限りありません。群馬県の皆様は県庁所在地の前橋に新幹線を伸長する必要は無いと考えています。佐賀市も鳥栖市の近くにあり、時刻表でみると新鳥栖駅(鳥栖市)と佐賀駅(佐賀市)は鉄道で14分程度です。佐賀県にとって、これ以上の新幹線は不要な存在です。ところが、九州新幹線から分岐し、佐賀県を経由し長崎県に至る九州新幹線・西九州ルート(長崎新幹線)計画があります。佐賀県にとっては迷惑な話だと思います。新幹線ができると地方に負担が生じます。ひとつは建設費の負担です。整備新幹線では建設費の一部をその距離に応じて負担することになります(8)。ふたつめは並行在来線です。新幹線ができると、これまであった在来線はJRから切り離されます(9)。西九州新幹線ができと鳥栖‐諫早間が並行在来線の対象になります(10)。佐賀県区間の鳥栖‐肥前大浦駅間は75.6kmですが、長崎県区間の肥前大浦駅‐諫早間は24.8kmです(11)。そんなわけで佐賀県は西九州新幹線開業のデメリットを主張しています(12)。

※(12)を引用
図-3 西九州新幹線開業のデメリットを主張する佐賀県
長崎県は、西九州新幹線が全線で開通すると博多‐長崎間が現行の1時間20分から51分になるとしています(13)。九州新幹線・西九州ルートは佐賀県に負担で長崎県がメリットを享受する新幹線です。
多分、西九州新幹線が現行のルートでなく、長崎本線に平行するルートなら、佐賀県の怒りは押されら思います。それでも、自民党政権は長崎県だけにメリットのあるルートを選択しました。
原子力は今は発電でしか使われていませんが、従前には原子力を動力とする「原子力船」が作られました。船名を「むつ」と言います。「むつ」は1974年8月28日に原子炉が臨海に達しました。ところが同年9月1日に、設計ミスが原因の放射能漏れが見つかりました。そして1976年に長崎県佐世保市に修理の受け入れを要請しました。長崎県や佐世保市の修理受け入れの見返りとして、整備新幹線の西九州ルートの優先着工を求めました。これに応じ、優先着工する旨の文書に政権与党である自由民主党の大平正芳幹事長、中曽根康弘総務会長、江崎真澄政調会長が連名で署名し長崎県に渡しました(むつ念書)。原本は長崎県庁で保管されているます。1978年10月に佐世保港に入港し修理が始まりました(14)。
長崎県や佐世保市はむつの修理受け入れと引き換えに新幹線の乗り入れを政権与党に約束させました。そして、1985年に国鉄は佐世保駅から8.9km(14)離れた早岐駅(はいきえき)経由の博多 - 長崎間のルートを公表しました(8)。以下に位置関係を示します。

※(7)に加筆
図-4 長崎本線、大村線、早岐駅
早岐駅は、佐世保線と大村線の分岐駅です(15)。西九州新幹線は、長崎本線に沿って建設されるのでなく、諫早駅を経由し佐世保線、大村線に沿って建設されることになりました。諫早駅は佐世保市内にあり、これでむつの修理を引き受けた佐世保市に新幹線の駅ができることになりました。
ところが、1987年に国鉄が解体され、九州の鉄道を引く次ぐJR九州が発足しました。JR九州は国鉄とは違い民間会社です(16)。1987年(昭和62年)、JR九州は「早岐経由では、全額公的負担で整備しても収支改善効果は現れない」との意見表明を行いました(8)。新幹線の建設にはJRの同意が必要です(17)。これで「早岐」経由は無くなりました。ただし、佐世保駅から31.1kmの「武雄温泉駅」に停車します(3)。東北新幹線は、1982年の開業時には大宮止まりでした。大宮-東京間は在来線で30.3kmほぼ同じです(18)。開業時はリレー号で結んでいました(19)。同様に武雄温泉-佐世保間をリレー号で結ぶことができます。
鉄道の鉄道の線路を構成する左右の軌条(レール)の間隔を軌間と言います(20)。新幹線と新幹線ができる前からあった鉄道(在来線)(21)では、軌間が違います。在来線の軌間は概ね狭軌(1,067mm)ですが、新幹線は標準軌 (1,435mm) を用です。このため在来線‐新幹線間の直通運転はできません(4)。武雄温泉 - 長崎間の暫定整備計画を決定しました(7)。ただし、図-1に示す様にこの区間は、他の新幹線と接続していません。そこで軌道は在来線と同じ軌間の1,067 mm(狭軌)として建設するスーパー特急方式(22)での計画決定となりました(8)。ただ、佐賀県との調整は手間取ったようです。図―1に示す様に長崎本線肥前鹿島駅(佐賀県鹿島市)は、新幹線開通で今は停車している特急が大幅に減便さえました(23)、しかも並行在来線化されます(3)。一方で今は特急が走っていない長崎県大村市には新幹線の駅ができます(3)(24)。しかも同市を走る大村線は並行在来線化されません(3)。負担は佐賀県に利益は長崎県との構図になっています。それでも2007年に佐賀県、長崎県、JR九州の三者は、
JR九州は肥前山口駅 - 諫早駅の全区間を経営分離せず、上下分離方式により新幹線開業後20年間運行を維持する。
JR九州は線路等の設備の修繕を行った上で、佐賀県・長崎県に14億円で資産譲渡を行う。
という合意に達した、工事が始まりました(8)。
標準軌(1,435 mm)と狭軌(1,067 mm)の両方の線路上を走行可能なフリーゲージトレイン(FGT)の開発が1994年より始まりました。そして1999年に山陰本線(米子 - 安来)で走行試験が行われました。さらに、2009年には九州新幹線内で実験が行われました(25)。もともとは、軌道は在来線と同じ軌間の1,067 mm(狭軌)で建設するスーパー特急方式で建設する予定でした。これならば在来線からそのまま乗り入れられなす(26)。それが、FGTを前提として2012年に標準軌での建設するフル規格(27)に変更されました。多分、新鳥栖までと、武雄温泉 - 長崎間は新幹線で走り、新鳥栖‐武雄温泉を在来線を走る計画です。ところが2017年、JR九州は、「フリーゲージトレインによる運営は困難」だとして、長崎新幹線へのフリーゲージトレイン導入を断念すると発表し、博多 - 長崎間の全線フル規格での整備を求める考えも示しました。これを受けて、当面は武雄温泉駅での対面乗り換えが決定しました。そしておおよそ1年後の2022年秋に武雄温泉 - 長崎間、在来線特急との対面乗り換え方式で開業がきまりました(7)。
長崎県や国土交通省は、対面乗り換えは暫定的で、将来は佐賀県区間に新幹線を通すべきと考えていると思います(27)。でも、これでは佐賀県は負担だけでメリットがありません。佐賀県と国は協議していたようですが、今は中断しています(3)。結局は協議はまとまらず、長期間の対面乗り換えが続きそうです。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。
西九州新幹線の佐賀県区間をミニ新幹線にしたらとの案もあります(28)。この案も佐賀県は受け入れられません。ミニ新幹線化すると、長崎本線が佐世保線の起点駅である「江北」で分断されます。
自公政権は孤立新幹線を避ける機会は3回あったはずです。1回目は、原子力船「むつ」を作らない事です。そうすれば、現状の長崎県よりのルートでなく、全てを長崎本線によったルートが実現できたはずです。そうすれば佐賀県にもメリットがり、もめなかったはずです。2回目は「むつ念書」には西九州ルートの優先着工が記されています(15)。念書どおり九州新幹線より先に西九州新幹線を先にすべきでした。佐賀県には新鳥栖駅があるので、今は西九州新幹線の駅は必要ありません。先に西九州新幹線を作れば、佐賀県にも新幹線の駅ができるメリットがあったはずです。3回目は、FGTを断念したときです。元のスーパー投球方式に戻せばよかったともいます。自公政権は3回のチャンスを逃し、孤立新幹線を作ってしまいました。こんな自公政権では福島の皆様は不安だと思います。
福島を代表するくだものにリンゴがあります(29)。今年も収穫がはじまりました(30)。福島のリンゴはシャリっとひろがる、さわやかな甘さが特徴です(29)。リンゴは福島県須賀川市辺りの特産品です(31)。福島県は福島産は「安全」だと広報しています(32)。でも、福島県須賀川市のスーパーのチラシには福島産リンゴはありません。

※(33)を引用
図―5 福島産リンゴが無い福島県須賀川市のスーパーのチラシ
(=^・^=)も福島県須賀川市の皆さまを見習い「フクシマ産」は食べません
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
西九州新幹線 - Wikipedia(2)
論説 西九州新幹線開業 鉄道網の国民的議論を | 山陰中央新報デジタル(3)
九州新幹線、国との協議進まず 知事「打ち切る理由ない」 | 行政・社会 | 佐賀新聞ニュース | 佐賀新聞(4)
新幹線 - Wikipedia(5)
上越新幹線 - Wikipedia(6)
北陸新幹線 - Wikipedia(7)
>九州新幹線 - Wikipedia(8)
九州新幹線 (整備新幹線) - Wikipedia(9)
鉄道:新幹線鉄道について - 国土交通省(10)
西九州新幹線 - Wikipedia(11)
長崎本線 - Wikipedia(12)
西九州ルートの概要 / 佐賀県(13)
西九州新幹線 開業! | 長崎-武雄温泉(14)
むつ (原子力船) - Wikipedia(15)
佐世保線 - Wikipedia(16)
九州旅客鉄道 - Wikipedia(17)
新幹線鉄道の整備(18)
佐世保線 - Wikipedia(19)
新幹線リレー号 - Wikipedia(20)
軌間 - Wikipedia(21)
>在来線 - Wikipedia(22)
新幹線鉄道規格新線 - Wikipedia(23)
西九州新幹線の開業で特急激減&半分非電化に 「長崎本線」の今後 佐賀は割を食うだけ? | 乗りものニュース- (2)(24)
新大村駅 - Wikipedia(25)
新幹線鉄道規格新線 - Wikipedia(26)
軌間可変電車 - Wikipedia(27)
>大村市/全線フル規格化の実現に向けて(28)
長崎新幹線「ミニ新幹線」導入を考える。単線並列と複線三線軌を検討 | タビリス(29)
くだもの図鑑 – くだもの消費拡大委員会(30)
わせ種のリンゴ「紅玉」の収穫ピーク 猛暑の影響も 伊達市|NHK 福島県のニュース(31)
特産品 - すかがわ岩瀬 | JA夢みなみ(32)
福島県の食の安全の動画について - 福島県ホームページ(33)
ザ・ビッグ 須賀川店のチラシ・特売情報 | トクバイ
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- 2023/09/24(日) 20:53:17|
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