福島第一原子力発電所では「溜り水の処理」からセシウムの分離を行っています。(1)。この系のトラブルを(=^・^=)の記事として取り上げるのですが(2)~(5)、あまり詳しい説明を記事にしていません。そこで説明をまとめてみました。
1.目的
原子炉から汲み出された汚水は、セシウム吸着(除去)装置によって、セシウムが分離されます(1)。ただし、セシウムが分離されるだけで、セシウムが無くなるわけではありません。でも、汚水からセシウムが無くなる?ので後の扱いや管理が楽になるみたいです。
2.装置の概要
セシウム吸着装置には、キュリオンとサリーの二種類が設置されています(6)(7)。稼働状況をみると(8)(9)とサリーが主に使われているので、本稿ではサリーについて説明します。
①外観
以下にセシウム吸着装置の外観を示します。

※東京電力による(9)。
図―1 セシウム吸着装置(サリー)の外観
セシウム吸着装置は2列にタンク(ベッセル)が並んでいます。となりのタンク同士はパイプで繋がっています。また、タンクは取り外すことができますのでタンク(ベッセル)単位で取り換えができます。

※東京電力による(9)。
図―2 運び込まれるタンクと取りだれるタンク
②性能
東京電力は福島第一原発の「溜り水」の各点の放射性セシウム濃度を発表しています(10)~(17)。これを処理前の汚水と処理後の水の放射性セシウム濃度を比較してみました。

図―3 セシウム吸着装置の処理前後での放射性セシウム濃度の比較
だいたい10万Bq/c㎥の水が10Bq/c㎥程度になっています。1万分1にセシウムが減っていますが、まだ10Bq/c㎥残っています。飲料水の基準(18)の1000倍の放射性セシウムが残っています。
また、この装置ではβ線(光速に近い速さで動く電子)を出す放射性物質やトリチウム(3重水素)などを取り除くことができません。以下にその様子を示します。

図―4 処理後(淡水化装置入口)のβ線を出す放射性物質(全β)とトリチウム(3重水素)の濃度推移
③原理
東京電力はタンクの構造を詳しく発表していませんが、東京電力の資料(7)(19)(20)から(=^・^=)は以下のように想像しています。

タンクの中にはゼオライトと呼ばれる物質が詰めています。この物質はセシウムを吸着する性質があります(6)(7)。セシウムを含んだ汚水がゼオライトの傍を流れるとセシウムだけが、ゼオライトに移ります。タンクには3本の配管がり、それぞれの配管にはバルブが付いています。水の入口、出口そしてガス抜き(ベント)用の配管です。入口の配管からセシウムを含む汚水を流し込み、ゼオライトの中を通るとセシウムが吸収されます。そして次のタンクに移動します。また、放射線なんどで水が分解しガスが発生するのでガス抜き(ベント)用の配管もあります。タンクの表面には放射線量計が取り付けられています。ゼオライトがセシウムを吸収し放射線量が上がると、放射線量計が高い値をだすので取り換え時期をしることができます。タンクは何重にも並べられています。
④構造
以下に東京電力の資料(7)(20)から作成したセシウム吸着装置の全体の構造を示します。

図―6 セシウム吸着装置(サリー)の全体構成
入口側には最初にポンプがあります。このポンプで水を流します。ポンプの後は装置が2重になっています。たぶん、一方が壊れたりメンテの為に停止しても装置は全体として止まらないようにします。最初にろ過フィルターに入ります。ここでセシウム吸着で邪魔になる油分を取り除くと思います。次に図―5に示したようなタンク(ベッセル)が並び、この中を水が流れることでセシウムが吸着されます。水に混じってゼオライトなどが流れることもありますので、最終段にもフィルターが付けられており、これを吸着します。セシウム吸着用のタンク(ベッセル)は前段(入口側)は効率の低いもの、後段(出口側)は効率の良いものを使用します。こうすることで濃度の高い水が流れる前段も低い水が流れる後段も同じようにセシウムが溜まって行くようにできます。
⑤セシウムカスの保管装置
この装置ではタンク(ベッセル)ごと交換します(9)。交換したタンク(ベッセル)は、専用の保管施設で保管します。

図―7 セシウムのカスの保管設備
セシウムを除いた水が塩分除去装置に送られ、そこで水とセシウム以外の放射性物質がいっぱいのカス(いわばうんちでしょうか)に分けられます。この「うんち」もとっても危険なのでトイレに流す訳に行きません。便器に貯めることになります(21)。
保管設備を近くで見ると、そのに「箱」のようなものがあります(22)。

図―8 セシウムのカスの保管設備近景
箱の中にはモータが入ってます(22)。

図―9 セシウムのカスの保管設備に取り付けられたモータ
なんでも、セシウムの汚染がひどいのでモーターで喚起しないと大変なことになるみたいです。
3.セシウムのカスの保管設備に溜まったセシウムは広島原爆150個相当
これまで、東京電力福島第一原子力発電所では272,006㎥の汚水を処理しています(23)。平均10万ベクレル/c㎥とすると
2,7200.6兆ベクレル(272006×10万×百万(1㎥は百万c㎥))
の放射性セシウムが取り出され保管されていることになります。広島原爆1個が放出したセシウムは183兆ベクレルです(24)。結局、
広島原発換算約150個(2,7200.6兆÷183兆=148)
もの放射性セシウムが福島第一原発の敷地に置かれていることになります。でも、処分の方法は決まっていません。しばらく保管し続けることになると思います。もっと悪ことは、これからも増え続けることです。
<余談>
適当に福島第一原発の解説をしてたいと思います。これまで2回の解説をしています。
―福島原発の(=^・^=)の解説―
1回
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の「溜り水の処理」について2回
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の「セシウム吸着(除去)装置」について(本稿)
3回
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の淡水化装置について―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の「溜り水の処理」について(2)
めげ猫「タマ」の日記 今週(6月2週)もトラブル!福島第一原発(3)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい!福島原発(9月2週)(4)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい!福島原発(10月1週)―再発、5、6号機も!(5)
めげ猫「タマ」の日記 8月3週もトラブルいっぱい!福島原発‐水漏れ!発煙!落し物!(6)
[PDF] 福島第一原子力発電所 放射性滞留水の回収・処理の取組み ... - 東(7)
PDF] セシウム除去装置(SARRY)概要 - 東京電力(8)
福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第78報)|プレスリリース|東京電力(9)
第二セシウム吸着装置|東京電力(10)
2012年5月24日水処理設備の放射能濃度測定結果(PDF 10.3KB)
(11)
2012年6月4日水処理設備の放射能濃度測定結果(PDF 10.3KB)
(12)
2012年7月6日水処理設備の放射能濃度測定結果(PDF 10.0KB)
(13)
2012年8月3日水処理設備の放射能濃度測定結果 (PDF 10.2KB)
(14)
2012年9月6日水処理設備の放射能濃度測定結果(PDF 55.5KB)
(15)
2012年10月1日水処理設備の放射能濃度測定結果(PDF 10.3KB)
(16)
2012年11月8日水処理設備の放射能濃度測定結果(PDF 10.3KB)(17)
2012年12月4日水処理設備の放射能濃度測定結果(PDF 10.1KB)
(18)
新たな基準値についての概要資料 [1,981KB](19)
東京電力 写真・動画集| 動画解説「事故の収束に向けて」:第二弾 第2回(20)
第二セシウム吸着装置(サリー)ベントラインからの 漏えいの調査結果について(PDF 189KB)(21)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発、タンクの中のセシウムはばら撒いたと同程度(22)
東京電力 写真・動画集| 福島第一原子力発電所セシウム吸着塔仮保管施設での白煙発生について(23)
福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第78報)|プレスリリース|東京電力(24)
めげ猫「タマ」の日記 福島は広島原爆30個分以上?
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- 2012/12/20(木) 21:41:44|
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