東京電力福島原発はトラブルが多く、トラブル毎に記事にするは面倒なので、まとめて記事にしています。先週につづき(1)、今週(4月6日~4月12日)もしっかりトラブルが起こっています。今週は確りニュースになり嘘報道まで飛び出したので(2)(3)、記事にする意味があるか不明ですが・・・
1.構造的欠陥が明らかになった地下貯水槽
福島第一原発では、孔の空いた原子炉から溢れ出た水を「タンク」と「地下貯水槽」で保管しています。

※(4)より作成
図―1 汚染水の流れ
原子炉やタービン建屋内に地下水が漏れているとされています。タービン建屋と原子炉建屋の間には「穴」が開いているみたいで、原子炉建屋から「穴」を通りタービン建屋に流れこみます。タービン建屋から汚水は汲み出され、水処理装置によって不純物が比較的すくない「淡水」とカスにあたる能濃縮塩水にわけられます(5)。「淡水」は原子炉冷却のため再び原子炉に戻しますが、「濃縮塩水」は福島第一原発敷地内にタンクないし、水漏れを起こした地下貯水槽に蓄えられます。
地下貯水槽はNo1~No7まで7つあります。その外観を図―2に示します。

※(6)をキャプチャ
※
□内が貯水槽
※数字は貯水槽の番号
図―2 地下貯水槽の外観(6)をキャプチャ
汚水漏れが発覚するまえ7つの貯水槽の状態は以下の通りです(7)。
表ー1 地下貯水槽の割り振り(4月7日時点)
※備考欄は4月12日17時東京電力発表分まで

このうちNo1,No2、No3、No6に濃縮塩水がいれられ、4/6~11の間にNo1、No2、No3で汚水漏れが発覚しました(8)(9)(10)。7槽中3槽でなく、4槽中3槽が汚水漏れを引き起こしました。後の3槽ですが、2槽は使われていませんでした。のこり1槽は5,6号機からあふれた水(5/6号機滞留水)を保管していますが、放射性物質濃度が
1リットル当たり430ベクレル
と相対的に低く(11)、漏れ出して薄まってしまうと放射性物質がみつからなくなり、漏れがあっても見つけることができないと思います。
2.移送中に汚水漏れ
4月11日14時に汚水漏れを起こした貯水槽No2からまだ水漏れの見つかっていないNo6への汚水の移動を完了しましたので(12)、水漏れのあった貯水槽No3から貯水槽No6に汚水を移動を開始しました。ところが2時3分にポンプの配管の接続部から22リットルもの汚水が漏れているのが見つかりました。この結果、No6への汚水の移動はとりあえず中止になりましたとさ(12)。水漏れ箇所は以下の場所です。

※東京電力提供の画像(13)を編集
図―3 水漏れ箇所
しかも漏れ後の放射線量は最大で
毎時28ミリシーベルト(mSv)
です(14)。2分いたら普通の人が1年間に浴びて良いとする1mSvを突破してしまいます(15)。
3.「500」トンの汚染水が行方不明
東京電力は漏れた汚水の量や放射性物質の総量を明らかにしていません。そこで(=^・^=)なりに推定したら
500トン
になりました。
東京電力は貯水槽毎の水量を発表しています(16)。もし漏れがないななら貯水槽No1、No2、No6の水量の合計は一定でなくてはなりません。でも、合計水量が500トン減っています。輸送前後の水量が合わなければその分は漏れたことになります。

(a)水量の推移

(b)合計の水量
図―4 福島第一原発の貯水槽の水量と合計の水量の推移
東京電力はパイプの中にある部分が減ったとしています。でも水の移動を開始してから、2日半も減り続けています。パイプがいっぱいになるのに2日半もかかるのでしょうか?パイプの長さは東京電力の資料から見ると目分量で500m程度かと思います。配管の直径は10cm程度だそうです。

※(9)とgoogleMapで作成
図―5 福島第一原発の貯水槽間の輸送ルート
パイプの全容量は
4m
3(500m×0.1(パイプの直径)÷4×円周率)
になり500トン(m
3)に比べて無茶苦茶小さい値です。東京電力の説明には無理があると思います。
図ー4をもう一度みてください。貯水槽No2から貯水槽No1を輸送が停止すると合計水量の低下も止まっています。だから汚水を移動しているときに汚水漏れが起こっているとも考えられます。放射性物質の濃度は1cc当たり29万ベクレルですので、漏れた総量は
500トン
になります。貯水槽No3の外側には孔(ドレイン孔)が2つ(北東側と南西側)空けられておりそこから地下水が採取できます。以下に孔の貯水槽と孔(ドレイン孔)の位置関係を示します。

図―5 福島第一原発の貯水槽の断面(8)。
ドレイン孔からとった地下水の放射性物質濃度はどんどん上がっています。

※東京電力のデータ(17)による
図―6 貯水槽No3付近のドレイン孔の放射性物資推移
消えた理由について東京電力はパイプの中に入った水量だとしていますが、水を貯水槽No2から貯水槽No1に移動している間はずっと起こっています。そして移動を止めるとほぼ同時に
消えた汚水が全て漏れたとすると、汚水1ccに29万ベクレルの放射性物質が含まれているので
145兆ベクレル(500トン×29万×100万(水1トンは100万cc)
の放射性物質がもれたことになります。漏れた汚染水と同じ「濃縮塩水」にはストロンチウム90が
1g(cm
3)当たり 11万ベクレル
含まれています(18)。すると漏れたストロンチウム90は
55兆ベクレル
になります。広島原爆1個のストロンチウム90は288兆ベクレルです(19)ので、広島原爆
0.2個分
、すなわち広島原爆の5分の1のストロンチウム90が漏れたことになります。
4.シルトフェンス切断
福島第一原子力発電所には付属の港がありますが、港からとれたアイナメから最大で1キログラム当たり74万ベクレルもの放射性セシウムが見つかっています。このようなお魚が外に出て、漁師さんに捕まって食卓に出たら大変なので、魚が脱走できないよう「シルトフェンス」を設けています(20)。

図―7 シルトフェンスの設置位置と外観
4月8日午前10時10分に、5・6号機取水口付近に設置した魚類移動防止用シルトフェンスが切断していることを下請けさんが見つけました(21)(22)。原因は強風ためのしていますが、シルトフェンスの切断が見つかった4月8日午前10時の福島第一原発付近の風速を調べたのですが10m/s弱でした。

図―8 4月8日10時頃の福島第一原発付近の風速
台風ならこの倍の風速くらいあると思います。この程度の風で壊れる福島第一原子力発電所の設備、(=^・^=)はとっても不安です。
5.温度計の異常はづづく
福島第一原発2号機の原子炉温度が上がり出しました。

※東京電力のデータ(24)をグラフ化
図―9 福島第一原発2号機の温度計の推移
<余談>
貯水槽No1の水漏れのメカニズムは以下のことでも説明できると思います。

図ー10 貯水槽No3の水漏れ想像図
①貯水槽No1に水を入れる部分の繋ぎ目から水漏れが起こっていた(No2に示したように、貯水槽No2からNo1に汚水を移動しようとしたとき水漏れが起こっています。これをたまたま気いたので中止しましが、貯水槽No2からNo1への移動では気づかなかった)。
②漏れた水の大部分は蓋の上にしみ込んだが、一部が検知孔に入り込み放射性物質が見つかった。
③極一部はドレイン孔に入り、放射性物質が見つかった。
東京電力の会見で、もしシートに穴が空いていれば、検知孔にもっと大量の水が来てもいいはずだと東京電力の方は言ってました。
今回の汚水もれでは500トン(ベクレル:広島原爆0,2個分)の放射性物質が漏れる可能性があります。食品のストロンチウム90の基準はありません。これに対し厚生労働省は「セシウムの寄与率を算出」としています(25)。すなわちセシウムがでなければストロンチウム90も出ないとの考えみたいです。でも、今回、漏れた汚染水には放射性セシウムは殆どありません(20)。だから、放射性セシウムはないがストロンチウム90が含まれる食品が出てくる可能性があります。同じベクレル数でもストロンチウム90はセシウム137の倍以上の被ばくをします(Cs137の換算係数が1.3×10
-8に対し、Sr90の換算係数が2.8×10
-8です(26)。(=^・^=)はとっても不安です。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい!福島原発(4月1週)―核燃料プール冷却停止が再発-(2)
めげ猫「タマ」の日記 NHKの嘘報道―福島第一原発貯水槽汚水漏れは3重の層を破った―(3)
めげ猫「タマ」の日記 NHK嘘報道―福島第一原発で漏れた水は1万ベクレル/cc、でも実際は29万ベクレル/cc(4)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の「溜り水の処理」について(5)
東京電力(株)福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ(概要版)(538KB) (6)
東電社長「貯水槽すべての汚染水を地上タンクへ」(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース(7)
2013年4月6日福島第一原子力発電所地下貯水槽スペック(PDF 10.0KB)(8)
2013年4月6日地下貯水槽概要(4月6日午前10時会見説明版) (PDF 1.17MB(9)
地下貯水槽概要(平成25年4月7日10時時点)(PDF 735KB)(10)
2013年4月10日社長会見配布資料(PDF 702KB)(11)
福島第一原子力発電所5・6号機低レベル滞留水タンク周辺における水漏れについて(PDF 99.4KB)(12)
東北地方太平洋沖地震による当社原子力発電所への影響について|東京電力(13)
東京電力 写真・動画集| 地下貯水槽No.3からNo.6への移送開始時の配管フランジ部からの水の漏えいについて>(14)
東北地方太平洋沖地震による当社原子力発電所への影響について【午後3時現在】平成25年4月12日 (15)
2007 年ICRP 勧告(Publ.103)(16)
地下貯水槽水位データ(PDF 20.7KB) (17)
福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の核種分析結果(18)
2013年3月29日福島第一原子力発電所多核種除去設備(ALPS)の概要等(PDF 593KB)(19)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発、貯水槽汚染水漏れ―漏れたストロンチウム90は広島原爆の5%―(20)
2013年3月27日魚介類の核種分析結果<福島第一原子力発電所20km圏内海域>(PDF 1.40MB(21)
東北地方太平洋沖地震による当社原子力発電所への影響について【午後3時現在】平成25年4月8日(22)
「物揚場前魚類移動防止シルトフェンス」および「5,6号機側取水路前面シルトフェンス」の切断状況について(PDF 342KB)(23)
気象庁 | アメダス>(24)
プラント関連パラメータ(水位、圧力、温度など)|東京電力(25)
食品中の放射性物質への対応|厚生労働省(26)
内部被ばくに関する線量換算係数
スポンサーサイト
テーマ:どうでもいい報告 - ジャンル:日記
- 2013/04/12(金) 21:10:28|
- -
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0