東京電力福島原発はトラブルが多く、トラブル毎に記事にするは面倒なので、まとめて記事にしています。先週につづき(1)、今週(8月17日から8月23日)もしっかりトラブルが起こっています。
1.掘削機が壊れた
7月22日に福島第一原発からの海への汚水漏れを発表(2)してから1ヶ月がたちました。東京電力は対策として海側に遮水壁をつくったのですが、地下水位が遮水壁の高さ(地下1.8m)(3)を超えてしまい、海への汚水漏れを防ぐことができませんでした(4)。

※(5)より引用
図―1 福島第一原発地下の水の状況((=^・^=)の想像を含む)
そこで東京電力は地下水を汲み上げ、地下水位を下げる工事をしています(5)。ところが、8月15日午前11時35分、1・2号機タービン建屋東側に設置したウェルポイント(バキュームによる強制的な揚水設備)の1箇所(最終的に28箇所設置予定)から地下水をくみ上げ用の井戸の工事をしていたら、8月17日に掘削機器が固い岩盤にあったて壊れてしまい工事が中断してしまいました(6)。
2.ダストモニタから警報
8月19日の午前に、福島第一原発で、放射能の濃度が高いことを示す警報が鳴りました。下請けさん2人に放射性物質の付着が確認されています。警報が鳴ったのは、敷地の放射能の濃度を連続して測定している「ダストモニター」1台で、8月19日午前10時過ぎ、「放射能濃度が高い」ことを示したということです(7)(8)。
10日前の8月12日にも同じような事があり、東電社員様10名に放射性物質がくっついています。(=^・^=)にはもっと気になることがあります。同じ8月19日に東京電力福島第1原発から北北西約3キロ地点の双葉町内に設置したモニタリングポストで空間放射線量値が1時間当たり0.09マイクロシーベルト、一時的に上昇したそうです。風向きは原発方向から毎秒1.3メートルです(9)。海だけでなく陸にも放射性物質漏れが再発していたりして・・・。すくなくと会津地方が福島島第一原発の風下になったとき、放射線量が急上昇しています(10)。

(a)放射線量 (b)会津田島と会津若松の位置と風向き
※(10)を加筆修正
図―1 南会津町田島、会津若松の放射線量と福島第一原発付近の風向き
3.タンクからもレベル3の水漏れ
8月19日に福島第一原発で汚水を保管してあるタンクから汚水漏れが見つかりました。漏れた汚水は
1リットル当たり8000万ベクレル
の放射性物質を含み
漏れた量は確認されただけで305トン
で、しかも1ヶ月前から漏れていなのに気付かなかったみたいです(11)(12)。原子力規制庁はレベル4の事故と認定したそうです。S/C(サプレッションンチェンバー:圧力抑制室)の温度が100℃を超え、原子力災害対策特別措置法に基づく緊急通報(いわゆる15条通報)が行なわれ原子力緊急事態宣言が発令された福島第二原発事故と同じレベルです(13)。
以下に汚水漏れの様子を示します。

(a)原子力規制庁撮影 (b)東京電力撮影
※(12)より引用
図―2 福島第一原発のタンクから漏れた水
(=^・^=)の見る限り、原子力規制庁の方の写真に比べ東電の写真は写っている水の量が少ないように見えます。まさかと思いますが、東電が漏れた汚水が少なく見えるように撮影はしてないですよね!
以下に漏れた汚水の種類をしめします。

※(14)に加筆
※「多核種除去装置」があるが現在は停止中である(15)ので記載せず
図―3 福島第一原発の汚水処理システムと水漏れ箇所
東京電力は原子炉建屋やタービン建屋に入り汚水になる前の地下水を事前に汲み上げ、海に流し汚水の発生量を防止する地下水バイパスを計画していますが(16)、福島の漁師さんの了解が得られず実施できないでいます(17)。以下に漏れたタンクの位置を示します。

※(11)(12)(16)
図―4 汚水漏れのタンク位置と汚水が流れた「跡」
直ぐに東側に地下水バイパス用の汲み上げ井戸があります。汚水はその方向に流れています。(=^・^=)は井戸の当たりの地下水が汚染されているのではないかと思います。でも東京電力は地下水バイパス用の井戸の汚水漏れ発覚後には発表していません。地下水バイパス計画は頓挫するとおもいますが、地下水バイパス計画以外に確実性のある計画はないと(=^・^=)は思います。
今回の汚水漏れ東京電力は当初は海への汚水漏れを否定していました(18)。でもその後の会見では、海に(しかも外洋に)直接漏れた可能性を認めています(19)。での調査が進んだら可能性がでるのはおかしいと(=^・^=)は思います。普通なら色々な可能性を想定し、調査が進むにつれ可能性を絞り込んでいくのが普通の調査方法だと思います。東電は調査が進むと可能性がでてくるなんてなんか嘘をついている気がしてなりません。
もっと心配なのは、今の検査体制ではお魚の汚染を見つけることはできません。厚生労働省はセシウムを検査していれば大丈夫としており、食品ではセシウム以外の基準がありませんし(20)、セシウム以外の検査は殆どありません(21)。でも漏れた汚水の放射性物質濃度は
放射性セシウム以外の放射性物質 1リットル当たり8000万ベクレル
放射性セシウム(134と137)1リットル当たり 15万ベクレル
で、放射性セシウムの量は全体量にたいし僅か0.18%です。いくら放射性セシウムを検査してもお魚の安全性は担保されないと思います。

※(22)を引用
図―5 福島原発沖の海流
福島原発近くの海流は北から南に流れています。以下に北茨城市沖と宮城県南部(仙台湾より南)のマコガレイの放射性セシウム濃度の推移を示します。

※(21)を集計
図―6 北茨城市と宮城県南部(仙台湾より南)のマコガレイの放射性セシウム濃度推移
北茨城市沖では2011年9月には既にピークに達してますが、宮城県南部では翌12年4月にピークがありました。
4.他のタンクからも汚水漏れ
福島第一原発には汚水漏れを起こした同型タンクが他にもたくさんあります。東京電力は今回のタンクの汚水漏れを受けて他のタンクも点検したら、H-3のNo4とNo10の周辺から高い放射線量(No4で100mSv/h、No10で90mSv/h)が見つかりこの辺りのタンクからも汚水漏れを起こしている可能性がでてきました(23)。
5.遮水壁外側の地下水位は下がらず
東京電力は福島第一原発の海側に作った遮水壁の効果や地下水汲み上げの効果を見る為に地下水観測用の井戸を掘っています。地下水位が上がったので8月19日から井戸水を汲み上げています。遮水壁より陸側の井戸(No1、1-3,1-8)の水位は下がっているのですが、外側の井戸(No1-9)の水位が下がっていません。

図ー7 福島第一原発海側の地下水水位
遮水壁が効果を発揮し、汚水が流れ込まなくなれば、遮水壁より海側の地下水は流れる一方なので水位が下がるはずですがその様子がありません。横から回り込んで海に漏れている可能性が否定できないと思います。以下に各井戸の位置を示します。

※(23)とGoogle Mapで作成
図―9 遮水壁を周辺の井戸の位置
6.原子力規制委員会を怒らす
8月23日にトラブルが続きの福島第一原発に原子力規制委委員会のメンバーが調査にはいりました(24)(25)。そしたら
①高濃度の汚染水を貯蔵している施設にしては、漏えいを前提とした対策を取っていたとは考えにくい
②日常の点検記録が残されていない
などのことがあり
「ずさんであったと言わざるを得ない」
といわれてしまいました。心のなかでは「マーライオン」と叫んでいたりして(26)。

※(25)をキャプチャー
図―10 東電に怒っている原子力規制委員会委員
7.規制庁の指示に従わず汚水漏れを拡大した東京電力
福島のローカルテレビ局FTVの報道によると、福島第一原発の汚水漏れで、福島第一原発の保安検査官が、汚水漏れを起こしたタンクに設けられている「弁」閉めるように再三要請したにも関わらず、作業員が足りないことなどを理由に実施しなかったそうです(27)。

※(27)をキャプチャー
図―11 規制庁の指示に従わず東京電力が「弁」を占めなったと報道するFTV
東京電力の会見を聞いていると(28)、汚水漏れを起こしたタンクのまわりには汚水が漏れても汚水が外に流れるのを防ぐ堰が設けられています。ただ、雨が降ったりすると汚水漏れがなくても堰の内側に雨水がたまるので、雨水を外に流す「弁」が付いています。

「弁」部拡大

※東京電力のデータ(29)による。
図―12 汚水漏れを起こしたタンクの周りの「堰」と「弁」
ただし、雨水が堰の内側に溜まると汚水が漏れてもわからなくなるので、通常は弁を空けたままにし、雨水が外に漏れる運用をしていました(27)(28)。これに対し、汚水漏れが発生したら流出が防げなくなることを心配した原子力規制庁の職員さんは、東京電力に「弁」を閉にするよう要請したのですが、東京電力は「(弁を閉める)作業員が足りない」として拒否したそうです。東京電力の説明では1日2回もパトロールしてるそうです(28)。パトロールを1回カットして弁を閉める作業すれば十分にできたような気が(=^・^=)はします。そしたら汚水が外に出ることもなく、今ほど重大事態にはならなかったと思います。この報道はFTVだけでみたのですが、その後に東京電力は「旧原子力安全・保安院の承認を受けていた」と説明している(30)ので事実だと思います。
東京電力は柏崎刈羽原子力発電所の再稼働を目論んでいます。でも事故ったら福島の比ではありません(31)。規制当局の指示を無視する東京電力に原発を運転する資格はないと思います。
<余談>
東京電力は8月24日に臨時会見を開き(28)、8月19日に見つかった汚水漏れの原因は、汚水漏れを起こしたタンクは元々は別の場所で設置したが、そこで地盤沈下が起こり使えなくなったので、今のエリアに移したが地盤沈下で歪が生じそれが原因で水漏れを起こしたとも取れる発表をしました(28)(31)。タンク全体の問題でなく、汚水漏れを起こしたタンクを含むごく一部のタンクの問題であるかのような発表です。それでいいんですかね?NHKは汚染水漏れのタンク 試験で沈み込む(8月24日 19:10更新)」(33)と確り提灯記事(34)を出してしています。
福島はこの件に大変に怒っているような気がします。福島県には地元紙として福島民報、福島民友と東北のブロック紙の河北新報(35)がありますが、8月22日から23日に掛けて社説はほぼ同じ内容の社説を掲載しました。
福島民報―「【汚染水対策】「政府主導」はまだか(8月23日)」(36)
福島民友―「汚染水大量漏えい/首相主導で悪循環断ち切れ(8月23日付)」(37)
河北新報―「福島原発汚染水/破綻回避へ必死の努力を」(38)
各社が同じ内容の社説を掲載したのは今回の汚水漏れのインパクトが強かったためのと思います。
東京電力の会見を聞いていると、東京電力が「汚水」を管理するのは無理があります。「国」は東京電力から汚水を引き取り確り管理するべきと思います。このためにはどこかに汚水の保管場所を作る必要がありますが、(=^・^=)の近くに作るのは絶対反対です。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
めげ猫「タマ」の日記 トラブルいっぱい!福島原発(8月3週)―いまだ続く海への汚水漏れ-(2)
2013年7月22日海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策(PDF 1.43MB) (3)
福島第1原発:東電、週内にも流出汚染水で地下水くみ上げへ - 毎日jp(毎日新聞)(4)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の海側地下水は原子炉建屋と繋がっている?(5)
2013年8月15日福島第一原子力発電所 1-2号機取水口間の ウェルポイント(一部)からの地下水汲み上げ開始について(PDF 180KB) (6)
東北地方太平洋沖地震による当社原子力発電所への影響について【午後3時現在】平成25年8月18日(7)
東北地方太平洋沖地震による当社原子力発電所への影響について【午後4時現在】平成25年8月19日(8)
2013年8月16日福島第一原子力発電所 免震重要棟前における連続ダストモニタ警報の発生、および汚染確認者の発生についての調査状況(PDF 70.4KB)PDF (9)
双葉の線量、一時上昇 0.09マイクロシーベルト上がる(福島民友ニュース)(10)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発から陸への放射性物漏れも再発した?(11)
2013年8月20日福島第一原子力発電所構内H4エリアのタンクにおける水漏れについて(続報)(訂正版) (PDF 770KB)PDF (12)
資料4東京電力株式会社福島第一原子力発電所における汚染水貯留タンクからの漏えいについて(案)【PDF:4.3MB】別ウインドウで開きます(13)
福島第二原子力発電所 - Wikipedia(14)
めげ猫「タマ」の日記 福島第一原発の「溜り水の処理」について(15)
福島第1、多核種除去設備1カ月半停止 :日本経済新聞(16)
2013年8月20日(いわき市漁協説明会資料)汚染水対策ならびに地下水バイパスについて(PDF 442KB)PDF(17)
漁業者憤り「信用できぬ」 タンク汚染水漏れ300トン(福島民友ニュース)(18)
漏えい対策急務 同型タンク350基 接合部分劣化の恐れ | 県内ニュース | 福島民報(19)
福島中央テレビ [FCTニュース](20)
食品中の放射性物質の新たな基準値(21)
報道発表資料 |厚生労働省(22)
日本海洋学会 ? The Oceanographic Society of Japan(21)
2013年8月22日福島第一原子力発電所構内におけるボルト締めタンクの総点検結果について(PDF 428KB) (22)
2013年8月23日福島第一原子力発電所地下水観測孔の地下水位について(PDF 89.2KB)PDF (23)
【資料2】汚染水問題に関する各対策の実施状況(1.27MB)PDF (24)
漏えい対策不備指摘 規制委、第一原発のタンク調査 | 県内ニュース | 福島民報(25)
福島中央テレビ [FCTニュース](26)
汚染水流出を「マーライオン」 原子力規制委の更田氏、不適切発言で謝罪 - MSN産経ニュース(27)
福島のニュース 福島テレビ(8月23日放送) - YouTube(28)
映像|写真・映像ライブラリー|東京電力(29)
東京電力 写真・動画集| H4タンクエリアにおける漏えいについて(30)
「旧保安院が開口承認」 排水弁運用で東電が謝罪(福島民友ニュース)(31)
めげ猫「タマ」の日記 リスクが大きすぎる柏崎刈羽原子力発電所再稼働!(32)
2013年8月24日H4タンクエリアにおける漏えいに関する調査状況について(PDF 709KB) (33)
東電福島第一原発ニュース(34)
提灯記事 - Wikipedia(35)
河北新報 - Wikipedia(36)
【汚染水対策】「政府主導」はまだか(8月23日) | 県内ニュース | 福島民報(37)
みんゆうNet -社説・福島民友新聞社-(38)
河北新報 コルネット 社説 福島原発汚染水/破綻回避へ必死の努力を
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- 2013/08/25(日) 20:36:31|
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