福島県川内村の2014年度の予算が決まりました(1)(2)。一般会計は76億9500万円で、前年度比39・7%増です(1)。2010年の川内村の総生産額が約72億円ですので(3)、総生産額を超える水ぶくれ予算です。でも除染はほぼ完了しています。福島原発事故では多くの町や村が破壊されました。たとえ除染がおわっても、町や村の復興には莫大な予算が必要であることを示しているの思います。だれが負担するか問えば結局は税金!
以下に年度予算・決算額の推移と住宅除染の進捗状況を示します。

※1(1)(4)にて作成
※2 2011年度までは決算額、以降は予算額
図―1 福島県川内村の予算・決算額推移

※1(5)(6)にて作成
図―2 川内村の住宅除染の進捗
福島県川内村は人口2,577人の村(7)で福島第一原発の30km圏内に位置し、福島原発事故直後の2011年3月16日に全村避難を実施しました(8)。

※(7)より作成
図―3 福島県川内村
その後
2011年9月30日 ―国による避難指示の解除(緊急時避難区域)(10)
2012年1月31日 ―帰村宣言(11)
2012年3月26日 ―役場機能を川内村内に戻す(12)
2012年4月 6日 ―保育園、小学校、中学校の合同入学式(13)
2013年3月 ―住宅除染がほぼ終わる(図ー2参照)
等が実施されました。放射線量はかなり低くなっています。多くの川内村民が避難する郡山市(7)との放射線量と川内村の放射線量を比較すると川内村の方が低くなっています。

※(14)より作成
図―4 郡山市と川内村の放射線量比較(共に仮設住宅付近)
以下に川内村の除染の進捗状況を示しますが殆ど終わっています。
表―1 川内村の除染の進捗状況
※1 (5)(6)にて作成
※2 住宅、公共施設、道路は2014年1月末、他は2013年12月末

でも戻ったのは村民の二割ほどの535人だそうです。これでは「村」を維持するのはむずかしい気がします。帰村者が少ない理由について村長は自身のブログで
「20㎞圏外の旧緊急時避難準備区域の解除の例でも分かるように、そう簡単なことではない。特に富岡町や大熊町など沿岸部の自治体に依存していた8区住民にとって、除染の結果はもちろん重要だが、合わせて生活のためのインフラ整備が不可欠だと考えている。生活するための具体的な計画を示しながら、個別に相談対応していきたい。安易な期待を持たせることより、出来ること出来ないことをはっきり示すそのタイミングだと認識している。「戻りたい人」と「まだ様子を見る人」が出てくるのは当然だ。」
と記載しています(15)。戻りたい村にするためにも早急なインフラ整備が必要です。すでにいると思いますが、避難されおられる方が避難先になじんでしまい避難先への定住を決めればそれで終わりです。早急な生活環境の整備が川内村には必要です。川内村の予算は2015年度以降も水ぶくれすると思います。川内村に自主財源がないので、国のお金が回ったと思いますが、国が責任を持つのが当然です。原因は国策で作った原発が事故ったからです。でもその費用は最後は(=^・^=)達から徴収した税金です。しかも来月(2014年4月)から値上がりします。すくなくとも原発事故の費用は賠償や廃炉あるいは除染といった費用以外に、原発事故で崩壊した社会の復旧費用も相当な額になると思います。
<余談>
これは川内村の問題というよりは放射性物質で汚染された福島県域全体の問題なような気がします。福島県では20代の女性の流出が止まりません。

※1(3)を集計
※2 2013年3月は14年1月末まで
図―5 福島県の各年3月から1年間の20代の社会的増減
このままでは、男だらけの男社会が出来上がり次世代を担う子供が生まれなくなって衰退は免れません。若い女性を繋ぎとめる必要があります。そのためでしょうは、郡山市の東京ガールズコレクションを誘致するそうです(16)
除染が終わっても福島は魅力的な街にはならないと思います。環境省の計画は福島にばら撒かれた放射性物質のうち回収するのは2割以下になっています(17)。山林やため池の底に残ったセシウムは放置されます(18)。放射性セシウムの半減期(セシウム137で30年)考えれば、あと100年位は福島は放射性汚染の地のままです。それを乗り越えて福島を魅力ある町にするには、沖縄振興策(18)と同じような福島振興策を永遠に続ける必要があります。
2014年度の福島県予算は1兆7135億円です。福島原発事故前に編成された2011年度の当初予算は8000億円です(19)ので、約倍増です。このうち、除染をなどの環境回復、健康対策、災害公営住宅の整備など被害者の生活再建支援、津波対策などの福島原発事故や震災に関わる部分は4,786億円です。増加区分8、135億円残りの部分は福島振興策だと思います。
福島県は多くの予算を使い残しました(20)。福島県の予算はやらなければならない事を予算化したのでなく、やれる事を予算化したと思います。除染が終わっても減ることはないと思います。原発事故を評価するときこうした費用も考える必要があると思います。
―参考にさせていただいたサイト様および引用した過去の記事―
(1)
川内 帰村へ40%増予算案 : 福島 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)(2)
帰村者に10万円「振興券」 川内村帰還推進へ新事業 | 県内ニュース | 福島民報(3)
福島県ホームページ - 組織別 - 福島県市町村民経済計算 報告書(4)
予算・決算|福島県川内村役場ホームページ(5)
福島県 川内村|除染実施区域の概要・進捗|除染情報サイト:福島県・環境省(6)
住宅除染完了率42.6% 重点調査地域 | 東日本大震災 | 福島民報(7)
福島県ホームページ - 組織別 - 福島県の推計人口(8)
「必ず戻る」 : 日々ゆうこう(9)
めげ猫「タマ」の日記 福島県川内村、帰還宣言から2年―減速する帰村―(10)
緊急時避難準備区域の解除について(METI/経済産業省)(11)
帰村宣言から2年 川内の再生より確実に(1月30日) | 県内ニュース | 福島民報(12)
みんゆうNet 双葉地方8町村の仮役場設置場所と連絡先(13)
合同入学式 : 日々ゆうこう(14)
福島県放射能測定マップ(15)
帰村宣言から丸2年 : 日々ゆうこう(16)
めげ猫「タマ」の日記 8割以上の放射性物質の放置を決めた福島除染計画(17)
福島のため池に高濃度汚染土 10万ベクレル超14カ所:朝日新聞デジタル(18)
(よくある質問)沖縄振興策について/沖縄県(17)
福島県ホームページ - 組織別 - 予算(18)
めげ猫「タマ」の日記 福島県田村市都路地区の除染完了-全体の5%で
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- 2014/03/02(日) 20:31:26|
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| コメント:3
川内村は、わが故郷・飯舘村の今後を占う上で以前より注目しています。
主さんが書かれているように、川内村は原発事故後すぐに全村避難を決めて主に郡山市に避難しました。
しかし、郡山市は川内村より線量が高かったという矛盾があるにもかかわらず、その後「帰村宣言」しても戻る住民がほとんどいなかった。
この事は、当時から私は別の場所(掲示板)でも指摘していたことですが、すべては余りにも避難していた帰還が長かったせいです。
そのために、避難先の方が「生活が便利」だという事を肌で感じてしまい、多少放射線が高かろうと、「生活が便利」な方を選択してしまっているのが、本音でしょう。
しかし、その本音を探られないようにだろうけれど、いろいろと「帰村しない」理由が言われます。
「収束していない原発に近いから」とか、「まだ事故前の放射線量に戻っていない」とかです。
「インフラが・・・」は尤もらしいですが、それはあくまで表面上の理由です。
そもそも「避難」をさせた理由は避難しなくちゃいけない線量の基準に達したから、または達する恐れがあるから、であったはず。
という事は、元の線量に戻らなくても、基準値をクリアすれば戻すのが当然だったのが、そうじゃなくなってしまったのは、住民が事故をきっかけにした「便利な生活を長期間経験」してしまった事であり、そして避難の長期化が結果的に「帰村より便利な生活を選択」してしまったという事だろう。
若者にその傾向が顕著なのはそのためだ。
全ては、避難期間が余りにも長すぎたせいだし、そうさせたのは、一部の人・組織が盛んに喧伝した「放射線は少しでも危険」であることは疑う余地はない。
科学的根拠の薄い、あるいは証明できていない「放射線は少しでも危険」が起こしたこの「ふるさと消滅への序章」とも言うべき事態、余りにもその責任は重大過ぎる。
- 2014/07/08(火) 16:51:20 |
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- 福太郎 #-
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>問題の本質が違う
相変らず都合が悪いことには逃げるんですね。
残念に思うとともに、このような人のせいで「ふるさと」がなくされると思うと、憎しみさえ感じる。
- 2014/07/08(火) 20:17:55 |
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- 福太郎 #-
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